地球へ戻ったミノル
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大晦日も正月もなく、私もようやく正月休みに入りました。
お待たせして申し訳ございません。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
ここは地球、そしてイギリスの北西沿岸部で漁を行っている民間漁船から不気味なナニかがあるとの緊急無線により、直近の訓練を終えた海軍が、海上に巨大な物体が漂っていると確認された事から始まる。
海軍兵の面々はデッキから身を乗り出してみているが、全員言葉を失ってしまう。
仰向けに浮かぶ物体、いや、生命体であろうか?
それは銀を主体とした鱗で玉虫色に光を反射しており、体には黒い模様も見えている。
海軍は軍本部へと連絡し、駆逐艦2隻が出港し現場に到着すると船長を始めクルー達は息を呑む。
「なんだ…これは…まるでドラゴンというべきか?それにあの姿…それではこの生物が、あの時トーキョーを襲ったというのか?日本のコーベに現れた門と関係があるのか?」
応援に駆け付けた駆逐艦船長は、あまりの大きさに圧倒されながらも、事前情報で入手した資料に目を通しながら呟いていた。
一方イギリス国内では、臨時ニュースが流れており、国民の殆どがライブ中継が移されているテレビを見ていた。
イギリス政府も、報道管制を試みるが、あまりにも巨大で、民間漁船の船員からその姿がスマホで撮影されて、某世界的SNSを通じて拡散してしまい、報道管制を敷くよりも早く、上空には報道ヘリが数機上空を飛んでいた。
緊急報道番組として流れる放送は4年前(時間経過差逆転している)に撮影されたミノルの龍化による姿で、議事堂をブレスによって破壊された映像が流されていた。
『―――それでは、中継ヘリと繋がりましたので、ライブ映像へ移します』
『はい!こちら中継ヘリのキャサリンです。ただいまサウスウィスト島沖上空に来ております。まるで爬虫類を思わせるような姿をしています。あそこに見えるのは頭部のようですね。何と言いますかゴ〇ラと言いましょうか、それとも伝記や英雄譚に出てくるドラゴンを思わせます―――あ!駆逐艦が近づいていきます!大きさは船の半分、いや1/3くらいですね!』
小型艇でドラゴンに近づき、棒でつついたりして反応がないことを確認し、特に影響がないとして調査を終えて、駆逐艦が近づいていく。
そして港まで曳航しようとしたその時、ドラゴンの目が開き、動き始める。
『あ!ドラゴンが動き始めました!どうやら死骸ではなかったようです!ドラゴンが暴れる波で海軍の船が揺れております!ああ!ドラゴンの上半身が海面から出ております!私ドラゴンと言っておりましたが、本物のドラゴンです!背中に羽があります!そしてゆっく…り…と……浮上…………。っ!!!きゃああああああああああ!運転手さん!逃げて!逃げてえええええええ!』
ドラゴンが目を開けた時には海軍の小型艇は即座に退避しており、被害はなかった。
目を開いたドラゴンは、突如暴れて海面は乱れに乱れたが、数分後、暴れなくなったと思ったら、そのままゆっくりと状態から海面へと浮上し始め、上空30mで浮上を停止していた。
尻尾まで海面から出たドラゴンは、まさに地球上では存在しない異形であり、海軍兵はその姿を呆然と見るばかりであった。
しかし、一人の海軍兵が「化け物だあ!!」の叫ぶ声を皮切りに、一気に周辺がパニックに陥り、粗相をしてしまう者、跪いて神へと助けを乞う姿、我先に船内部へと逃げる者で負傷者が発生する程であった。
ドラゴンはその巨大な体を浮かせながら、周囲を何度も見まわしたかと思うと、先程まで近付いていた駆逐艦を見下ろし、甲板上にいる兵士をジッと見つめると、一人の兵士が肩を跳ねらせドラゴンに向かって頷くのであった。
ほんの1~2分兵士を見ていたかと思うと、また正面へと頭を向きなおして羽を羽ばたかせ始めた。
ドラゴンは、南西方面へと移動を始め、ヘリや船舶から500mくらいの距離を離れた途端に、高速移動を始めて、あっという間に視界から消えて行ったのであった。
『こちら中継ヘリのキャサリン。ドラゴンが飛び去って行きました………スタジオに返します…』
海面から浮かび上がって十数分で、いずこかへ飛び去ったドラゴンに呆気に取られている海軍と報道陣であった。
「ドラゴンが俺に喋ってきた…」
「はあ?」
甲板上で肩を跳ねらせた兵が、ポツリと話す言葉に隣にいた兵が、そんな馬鹿なというような返事をする。
「ここは何処かって聞いてきたんだ…英語で…」
「ほう、それでお前は何と答えたんだ?」
「ここはイギリスだって……」
「へえ…」
ドラゴンが飛び去った方向を見ながら、2人のイギリス兵は気の抜けた会話を交わすのだった。
◇◆
「あ~びっくりした。まさか海面に漂っているとは思いもよらなかったぞ。びっくりして海水飲んじゃった…。この体でも味覚は感じるのな…さて、勇者の反応がこっちだな………」
ミノルが気が付いた場所は北大西洋上で、イギリス領のノースウィスト島とセントキルダ島の中間であり、体力、魔力共に限界ギリギリであった為、冬眠状態であった。目覚めに必要な魔力で通常で2日もあれば7~9割までの回復が望めたが、地球上の魔素には不純物が混ざっており、4割しか回復が望めないことから目覚めまでに5日を要しており、その間に意識が、もぬけの殻となり騒ぎとなっていたのであった。
そのご、目覚めたミノルは此処が何処なのかを、間抜け面をさらしているイギリス海軍兵とコンタクトをとっていると、南西方向に勇者と思われる魔力気配を感じ、イギリス本土に向けて飛行中であった。
「現時点では、戦闘は避けたいところだな…気配が近くなってきた。姿変えるか」
ミノルは龍人モードへと変化し、気配のもとへと飛行を続ける。
この時イギリス空軍のレーダーには、本土に侵入してきたドラゴンを捉えており、スクランブル発進した戦闘機部隊が向かっていたが、突然消失してしまい、大いに戸惑いを隠せないでいた。
最も、龍人モードになったミノルは《隠遁》と〈認識阻害〉を展開しており、まさか魔法が現代のテクノロジーが無力化出来る事に気が付くのは、もう少し後であった。
「おお~~い!ここだ~!」
ミノルが勇者の気配へと接近し、ホバリングで詳細位置を確認していた時、ミノルに向けて手を振る人物を発見する。
「隠遁と認識阻害を展開して気が付くとは……イギリスで勇者といえば、この人しか思いつかないしな。さすが歴戦の勇者だな」
上空から見下ろす先で手を振る人物は、元勇者で逆転生者のオースティン・レトバルトであった。
「久しぶりだなミノル君。テレビを見た時には驚いたよ。君の龍化した姿は見た事は無かったが、体の模様でな?古龍じゃないかと思っていたんだよ。そしたら生中継を見ていると動き出したのを見たもので、能力は失っているが、勇者の残滓だけはまだ残っているからな。それを全開したらこっちに向かってくるんで待っていたところなのだよ」
「こちらこそお久しぶりですオースティン殿。ちょっと事件がありまして…実は……」
「私もそれを知りたかったんだよ。ここでは何だ、わが家へ来たまえ」
オースティンが先を行く後について行くミノルは、大きな屋敷へとたどり着く。
屋敷といっても、フィーグルで見る貴族街の高級な住宅地などに建つモノではなく、3階建てのちょいセレブ的な感じの建物で、庭園などもなく周りには田園風景の広がる中にポツンとあるだけであった。
「ははは、これでも爵位持ちだが、名前だけ継承の没落貴族なのだよ。今や土地だけがある農家を営んでいるだけだよ」
豪快に笑うオースティンに、せせこましい東京のアパート暮らしだったミノルにとっては、それでもため息が出るのであった。
屋敷の中に入ると、確かに昔は貴族なのであったのかという名残があり、広く作られた玄関ホールには、農家らしい胴長や軍手、ツナギがホール端に纏めてあり、天井には豪華なシャンデリアはなく、掃除のしやすそうなシャンデリアもどきが垂れ下がるだけであった。
「あらあら、まあまあ!可愛らしい御客様がいらっしゃったわね。初めましてヴィオラ・レトバルトです。その羽と尻尾は噂のミノルさんですね。主人から聞いておりますわ。でもあなた本当にテレビで映ってた大きなドラゴンなの?」
ブラウンの肩まである髪で右目に泣きボクロがあり、少し垂れ下がった眼をした美人が、ミノルを抱き上げてミノルに頬ずりをする。
やせ型ながらに大きな胸に抱きしめられたミノルは、抵抗する事なくされるがままに、ほのかに香る香水と感触に少々の興奮を感じるのであった。
「がははは!すまんのミノル君!ヴィオラは私の妻だ。かわいいものに目がなくてな。しかしヴィオラよ。実君は確かお前と同い年だぞ?」
「「え?」」
ミノルとヴィオラが互いの顔を合わせながら驚いてしまう。
ヴィオラは40代後半だというが、どう見ても30前後にしか見えず、ミノルは9歳の姿をしているので2人共48歳には見えなかったのである。
ヴィオラは「あらまあ」と言いながらミノルを下ろし、ミノルは頭を掻きながら「すいません」と謝るのだった。
ミノルは改めて自己紹介と、挨拶をしながらヴィオラの案内で居間へと案内をされていく。
居間に着き、紅茶を差し出されたそこそこに、ミノルは地球へと転送された経緯を話し出す。
ミノルの話が進むにつれ、表情に怒りが籠っていくオースティンとヴィオラに、若干引き気味になりつつも話を続けた。
「今代の勇者は何をしているのだ!!!アドラも世界の崩壊を招かねざる行為だぞ!!!」
テーブルを叩きながら、血が出るのではという位に拳を握り締め、憤りを露にするオースティンの肩にそっと触れて、落ち着かせようとするヴィオラも、先程の険しかった表情から優しい表情に変化していたが、静かな怒りを感じるミノルであった。
「しかしヴィオラさん。私のこの姿にも、そしてフィーグルの話も驚かず聞いているのですが、あなたは一体―――」
「ああ、ごめんなさい。私は勇者でも何でもないわ。オースティンと知り合う前までは歴史研究者だったのよ。若い頃の論文でね?ドラゴン等の架空の世界なのに、各国で太古から語り継がれる姿や形、そして名称まで、なぜ似通っているのかって事で、すべて同一の種族で今も生きている、もしくは別の世界から――なんて論文書いちゃったのよ。それを見た彼が私を訪ねてきたのが始まり。フィーグルなんて突拍子もないこと言う彼はとても真面目で、真剣だったの。それが基で結婚までしちゃったけどね。初めは疑っていたんだけど、ヤーノさん?それにマッカラーンさんの話もあって、信じるようになっていったの」
ミノルはヴィオラの話を聞きながら、なんとなく納得してしまっていた。
「しかし、ミノル君の話によれば、ニホンのコーベに表れた物体が、越境門ということになるな。そして3日前に発生した世界の同時多発失踪事件がそれにあたる訳か…」
「なんですって!大規模魔法陣が発動したんですか!?」
「そうだ。45日前…。一か月半前になるが、ニホンに巨大な門が現れたそうだ。ニホン政府は調査の為と言って、周辺に立ち入り禁止を宣言してな。まあ、それは当たり前なのだが、3日前になって門が突然光りだして、その時に全世界において、目の前の人が煙のように消失してしまったということだ。衣服だけを残してね。イギリスでも現時点で2000人の安否が不明だそうだ。私の孫も一人消えたよ…………。ムンチャイの所も義弟一家が全員消えたそうだ…」
「くそ!!間に合わなかったのか!あのクソガキども!絶対に許さねえ!」
今度はミノルがテーブルを叩き、怒りを露わにするのだった。
「ミノル君の話の通りであれば、魂の安らぎをと――なんて言っても消えてしまったしな。悔やんでも悔やみきれないが、まずは先を見るということだな」
オースティンとヴィオラは悲痛な表情を浮かべながら話す。
肉親の一人が犠牲となり、戦友とも呼ぶべき者たちからも被害が出てしまっているのだから、無理もないとミノルは思う。
「オースティンさん。俺は日本に行って様子を見ます。あとマッカラーンさんの所にも行ってみます。彼の住む場所ってわかりますか?」
「あ?ああ、分かるぞ。そうか、転送だな!?それなら私達も連れて行ってくれ!子供の姿じゃ身動きもとれまい。任せてくれ!」
「え?オースティンさんも同行ですか?それは願ったり叶ったりですけど、この家は留守にして大丈夫なんですか?」
「ミノル君、それは大丈夫よ。私とオースティンはもう隠居の身。この農場は子供達が運営してますからね」
意外な申し出に驚くミノルに向かって、ヴィオラはウィンクをして答えるのであった。
「……わかりました。その申し出に感謝します。ですが、日本に近づくと勇者達は俺の存在に気づくでしょう。そうすれば危険が伴いますので御二人の安全の為に対策させてもらいます。…それではこれを飲んで、これも常に身に着けておいてください」
ミノルは右手の爪で手首を切り、2人のティーカップに血を注ぎ、魔法袋から指輪とペンダントを数点取り出して、テーブルの2人の前に置くのだった。
「これは?――まさか!?」
血を注がれたカップに眉を顰めるオースティンだったが、目の前に置かれた指輪と交互に見ると、何かを思い出したような表情でミノルへ顔を向ける。
「察しの通りです。古龍の血と能力で一時的な眷属化をします。そうすれば身体能力の大幅な向上と行使紋――魔法を使う事が出来ます。そして指輪とペンダントには〈物理障壁〉〈治癒〉〈念話〉の魔法がそれぞれ付与されています。もしもの為の保険ですよ。まあ、オースティンさんは勇者だった時の感覚を取り戻せば、問題ないでしょうけど――」
「いや、正直助かるよ。記憶はあっても使えない事に不甲斐無さを感じていたんだ。ありがとう、ミノル君」
そう言ってカップの血を飲み干すと、彼の体から魔力を感じ取ることができるようになり、それに続くヴィオラからも魔力の発生を感じ取ったのであった。
「ははは!この感覚!まるで自分にかけていた何かが満たされていくようだ!」
「そうね…何かしらこの感覚、5感とも違う…。何かに満たされた不思議な感覚だわ……」
ヴィオラの初魔力の感応の速さに驚いて、もしかして魔法に関する能力を持っていたのかもしれないし、彼女はオースティンとは運命的な何かがあったのかなと思うミノルだった。
時間は16時を回っており、行動は明日からにして今日は泊って行くといいとの、2人の申し出に感謝し、その日はオースティン邸に泊まる事になった。
夜になるとオースティンの子供達が一同に集まり、ミノルの来訪を大いに喜び、歓迎された。
特に長男と次男は大学でオカルト関係にはまっており、研究会なる活動にハマっていたそうで、父や母、ミノルが使う魔法に興奮し、自身が使えない事に悔しがっているのであった。
飛行する時に箒を使用しない事に落胆していたが、ドラゴンという空想の世界と思われていたものが、現実の目の前に存在するミノルに目を輝かせ、ミノルの語るフィーグルの世界に耳を傾けるのだった。
ミノルはこの一家が龍人モードの姿を好奇や嫌悪の視線がないことに驚いていると、ヴィオラから目の前にあるものが現実だけではなく、世の中で非現実的なものも実際には現実である。
それは楽しいことであり、嫌悪や忌諱するものではないと、幼い時からの教育の賜物だと、胸を張って語るのであった。
こうして、地球での自分の存在を温かく迎えてくれる人達がいることに、自然と笑みがこぼれるミノルであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
本日短めであありますが、もう1話投稿します。よろしくお願いいたします。




