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見放しと首都強襲

お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます


お待たせしまして申し訳ございません。


拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。

 ミノルはヘティスハークに到着すると、先日と同じく王城隣の広場に着地し、護符を作成している工房へと足を進める。


「おお!ミノル殿お疲れだな。北方の古龍様はいかがでしたかな?」


 ちょうど視察に来ていたのだろうか、パーパド王子が工房にいて、ミノルを見つけるや、侍女2人を同行させており、近づいて声をかけてきた。


「あ、ありがとうございます。とりあえず無事に魔法の供給と護符の配布も何とか済みそうです。ですが住居を移動させて生活している部族がいくつかいるらしく見つけられるかどうか、それだけが問題となってますね」


 ミノルは侍女から差し出された水を受け取って飲むと、柑橘系の匂いがほんのり香っていておいしく、礼を言うとニッコリとほほ笑んで御辞儀をされた。


「ふむ、たぶんそれは海獣族だな。彼らの狩るアザラシやトドの干しあぶらにくは美味でな。高価な食材として、とても人気であるな」


 「怪獣?ああ、海獣か!」とミノルは一人納得して、海獣種が海獣を狩るのは不思議な気分になるのであった。

 ミノルは王子と一緒に工房外に出ると、帰り途中に狩ってきた魔獣200体を王子に引き渡し、心もとなくなっていた魔力石の補充に大いに喜んでいた。


「パーパド殿下、勇者タケシを覚えていますか?」


「お?ああ、あの勇者か。覚えておるよ。支払いも滞りなく来ているし、内部情報も契約通りきちんと報告が来ているぞ」


 ミノルの言葉に答える王子は「それがなにか?」といった表情になる。


「もしかして、同郷のものというので会いたいと?」


「いえ、それは違いますね。私が必要なのは"ヘティスハークの間諜"としての彼ですね」


「なるほど。理由は聞いても?」


「はい、アドラ神聖公国首都への侵入する手引きと、残りの勇者がいる居場所です。あわよくば大規模魔法陣か越境門の破壊を考えてます」


「なんですと!」


 ミノルはパーパドの質問に答え、理由を話すと王子は驚きのあまり声をあげてしまう。


「ミノル殿、あまりにも危険すぎますぞ!首都内は我らフィーグルの民の力が半減してしまう事をご存じのはず!それにもし、ミノル殿の身に何かあれば、リュセフィーヌ殿に顔向けができません!」


「それはわかっております。危険となれば逃げますから、どうかお願いします」


 首都への侵入に反対する王子にミノルは頭を下げて頼むのであった。

 しばらくの間、問答が続いたがミノルの変わらぬ覚悟に王子は折れてしまい、2人は休憩時間を狙って王へと謁見する。

 そしてまた王とミノルとで問答が始まると、折れていたパーパドが、再び参戦してきてしまい、なかなか先に進まない事にミノルは腹を立てることもなく、王や王子の話を真摯に受け止め説得をするのであった。

 古龍の持つ直観力で王は心からミノルの事について心配していることが分かっており、王子もまた大切な友を失いたくないと云う心が伝わってくる。

 ミノルはその心に感謝し、そういう人達だからこそ、反射魔法や護符の効力に対して心配はしていないが、万が一ということもあり、不安となる芽は潰しておきたいと思っていたのだ。


 ミノルの真剣な願いに、王は折れてしまい溜息をつきつつも、「危なくなったら絶対に引き返す事」を条件に密書をしたためるのであった。


 ◇◆


 アドラ神聖公国の西部に位置するペント伯爵領はゴラス中央西部にあり、海岸と接した領地を有する公国において数少ない上級貴族である。

 沿岸部は漁業と海運、内陸部は林業が中心で領民も衣食住に困る事無く、比較的裕福な領地であったが、最近の重税と港街の一部が軍に接収され海産物の収入が減ってしまい、領民の生活に影が生じているのであった。

 最近の話題としては、港町にある軍港がドラゴンの襲撃に遭い、壊滅してしまったことであり、襲撃された割には一般住民には軽微な被害しかなく、不思議に思っていた。

 領民はようやくアドラ軍の横暴から解放されると喜んでいたが、もし軍港再建となればマイナスからなのでまた金を毟り取られるのかと不安でもあった。

 

 そしてこの領地を治めているのが、ヘティスハークとの戦いにおいて敗れた勇者の本条毅改め、タケシ・ペント伯爵が納める領地でもあった。

 彼は戦いの後、敗戦の将、ドラゴンさえ倒せぬ弱虫勇者と公国貴族から嘲笑の的となっており、第1線からは遠ざけられた状態になっていたのであった。

 もちろん本人としては願ったり叶ったりといった具合で、国からの重税と今回の戦いにおける身代金で手痛い損失だったが、領地経営に没頭する事が出来て、助かったと思っていた。


 先日ドラゴンによる襲撃で破壊された軍施設は、再建するには被害が大きすぎて機能させる事が出来ず、ペント伯爵領の北隣にある、辺境伯領の港町に作ったほうが安上がりであるとの、国からの通達の手紙でタケシは胸を撫で下ろしていた。

 

「義父上、国から軍港断念の手紙が来ました。これでようやく港街に注力できそうです」


「おお、そうか!金食い虫がいなくなり助かるのう。まあ、その分免除されていた税が上乗せになるが、それを入れても恒久的には黒字転換だからな。助かったわい」


「軍部に取られていた予算は元施設の空白地帯を利用の為に街の拡張に使いましょう」


「そうじゃな。婿殿もここにきて6年になる。私に代わって今回は婿殿が陣頭指揮を執ってやってみるがいい」


「義父上、ありがとうございます。頑張ります」


 伯爵として代替わりをして、まだ2年しか経っていないが、先代が監督役としてタケシに領地経営を教えながら過ごしてきた。

 今回の事業を任されることが、タケシにとって何よりうれしかった。


 軍施設の設置を言い渡された領地は一部の税を免除される。

 しかも多数の駐留兵が金を落としていくから、領地としては万歳と、言いたいところだが、施設の維持費や資材、それに従事する人の工面は領地経営者に負担となる事や、ガラの悪い傭兵や下級兵に対する治安維持と、領地経営にとって収入より支出が多かった為、先代当主とタケシは喜びつつも、お鉢を回された辺境伯を気の毒にも思うのであった。


「大旦那様、旦那様、御客様がお見えになっております」


 執務室で茶を飲む2人に扉がノックされ、入ってきた家令が来客を伝える。


「なんだ?今日の来客の予約はなかったはずだが?」


「それが…竜人の子供が手紙を携えてきたもので……」


「!!」


 先代の意言葉に家令が答えるが、その内容にタケシは驚くのであった。

 伯爵家では一部の人間しか知らないが、ヘティスハークから公国への内偵役として敗戦における処刑の免除を取引しており、偶に報告書の提出ではなく、直接来ることがあり、そのたびに緊張が走るのであった。


 実際、ペント伯爵領内にはヘティスハークの間諜が多数入国しており、ペント伯爵領内では下男としての偽りの身分で潜伏や、商人として商隊を組んで公国中を縦横無尽に動き回っていた。

 公国では軍としての侵略行為はあるが、商売は別で数は限られているが、ヘティスハークやフェリエ王国、魔大陸からの人族以外の商人は出入りしていた。

 ただし、公国貴族の認可証が必要であるのは言うまでもなかった。


「っ!君は!」


「婿殿どうしたのだ?」


「やあ、久しぶりの再会だね。本条毅くん」


 応接室に入るタケシは、ソファに腰掛け茶を飲むミノルの姿を見ると、驚きの声を上げる。

 先ほどまで、世間話でもしていたのであろう、主人が来るまでの時間潰しに対応をしていた先代夫人とタケシの妻は、彼の言動を不思議に思って目を瞬かせていた。

 そしてタケシを見る先代は2人を交互に見ながら訝し気に声をかけるのであった。

 ミノルを見るタケシは顔を青ざめ、歯をカチカチと鳴らせながら震え、土下座をしようとする。


「おいおい、土下座は不要だぞ?別に君を殺しに来たわけでも殴りに来たわけでもないから」


「!!!」


 ミノルの言葉に先代は、思わず身構えてしまい婦人達は驚く顔をしていた。


「婿殿?この竜人の子に何を恐れているのだ?ヘティスハークの遣いなのであろう?」


「いえ……遣いなどではありません。この者は復活したドナクレアの魔龍の番です」


 実に促され立ち上がったタケシの言葉に応接室にいた全員が、驚きと恐怖に染まっていき、室内が静寂に包まれた。


「こっこれは失礼致しました!まさか古龍様直々においでになるとは!婿殿への仕打ちに来たのならば、この老人の首で我慢して頂ければ!」


「いやいやいや、皆さんもそんなに怖がらなくて結構ですよ。先ほど言ったように、仕返しに来たわけでもないのです。あなたが先代殿ですね?頭を上げてください。奥様達もです」


 地に伏し、最上の礼をとる先代と妻達にミノルは不要と述べると、畏まりながら先代達は席へと着いた。

 ようやく落ち着きを取り戻したタケシ達は、ミノルがここへ来た理由を聞き、再び驚いてしまう。


「ミノル様、さすがに潜入するとなると私達もただでは済みません。しかも越境門などという情報は全くないのです。勇者達の屋敷ならば知ってはいますが、それ以外は本当に知らないのです」


 先代やタケシ、そして妻達は先日の敗戦による契約を履行する為に、積極的に舞踏会や茶会に出席しては些細な情報でも持ってきてはヘティスハークに密書を出していた。


 意外にも伯爵家を蔑む貴族家以外に、同じ敗戦を喫した貴族家も多数存在しており、同情する者や負けたからと言ってそれがどうしたという貴族もいたので、比較的情報集めは困難ではなかったし、公国の弱みを握っておけば、不利な条件を突き付けられた時や、自領に関する交渉事もスムーズに進めることができるメリットもある為、以前より諜報活動は行っていたが、情報収集をさらに強化したに過ぎなかった。


 ミノルも彼等が嘘を言っていない事には気付いていたが、これ以上の協力は無いと感じ、ここまでと席を立ち、魔法袋から護符を出して見せつけながら話し始める。


「まあ、仕方がないな、途中で気づかれてしまう危険はあるが、俺が直接乗り込むしかないな」


「お役に立てず申し訳ございません……」


 謝罪するタケシ達を見てミノルは思う。

 手引きをする行為がもしバレてしまった場合、スパイ行為として御家は断絶、一族郎党すべて処刑対象となる確率が高い。

 ヘティスハークから聞いた情報では、伯爵家自体はガチガチの女神教えを守って行こうという派閥で、領土侵攻などという暴力を使う事を良しとせず、アドラ聖教に対する信仰を広めていけばいいのではないかと、大公に意見はしていた。


 多分、事を荒立てずに今を過ごしていればいいと持っているのだろうと、ミノルは侮蔑の視線を向けながら話を続ける。


「まあ別にヘティスハークに協力を得る事が出来なかったとは言わないから安心しろ。

だがな?人族のお前達がやろうとしている事は鉄砲や大砲などといった生易しいものでは済まない、大量虐殺兵器を持ち込ませようとしている事を忘れるな。

タケシ、現代兵器がどんなものか教えてやるんだな。最終的には核兵器も持ち込む可能性が大きいこともな」


 核兵器という言葉にタケシは大きく目を見開きミノルを見る。


「今回の大規模魔法が展開されればフィーグルの42億人いるといわれている人口の1/4が輪廻の枠から外れ、消耗品とされてしまう。

もちろん地球も74億の1/4が同じ運命を辿る。

つまりはお前たちは大量虐殺犯となる訳だ。

そして核弾頭。勝てば官軍でそれが罪にならないと思うよな?

なめるなよ?今回の騒動で古龍や他種族全体が本気で立ち上がるぞ?そうすればどうなるか理解するんだな」


 越境門が開通すれば、どんなものでも持ち込むだろう。

 地球とは違ってここは異世界。

 核兵器撤廃条約や核兵器反対運動などもなく、国連などの管理する機関も無い事から、期限切れとなる核兵器を持ち込み、それを使用されてしまう。

 地球では出来ない実験ができるのだ。

 アメリカは喜んで持ち込むだろう。

 何せ地球・・ではないのだから………。


「最後に言っておく。今回の大規模魔法は人族や天使族を除いた種族対応型だそうだ。そして今、俺がこの手に持つ護符は、携帯していれば対象魔法を反射、対象を天使族と人族に転嫁させる物だ。誰に及ぶかわからないが、もしかしたらお前達の誰かに及ぶかもな?それでは失礼」


「な!ちょっ!ちょっと待ってください!」


 ミノルの言葉に反応し、先代やタケシ達は引き留めようとするが、それを無視して応接室から去るのであった。

 タケシはミノルを追いながら、侍女や侍従、私兵などに引き留めるように声を掛けたが、ミノルから発する威圧に気圧されて、一歩も動く事が出来ずにいた。

 やがて、屋敷を出るとドラゴニュートモードへと変身し、アドラ首都へと飛び立ってしまった。


「待ってくれええええ!僕が悪かった!なんでも協力するから助けてくれええええ!頼む!妻と子供だけにでもその護符を!!!!」


「知るかアホ。地球人だったら俺の言葉から連想されるだろうが!自分のことばっか考えることしかできないとは愚か者の極致だな!勝手に死ね!ああもう!同郷だと思って情けをかけた俺がバカだったよ!余計な時間食ったな!くそったれが!」


 タケシと先代の懇願の叫びを尻目に、独りごちるミノルであった。


 ◇◆


 途中で龍化させ、音速飛行へと移行をしたミノルは、2時間後にアドラ首都近郊へと到着する。

 魔力や気配を完全に遮断して、勇者に気配を感づかれないように潜入しようと、手前で変身しようとも思ったが、それでは距離があって徒歩などでは城門まで時間がかかりすぎてしまう。

 タイムリミットが近づく中、もはや叶わないと決心したミノルは、強行突入を実施することに計画を変更したのだった。


 既に目視で確認されたのだろう、城壁にはバリスタや、大砲、そして現代兵器の携帯型地対空ミサイルを構える人族や対空砲が数門見えて、それがミノルに向けられており、射程に入ると一斉に射出されて命中するが、すべて弾き返すか、爆発しても傷一つつくことがなかった。


「くそ!化け物め!新兵器の”すてぃんがー”が効かない!」


 アドラ兵は対空砲を一生懸命に打つが、ほとんどが避けられてしまい、命中しても少しよろける程度しかなかった。


「ミサイルと対空砲がドッチボール当たられた程度だな。据え置き型でこうなら、自走式の威力が高い奴はどうなるのかな?後でヤーノに聞いてみよう」


 ミノルは極力アドラ兵の抹殺は行わず、自身の防御力で攻撃を受けるだけにして、城壁をそのまま突破するが、外郭の壁より内側で女神の強力な力による結界内は、質量軽減と浮遊が霧散してしまい、羽だけでは飛ぶ事が出来なかった。


「やはり無理か、このまま落下すると被害が大きくなるな」


 ミノルは龍人モードに変身し、そのまま落下して地面が近くになると、エアクッションの概念で作った魔法を展開して着地をした。


「どれ?ドラゴニュートモードはどうかな?」


 ミノルは試しにドラゴニュートモードに変身してみたが、リュセフィーヌに聞いていた龍化の時に襲われる強力な脱力感もなく、龍人の時よりも力強さを実感できたため、そのままの姿を維持して〈身体強化〉〈索敵〉を展開し、アドラ城門へと走りだした。

 城へと向かう途中で早速、索敵に引っかかり、こちらに向かってくる個体を感知したが、気配は味方を指していた。


「古龍様!私達はフェリエ王国諜報部の狼人種で、ウォルフ氏族の者です!」


 人間の外見をする男性2人にミノルは狼人種の気配を感じていた。

 しかも、人族でいくら強化しても追いつけない時速50km/hのスピードで走るミノルに並走している為、人気の無い所に移動しミノルは立ち止まる。


「首都に間諜が入っているのは聞いていたが、初めて会ったな。しかも外見が人族と変わらないとはすごい。魔法も熟練者レベルですね」


「ありがとうございます。早速ですが、今朝届いたばかりの報で、ミノル様が来ることを知りました。しかも越境門などというふざけた事をしようとする事も知りました。さすがに私達でも気付く事が出来ず、申し訳ございません」


 見事に人族に化けているウォルフ氏族の男性2人とミノルは、諜報部でも知る事が出来ないほど情報統制がされている事、門も建設して、大規模魔方陣を展開するのであれば、城の敷地内にある室内練兵所が一番怪しいと首都の地図に印をつけていく。


「ほかにありえそうな場所はあるか?」


「一番確率が高いのはやはり練兵場ですね。直近の数か月で大きな工事をしている場所で、情報統制がしやすい所です」


「わかった、ありがとう。反射の護符は配布されているのか?」


「はい。ですが数が足りなく、全員までは…。しかし私達は死を恐れておりません。私達の事は気にせず、心置きなく戦ってください」


 フェリエ王国には配布が終わったらしいが、各地に散らばる間諜には渡し切れていない事をミノルが知ると、魔法袋から護符を出して狼人に手渡す。


「こっこれは!ミノル様!ありがとうございます!」


「230枚あるが、200は渡しておく。これで足りるか?余ったら奴隷達にも渡してくれ。っと!そろそろこの辺りもまずい。俺が引き付けるから頼むぞ」


 ミノルは近くまでアドラ軍が近づいてきていることに気が付き、地図を受け取って2人と分かれる。

 狼人から「御武運を!」と祈られ、右手を振りながら大通りへと走り去っていくのであった。


「いたぞー!」


 大通りに出ると、アドラ兵がミノルを見つけると、剣を抜き切りつけてくるが、それを受けては拳で剣を砕くと、そのまま蹴りを入れて兵を吹き飛ばす。

 アドラ兵は飛んできた味方に巻き込まれて、ミノルを囲んでいたところに隙間ができた。

 

「くそ!鱗に傷がついたな。やはり力や身体のスペックが半減しているんだな。多勢に無勢だし、いちいち相手にしていたら時間がもったいない」


 つい先程まで最強の防御を誇っていた鱗が、鋼の剣で少し傷が付いてしまっており、舌打ちをしながら空いた隙間を通り、場内練兵場へと走り出すのであった。


「敵は城へと向かっている!城門を固めろ!あとは私に続け!場内の近衛たちにも連絡を忘れるな!」


 軍の連絡係は遠距離会話用の魔道具を使い、各隊に連絡をする。

 城への道にバリケードを張り、銃を構えるアドラ兵を躱しながら移動を続けるミノルは、悪態をつきながらも着々と城門へと近づいていくが、要所要所で編成されていた鉄砲隊に先頭を余儀なくされていた。


 ミノルは、1人でも多く反射魔法のターゲットとなる人族を残そうと、戦闘を避けていたが、城へと直線距離で500mと近づいた時には、かなりの人数が城壁外周と城門で待ち構えており、フェリエの間諜にも影響は出るが、仕方がないと腹をくくった。

 ミノルは城門のある大通りへと出て、待ち構えていたアドラ兵を見ると、ありったけの殺気と威圧を込めた気を四方へと飛ばす。

 

「あ、ああああああ、あああああああ!」


 ミノルの気に当てられた兵達は気絶をするか恐慌状態となったのである。

 ミノルはなおも殺気を放ちながら近づき、城門へと走り出すと、蜘蛛の子を散らしたように四つん這いになりながら逃げまどい、彼を攻撃する事もなく、疲弊を上げるだけであった。


「おおらああああ!!!」


 ミノルは走った勢いそのままに城門に飛び蹴りとすると、爆発物でも仕掛けられたかのように、轟音を立てて大きな門が吹き飛び、扉は50m先まで飛んで行ってしまった。


「こっちだな!」


 ミノルは再び地図を広げ、練兵場がある方向を確かめると走り出す。

 途中には転移時に来た召喚の間がある別宮があり、念の為に調べようと扉を蹴破り中へと入った。

 大広間へと進んだが、魔方陣も門もないことを確認すると、そのまま練兵場の方向へと別宮の壁を破壊しながら走っていく。


「あった!あそこだ!ここまできてようやく気付くなんて…強力な〈隠匿〉展開されているな」


 進む先に練兵場と思われる大きな建物が見えてきたが、古龍の力をもってしても、100m位まで近づかないと、周囲の空間と地面に不気味にうごめく魔素に、気付く事が出来ない事に驚くミノルだった。

 越境門破壊と魔方陣の破壊を実行しようと練兵場へ近づくミノルに、突然左右から数百にも及ぶ光の矢が自分に向かって降り注ぐ事に気づくと《霧散》を展開し、光の矢を全てキャンセルさせた。


「いやあああああ!!!」


 光の矢に紛れていた一人の戦士が槍を構え、ミノルへと襲い掛かってきていたが、ミノルは左手で槍を払うと、後ろ回し蹴りで戦士を蹴る。

 しかし戦士はミノルの左足による蹴りを受けるが、そのまま足を抱えてドラゴンスクリューを左足にお見舞いする。

 ミノルも咄嗟に一緒に回転し、技を受け流して戦士から足を外すと、そのままバク転で間合いを取った。


 目の前には黄金に輝く槍を構え、銀色に鈍く光る鎧と身に纏った女性が立っていた。


「勇者だな?」


「アドラ神聖公国勇者、木村きむら美結みゆだ!儀式の邪魔はさせない!」


「よほど大量虐殺したいようだな?そこにもいるんだろう?気づかないと思ったのか?」


 右にある茂みから紫のローブを着て、左手には琥珀色の透明な水晶で出来た杖を持つ魔法使いらしき女性。

 正面の練兵場の入り口から、金色に光り装飾や宝石が埋め込まれており、頂点には翼を広げた女性らしき彫像が付いた両手に持ち、純白のローブを着た女性。

 その右隣には銀の鎧に金の装飾を施した鎧を纏い、金色の幅広の剣身に女神を模した彫刻、柄は翼を広げたような形をして中心に真紅の大きな宝石がはめ込まれた剣を持った男が立っていた。


「アドラ神聖公国勇者、吉村よしむら由紀ゆき。ドナクレアの魔龍よ死になさい」


「アドラ神聖公国勇者、吉田よしだ佳央莉かおりです。結界を張りました。これ以上、越境門には近づくことさえできません。覚悟してください」


「アドラ神聖公国伯爵、勇者序列1位のしんじょう英雄ひでおだ。お前の負けだ魔龍」


 3人の女勇者はミノルのことを睨みつけていたが、目の前に立つ勇者ヒデオはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ余裕の表情を浮かべていた。


「ようやく猿山の大将が現れたな。有利な状況でしか戦えないヘタレ勇者め」


 4人の勇者を見ながら構えなおすミノルは、ヒデオに向かって罵倒するのであった。




最後までお読みいただきありがとうございました。


次回も楽しみにしていただければ幸いです。


次回は近日中には投稿します。よろしくお願いいたします。

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