表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/106

慌ただしくもヘティスハーク王国

お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます


かなり遅ればがらも、お待たせしました。


拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。

「…」「…」「…」「…」


「「……」」


 静かだな…ついさっきまで和気わきあいあい々と会話があったのだが、あの会話で、急に静かになってしまって誰も話そうとはせずに朝食を黙々と食べている。

 俺から何か話そうと思っているんだが、ネタが何にも浮かばなくて、黙って食べるしか方法がなかった。


 ◇◆

少し時を遡る――


「しかし、妾も気付かなかったの。まさかトーグレ家の御息女とは…」


「リュセフィーヌ様を謀るような真似をしてすみません。あれは我が家に伝わる固有魔導で姿や気配、魔力波動まで変化させることができるのです。名称は《擬態》と言って古龍の持つ直感力でさえ、私達の正体を突き止める事が出来ません」

 

 リューはその能力に感心しており、アリスさんがそれに答える。


「さすがは隠密能力に長けた一族ですね。フェンリル種の鼻でさえも嗅ぎ分ける事が出来ませんでした。今は古龍独特の匂いがしますもの。間近で体験すると感嘆の一言よ…」


「ありがとうございます。妖狐種のすべてを見通す"魔眼"ですら看破は出来ません。こうして我が家は情報を制する事が出来たと自負しております」


 セレスさんも驚きを隠せなかったらしい。

 ってか、古龍の匂いってどんな匂いなんだろうと、俺は思いながらリアさんの言葉を聞いていた。


「それよりも、どうして正体を隠してまで私達に近づいていたのか気になるわね?」


 久しぶりに見る真面目モードのアディが2人に疑問に思っているようだ。

 少し目が座っていて、ちょっと怖いが、雰囲気からするとおおよその見当はついているみたいで、口元が緩んでいるのが見える。


「それは…高祖父からの指示でしたので、私達にも分からないのです。急ぎヘティスハークへ赴き、リュセフィーヌ様とその一行に付き従えとしか…」


「メンへスト殿か……」


「ふ~ん。まあ、今日のところはそれくらいにしておきましょ」


 アディの質問にリアが答えるが、どうやら御隠居のメンヘスト・トーグレ氏が何か知っているようだ。

 アディはやはり何かに、気付いているらしく意味深な返事をしてそのまま食事へと戻ったのであった。


 ◆◇

時は戻る


「ああ、そういえば、朝になってからと言う事だったけど、俺はどこに向かえばいいんだ?」


「おお、そうじゃったの。それでは―――」


 スープのお代わりを貰ったのをきっかけに話を切り出すと、リューは答えていく。

 アリスさんとリアさんはそれぞれ魔大陸皇帝、つまりファンタジーでいえば魔王の所へ事態の説明に行くとの事。

 理由は皇帝とリアさんが、顔見知りで古龍ということもあり顔パスで門を通過が可能で、謁見の順番を素っ飛ばしで謁見が可能であった。

 アリスは氷河にある実家へ知らせに行く事と、魔大陸はトーグレ家にとって庭のような感覚で、魔大陸全体に一族に従う眷属達が満遍まんべんなく散らばっており、情報の伝達が早いので魔大陸は任せてほしいと立候補してきたからである。


 アーデルハイドはセレさんとフェリエ王国とその北方を領域とするパールグア家に、そして俺はヘティスハーク王国と北方を領域とするヘラズグア家に知らせに行く事となった。


「妾は実家のドナクレア島へ向かい、結界準備に入るの」


 リューはドナクレア島に向かう事を決意していた。

 

「リュー、1人で行くのはやっぱり…」


「それは昨夜話をしたではないかの。大丈夫じゃ。ユウキの阿保がおるのは分かっているがの。今は民を救うのが最優先だの。心配はいらぬ、もう油断はせぬ」


 俺はリューがもし結城と出くわした時に、冷静でいられるのだろうか?

 狡猾な結城の事だ、少しの隙をついてリューが怪我でも負ってしまったらと心配してしまうが、彼女は笑いながら大丈夫と答えるだけだった。


 ドナクレア島の南部の中央に位置するリューの実家には、ドナクレア島をすべて囲むような大規模な結界を張る事が出来る式が備わっており、それを今回の魔法陣へと書き換えることにより、ドナクレア全体を守ることが可能だそうで、元々大気中の魔素が非常に濃いドナクレア島ならではの防御陣であった。

 もちろん、古龍としての膨大な魔力と”魔”の司を持たねば、起動は出来ない。


「ミノルさん、大丈夫です!姉様には私がついていますし、私がレーダーとして役目を果たしますから!」


 リューの隣に姿を現したセリナが、俺に安心させようと諭してくれる。


「わかったよセリナ。リューの事頼んだよ」


 セリナは胸を張りながら「任せて!」というのだった。


 ◇◆


「ミノルさんも人が悪い。まさかセリナ様までいらっしゃったとは驚きでしたよ」


「そうね~リューちゃんも~とっても~嬉しそうだったね~」


 ミノルとアーデルハイド、セレスティアはヘティスハークとフェリエがあるゴラス大陸に向かって飛行していた。

 長距離の移動において古龍の飛行速度は、どの龍族よりも早くこのような非常事態においては、何よりの機動力であった。

 ミノルは空気の膜を円錐型に形成し、さらに抵抗を軽減する膜で覆って空気抵抗を極端に落とすことで、ジェットの概念を使った魔導よりも長時間の展開を可能とさせる事でマッハ3で飛行することが可能となった。

 背中に乗っているアーデルハイドとセレスティアは、重力をキャンセルさせる魔導をアーデルハイドが展開している為、体への負担はなく、のんびりと2人でお菓子とお茶を飲むのであった。

 ミノルとアーデルハイドには、現在展開されている高度な魔導を、同時に長時間での展開は無理で互いに補って飛行しているが、リュセフィーヌにとっては造作もないことなので、羨ましく思うのであった。


「それでも~速いわね~1万3千kmが~たった3時間で~ついちゃうんだもの~」


「あ、ヘティスハーク王国が見えてきました!久しぶりに帰ってきましたね」


 空気抵抗や重力という概念はフィーグルの世界にはあったが、それを応用した魔法は存在していなかった為、セレスティアは驚きを隠せないでおり、朝に魔大陸を出たのに昼前にはフェリエに到着するとは今でも信じられずにいた。


「それじゃあ、落とすからね。頑張って!」


「ミノルちゃんもね~」


「お世話になりました!頑張ってくださいね!」


 ヘティスハークからフェリエのヴォルシナまでの距離は4千7百kmあり、ミノルは展開魔導に魔力を込めて2時間は消滅しないように固定し、アーデルハイドに渡し、円錐膜を引き渡すとミノルは手を振りながら別れ、落下していくのであった。


「ふー。あとは着地のみだな。みんなも頑張ってくれよ」


 ミノルはリュセフィーヌ達の健闘を祈りつつ、高度5千からの自由落下でどんどんと近づいてくる景色を見ながら、以前着地した王城隣の広場へと近づくと〈浮遊〉を展開し、先日の失敗を糧にゆっくりと着地すると、既にヘティスハークの近衛兵が槍を構えて待ち構えていた。


「おいおい待ってくれ、俺に名前はミノr――」


「失礼しました!古龍様に向かって刃を向けるなどあってはならない事!私の首をもって――」


「まてまてまて!良いから!そんなこと気にしなくていいから!その剣をしまいなさい!」


槍を構えた兵士に、自ら名乗ろうとした途中で、ミノルが古龍だと気が付くと、信仰対象に向かって刃を向けた非礼を武人としての矜持から、命を以て謝罪しようとした近衛を慌てて止めるミノルだった。


「は!有難き幸せ!それではミノル様、本日は何用でいらっしゃったのでしょうか?」


「本日は火急の用があってまいりました。形式など不要です。急ぎ陛下との謁見を御願い出来ますか?」


「かしこまりました!陛下に伝えますので私の後についてきてください」


 ミノルは堅いなあと思いながら小さな溜息をつくと、、先に走っていった近衛を見ながら龍人モードに切り替えて、後をついていくのであった。


「よく来たミノル殿、久しぶりですな。古龍殿の頼みとあらば、謁見予約などごみ箱に捨ててしまえば済みなすのでな!はっはっはっはっは!」


「セルディス陛下…それはさすがに……ってそれはともかく、魔大陸での経緯をお聞きください」


 セルディス王は「ふむ」と言ってミノルの話に耳を傾けるが、要点に近づくにつれてか表情には驚きと怒りが籠ってゆくのが見える。

 そしてミノルの話が終わると、握り拳を玉座の肘掛けに叩きつける。


「おのれ人族め!ぬくぬくポカポカ、若い婦女子をキャッキャウフフしていたいと言うのにどこまでも卑劣極まりない!ヘントセン!備蓄の魔力石を吐き出せ!すぐに作業に取り掛かるのだ!」


「旦那様……」


 ミノルは見た。

 隣に座っているヒューリ王妃は半目で睨み、テンベルト王太子、エリュシュラ姫が眉をハの字にしながら王様を見ている姿に、多分前半のキャッキャウフフに反応したんだなと思うのだった。




 少しばかり王妃に連れられて、王は控室へと連れられて行った後、頬に紅葉と引っ掻き傷があったが、誰一人としてツッコミは入れず、指示された作業に没頭する姿ばかりであった。


 大規模魔法に対抗する術式と製造方法について記載された書類を複製したワイバーン兵は、魔力石とレシピを持って次々と王国内の街や村へと飛んで行った。


 まずは"〈抵抗〉か〈レジスト〉のスキルもしくは魔法展開可能な能力をを持ち、中の上以上の魔力持ち"に関して、王国内にある街や村では、住民票のような1人1人の情報があり対応が可能であった。

 次に前者で述べた、それ以外の住民に対しては護符を作成して常に携帯する事を義務とさせた。


 作り方だが、スクロールや護符に使用する魔法を封じ込める事が出来る薬草の搾り汁を混ぜた水を沸騰させながら粉状に砕いた魔力石を入れて2時間煮込む。

 そして粗熱を取った後、紙を溶液に3時間浸す。

 浸した紙を乾かして、30cm×10cmに切り取った紙に粉状に砕いた魔力石と先程の煮汁でドロドロに溶いたインクで魔方陣を描いた後に乾燥させれば完成。

 煮込みと浸す時間は短縮できないが、乾燥は短縮出来るので風と火を同時展開できる術者で可能であった。


「いやあ、ミノルよ。此度の情報は非常に助かったよ」


 ワイバーン便でミノルが王城に来ていることを知ったパーパド王子は、互いにマブダチ宣言していたのが原因なのか、守備体制の国境砦を飛び出しミノルとの再会を喜びつつ、感謝を述べるのであった。


「いや、フィーグルの民を救うのが古龍としての使命ですから。しかし大丈夫なのですか?砦ほっぽってこちらまで来てしまうなんて…」


「いやいや、それでも助かるよ。それでこれから北方の古龍様に行くんだろ?砦に関しては、最近アドラが攻め込んで来なくなったからな。もし来たとしても、副官で対処できるからな!はっはっはっは!」


「あたたたた。私こそ殿下に会えて嬉しいですし、光栄です」


 豪快な笑いをしながら、ミノルの背中を叩く王子にミノルは答えたのであった。

 

「うむ!王国は任せてくれ!もう旅立つのだろ?父上には私から報告をあげておくよ。また会おう!」


「ありがとうございます!それじゃあ頼みます!」


 対抗魔法の普及が行き渡ることを確信したミノルは、パーパド王子と近衛が見送る中、龍化すると飛び立ち、後ろを振り向いて王子たちへと手を振ると、ヘラズグア家へと向かうのであった。




最後までお読みいただきありがとうございました。


次回も楽しみにしていただければ幸いです。


次回は本日中を予定しております。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ