ミノルと勇者と女子会②
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投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
「なんでだよ…。なんで、たった一匹の竜人如きに手も足も出ねえんだよ!」
勇者鈴本宏は愕然としていた。
夕べも夜遅くまで兵達と飲み明かしており、眠い目をこすりながら朝礼に出ていた。
まさか学生の時のように、朝礼に出なければいけないとは思いもよらず、悪態をつきながらも幹部の列に並んで訓示を聞いていた。
自身も商人とは言え勇者であり、公国の貴族であり、アドラ軍へ籍を置くものであったし、あのお堅い司令に従う一将校でもあるから、朝礼をさぼった日には御小言が小一時間続けられる為、渋々ながら出席していたのだった。
元々自身の持つスキルは戦闘向けではなく、レベルが上がっても戦闘スキルは取得できなかった。
商人として必要なスキルばかり増えてしまい、扱いに困った上層部が、特権商人の地位を与えて他の国や、公国貴族への専門武器商人として役目を与えていた。
しかも、先日の第2次地球派遣要員として地球の事情に詳しく、商人スキルを使い自国に有利な条件で取引へと持って行く事も出来たし、侵攻先での戦利品を見極める能力も大いに買われていたのだった。
そして訓示が続く中、放送の最中にスピーカーの向こうから怒号や悲鳴と言った声と、爆発や剣戟の音も聞こえて来ており、何事かと思っていると、ヒロシの視界の先、自軍後方でも悲鳴等が飛び交い始め、人がまるで枯葉の様に空中へと舞っており、戦闘が始まっていた。
朝礼の最中であった為に、火縄銃は持っているが準備ができておらず、しかも至近距離であった為に兵士達は剣を持ち戦っていた。
かろうじて離れていた部隊の一部が発射準備が整い、攻撃を仕掛けるが、敵は全く防御体勢を取る事なく次々と見方を倒していたのだ。
「新兵器部隊!前に出ろ!」
呆気に取られていたヒロシよりも先に動いていた東エリア責任者の連隊長が、今回試験運用で持ち込んでいたアサルトライフル所持の200名と、ロケット弾及び、グレネードランチャー装備隊の50名を配置につかせ、連隊長のそばにいるⅯ2が2基構えており、号令を待っていた。
「よし!撃てー!」
笛が吹かれると兵は引いていくと、なんと敵は武器を持たない竜人1匹のみで連隊長もヒロシも驚いていたが、号令の下、一斉に撃ちだされる。
最初はロケット弾とグレネードで雨のように射撃される。
「やったか?」
さすがにひとたまりもないであろうとヒロシが呟き、煙が収まるのを待っていると左から何かが飛び出して来ると、M16を構えていた兵達を肉塊とさせて、辺りにばら撒いていた。
「なんだと!勇者ヒロシ!あの兵器は1発で爆裂魔法と同等の効力を持っているのではなかったのか!?」
「そんな馬鹿な…対戦車ミサイルもグレネードも効かないなんて…もしかして…」
連隊長はヒロシへ質問するが、ヒロシは顔面を真っ青にさせながら、何かぶつぶつと呟いていた。
「あー痛て。この馬鹿たれどもが…。また鎧がボロボロじゃないか。せっかく作り直したのに2日しか保たなかったぞ」
ミノルは自分の鎧を見ながら文句を言っていた。
身体は傷が無い様で、燃えた煤と埃が付着しているのみで鎧をキャストオフさせながら、汚れを叩き落しながら体の様子も診ていた。
「さて、と。あそこにいるのが勇者だな?他には…っつ!いたたたたたた。痛い痛いって!」
最前列にいた勇者1人を確認すると、周囲にも勇者が潜んでいないか確認していると、今度は銃による攻撃が始まり、ミノルは眼だけに20層を圧縮したピンポイント障壁を展開して、再び殲滅作業へと注力を始めた。
痛いと言っても、ミノルにとってはシャーペンの先で突かれた程度の痛みだが、立て続けに来られると意外に痛いなと感じていた。
ちなみに、先程受けていたロケット弾とグレネードだが、人間の時にグーで殴られた暗いの痛さなので、彼が地球で体験した死に至る痛みに比べれば、なんて事は無かったのであった。
奥から放たれているM2重機関銃とM16の掃射により、走りづらくはあるが、次々とアドラ兵を淘汰してゆく。
「あ、ああ、ああああ!無理だ。やっぱりあいつ古龍だ!芝が言っていたドナクレアの魔龍だ!」
「なんだと!それでは勇者ワカコの言っていた事は本当なのか?ではコーワンの駐留軍はやられてしまったという事か?」
「しらない!僕は知らない!ああ!早く逃げないと!そうだ!転移の魔具!」
ヒロシは叫びながら首に掛けていた〈転送〉の魔道具起動させる。
しかし時すでに遅く、敵と倒しながら迫っていたミノルがヒロシの目の前に立ち、魔道具を取り上げると、赤く光っていた魔石が光を失い、起動がキャンセルされてしまった。
「おい、お前日本人だな?勇者だろ?聞きたい事がある。無駄な抵抗はするな」
目の前に立つミノルを見て即座に逃げようとしたが、襟首を掴まれ持ち上げられてしまい、ぶら下がった状態になる。
左を見ると腕で心臓から背中へと、手刀により突き通されて死んでいる連隊長が、力なく手足を垂れ下げながら持ち上げられていた。
「う、うわあああああああ!しんでるうう!」
「五月蠅い黙れ」
ミノルはヒロシに、冷ややかな視線を送り命令すると、力いっぱい地面へ叩きつけてから、左腕に貫かれた連隊長を引き抜き、後ろへふり返り、連隊長の頭を掴み頭上へと持ち上げてアドラ兵達に見せつけた。
「貴様らの指揮官は死んだ!既に他の地区も我々の仲間が制圧した!死にたくなかったら武器を捨てて投降しろ!拒否の場合はそこらに散らばっている、仲間の様になると思え!」
アドラ兵は周囲を眺めてみると、確かに西と南、そして司令部のある北にも煙が上がっており、ミノルが言った事と同じ内容の放送が、リュセフィーヌの声で流れており、自分達は敗北したのだと認識すると、剣や武器を捨てるものがちらほらと散見されだした。
『まだだ!我々には勇者がいる!まだ負けてないぞ!』
リュセフィーヌの放送の奥から、アドラ兵が発したであろう声に希望を見出したのか、地に置こうとした剣や銃などを握り直し、兵たちの目に活気が戻るのであった。
「やれやれ、では勇者の敗北を見せるとするか」
遠巻きに武器を構える兵を尻目に再び勇者に向き直すと、ヒロシは右手に〈貫通〉と〈威力増大〉の魔法を勇者みのりから付加して貰っていた弾丸が込められたM203グレネードランチャーを装備させたアサルトライフルを構え、左手にはミノルに向けて何かをかざしていた。
「勇者が命ずる!強制力を以って契約と制約を約定する!”私への攻撃を禁ずる。そして私を開放しろ”」
勇者ヒロシは空中に文字を書くと光の文字が浮かび上がり、それがミノルに向けて飛んでいくとミノルの胸に焼けたような音を立てながら文字が彼の胸に書き込まれた。
”約定の羽ペン”は女神の力を以って契約させる為、このペンを以って契約書にサインをすると、誓約と同様の作用が働き、互いに破ることができなくなってしまう。
そして強制的にも出来るが、かなりの効力が失われれてしまい、解呪可能な呪い程度の効果しかなかったが、ヒロシの持つ”交渉術「極」”と”誘導”そして”話術”といったスキルをフル起動させながら、強制契約させると、通常に近い状態での契約が成立するのであった。
胸に焼き付けられたミノルはヒロシを睨んで、そのまま動くことがなく、立っているだけであった。
ヒロシは頬を吊り上げながら「よし!」と声を上げてミノルへと近づいていく。
「どうだ僕の力は?戦闘力がなくても1対1ならば負けることがないんだ。体はだめでも口の中とか体の内側からだと、お前も無事では済まないだろうな」
ヒロシは銃口をミノルの口内へと突っ込むと「ぐっ!」と声を出すミノルへそのまま連射モードで銃弾を撃ち込んで、弾切れと同時にグレネードランチャーも打ち込み、ミノルの頭部が爆発したのであった。
「ははははは!やったぞ!魔龍を正面から、卑怯な手を使わなくても殺す事が出来た!あはははははは!」
ヒロシは勝利を確信し、立ち尽くすミノルの脛を蹴飛ばし高笑いをするのであったが、ふいにミノルの右手が動き彼の襟首を掴む。
ヒロシは驚き、後ろに下がろうとしたが襟首を掴まれており、逃げる事が出来ない。
爆煙が去ったミノルの姿を見ると頭は無事であり、口からはまだ少し煙が漏れていた。
「ね?なぜ生きている?ドラゴンってのは口とかが弱点じゃないのか?」
「ぺっぺっぺ!……てめえ、何の物語を参考にしてやがる?ったく熱いし痛いし覚悟しろよ?」
ヒロシの問いに答えるミノルは、左手で胸を払うとガラスが割れた音を立てて、焼き付けたはずの文字が砕け散って行き、口からは弾丸が吐き出される。
そして手を振りかぶると、ヒロシの頬を往復びんたを何度もくらわすのだった。
「そんなチンケな呪いなんぞ効くわけないだろうが!弾丸に何か付与されていたな?油断さえしなければ勇者に負けるわけがない!不意を突いたと思ったか?龍の気配読みなめんなよ!」
「ぶべべべべべべべべべ!もう!やめ!ぶべべべくだ!さいぶべべべべべべべべべ」
ヒロシの懇願にミノルは「ふんっ」と鼻を鳴らしビンタをやめて地面へ投げ捨てる。
「あーくそ!まだ口中がジンジンする。………それじゃあ聞くぞ?お前、どこからこの武器仕入れた?武器供与の見返りは何だ?洗いざらい吐けよ?ほら!アドラ兵も!勇者は負けたぞ!武器を捨てろ!死にたいのか!」
ミノルが兵達に向かって叫ぶが、すでに武器は捨てていた。
勇者が攻撃を仕掛けたと同時に、ミノルへと向かってきた兵達は、ミノルの放った超高圧縮空気弾により、爆散しており、2百名ほどが肉塊となっており、それを見た兵達はミノルが死んでいないことを自覚すると、武器を捨てて膝立ちになっていたのだった。
◇◆
「さて、今度は誰から掛かってくるのかしら?貴方?それとも貴方かしら?」
セレスティアは何故か仰け反りのジ〇ジ〇ポーズをとり、ミノリとワカコを交互に指差しながら訪ねる。
リュセフィーヌ達の戦いも、近代兵器と現代兵器、そしてミノリの範囲効果のある補助と付与魔法を展開、
ワカコの魔道を駆使した戦いもリュセフィーヌには全く効く事が無く、今対峙しているセレスティアにも歯が立たなかったのである。
しかも前回の教訓から、現代兵器には勇者ヒロシが使用した物と同様の付与魔法を施した武器を使ってである。
リュセフィーヌもセレスティアは現代兵器が効くのではないか?と、思って注意しながら戦っていたが、ほとんどが躱されてしまい、当たっても負傷する事は無かったのである。
まあ、多少は効いたと言うか、毛が少々焼き焦げてしまい、彼女を怒らせてしまったことは言うまでもない。
「ダメ…ミノっちの強力な付与があれば、なんとかなると思ってたけど、まさかフェンリルまで出てくるなんて…勝てないよ、こんな強いなんて反則よ!」
「ワカちゃん!あきらめないで!勝てなくてもせめて刺し違えても!」
ワカコは前回の戦いで自分達が敵わない事を実感していたが、もしかしたらと淡い期待を持ち挑むのであったが、改めて不可能である事に絶望する中、ミノリはせめてもと挫けそうな心に鞭を打って奮い立たせていた。
「無理ね。私達には勝てないわ。交渉などの時には相手にも敬意を払って同じ姿を取るけれど、それさえしなければ私達に勝つなんて不可能なのよ」
「うるさい!この人殺しが!」
勇者ミノリはセレスティアの言葉に激高して対神災用に開発していた魔剣を両手に持ち、あらゆる補助魔法を重ね掛けしながら彼女へと立ち向かってゆく。
「処置なし…か…」
セレスティアは肩を竦めながら、溜息をつくと向かってくる勇者に向かって全力の殺気を放つ。
彼女の放つ殺気で周囲の魔素の密度が一気に高まり、ミノリは全身がまるで凍り付いたかのように動けなくなり気を失いそうになったが、唇を強く噛んで正気を保ちさらに加速してセレスティアに迫る。
「くらえええええ!魔剣秘奥義”落花千斬”!」
魔剣の刀身が高周波を放ちあらゆるものを切り裂く刃となる。
そして魔剣に仕込まれた魔法石が起動し、ミノリの体が光に覆われる。
魔剣に仕込まれた魔法石は、彼女のオリジナル魔法《複製》を、これまたオリジナル錬金術で剣聖、賢者クラスの剣技、秘術を閉じ込める事が出来て、例えクラスが違えども、それを1度だけ行使可能とさせる、まさに勇者たりえるチート技であった。
行使された武技は勇者ミホの最大奥義、舞い散る数百枚の桜の花弁を地に落ちる事も無く、塵になるまで数千の斬撃が切り刻む必殺技であった。
「技の発想は良い。しかし無理ね」
「え?あ?あ…ああ、ああああ!ぎゃああああああ!」
ミノリが剣技を使いセレスティアとすれ違い立ち止まったが、いきなり足を取られて倒れてしまった。
不思議に思い足元を見ると自分の右足が腿から半分なくなっていて血溜りを作っていた。
次に手から痛みを感じたので手を見ると両手の手首から先がなく、セレスティアの足元に剣を握ったままの手が2つと右足が転がっているのを見ると、悲鳴を上げるのだった。
セレスティアは正面から技を受け、それを躱し、弾き、そして反撃。
両手から出ている刃で手を切り落とし、足を切り落としていた。
あまりに素早い彼女の斬撃に、切られた勇者は気付く事なく通り過ぎ、後には切り落とした部位が残るのみであった。
「いやあああ!あたしの手があああ、あしがあああああ、痛い痛い痛い痛いいいいいいい」
激痛が走り、涙や鼻水、涎でぐしゃぐしゃになりながら喚くミノリにセレスティアは近づき、彼女を見下ろす。
「これも戦の習いです。せめてその痛みから解放してあげますね。まあすぐに復活するでしょうが…勇者ミノリ」
そう言うと、右手を首に向かって振り下ろすとミノリは静かになるのであった。
「そこの小娘はヒロシという勇者ではないのか……む?貴様は先日の小娘じゃな?あの2人から聞いた情報では3人じゃったの。では別のエリアにいる隊にいるという事かの?」
根を振り、血を払いながらリュセフィーヌはセレスティアに近づくと、首と胴体が切り離された勇者ミノリを見ながら、独りごちる。
「え?2人って?もしかしてミホとマユは生きてるの?」
「そうじゃが?勇者ミホと勇者マユは生きとるぞ?ミノルが復活で生き返らせたからの」
リュセフィーヌの言葉に、絶望して膝から崩れ落ちていた勇者ワカコが反応し、質問すると彼女からあっさりした返事が返ってくる。
「じゃあなんで殺したのよ!生きていることを知っていればワカちゃんはここまで抵抗しなかったのに!きっと自分も生きるために投降したはずなのに!」
「何を言っておるのだ小娘。神妙に縛につけと言ったのに、問答無用で殺しにかかってきたのは小娘達ではないかの?自分の事を棚に上げるでない」
ワカコの抗議にリュセフィーヌとセレスティアは顔を合わせねがら、処置なしとばかりに肩を竦めながら溜息をつくのであった。
「さて、ほかの兵士達は降参していますね。リュー、どうなったかわかるかしら?」
「卑怯者!人殺し!お前たちなんて地獄に落ちればいいんだ!!!」
セレスティアが状況を確認しようとするが、ワカコの怒りは収まらず、2人に向かって悪態をつくのであった。
「やかましい。自分の都合だけ主張するな。みっともない」
「っつ!……え?あれ?……ごふっ」
リュセフィーヌはワカコに近づき、手刀を心臓へ一突きにすると、彼女はそれを見て呆気にとられる。
リュセフィーヌは心臓を鷲掴みしてそのまま引き抜くと、ワカコは血を吐きながら膝立ちから仰向けに倒れるのであった。
「あほうが、いっぺん死んで反省しろ。アドラに付き従い戦火を広げてフィーグルの民を苦しめた挙句、世界の理まで捻じ曲げおって。ヤーノや勇者エリカのように反旗を掲げれば、まだ救いはあったのじゃ。なに、復活はさせてやる。妾を殺したんじゃ。おあいこで貴様も死んで来い」
「そう、か。えりか、いきて、るん、だ。わた、し、いきかえ、るの?」
「さあの?生き返らせると言ったが、妾の気分次第じゃな。このまま死ぬのも一興じゃな」
「やだ、わたし、いきたい、いき、たい……い…きた…い…………」
勇者ワカコは涙を流しながら”生きたい”と願いそのまま意識を閉じるのであった。
「今代の勇者ってわがままが多いわね?…と言っても人数が多いからそう感じるのかしら?」
「さあの?妾もセレスの考えに同意なのじゃ。程度が激しすぎじゃ」
2人は練兵場の向こうに上がっている戦火の煙を見ながら会話を交わすと「さて」とセレスティアの一言で投降兵を纏めに入るのであった。
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