復讐に燃える勇者と最強種の女子会①
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投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
執筆の指が突然止まってしまい、何も思い浮かばなくなってしまい先ほど完成しました。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
暗かった夜空の東にがうっすらと明るくなり、もう少しで日が昇ろうとする早朝。
ミノル達はボルガノへ門を通らず、城壁から登り街中へ侵入し、中央広場にいた。
すでに卸売り市場は開いていて、飲食や宿を経営する人々の買い出しで、ごった返していた。
ここ中央広場は日が昇った鐘が鳴るまで卸売市場が開かれており、そのあとは露天商や屋台経営者達の広場へと変化する。
「日が昇りきるまで1時間というところかの?みな準備はよろしいか?」
リュセフィーヌの言葉に各々頷き返す。
だんだんと明るくなっている空は雲一つない快晴で予定通りであれば、アドラ軍は鐘が鳴った後、起床して集合、点呼をして夜勤組と交代、コーワン軍残党やゲリラ軍の警戒に入ることになっている。
「それじゃあ~鐘が鳴った後の~点呼の時を狙って~襲撃しましょう~」
アーデルハイドは周りに聞かれないように小さな声で話し、手を数回叩くと全員が各地区へと散開していく。
リュセフィーヌとセレスティアは駐留軍の殆どが集まる代官屋敷の隣にある練兵場へと足を向けていた。
練兵場は近隣にある冒険者ギルドの訓練場としても使われており比較的広く作られていて、魔獣の氾濫等の大人数の招集場所として使われていた。
そこにアドラ軍の主要部隊が集まり毎日点呼を取る事になっていると、情報をつかんでおり向かっていた。
「リュー、今回の立ち廻りは私にやらせてもらえるかしら?新しい身体の擦り合わせと、鈍っていた感覚を取り戻したいのよ」
「む?それは良いが、妾も全力がどのくらいか、この身体の”すぺっく”を試したいでの。少しは残しておいてくれ?」
今回のフェリエの時やコーワンの戦いとフェリエ代表でいた時に於いて、前線で戦う事を経験する事が無かったセレスティアは実に40年ぶりとなる戦いと、フェンリルになった時以外の戦闘用スタイルに慣れて於きたいとの申し出にリュセフィーヌは承諾するのであった。
「ふふふ。大丈夫よ。西門と東門エリア、そして南門エリアに1500づつ敵軍は配置でしょ?残りの主力4000は北の政務エリアなんだもの。いくら何でも私だけじゃ捌き切れないわ。リューにも出番が回るわよ」
セレスティアは楽しそうに笑いながら、彼女にウィンクをすると右手に鞭を持ち、獰猛な笑みへと表情を変えながら練兵場へと歩を進めるのであった。
◇◆
アドラ遠征軍司令は満足していた。
「整列良し!点呼お!」
各部隊の体調が点呼をとる姿をいくつも見える。
本日は週に一度の全体朝礼であり、司令が最後に訓示を述べることになっている。
遠征駐留軍司令は公国貴族の侯爵でアドラ神聖公国の中でも屈指の武闘派で有名な人物であり、代々遠征軍の1師団を任される家柄であり、軍規は我が家の家訓の次に尊重すべきと考える、世間でいえば”お堅い”人物で有名である。
このような大規模遠征による規律は遵守するべきと常々部下達へ言うのであった。
しかし、厳しければ厳しいほど下に行くにつれて隠れて悪いことをしてしまいがちであり、現にコーワンの駐留している戦闘団は、略奪をしていることは言うまでもない。
「司令!魔大陸遠征駐留軍点呼終わりました!体調不良27名いましたが、超過勤務による不良と判明!それ以外はおりませんでした!」
「うむ、よろしい。超過勤務の検討と対策を後ほど行うとしよう」
副司令が敬礼をしながら報告し、それについての返答を返す。
「それでは司令より本日の総評と訓示がある!休めー!」
副司令の号令により少々ざわついていた声も一瞬にして静まり、4000名の踵を合わせる音が鳴り響き、訓示が始まる。
全体朝礼ということもあり、夜勤終了者は睡眠時間が削られる事や、兵站の朝食準備の最中な者達も出席しており、朝食準備が遅れてしまい腹ペコ兵にとっては苦痛であり、ここから30分以上も長い話が始まるのかと表情には表さずに、うんざりするのであった。
しかし、この訓示に関してうんざりするのは兵達ばかりではない。
なぜならば全体朝礼と言う事もあり、ほかのエリアの兵達も付き合わされるのと共に、司令の訓示は街の緊急放送網を使用されるため、大音量で街中に響いてしまい夜の仕事をしていた人達は、眠りについた矢先に突然の安眠妨害に遭ってしまい、この時ばかりは司令以外にとって迷惑この上ない行為だと言う事は言うまでもなかったのである。
しかし今日は違っていた。
司令が訓示を始めてから10分が経過し、彼の舌が滑らかになり始めた時に事件が起こったのであった。
突然、練兵場全体にプレッシャーが襲い掛かり、司令は強い殺気に怯みながらも、何が起こったのかと話を止めて、発生源を探し始める。
すると、兵士達の後方より悲鳴や怒号で騒がしくなり始め、司令に向かって徐々に真ん中から列が割れていき、最前列から最後方までまるでモーゼの十戒のように割れて、その先の中心には竜人と狼人の2匹がこちらを向きながら、歩いていた。
「貴様!何者だ!ここをどこだと思ってい…る?………な!その紋章は!!」
大事な朝礼中にも関わらず、不躾なプレッシャーを放ち、尚且つ規律を乱す行為をする不埒な輩と糾弾しようとしたが、竜人が羽織っているマントの真ん中に大きな紋章がありそれを見た指令が絶句する。
アドラの貴族ならば、古龍が自分たちと同じ一族ごとに持つ紋章があることは知っていたし、ごく最近に自分達によって滅亡させられた古龍の掲げる紋章を忘れるはずがなかった。
「控えい!こちらにおわす方を誰だと心得ている!恐れ多くもフィーグル守護の執行者である古龍であり、ドナクレア島領域守護龍ドイン・ドナクレア様の曾孫にあらせられる、リュセフィーヌ・ドナクレア様なるぞ!」
「ありがとう。そしてもう一つ聞くがよい!妾の隣にいるのはフェリエ元代表にしてフェンリルにその人ありと謳われる一族最強にして無敵の戦士、セレスティア・フェリエなるぞ!」
セレスティアとリュセフィーヌは互いに名乗りを上げると周囲から、どよめきが発生する。
「ドナクレアの魔龍と滅殺の魔狼だと?」
「「来たな!ドナクレアの魔龍!ソノちゃんとマユちゃんの仇!絶対に殺してやる!兵士達、気を確かに持ちなさい〈ブレイブハート〉!」」
指令のつぶやきに続き、勇者ワカコと勇者ミノリがリュセフィーヌと指令の間に立ち、足の竦んでいる兵士達へ勇者魔法の重ね掛けをすると、猛き勇気の心を奮い立たされ、彼らは剣を抜き、槍を構え、鉄砲の準備をして、剣先をリュセフィーヌとセレスティアに視線を向けるのであった。
「ほほう、仇と申すか?では貴様らの行ってきた所業は何とする?フィーグルの民の友や家族をを蹂躙せし行いの数々、妾がしかと見届けておるぞ!勇者とアドラ兵、貴様らは断じて許されん!おとなしく縛につくがよい!」
「「うるさい!だまれ!殺されたみんなの仇!殺してやる!」」
リュセフィーヌのツッコミにも応じる気配もなく、喚きながら魔法を展開し始める2人に、セレスティアは鞭を構えると、リュセフィーヌも棍を取り出し構える。
「やむを得ん!妾の名前は引導代わりじゃ。迷わず地獄に落ちるがよい!!!」
「「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」」
リュセフィーヌの口上に呼応するかのように、アドラ兵達が一斉に襲い掛るとセレスティアは丸めていた鞭をほどき振り回すと、鞭の長さ5mの間合いにいた兵は、悲鳴を上げる間もなく鉄の鎧ごと細切れの肉塊と化し、周囲に飛び散るとそれを見て、血や肉を浴びた兵は一瞬怯んでしまうが、勇者のブレイブハートの効果により、再び兵の士気が上がってゆく。
セレスティアは敵が怯んだ一瞬を見逃す事もなく、鞭へ魔力を流すと青く光り始め、鞭を大きく1回転させて振ると、敵兵は間合いに入っていないはずなのに、更に先の15~20m四方に渡って敵の身体が上下に切り離され次々と倒されていく。
「ほ~~ほっほっほっほっほ!まだまだ行きますわよ!」
鞭を魔法袋に収納すると、両手を胸の前でクロスさせると、刃渡り30cmの刃が、両手に4本づつ手甲から飛び出す。
セレスティアは地面を蹴りアドラ兵に飛び掛かると、1人また1人と彼女の圧倒的な強さの前に倒されて行く。
アドラ兵も負けじと剣で切り付け、槍を刺し込むが、フェンリル種の丈夫な体毛と皮膚に阻まれて傷一つ付ける事が出来なかった。
更にセレスティアは口から、ドラゴンブレスの様に吹雪を吐くと、それに当てられた兵は一瞬にして凍り付き氷像となっていくと、追撃とばかりに襲い掛かる彼女の蹴りによって粉々に砕けてしまう。
また、彼女の頭上には常に20本の氷の槍が発生していて、それを連続で何本も射出して、氷像の難を逃れた兵達は、串刺しにされてしまっていた。
「あははは!体が軽い!魔力の強度も、魔力総量も人狼モードよりも高くて申し分がないわね!リュー!ありがとうね!」
セレスティアは敵を屠りながら、今のスタイルに大いに喜び、リュセフィーヌへ感謝するのであった。
「くそ!くそ!くそおお!なんで当たらないのよ!素早すぎて当たらない!」
「この!この!」
勇者ミノリと勇者ワカコが魔法師同志による魔法力と魔力総量、威力、魔法クラスアップが出来るスキル”ユニゾン”を行使して、セレスティアに強力な地水火風の各属性魔法を放ってはいるが、残像を残そうかという素早さで動いており、魔法を当てることが叶わず、誤って味方兵に当ててしまう失態を犯していた。
「勇者!いくわよ!」
セレスティアは大多数のアドラ兵を倒していたが、目標を変更して後方に下がっていた勇者に向かって叫び、勇者を守るように何重もの肉壁を形成していたアドラ兵を苦も無く次々倒しながら、通常の戦いでは考えられない速度で勇者2人に近づいて行くのであった。
◆◇
「おーおー。セレよ、まるで雑草を刈るかのように勢いが良いの。と言っても雑草ではなく雑魚であったの」
リュセフィーヌは彼女の戦う様子を見ながら感嘆の声を上げる。
しかし、リュセフィーヌも負けておらず、戦闘開始と同時に彼女とは反対方向に飛び出し、敵を屠り続けていた。
「なるほどの。刃は付いて無くともこの力で振ると斬れたかのように倒せるの」
彼女も手加減なし戦ってみたいとの希望により棍を振ると、軌道が全く見えない鋭い振りとなり、それに襲われた兵達は、まるで刃物で切ったかのようにきれいな切り口で次々と胴体から切り離され、死体の山となって行くのだった。
「おっと、大将首をいただかねばの。こら、逃げるでない」
セレスティア同様に兵を倒していた彼女は踵を返す。
リュセフィーヌの向いていた反対方向へと避難を始めた司令へと進行方向を変えた彼女は、飛び掛かってくるアドラ兵を蹴散らしながら徐々に近づいて行き、遂に司令に追いつくと、背中に蹴りを入れて俯せに倒すと、左足を背中に乗せて押さえつける。
「辞世の句はできたかの?」
「ひいいいいいい!ゆっ許してくれ!私は侯爵だ!公国でも相当の発言力は持っている!魔大陸には手を出さないように進言するから助けてくれ!頼む!お願いだ!」
「……ならば最初から侵攻しなければ良かったのじゃ。将たる貴様が命乞いとはみっともないの。それに、もう遅い」
命乞いをする司令官に目を細めながら、冷たい視線を放つと背中から心臓を踏み潰す。
なぜ私がこんな目に…今まで順調に侵攻が進んでいたのに、突然ローグインが息を吹き返し反撃されてしまった。
援軍はどうしたのだろう?
依頼していた援軍が来てくれて健闘してくれているのだろうか?
志半ばで私は倒れてしまうのか?
意識が薄れていく侯爵は知らない。
ミノル達により援軍は全員捕虜となっており、アドラ公国の軍港は破壊され、追加援軍は困難となっていた事や、コーワンは解放され孤立無援となっていたことに気づかずに意識を閉じるのであった。
後日、裁判と刑執行の為に復活させられ現状を知ってしまい、絶望に淵に陥る中、ヘティスハーク王国と同様の手段で、侯爵でありながらアドラのスパイとして生かされる事になるのはまた別の話としておこう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
次の更新は明日を予定しておりますが、できなかった場合は翌日お昼までには更新しますのでよろしくお願いいたします。