領都開放そして・・・
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お待たせしました。本日の投稿です。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
ミノル達は魔大陸上空をボルガノに向けて飛行していた。
◆◇
翌日、予定通りにローグイン王国軍が南門に集結しており、攻城戦が始まろうと緊張が高まっている中、何事もなかったかのように、あっさりと門は開放されて領都へとローグイン軍は招き入れられた。
領都民は昨日のアドラ軍によるドタバタ劇を見ていて、もしかしたらという期待感を胸に都内は騒がしくなっていた。
あいつら怒らすと何するかわかんねえし、おとなしく家の奥にでも引っ込んでいような?ゲリラ軍がアドラ軍を蹴散らすまで生きていこうぜと、警戒ムードであったが、ローグイン軍が都内のメインストリートを領城に向けて行進するのを見るや、昨日まで息を潜めていた静けさから一変して歓声が起こっていた。
やったぜ!やっぱり昨日の騒ぎはアドラ軍がしっぽ巻いて逃げたんだ!やったぜベイベー!と、歓迎ムードとなって領都は喜びに満ち溢れていた。
「ローグイン万歳!」「将軍様~素敵~」等の歓声に、つい数時間前まで司令や将軍、誰もが決死の覚悟で挑もうと気合充分であったが、戦闘は起こる事もなく門を開放され、そのまま都内へと入ると「よくやった」の歓声を浴びながら「いや、俺達なんにもしてねえし」と気の抜けた表情と「まあ、いいんじゃね?」と言う雰囲気でとりあえず胸を張り、剣や槍を掲げ、大急ぎでローグイン王家とコーワン領家の旗を先頭にして城へと向かったのであった。
軍司令も何があったのかと呆気にとられていた。
昨夜の斥候による報告でも確かに城壁の警戒が随分少ないと受けており、アドラ軍とて、我々が進軍してきているのを確認しているはず。
それなのになぜ……いや、もしかしてアドラ軍は何かの計略をもって敢えて守りを手薄にしているのではないか?と思い十二分と言えるくらいの警戒をもって挑んだのだが、なんとも拍子抜けな状態に、凱旋パレードのような雰囲気の中ほほを引きつらせながら笑顔を作りつつも城内へと入り、領都を開放したゲリラ軍とリーダーであり領主代行のカーラ・ジュ・エリュエス・コーワンと合流し、事の経緯を聞くとようやくローグイン軍の面々に笑顔が浮かぶのであった。
「いやはや驚きました。コーワンと隣国のカイキョーは魔大陸の玄関口。ここを取り戻さねば、アドラの侵攻が止められないので、今回は国を行末を左右する戦役と思い、みな、英霊となることを覚悟しておりました」
「いいえ、私達だけではここまでうまくはいかず、本日は死者が大勢出ていたでしょうね。これも古龍様の加護とお導きがあっての事。そして魔皇帝様と弟君で在らせられるハンバーグ・ダン・エントリウス・ローグイン様の御助力がなければ成功いたしませんでした。父に代わって感謝いたします」
ローグイン軍司令で第1王子のバンズ・デン・エントリウスが「はっはっは!」と闊達だが上品のある笑いをしながら話し始めると、カーラが答える。
浅黒の肌に黒い目と黄金の瞳、ブラウンの髪から出ている角はラッカ羊のようなネジネジとしており、顔は少女漫画に出てくるようなイケメン顔のマッチョメンであんな顔で生まれれば、女子なんて入れ食い状態であろうと思うミノルであった。
その夜、領都はお祭り騒ぎであり、何もしていないがローグイン軍の兵士達はゲリラ兵と互いの苦労を労いながら酒を浴びるように呑んでいた。
その頃、城内ではボルガノに駐留しているアドラ軍への対応について会議が行われていた。
しかし、作戦は至極シンプルでリュセフィーヌとミノル達が先行してアドラ軍との戦闘を開始、遅れて鹵獲した飛空船3隻と今回の運用されている自軍の飛空船4隻にローグイン軍の選抜兵が乗り込んで古龍に続いての戦闘を開始。
一方、地上部隊は準備完了次第コーワンから進軍し先行部隊によって投降された敵軍の捕縛と、周辺に散っていった残党兵及びボルガノの制圧をするという作戦となった。
これには、リュセフィーヌが短期で終わらせたいという意向が大いに反映していた。
「此度の戦いには、今までのアドラ軍が運用していた鉄砲等の兵器よりも、境界越えをして異世界の地球から持ち込んだ圧倒的な殺傷能力を持った兵器が投入されておる。幸いにも妾とミノル、そしてアディの古龍には敵の攻撃は通じんのじゃ。じゃからの?妾達が直接敵軍へと乗り込んでそれを破壊しておく。もちろん勇者もじゃ。今後も強力な兵器がアドラによって投入されるであろう懸念材料は少しでも、一刻も早く摘んでおかねばならぬし、アドラの力を削ぐ材料として、妾達はこの戦役の後、ドナクレアの開放をせねばならぬ。」
「あまり古龍様の玉体を酷使するのはフィーグルの民として好ましくないのですが、仕方がありません。微力ながらではありますが、私達も協力させていただきます。」
リュセフィーヌの提案にバンズ王子が了承すると、明日からの健闘とコーワンの開放にささやかながら、酒宴が開かれるのであった。
そして翌日、ローグイン王子とカーラ領主代行による解放宣言が行われる中、ミノル達はボルガノに向けての準備に大わらわとなっていた。
リュセフィーヌはアリステリアとディーフェリア、セレスティアと数名のゲリラ諜報部員と共に先行、潜入して街の状況やアドラ駐留軍の現状をミノル達が合流するまでに把握する為、すでに飛び立っていた。
「すまないミノル。僕も加わってあげたいんだけど、コーワンの残務と領兵の準備に取られてしまって…。せっかく援軍として来てくれたのに、僕は何にもできないなんて、悔しいな。」
「な~に気にしてんだよ!解放後の仕事だって重要だろ?俺達は力を奮うだけだが、それ以降の事が出来ない。だからヤーノの仕事は俺達の助力になっているんだから気にすんなよ」
ヤーノの謝罪にミノルはこたえ、「すまない、ありがとう」と彼が答える。
「む~!私は~力だけじゃ~ありません~!」
ミノルとヤーノの会話にアーデルハイドは抗議し「すいません」とドナクレア家の頭脳役である彼女にミノルは謝罪するのであった。
「ミノル様!アーデルハイド様!準備完了です!鹵獲用に魔法袋も150ばかり収納してあります。」
以前にリュセフィーヌが避難させていた、ドナクレア島の住民でコボルド種の男性がミノル達に敬礼をしながら報告してきた。
今回拿捕した飛空船や魔大陸への避難民の中には、ドナクレア島の防衛に従軍経験をした人達もおり、志願兵として飛空船に乗り込むことになっていた。
「ありがとう。君達も気を付けて来てくれ。それじゃあヤーノまた会おう!」
「「「「「は!」」」」」
ミノルは準備された3つの魔法袋を受け取ると、領城の広場へと移動し、《古龍》を展開するとそのまま上空へと飛び出す。
「古龍様万歳!」
「古龍の加護の元ローグインに栄光を!」
「帝国に繁栄を!」
飛び立つミノルとアーデルハイドを見た住民達は、より一層大きな歓声を上げて各々喜びの声を挙げるのであった。
ミノルとアーデルハイドはテラスに立ち、こちらに向かって深くお辞儀をするバンズ王子とカーラに右手を挙げて応えると、そのままボルガノに向けてコーワンの領都を後にするのであった。
「古龍様、どうかご無事で…」
「帝国とローグインの未来をお願いします…」
テラスに立つ2人はミノル達の後ろ姿を見ながら呟いたのだった。
◇◆
「リューちゃん達~今頃潜入してるね~」
アーデルハイドは龍の姿で足を延ばしたまま座り込んでおり、ボルガノ方向に視線を向けて呟く。
ボルガノへと飛行していたミノル達だが、途中でコーワンから撤退していたアドラ軍の駐留部隊が野営をしていた所を発見し、急襲していたが、古龍相手には攻撃は何も通じずアドラ軍全員の投降をもって1時間で終了していた。
制圧後、ミノルがセリナの補助による広範囲の〈隷属〉魔法を展開し、"コーワンに踵を返し、領都にて隷従せよ。尚、途中での逃亡は理由の如何を問わず死とする"の制約をさせて、コーワンへと軍が移動するのを確認していた。
「このままだとすぐに合流だったからね。飛び立った時間が、ほとんど2~3時間の差だったし、リューはこの事を見越していたんじゃないかな?」
「かもね~」
投降兵達はテントを畳み、コーワンへと向かう準備が整いつつあった。
「そういえば~ミノルちゃん~体に~何飼ってるの~?」
アーデルハイドの問いに肩を撥ねさせ、恐る恐る彼女を見るミノルに『もう誤魔化し切れなくなってますね』とセリナはミノルの頭の中で呟くと、『仕方がない』と答えるのであった。
アドラ軍が着々と準備をする中、ミノルの肩に姿を現すセリナは御辞儀をしながら、彼女に今までの経緯を話し始め、アーデルハイドは驚きながらも頷きながら、セリナの言葉を聞くのであった。
「リューちゃんの~元妹さんか~。あの子気づいてたよ~「なぜミノルから妹を感じるのだ?」ってね~。黙っていた事は~ちゃんと~謝るんだよ~?」
「わかりました。姉様にはちゃんと謝ります」
「ん~良い子だね~」
アーデルハイドとセリナの会話が終わる頃、アドラ兵達が「準備終わりました」と告げて、コーワンへと行進を始める。
コーワンまでの道では魔獣等の襲撃もあるため武器の携帯を許したが、門前に着けば全て破棄する事も制約の中に織り込んでいた。
ミノル達はアドラ兵達が向かった事を確認すると、再びボルガノに向けて出発したのであった。
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本日もう1話投入します。
投入予定は17時です。
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