勇者 小田みのり
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お待たせしました。本日の投稿です。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
「ワカ!ドラゴンにやられたって大丈夫なの!?マユちゃんは?」
「ミノっち。ごめんやられちゃった。マユユは敵に捕まっちゃったし、ミホが…ミホが!ころされちゃったー!!うああああああああ!」
ここは城塞都市ボルガノの病院で、ワカちゃんがコーワンの戦闘で大けがをして転送で帰って来た事を知らされたので、急いでワカちゃんの病室に来たんだけど、包帯だらけで腕も骨折しているみたい。
でも良かった、命に別条はなかったみたいで…。
私は小田みのり。
8年前にクラスの皆とこのフィーグルに召喚されて勇者としてアドラ神聖公国の元で戦っている。
私も戦争に参加はするが、ほとんどが後方で兵士の装備品である魔道具の調整や修理をしたり、攻城戦で使われる大規模魔法陣の補助をしている。
私の持つスキルは"魔法博士"で魔法を見ただけで理解し、どこのどの部分を弄れば効率や威力が高くなるかが解ってしまう。
そして今まで禁呪とされて制御が出来なかったり、実現出来なかった物まで実用レベルに持って行く事が出来た。
もちろん魔法の派生である錬金術も全て理解できて、両手で数える位しか居ない上級錬金術師と同等の力を持っていて、現在兵士さん達が使っている〈能力強化〉や〈疲労回復〉〈武器強化〉〈防御強化〉といろいろな補助ができる魔道具も私が開発したものだ。
「そんな…マユちゃんが捕まっただなんて…嘘でしょ?ねえ、嘘でしょ!」
「ごめんなさい!ごめんなさあああい!あいつ等ミノっちが開発してくれた対龍魔道も通じなくて、どんどん追い詰められて魔力もなくなっちゃって!どうしようもできなかった!誰も助けられなかった!逃げるのもギリギリだったの!ごめんねええええ!うわあああああん!」
私は目の前が真っ暗になってしまった。
向かいの家に住んでいて、小さい頃からいつも一緒で私の大切な友達。
前線に立つ事も出来ない私に代わって、いつも助けてくれた葉月真由ちゃん。
「ぐすっ…パパとママに会いたい…おうちに帰りたいよマユちゃん」
「もう、泣かないで?私が何とかお家に帰れるようにするから、ね?だからがんばろ?」
地球に帰りたくて何時も泣いている私を励ましてくれて、それに応える様に私も頑張った。
少しでも早く、地球に帰る為に少しでも多くの戦功を挙げて、攻略不可能とされていたドナクレアの魔龍もワカちゃんとソノちゃんと一緒に倒して、傷だらけになって帰って来ても笑顔で「これでまた一緒に帰る日が近くなったね」と言ってくれていたマユちゃんが、敵に捕まってしまった。
多分このままだと裁判にかけられて処刑されちゃう!それだけはダメ!いつも助けてくれたマユちゃんを今度は私が助けるんだ!
「だめ…そんなのいや。だめだ!マユちゃん助けなきゃ!」
私は踵は返して病室から出ていこうとする。
「ミノっちダメ!今行っても勝てないよ!それにコーワンまでどれだけ急いでも3日はかかるのよ!誰か!ミノっちを止めて!」
ワカちゃんが私を止めようと、傷だらけなのにベットから身を乗り出して思い留まらせようとする。
「ちわーっと!なんだみのりか?痛いじゃないか、小田か、どうしたっていうんだよ」
「っ!鈴本…」
私が病室を出ようとすると、ドアが開いて同じクラスメートで勇者の鈴本宏くんが入ってきてぶつかってしまう。
「丁度良かった。鈴本、ミノっち止めて。マユの所に助けに行くって言うから止めないと」
「ふ~ん。無理じゃね?」
「っ!なんでよ!やってみなくちゃわかんないじゃん!」
鈴本君の言葉に私はカッとなって抗議する。
「無理だろ実際。今から行ったって処刑されてるよ。ったく取り寄せたガトリングと50AEを無駄にしやがって、情けねえにも程があるぜ」
「っ!てめえ!なんて言った!」
私は鈴本君の言葉に絶句していると、ワカちゃんが代わりに文句を言ってくれる。
「ああ?兵器をまともに運用も出来ねえで負けたんだろ?強さが足りねえんだよ」
「ふざけるな!私達はお前がくれた自分の能力と武器を使いこなして戦ったんだよ!それでも勝てなかった!あいつは自分が古龍だって言ってた!何が「最新兵器は最強だぜ!」だよ!奴らには全く効かなかったんだよ!すべて弾かれて精々鎧破壊がやっとだったんだよ!よくもまあ偉そうに言えたもんだ!この役立たずが!」
ワカちゃんが鈴本君の言葉に食って掛かっていた。
彼が地球から取り寄せた武器が全く使えなかったらしく、傷一つ与える事が出来なかったという。
「な!ガトリングとマグナムが効かないだと?じゃあ、対戦車ロケット弾はどうだったんだよ!」
「ばかじゃなの!敵を目の前にして座り込んで狙い定めているうちに殺されるでしょうが!使えるわけないでしょう!」
「く!うるさい!とにかくお前たちの使い方がダメだったんだ!」
「だったら鈴本が前線に出て使いなさいよ!あなた勇者でしょ?普通の兵士よりもステータスは数倍のはずよね?レベルも150は越えてたわよね?手本を見せてよ!前線にも出ないで、いつも安全な場所にいてペンと金さえ持っていればいいんだから、いい御身分だもんね?よくも私達の事を言えたもんよ!」
「~~!」
ワカちゃんの反論が図星だったのか、顔を真っ赤にしながら病室から出て行って、乱暴にドアを閉めていった。
「ワカちゃん……」
「いたたた。ごめんね。マユの事は諦めて、なんて傲慢な言い方だけどお願い。私が絶対にソノっちとマユの仇をとるから。だから無茶しないで、ミノっち。あなたまでいなくなっちゃうと私、耐えられないの」
ワカちゃんは、私に頭を下げながらお願いするのだった。
◇◆
「しっかし、ずいぶんとお取り寄せなんてやりやがったな。あったまくるな」
ミノルは勇者達から取り上げた現代武器を見ながら腹を立てていた。
「そうだね、Ⅿ16アサルトライフルに50AE、Ⅿ134ミニガン、M72 LAW対戦車ロケットランチャー。ちょっと、Ⅿ82まであるなんて何をするつもりなんだろう」
「……ヤーノ君、ずいぶん詳しいね。俺には何が何だかさっぱりだ」
「うむ、妾もじゃな」
その横では〈復活〉で生き返らせた勇者ミホと勇者マユが縄で縛られ、魔法も封じられて正座させられていた。
彼女達を尋問して入手経緯などを聞いて、ミノル達は驚くばかりであった。
コンタクトとして使ったアントニオ第1公子と勇者3人がミノル達によって中断せざるを得なかったが、性懲りもなく第2陣を派遣していた事に始まっていた。
最初は第2公子という予定であったが、アドラ代表であるトロヘス公最後の男子であった為に、第1公女エリサ・クセル・ラドリエが使節代表を務め、鈴本宏、根本倉雄、野村雄二の3名が帰還者として吉野健太、藤田昌則の遺体とともに日本へ帰る。
しかし日本では関係していた政治家達はミノルの逆鱗モードで軒並み死亡しており、アメリカとコンタクトを取り、兵器を購入してきたと証言を得るのであった
取引内容は知らされておらず、武器に関してはかなりの量と種類を持ち帰ってきたらしく、その一部を今回の魔大陸遠征に使ったのだといった。
「最初はダイナマイトを作る予定でしたが、試薬や科学合成などが必要となって作る事が出来ないと言う事で、じゃあ地球から取り寄せようって計画になったと報告で聞いていました」
「私たち勇者の中でも序列上位と先生達が中心となってアドラ政府に介入していて、私達は与えられた任務をこなすだけで、どんな事をしているかは知らされていないのです」
ミホとマユは続けて話を続けるが、フェリエで保護した勇者達とほとんど同じ理由を話すのであった。
「エリカが話していたダイナマイトのネタはアディから科学面で不可能と聞いていたから、やっぱりかという感じだが、あの後また地球に戻っていたとはな。確かに一度だけでは終わるはずないよな。懸念していた事項だが、こうも早く対応しているとは思いも寄らなかったな」
「確かにミノルの言うとおりだね。僕も境界越えは再開されると思っていたけど、早すぎるし、交渉事ってこんなに早く決着するはずがないんだけどね」
「星の配列と魔素の流れでは境界越えは早くとも来年の冬のはずじゃ。何か別の力を使ったと考えるのが普通じゃの」
「私たち女神の力を使っても無理ですね。境界越えは莫大な魔素と民の人柱、そして星の巡りはワンセットで揃っていなければ実行は不可能です。以前のリュセフィーヌがやった境界越えも偶然それが揃っていたのを記憶しています」
境界越えに関する意見にフェリエ情勢が落ち着いたので合流したメーフェが女神としての意見を追加してくる。
「とにかく、この現代兵器というものが出回ってしまうと、またアドラが息を吹き返しそうですね。何とかできないのかしら」
セレスティアは自国のフェリエのことを心配しているようで、解決策がないか提案を求める。
「だよなあ、火縄銃対策で戦術と装備考えていたから、コイツ等の威力と性能は全く別ものだからなあ」
ミノルはライフルなどを見ながら考え込んでしまう。
「とにかくじゃ、まずは魔大陸からアドラを追い出すことが先決じゃ。それにの、妾もそろそろドナクレアの開放もせねばなるまいて。アドラの弱体化をしつつ考える外は無いじゃろ」
「そうですね。アドラの力を削げば力の天秤はこちらに傾くはずですから。そうすればあのバカ3姉妹にも打撃が与えられますしね」
リュセフィーヌの意見にメーフェが賛同し、今後の計画へと話題が変わる。
現在の状況は、昼に発生した勇者とミノル達の戦闘で勇者が敗北した事を知るや、コーワンに駐留していた残りの兵が全て撤退しており、ここから5日の距離にあるコーワン領の城塞都市ボルガノへと移動中との事でゲリラ部隊の斥候からの報告があった。
ボルガノは城塞都市と言う物々しい名前であるが、実際は魔獣の森とダンジョンへ向けての城壁で、街道方面は低い城壁と堀があるのみで正面は平地なので、攻める側にしてみれば、問題はないという。
「本来が魔獣の氾濫防止の街で、戦争ではなく冒険と観光の街なんですよ」
秘密のアジトから領主城へと合流を果たしたヤーノの第1夫人であるカーラが、テーブルにコーワン領とボルガノの地図を広げて説明をしていく。
「ん~特に~難しいところは~無さそうね~。でも~深入りしすぎると~魔獣の森を~刺激しちゃうから~それだけを~気を付ければ良いと~思うよ~」
アーデルハイドは斥候からの情報やアリステリアとディーフェリアを使ってコーワン領について、いつの間にか調べており、それを元に開放に向けたけいかくを提案していくのであった。
「まあ、とりあえず詳細な作戦を明日にでも再開するとして、領都の解放宣言をせねばの。そうじゃろ?カーラ殿」
アーデルハイドの提案から会議も進み、区切りの良い所で一息つくとリュセフィーヌがヤーノとその妻達へ茶を飲みながら話を振る。
「はい、リュセフィーヌ様のおっしゃる通りで、同じく明日にでも宣言をするつもりです」
リュセフィーの言葉に返答するカーラがヤーノと見つめあいながら微笑む姿を見て、「御馳走様」とミノルはヤーノ達をからかうのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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次の更新は明日になります。