行き掛けの駄賃
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砦での一夜が明けてミノル達は出発の準備をしていた。
「ミノル君、これがアドラ神聖公国の西大陸に向けての軍港だ。海路と空路の両方を兼ね備えた街で女神の加護は無し、その分大規模防御魔方陣が設置されているし、警戒が厳しくて中々攻め落とすには困難な街ではあるよ」
「パーパド殿下、ありがたく頂戴いたします。詳細な地図まで用意して頂いてしまって――」
パーパド王子からアドラにある軍港の詳細地図をもらうとミノルは礼を言うのだった。
「なあに、気にすることはない。私達こそアドラ公国軍の重要拠点を破壊してもらうのだ。このくらいの情報は提供して当たり前だよ。それにミノル君もそろそろ古龍としての自覚も勉強しなくちゃな。とはいえ私としては今のミノル君のほうが好ましくはあるがね」
例は必要ないとばかりに言ってくるパーパド王子だが、ヘティスハークにいた時にリュセフィーヌからミノルへ上に立つものとしての在り方を教えるよう依頼されていたこともあり、フレンドリーに話すミノルに苦言を呈す。
最も、建前であるようだ。
「それでは皆さんもご武運を」
出発前に、パーパド王子達が見送りをする中、ミノルは互いの健闘を祈り飛び立っていく。
国境砦を飛び立ち三時間ほど経過しており、ちょうど九州から北海道までの移動をした距離に、目的の街はあった。
上空から見るとまるで現代の港のように防波堤があり、船を入港させるための港もきちんと整備されており、何やら大型の船が12隻停泊していた。
そして2キロほど内陸側を見るとたぶん空港であろう広い敷地があり、左右に羽のようなものが取り付けられている横に平たい帆船のような飛空船が、8隻留まっていた。
「どうやらあれが港町で間違いなさそうですね」
セレスティアが地図を見ながらミノルに声をかけてくる。
リュセフィーヌにセレスティアとディーフェリアとアリステリアの3人が背に乗っており、ミノルとアーデルハイドは飛空しながらの龍化のままで地上への攻撃を訓練してもらう算段になっていた。
「それじゃあ~いっくよ~」
アーデルハイドの声に反応して2人は急降下を始めると目の前に半透明の膜が現れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
アドラ神聖公国守備軍の司令官は哨戒班からの連絡により5キロ先にドラゴンが3匹飛来してきているとの連絡を受けて対空攻撃班を配置につかせていたが、念のため防御結界も起動させていた。
港町に設置されている結界はドラゴンの攻撃はおろか、侵入も防ぐことができる強力な結界で、一度起動させれば6週間は連続して起動可能なものであり、幾度もドラゴンや魔族の侵攻を防いだ信頼性の高い設置型魔法であった。
「総員!対空攻撃用意!強化バリスタ急げ―!」
アドラ兵は6人一組で対空魔法を展開準備してドラゴン達の接近を待つ。
強化バリスタは鉄製の矢に〈貫通〉と〈時限爆散〉を付与した鉄製の弓を上空に向けて準備をしていたのだが、彼らはまさか古龍が襲って来るとは思いもよらず、いつものように撃退できるものと思っていたのである。
港町にはドラゴン襲来の鐘が鳴り響き、住民たちは自宅へと大急ぎで避難し窓をや玄関を固く閉じていた。
また、自宅へ避難できなかった者は軍施設や、教会など丈夫な建物に逃げ込むことができた。
「来たぞー!迎撃準備!」
対空魔法は臨界まで高まり、バリスタの矢も射出に向けて付与を起動させていた。
結界はアドラの攻撃は通す事が出来るが、相手の攻撃は通ることがなく攻めに難し守りに易しの長年にわたる魔法研究の最先端を行く結界であった。
3匹のうち銀色と青色の2匹が街へと降下を始めるが、結界に気づいたドラゴン2匹は結界膜の前でホバリングを初めてその場に留まっていた。
「撃て―!」
司令官の掛け声と共に魔法とバリスタが一斉に発射し、ドラゴンへと次々と命中してバリスタの貫通で鱗を突き抜けドラゴン達の肉体に突き刺さり爆発する。
対空魔法は光のビーム攻撃によりドラゴンの肉体を焼き溶かしながら爆発をする。
地上500mにいるドラゴンは爆炎と爆発に包まれてゆく。
「「「よし!やったか!」」」
爆炎が収まっていきドラゴン達の姿が見えてくると同時にアドラ兵の顔から血の気が引いていき、みるみるうちに青くなっていった。
攻撃の命中したドラゴン達は、先ほどと同じ位置でホバリングをしており、傷一つなかったが1匹だけまるでガラスに張り付いたカエルのような格好で結界膜にくっついていたが、数秒後に首を振りながら再び飛び始めホバリングを始める。
―――どうやらアドラ軍はフラグを立てていたらしく、そして1匹のドラゴンは一瞬であるが気絶していたらしい。
「な、なぜ我々の攻撃でドラゴンが撃墜できない!いつもならドラゴンステーキが待っていたはずなのに!」
アドラ軍の司令官は、討伐できなかった動揺から訳の分からない事を叫んでいた。
青いドラゴンは司令官の声に呼応したかのように少しばかり上昇して行くと、ホバリングをやめて自由落下状態になると、飛び蹴りのような体勢で結界膜へ到達。
そしてドラゴンキックによって甲高い音を立てながら、結界膜は砕け散って結界が消滅したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あいたたたた。
降下はしたが、目の前に結界が張られていてはむやみに突っ込むわけにもいくまいとその場でホバリングをしていた。
「ミノルちゃ~ん。私達は~この位だと~そのまま行っても~大丈夫なの~」
「え?そうだったの?てっきり顔面から激突すると思って止まっちゃったぞ。教えてくれればよかったのに」
「ミノル、減点いちじゃ」
「知らなかったんだぞ?減点は酷いんじゃないのかい?」
アディの一言で自分の身体がどの位の耐久力があるかを知らされたが、リュセフィーヌ先生からの容赦のない採点に俺は抗議をする。
「あ~」
アディの間延びがした一言に彼女の方向を向いた瞬間、全身に衝撃と温かい光が当たり爆発し、そのうち数発が俺の顔面に直撃して爆発を起こしていた。
何発も俺の顔面で爆発した衝撃で俺は目を回してしまって思わず結界の膜に落ちてしまった。
結界の膜に到達すると何やら低周波電気のようなものが全身を走り、EMSで全身を鍛えているような感覚に襲われていたが、すぐに気を取り戻し結界の膜から離れてホバリング体勢に戻っていた。
もしそのまま住宅街へ落ちていたら、一般市民への被害があるし、その中にも奴隷となっているフィーグルの民がいるはずなので結界の膜で止まっていた事に安堵していた。
「あらら~びっくりしちゃったの~?」
「減点にじゃ」
かっこ悪い姿を晒してしまった俺にアディはクスクスと笑いながら声をかけてきたが、その上空からリューの容赦のない採点が下されていた。
俺は、恥ずかしさから抗議もせず肩を落とした状態でいるとアディが上昇し他後に飛び蹴りを結界の膜にお見舞いしていた。
「ら~い~〇~き~っく」
アディさんどこでその文化を知ったのですかと、心の中でつぶやきつつも破壊した結界の中へと彼女の後をついていった。
「私は~海の船やっちゃうから~ミノルちゃんは~飛空船を~やっちゃって~?」
「了解」
アディの指示で2手に分かれて俺は飛空船へと向かうと、先ほどから続いている対空攻撃が邪魔くさくなっていたので、《黒線》を展開する。黒いレーザーみたいなものであるが、ホーミング能力を持っており対象に命中すると自壊してしまうという魔道であり、バリスタや魔法士たちは黒くなって塵のように霧散してしまっていった。
「ミノル!飛空船の心臓部にある魔力結晶は取っておくのじゃぞ!」
「あいよ!」
魔力結晶は魔力石を加工すると使い捨てにはならずに繰り返し魔力を充填すれば使える結晶石で災害級以上の魔獣や竜族などから摘出した大きな魔力石が加工されたものだ。
当然、小さな魔力石や魔力結晶は繋ぎ合わせる事が出来ない為、大きな魔力結晶は貴重であるのは言うまでもない。
俺は対空攻撃を無力化させると飛空船に近づき、次々と破壊をして8隻全ての破壊が終わると、飛空船のドッグと関連設備も破壊していった。
魔力結晶も入手して一息つきながらアディの方向を見ると巨大な水柱が上がっており、次々と船が宙を舞い水面へ落ちると粉々に砕け散っていた。
俺はアディの攻撃を見ると水面に白く光る火の玉を海へと打ち込んでいてそれが大きな水柱になっているようだった。
「アディもえげつないな。あれ水蒸気爆発させてるだろ?さすがは朱霜の聖女」
アディは世にも火と水の魔法を最も得意とした珍しい全くの正反対の魔法を使う魔法士だったそうで、その一つとして用いたのが"水蒸気爆発"を利用した攻撃だったそうだ。
俺はその魔法の迫力にアディは敵に回すまいと心に誓うのだった。
アディも船とドッグなどの施設を破壊し終わったのを見計らい上空へと飛び立ち、リューの待つ上空へと集まり、そのまままた入来方面へと飛行したのだった。
後日談として、アドラ軍の飛空艇の3/4の破壊と1/3の船舶の破壊、およびメインベースとされていた船舶修理設備を破壊され、輸送兵の輸送や物資の補給が大いに滞り現地兵士の兵站不足により遠征軍の足がが止まってしまったことは言うまでもない。
さらに俺達は魔大陸へと向かっていた途中で飛空船を拿捕、鹵獲してヤーノのいるローグインへの手土産としたのだった。
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