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話は通したので帰ります。

お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます。


早めにできましたので投稿します。


拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。

”闇魔道の波長を感知”闇”の司を発動させます。…ブラックホールの概念を形成成功。これよりこの魔道を《暴食の黒》ブラックグラトニーと命名します。それでは起動します” 


 セリナの展開補助により《暴食の黒》が展開されると同時にミノルから体内の魔力がゴッソリと消えて虚脱感に襲われる。

 歯を食いしばり倒れることを嫌った結果しっかりと大地に立つことができると、徐々に黒い靄のようなものに身体全体が覆われていく。


「なっ、何だそれは!小僧!貴様何をした!」


 長老達が騒めきながらミノルに向かって叫ぶが、彼自体は制御と魔力の枯渇を避けるため周囲の魔素を吸収するので精一杯な為、返答すら出来ずにいた。


「ぎゃあああ!」


 突然、カスクロがミノルから離れると暴れだし会議場の中を転げまわる。

 カスクロが転げ回った後には、大量の血液がまき散らかされており、カスクロからの出血のようだ。

 その状況に龍化し、後ろに控えていた龍族の侍従が暴れるカスクロを抑えてから、様子を見た長老達や侍従達は息を呑んでしまった。

 カスクロの下顎から胸にかけてと、左腕が肘より下が何かで抉り取られたかのように無くなっていたのだ。


「腕があ!顎がああ!いたいいたいいたいいたいいたいいい!」


 無残な姿になってしまったカスクロだが、さすがというべき生命力で痛がってはいるが死ぬ事はないようで、侍従に別室へと運ばれながらも叫び続けていた。

 カスクロが運ばれて行き会議場の扉が閉められると、静寂だけが場内を支配していたが、突然風船が割れたような破裂音が響き長老達は、その音に驚き肩を跳ね上げる。


「くそ!魔道式を維持できなくて式が弾けちゃったよ。持って1分ちょいって所か?―――あいたたたたた。さすが成龍だな首と胸が思いっきりやられちゃってるよ」


”すいません。展開は可能となったのですが、維持と展開の概念に何らかの問題がありそうです。理論上ではもっと維持できるはずなのですが、何というか、イメージと現実が伴っていない感じを受けました。とりあえず〈治癒〉を展開しますね”


 セリナの指示に従い〈治癒〉を展開するが、カスクロにつけられた傷が癒える事はなく出血が止まらない為、ミノルが焦っているとアーデルハイドが近づいてきて傷を舐めだした。

 ミノルは焦りながら「ちょ、ちょっと」と言い出したが、それを無視するかのように傷口を舐め続けていると痛みが治まって行き、傷が癒され始めた。


「ん~龍体の~治癒能力と~魔法の治癒が~ケンカしちゃってるみたいだったから~舐めてあげると治るかな~と思ったら~治ったね~」


「まさか”生”の司を保持しているのか?そこの娘は…」


「間違いない…あの娘から”生”の司を感じ取る事が出来るぞ。何ということだ…」


 アーデルハイドがミノルの傷を癒す能力を見た長老達は彼女を注視しながら呟き始める。


「ふぉっふぉっふぉっふぉ。それだけではないぞ?お主等も気づいておろうな?あの幼き龍が”闇”の司を保持している事ものう」


「っ!それではやはり先ほどの魔導展開は闇の能力によるものなのですな!」


 メンヘストの言葉を聞き、長老達はミノルを注視し始めると長老の1人が騒ぎ始めた。


「ちょっと待て、闇だけではないぞ?何か別の司の存在を感じるぞ?…っ!小僧!なんだその司は!貴様何を持っているのだ!」


「?…何を言っているのですかあなたは?闇の司とやらも初めて聞きましたが、私は知りませんね。もし知っていたとしても、あなた方のような古龍には教える義務すら感じませんが?」


 ミノルはそう言いながら2人に「帰ろう」と一言言って踵を返そうとするとリュセフィーヌは動こうともせずに長老達を睨み続けていた。


「”ことわり”じゃ。妾の番は闇の司と理の司を有しておる」


 リュセフィーヌがそういいながらミノルを指差しするとミノルと長老達の間に2つの青い火の玉が発生してその中に何やら文字が浮かび上がってきた。

 右の文字は黒地に白の縁取りがされており、左は白地に黒の縁取りがされた楔形文字のようで梵字のような文字が一文字づつ浮かび上がっていた。


「”闇”に”ことわり”?なんだこれ?」


 目の前に浮かぶ文字にミノルは不思議そうにつぶやいた。


「妾も初めは何があったのか驚いたの。今も理解しているようで理解できていないのじゃ。妾にもこの司が何を指し、何を顕現させるのかわからぬ。じゃが一つだけ分かるのはミノルは他世界の人族じゃったが、この世界にある本来のルールや成り立ちに従って生きようとしておる。時には間違えることもあるがの。それが何か関わり合いがあると思っておるのじゃ」


 リュセフィーヌはそう言いながら踵を返しそしてアーデルハイドとミノルもそのあとに続いていく。


「それでは師匠~これで失礼しますね~」


「ふぉふぉふぉ。アーデルハイドも元気での。今度はこちらから出向いていくからの」


「はい~おまちしてます~」


 会議場から去る間際にアーデルハイドとメンヘストが言葉を交わし3人は去っていった。

 会議場には愉快な笑いをするメンヘストと押し黙る長老達だけとなったのである。



   ――――――――――



「アディさん?師匠って何?って言ってもあの師匠って言葉だよね?」


 俺は会議場を後にリューの後ろを歩きながらアディに問いかける。


「そうそう~。勇者として来た時にね~戦い方を~教わっていた事は~言ったわね~?」


 俺はアディの聖女になった経緯の時を思い出して、頷く。


「その時の~冒険者パーティーの~リーダーの魔法使いが~師匠だったのよ~人族に~変身して~お金稼いでいたのよ~」


 外れ勇者だったアディが教わっていたパーティーで魔法と剣術、そして戦争などの戦い方や作戦の立て方。

 さらには情報戦や戦略など多岐にわたってその人達から教わったそうだ。

 そしてアディが独り立ちする時に、自身が古龍の1人であってメンバーはその眷属の龍族だったことを告げられた時はアディも驚いたという。


「妾と初めて会った時もな、メンヘストは元気か?などと言うものだから驚いたものじゃ」


 リューも会話に参加して当時の事などを話しながら出口へ向かうと、そのの前に白い体に青の刺青のような模様をした6枚羽の古龍が立ちはだかっていた。


「貴様ら!よくも私の可愛いい坊やを傷だらけにしたザマスわね!生きて帰れるとは思わないザマス!」


 リューは「あちゃー」と呟きながら立ち止まり、俺は「誰?」とアディに聞く。


「ヘラズグア現当主~”秩序”と”光”の司持ちで~あの坊ちゃんの~お母さん~」


 なるほどと俺は思いつつ、今このおばさん「ザマス」って言わなかったか?とアディに聞くと、あさっての方向を向きながら肩を震わせていた。


「これは当主殿。壮健そうで何よりじゃ。妾たちはこれにて失礼するでの」


「待つザマス!生きては返さないと言っているザマス!坊やの仇を討つザマスううう!」


 当主はそのまま俺たちに向かって攻撃を仕掛けようと構えてきた。


「ちょ~っと待ってもらえる~?要は~カスクロ君を~治せばいいんでしょ~?」


 一触即発状態からアディが間に入って来るとカスクロの治療を提案してきた。


「なんと!私の可愛い坊やを治せるというザマスか?」


「はい~治せますよ~」


 アディの提案を聞くと、構えを解き詰め寄りながら治療の可否を聞いて、アディの返事を聞くなり手を引いて、ある一室へと連れ込まれた。

 扉を開けて中に入ると包帯でぐるぐる巻きにされたカスクロがうなりながら巨大なベットの上でうなりをあげて横になっていた。

 カスクロに巻かれた包帯のあちこちには血が滲んでおり、今も傍らには治療術を施す医者らしき龍がいた。


「さあ!わたくしの可愛い坊やの治療をするザマス!さあさあ!早くするザマス!」


 当主はアディの顔面にこれでもかとばかりに近づき治療を急かす。

 アディは当主と治療をしている龍をを除けさせるとカスクロに近づいて両掌を向けて目を瞑る。

 すると、カスクロの身体全体が淡く黄色い光に包まれて行き、うなりを上げていた声が段々と静かになっていき、最後は静かな呼吸をするだけとなった。


「う~ん……あれ?痛くなくなったぞ?」


 カスクロがベットから起き上がる拍子に包帯が解けて床に落ちてゆくと包帯の下から露出された肌には、傷一つなく、どうやら治癒は成功したらしい。


「ああ!傷がなくなっているよ!ママン!ボクちゃん傷が治ったよ!見てママ元通りだよ!」


「よかったザマス!私の可愛い坊や!一時はどうなる事かと思ったザマスのよ!ホントに良かったザマス!」


 リューやアディ、そして俺は傷が治ってよかったという喜びよりも「ぼくちゃん」「ザマス」の言葉に笑いをこらえることで精いっぱいだった。


「それでは、妾たちも帰るとするかの」


「ええ、ええ、さっさと帰るザマス!こんな乱暴な娘、こちらからお断りザマス。シッシ!」


 感謝の例もなく、まるで犬猫を追い払う仕草で部屋から追い出す当主を、呆れながら俺達はその部屋を出ていく。


「ボクちゃんだって」

「ザマス~」


 俺とアディが声を殺しながら笑う姿を見て、今にも吹き出しそうな震えた声で「帰るぞ」と言って先を歩くリューについていく俺達だった。

 ヘラズグアの城を出た後ヘティスハーク王国へ帰る途中で大笑いしながら帰ったことは3人の秘密としておこうと思ったのだった。


   ――――――――――

 

「ふぉふぉ。どうじゃったかの?」


「…今でも信じあれません。我が来孫が戦の司を内密にしていたことは謝罪しますが、残りの空席を埋める実力者が存在していたなんて…しかも純血種ではなく多種族からの変異種に発生するとは思いも寄りませんでした。」


 メンヘストの問いかけにヘラズグア長老議長が驚嘆の意を表した。


「しかも、我々の知らぬことわりの司なんてものを出されると何と言って良いのか…」


「そうじゃな。眷族化の儀が関係するのならば、ドナクレアの血筋が成せる業と言う所か?」


 長老達も次々と先刻の出来事について話し出す。


「ふぉ!血の成す業ならば、とうの昔に空席は埋まっておろうな。適性というやつじゃの」


「なるほど、その可能性が高いのでしょうな」


 再びメンヘストの言葉に同意の言葉を発する長老。


「まあ、今日は楽しい見世物を見させてもらったのう。あとは自分たちが考える事じゃの。あの幼き龍が言った通り今までの方針を貫くか、それとも外に目を向けて見るのかはお主等次第じゃの。さて、ワシはこれにて帰るぞい。また会うこともあるじゃろうて」


 そう言いながら、腰を叩きつつ退場するメンヘストをその場でたたずんでみている長老達だった。

 

 このまま、自分たちの領域のみにこだわり、座して外の様子を見ているだけなのか。

 それとも、これからの未来に向けてリュセフィーヌ達のとる行動に賛同するのか。

 長老達は、溜息をつきつつもミノルの言葉に対して奥歯に物が挟まったかのように気になるのであった。




最後までお読みいただきありがとうございました。


次回も楽しみにしていただければ幸いです。


次回は明日7時を予定しております。よろしくお願いいたします。

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