リュセフィーヌの憂鬱
お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます。
申し訳ございません、風邪をひいてしまい寝込んでおりました。
新〇ルA〇ールドDXを飲んで復帰いたしました。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
勇者の処罰から2週間が経過していた。
勇者ユウトとケンジは次の処罰国へと運ばれて行くこととなるが、現在は冬季で移送しようにも雪が1m以上は積もっており陸路は使えない。空路を使おうにも、寒さでワイバーンが飛ぶことすらできず、ミノル達が移送することになってしまう。
「まあ、冬でも動けるのは竜族くらいしかできぬからの。仕方がないじゃろ?」
リューは仕方なしといった表情をしながら、依頼してきたセレスティアに溜息をつきながらも了承した。
とは言うものの、隣のヘティスハーク王国への移送なので特にこれといった危険が存在する訳もなくアーデルハイドを留守番役として、ミノルとリュセフィーヌは、翌日の朝一に出発することにした。
翌日、両手足に枷をつけられた勇者2人は兵士4人と馬車に乗せられてそのままミノルが抱えて移送をして、周囲をリュセフィーヌとディーフェリア、アリステリアが警戒するという計画で出発することになった。
「リュー。悪いわねこんなこと頼んでしまって」
「なに、時期が時期じゃからの。ヘティスハークとて新年を迎える前に片付けておきたいじゃろうしの」
セレスティアはリュセフィーヌに感謝を述べいざ出発となった。
ちなみにここフィーグルの新年は3月が年明けとなる。1日29時間で1月が21日で1年が15ヶ月あり、ミノルも慣れるのに苦労した。そして今は2月8日である。
「それじゃあセレ姉行ってきます」
「使節役頼んだわねー!リューに迷惑かけちゃだめよー!」
使節としてパディが同行し、対アドラ公国への打ち合わせなどをしてくる予定だ。
ミノルとリュセフィーヌはフェリエを飛び立ち、ヘティスハークへと飛行をはじめる。空路は順調で山脈をほとんど超えた所で、山脈街道の途中にある休憩地で本日の宿泊となる。
休憩地は、けも〇レ街道開通後も両国の軍事演習場として使われている為、旧街道と同じくきちんと整備された土地になっており、3軒の大きなログハウスも建設されており、一行はその1軒に本日の宿泊をすることになった。
内装は玄関に大きなホールがあり部屋数は20と家と言うより、施設といった感じを受けてしまう。
ミノルが少しばかり検索してみると、ハウス自体に〈劣化耐性〉が展開させられていることに気づき驚いていた。
「へえ~、家具類はないけどすごいところだね。魔法も展開されてるし、積雪もへっちゃらそうだね」
「そうなんです。このハウスの木材には”樫松”と言って伐採後に中の樹液が硬化して樫の木のように固く、シロアリなどにも食べられづらい木として重宝されているのです。」
パディの説明を受けながら、ミノルはいいとこどりの木なのかなと思いながら、ハウス内を見回っていた。
ホールに戻ると同行している侍女、侍従達が食事の準備や、暖炉に火をくべており、兵士は勇者達を見張っていた。
勇者2人はフェリエでさんざん罰を食らっており、もはや抵抗の兆しもなく肩を落とし俯きながら、おとなしくしている。
先日までの悪態をついていた勢いはなく、与えられた食事をおとなしく食べていた。
暖かいスープに白パン、サラダにローストした鶏肉の半身と1杯だけだがワインもついて結構まともな食事を与えられており、ミノルはたとえ罪人でも扱いがしっかりしているなと感心するのだった。
「ミノル、妾達も食事をするぞ。こっちへ来い」
リュセフィーヌに食事の準備が整ったことを伝えられ、ミノルも気づけばお腹が、くうくうと鳴っていることに気が付き食事を摂ることとした。
食事内容は勇者と同じらしく、特別な料理などは出ていないようであった。パディとリュセフィーヌは明日のヘティスハークについての事を話しているようで、ミノルには振ってくる気配もなく小難しい話をしていた為、ミノルは極力会話に参加せずに一人アーデルハイドから渡された分厚い歴史書を読んでいるのだった。
ミノル自身もフィーグルに来てまだ1年で各種族についての文化や歴史、それぞれ違うマナーなど覚えなければならない事が多い為、会話に口を挟んで自爆することを恐れての事である。
食事も終わり、勇者2人は結界の張られた部屋へ入れられて、ミノル達は暖炉の傍で紅茶を飲んで寛いでいると
「ミノルさん、お願いがあります」
「ミノルさん頼みを聞いてくださいませんか?」
ディーフェリア、アリステリアがミノルの座っているソファに近づき言葉を掛けて来たので、読書を中断して2人の顔を見て「何かな?」と答えた。
「実はこの移送作業で私達は任務を終了することになります」
「皆さんとお別れしなければならなくなってしまいます」
ミノルは驚く。今回で2人が御役御免になるとは聞いておらず、今日までメイド兼助手として身の回りの世話や諜報活動、そしてフェリエ各地の解放時には副官として努めてもらいこれからも続くのかと思っていた。
それが突然、今になってお別れですと言われて「はいそうですか」等といえる訳もなかった。
「…いきなりそんなこと言われても困ってしまうな。それにまだ、フェリエは完全に開放されていないし続くものかと思っていたんだよ。」
ミノルは正直な感想を2人に話した。
「そうですね。まだ開放はされてはおりませんが、もはやフェリエでのアドラ公国は撤退せざるを得ないはずですから、そうそう難しいことではないと思われます」
「もともと私達は、フェリエ共和国との軍事協定を締結させる布石を打つ為に派遣された要員でしたから…」
なるほど。言われてみれば、確かにその要因として手伝ってもらう予定だった2人だから、今回の勇者移送と合わせて軍事協定の様々な取り決めをする話し合いが行われる為、ほとんど決まったようなものであるから2人が自分達との共闘は終了ということになるなと思うのだった。
「うーん。寂しくなるのは仕方のないことか。じゃあ、ヘティスハークに行ったらお別れ会くらいはしたいね」
ミノルはリュセフィーヌを見ながらいうと、彼女も会話を聞いていたらしく、ミノルを見て頷くのであった。
「最後に一つだけお願いしたいことがあります」
「私も同じくお願いを聞いてほしいです」
「んー?まあいいけど何がいいのかな?」
彼女たちが、お願いしてきたので一瞬だけ躊躇ったがよく考えてみると今回の戦とヘティスハークでの戦闘で両国からかなりの金額をもらっており、まあ大丈夫かなと2人に望みを聞くのだった。
「それではお言葉に甘えて……今夜ミノルさんを抱き枕にさせて戴きたいのです」
「リュセフィーヌ様達から聞くと柔らかくて日なたの匂いがして気持ちがいいというので、今夜は一緒に眠りましょうね」
「は?」
2人の願いはミノルとの同衾を御所望ということで間抜けな返事をして彼の思考が停止してしまう。
「「駄目でしょうか?」」
「あ、えっと?それって…どうしてもなのかな?」
「「先ほどミノルさんはいいと言ってくださいました。」」
「う……」
リュセフィーヌやアーデルハイドの時でさえ、9歳の体という蛇の生殺し状態だというのに、これ以上の責め苦が存在するのだろうかと返答に困ってしまい、ミノルはリュセフィーヌの方を見ると「今夜だけじゃぞ?」と許可されてしまった。
ミノルはこれ以上の苦痛があってたまるものかと、寝室へ逃げ込む為に構えようとした途端、突然体が何かに巻き付けられてしまい、巻き付けた原因を探ると真後ろにフェリエからの同行していたメイドがこちらに手の平を向けて立っており、そこから蜘蛛の糸のような物が出ており、それがミノル自身を巻き付けているものだと認識した。
「メイドのリナさんはアラクネでして、その糸は頑丈で切ることは困難です」
「さあ、観念して一緒にオネムしましょうね」
「ちょ!ちょっと待て何その赤青全身タイツのアメコミみたいなそのスタイルでの糸出しは!」
両手をワキワキとさせながら近づく2人はメイドがアラクネだとカミングアウトし伝えてくる。
アラクネは通常、大きな蜘蛛の下半身と女性の上半身を持っているが、人の姿に変身する事ができて、その姿の時は尻からの糸ではなく、特殊能力として手から糸を吐く事が出来るとアラクネメイドのリナさんが懇切丁寧にミノルに教えるのだった。
「いやいやいや、そんなのいいから解いて貰えるかな?」
「そう言う訳には参りません。リュセフィーヌ様の許可も頂きました事ですし、さあ、私達と大人しく眠りましょう」
「大丈夫です。ミノルさんの幼児退行のスイッチが何処にあるのか知ってますから。起きた時には記憶は殆ど無いですから」
「いやいや!そんな進学塾みたいな事いらないから!リュー!たーすーけーてーー…」
2人に担がれて寝室に消えて行くミノルの声を聴きながら「頑張るのじゃミノル」と暖炉の前でワインのグラスを傾けるリュセフィーヌと、ひきつった笑顔をするパディがいるのだった。
翌朝、疲れたような表情をしたミノルと肌つやの良くなったディーフェリア、アリステリアが食事を摂っている向かいでリュセフィーヌが笑みを浮かべながら食事を摂っている。
「どうじゃった?」
「「はい、十二分に堪能させていただきました。」」
と、2人とリュセフィーヌは会話をしながら目の座ったミノルが抗議してくる。
「どういうスイッチなのかは知らないが、確かに夕べの記憶が途切れたのは仕方がないが、朝起きると2人のサンドイッチが刺激的過ぎて目覚めにはきついものがあったがね」
「そういって、ミノルも満更ではなかったのじゃろ?」
「そりゃもう美女に囲まれれば男だったら…ってそうじゃないんだなあ、もう」
ミノルとて子供ではなく、立派な成人なのだが、いかんせん9歳の体ではどうすることもできない物理的行為に至ることができないもどかしさに苦悶するのであった。
朝食も済ませ、ヘティスハークへの出発の支度も整ったところで再びヘティスハーク王国への旅が続く。
リュセフィーヌとミノルは順調な飛行を続け、久しぶりのヘティスハーク王国へ到着すると、既に通達されていたのか、門番がそのまま王城へ行けと手信号を送って来ていることをアリステリアから教えられ、今回は修練場に着地をする。
ヘティスハークも雪が積もってはいたが、兵士達が頑張ってくれていたらしくきちんと除雪されていた。
着地地点には、200名程の兵士とテンベルト王太子、パーパド王子の2人が待っており、ミノルとリュセフィーヌは龍人へと変化して再開の握手をした。
「久しぶりじゃの、テンベルト殿下、パーパド王子。こちらには何か変化があったかの?」
「いえ!こちらは大丈夫でした。何度か国境砦でありましたが、御教授いただいた戦略が功を奏してアドラにばかり被害が発生しておりましたな。ははははは!」
リュセフィーヌの言葉にテンベルトは無事であるとの報告をする。
「それは良かったです。教えた手前、役に立ったのか心配しておりました。パーパド王子のほほに木津があるのを気にしてしまいまして」
「おお!これは戦による傷ではございません。お恥ずかしながらフェリエでも勇者を打ち取った報告を聞いた時に酒を飲み過ぎましてね。足がもつれてしまって転んで擦り剝いてしまったのですよ」
ミノルが頬の傷を気遣った所にフォローの回答が返って来て安堵するのだった。
「御無沙汰しておりますテンベルト王太子、パーパド王子。壮健で何よりです」
「おお、こちらこそ御無沙汰しておりました。6年前の記念式典依頼ですなパディ殿」
「パーパドよ。パディ殿ではなくパディ嬢と呼ばぬか。まったくお前はいつまでも硬っ苦しいのう」
以前より2人の王子のフレンドリーな話し方にミノルは徐々に自分の存在が受け入れられてきたかと、思ったのだった。
勇者の引き渡しも済み、フェリエ共和国使節一行は王城へと招かれ、セルディス王へ謁見することになっており、パディとリュセフィーヌ、ミノルと別室の謁見室にて王と再会した。
ミノル達は一通りの挨拶を交わし、パディと同行して来たフェリエ共和国軍武官、ヘティスハーク側はヘントセン宰相と軍部筆頭のパーパド王子とで打ち合わせが始まった。
今日は到着したばかりという事もあり、内容は大まかなことしか話さず、この日は解散となった。
ミノル達のヘントセン王国での宿泊先はメーフェの教会で、立て直しの際に現人神として宿泊する場所やとして作られ、今は身寄りのない5人の信用のできる人族がシスターとしての教育を受けがてらメイドとしての仕事をしていて、そこに泊まる予定でいた。
「リュセフィーヌ様、ちょっとお待ちくださいますか?」
「なにかの?妾に用事でもあったかの?」
ヘティスハークの文官が、ミノル達が王城から出ようとした時に呼び止められリュセフィーヌは振り返って用を聞く。
「はい。実はリュセフィーヌ様御一考がヘティスハークをお発ちになった翌日に、鳳凰便でこの書状が届きまして、先日メーフェの教会に持っていき、フェリエ共和国に行くのでしたらこれを届けてほしいとメーフェ様にお願いした所、持って行き忘れてしまったようでして…」
「はあ、まったくあの駄女神め」
書状を受け取りながら、メーフェへの愚痴をこぼすと文官は引き攣った笑いをしていた。
「珍しいの。鳳凰便なぞ滅多にないのじゃがの。ん?この封蝋に使う紋章は…」
鳳凰便とは夜燕便と違い高貴な身分が、とても大事な要件があったときに使うもので、夜燕のように気づかれたら奪われると言う危険性がなく、届け先に奪われるという何の憂いもなく確実に届く使い魔便だが、消費魔力をはじめ召喚コストが屋敷1軒買える位かかってしまう代物である。
リュセフィーヌは書状を開き、手紙の内容を読んで行くにつれてあからさまにいやそうな顔に変わっていった。
「ミノルよ。この話し合いが終わったら古龍の長老達に会いに行くぞ」
「長老?古龍の?なして?」
「ミノルとアディに古龍の試練を与えるそうじゃ」
ミノルは、厄介な事が起きたと思ったのである。
最後までお読みいただきありがとうございました。
寒暖差が激しくなっております。皆様も体だけは御自愛ください。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
次回は昼の12時を予定しております。よろしくお願いいたします。




