ミノルと勇者③
すいません更新を明日の7時にしておりました。一服休憩中に更新がされていないので気づきました。
お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます。
感想でも言われました。
皆さん寒くなってきましたので、くれぐれもお体お気を付けくださいませ。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
アドラ神聖公国の首都にある貴族街の一角では、今まさに夜会の真っ最中で勇者である新庄伯爵と、ラドリエ大公家第2公女の婚約を記念した舞踏会が開かれていた。
2週間前に発表されたヒデオ・シンジョウ伯爵と第2公女ミゼラベータ・ラドリエの婚約が発表され、一時アントニオ公子と第3公女の婚約者であるノボル・アイダ子爵の戦死で沈んでいたアドラ国内において、明るいニュースとなり、国民はお祝いムードで沸き立っていた。
ヒデオは自身の地位が盤石となった今、愉悦していた。
一通り挨拶も終わり、お祝いに訪れていたクラスメートと談笑していると、侍従がヒデオに近づいて来客を伝え、こちらまで案内するよう侍従に伝えた。
「シンジョウ卿。本日は御招き頂き有難うございます」
案内されてきたのは、アドラ公国の宮廷魔法師長であった。
「いえいえ、お忙しいと言うのに招待したのは僕ですから、来ていただいて有難いですよ」
ヒデオも魔法師長へ礼を述べる。
「それで、急ぎこの席に参ったのは彼女の件についてでございます」
「ん?彼女とはどの彼女の事ですか?」
魔法師長は彼女と言って周りの目を胡麻化したが、返って来た答えは全く別の答であった為、コイツどれだけ遊んでいるんだと思いつつも表情には出さずに言葉を続けた。
「彼女の魔法がそろそろ切れ掛けて来る頃なのですが、更新はいかがいたしましょうかと?」
「ああ、あーあーあー。彼女ね。もういいや必要なくなったし」
「!、更新しておきませんと記憶の齟齬と隷属魔法の間に歪みが生じて無事では済まなくなってしまいます!最悪は廃人へと‥‥。」
「構わないんじゃないかな?スポンサー探しと、後援者探しの駒だったし、廃人になったとしても誰かの慰み者として使えるでしょ?まだ処女だしね。最後の勤めも見てあげなきゃね」
魔法師長に歪んだ笑顔を見せながら言ってきた彼に、恐怖を覚えたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミノルに向かって、ケンジの助命を懇願したエリカに冷たい眼差しを向ける。
ナオはエリカの生存に驚きを隠せないでいた。そしてエリカが吊るされていた場所を見ると魔獣の死骸が釣り下がっているのを見ると、自身に〈幻影〉が展開されていたことを推察していた。
「なぜ止めるんだ?初めから聞いていたと思うが、こいつは君も殺そうとしていたんだよ?」
ミノルは感情の起伏のない淡々とエリカを問う。
「でも!だからってこんな酷い事はいけない事だと思うんです」
「俺はダメでコイツはやって良いということか?」
「そう言う事ではなくって!ちゃんと罪を償ってもらって、それから…」
「ふうん。君の価値観はそうなのだろうが、俺の価値観は違ってね。こういう奴らってのは大きな力を得てその快楽を覚えてしまうと、一時は反省をするんだが、苦しみから解放されたくてまたそっちへと戻って行くんだ。
”バカは死ななきゃ治らない”なんて地球では聞くが、生憎こちらの世界では復活の魔法か、命の水で蘇ってしまうんだ。一度の死から蘇って後は反省してもそこからまた元に戻る。これも地球の言葉で言えば”喉元過ぎれば熱さを忘れる”って事さ。だから魂に刻むんだ、己のした過ちがどれだけの事をしたかってね。」
エリカは驚く、ケンジは確かに悪いことをした。だからってこんな凄惨な事をして良いとは思わないが、この龍人の子供が言う言葉も一理ある。
しかしなぜ、自分たちの知ることわざを知っているのかに驚きを隠せなかった。
「あなたはなぜ、その言葉を知っているんですか?」
エリカは思わず訪ねてしまった。
「ああ、君たちは知らないか、俺はね同じ地球の日本人だったんだ。今は古龍の一族としてこの世界の住人として生きているがね」
「じゃあなんで、こんな酷い事ができるんですか?日本人なんでしょ?」
「じゃあなんでコイツ等は獣人たちに酷い事が出来たんだろうね?日本人なのに」
同じ日本人という安心感から、緊張が解けてミノルに問い質すと、オウム返しのように同じ質問が返ってくる。
「そんなこと言うのはずるいです!私が聞いているんです!」
「じゃあ答えてやろう。俺はね地球では会社を経営していたんだ。何人も人を雇ったよ。だが殆どは持たないんだ。汚い、危険、きついの3Kって呼ばれる仕事さ。”俺はこんなことをする人間じゃない””こんな仕事じゃなくても楽な仕事がある””ここをやめても何とかなるさ、別にバイトでも食っていけるし”なんて言葉をいいながら辞める人達をいくつも見てきた。発注元から理不尽な注文はいくつも受けてきた。役所から無理難題もいくつも受けてきた。楽で旨味のある仕事はいつも大きな会社が取って行く。パワハラ?コンプライアンスの遵守?ふざけるな。大きな力の前じゃ弱者がいつも虐げられる」
「あなたの言っている事は問題のすり替えです」
「ああ、愚痴を言ってしまったな。話を戻そう。日本の常識では人権が尊重されるな?その常識を破って行動したのはコイツ等だ。大きな力に酔いしれて、人を人とも思わない様な事をして、それでこいつらの人権を尊重してやる?俺は嫌だね。コイツ等を屠るだけの力を俺は持ってしまった。幸いにもこちらでも非人道的な行為は罪人以外には許されてはいない。そしてこいつらは罪人だ。そして生殺与奪の権利は戦いで勝った人間にある。だから実行した。以上だ。」
エリカは黙ってしまった。確かにフィーグルでは罪人には罪に応じた罰を下すことになっていた。
そして、決闘や戦いにおいては生殺与奪の権利が勝者にある事も、戦場で不文律として存在した。
「じゃあ、今度は俺の番だ」
黙っているエリカにミノルが尋ね始める。エリカは何故か正座の姿勢をとってしまい、ナオも正座の姿勢になってしまう。
「昔サラリーマンだった時に上司に言われた言葉がある”文句を言うだけだったら誰でも言える。それを言う前にやる事やってから文句を言え”ってね。それで君は何をした?」
エリカは黙って俯きながら下唇を噛み、両拳を強く握ってしまう。
「俺の知る勇者は、間違いに気づき過ちを正そうとして公国に反旗を翻し、死んで逝った者もいて、今も戦っている者もいる。お前はどうだ?答えろ」
「私は…逃げました…怖くて…敵わないと思ったから。」
エリカは語りだす。戦争で恐怖した事、逃げた事、そして孤児院で働いている事、孤児院を人質にされて再び戦い始めた事を話し、ミノルは黙って聞いていた。
「私は、現実から逃げた卑怯者です。でも…」
エリカが話を続けようとしたが、ミノルが右手を彼女の前に挙げて言葉を制した。
「わかった。君の行為が正解だとも不正解とも言えない。もちろん俺の行為だって正解も不正解もない。しかし戦いを避けたいと言う気持ちは伝わったよ。それにもう殺る気が失せた」
「!、それじゃあ!」
エリカは顔を上げて少しだけ明るい顔をする。
「俺はもうこいつをどうこうするつもりはない。しかし、罪は消えない。だから今度は法の裁きを受けてもらう。それでいいな?」
「っ!はい!」
「よし、それじゃあ、君らは捕虜だ。こいつを連れて俺についてきてもらおう。」
ミノルは魔法袋からロープを取り出し、ケンジに縄を掛けて逃げられないようにする。そしてナオ、エリカと縄を掛けていく。
ミノルに連れられて3人は歩き出し、森を抜けるとリューが焚火をして待っていた。
「遅かったの。戦闘音がやんでから2時間は経っていたが何をしとったんじゃ?」
「ああ、ちょっと人生相談をしていた所だったんだ。」
リューは何を言っているのかと首を傾げながらもミノルに温めた茶を差し出す。
「ぐ!ああ!あああ!」
リューが3人にも茶を差し出そうとしたとき、突然ナオが苦悶の声をあげながら、頭を抱えてその場に蹲ってしまった。
「ああ!いやあ!私はやりたくない!どうしてそんなことするの!やめて!いやあああ!」
ナオが声をあげながらついには倒れてしまい、足や手をバタつかせながら暴れ始める。
「いやあ!こんなこと!こんなのだめえええ!」
大きな声を出し全身をのけぞらせながら涙を流し、何かを否定するような声を出しながら痙攣し、気絶した。
「ミノル!禍々しい気配と魔力がこの娘から発生しているぞ!」
「あ、ああ、ついに始まってしまったんだ。崩壊が始まっているんだ」
リューの言葉にケンジが反応して呟きだした。
「おい貴様!この娘の何を知っておるのじゃ!説明せい!」
ケンジの呟きを聞き逃さなかったリューが問いただす。
「ナオは元々エリカと同じで戦争を嫌がっていたんだ。でも英雄と担任の木村たちがナオを取り押さえて、洗脳の魔術を仕込んだって聞いていた。それを定期的に更新しないと精神に異常をきたすと言われていたんだ。」
「貴様らなんてことを!強制展開は御法度なんじゃぞ!それにこの術式は多重展開しておる!別の術式を無理矢理くっつけておる!」
リューはケンジへ糾弾しながらも術式が厄介なものだと、看破したらしく話してくれた。
「ごめんなさい、ごめんなさい!俺がやったんじゃない!あいつらが勝手にやったことなんだ!」
ケンジはその場に跪きながら謝ってきた。
「ええい!謝罪している場合じゃないぞ!ミノル!龍化して急いで運ぶのじゃ!一刻を争うぞ!」
ミノルは急ぎ龍化をして皆を背に載せてヴォルシナの街へと飛ぶのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いたします。
明日も投稿はいたしますのでよろしくお願いします。




