ミノルと勇者①
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前話でサディストとマゾヒストを間違えて掲載しており申し訳ございませんでした。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
月明かりが優しく照らす草原に2人の影が静かに佇んでいた。
1人は髪の長い女性で背中に羽、尻に尻尾が生えており、器用に尻尾を退けて、小さな岩に腰を降ろしており、空にきらめく星を眺めている。
もう一人は地面に仰向けで寝て、身動き一つしておらず、離れた所から見るとまるで星を眺めて寝転がる人物の傍らで一緒に仲良く佇む裕友人同士かカップルの様な感じを受ける。
だがそれは幻想であり、つい先ほど殺し合いをして死んだ勇者ユウトとそれを屠ったリュセフィーヌの2人が、その場にいるだけの事であった。
「リューちゃ~ん。おまたせ~ヴォルシナは~ひとまず決着しそう~だね~」
羽を、はばたかせながら間延びをした口調で近づいてきたアーデルハイドはリュセフィーヌに向かって首都での作戦成功の報告を伝えてきた。
「さんきゅーじゃ。さすがは計略の聖女の異名は持ってはおらんの」
「その二つ名は~きらい~」
「ははは。すまぬの」
リュセフィーヌの目の前に着地をしながら頬を膨らませて怒るアーデルハイドに謝罪をする彼女は、再び真剣な顔をしてアーデルハイドに尋ねる。
そして今の会話から想像できるように、今回の計画はアーデルハイド自身が計画し、演出のプロデュースまで立案をしていたのである。
余談ではあるが、一部の演出にアーデルハイドとミノルが悪ノリしたことは、2人以外は知らない事であった。
「ミノルは大丈夫かの?」
「大丈夫よ~リューちゃんが~本気で鍛錬して~それについて来れるんだもの~普通じゃ~負けないわね~」
「そうか、ならば良いの。」
通常では考えられないレベルの鍛錬を続けたミノルは、もはや勇者如きでは届かない事はアーデルハイドも知っていて、それを心配するリュセフィーヌを見て、彼女は昔のリュセフィーヌからは、想像もできない事であると思っていた。
「アディ、それではこの勇者頼めるかの?」
「いいわよ~とどめにこの子必要だから~取りに来ただけだし~。…んしょっと。えい!」
そう言って魔法袋から”トビ”を取り出すと、死亡した勇者の背中に刺し込んで、引き摺り上げる。
本来”トビ”は木材などに使用するための道具であるのだが、大量に発生する戦争や魔獣の氾濫などでは、わざわざ手で持ち上げて持って行ったりするのは、かなりの重労働で返り血や体液などでも汚れる作業あったが、ある日戦争に参加していた山師がそれを使用していたことから始まった。
最初の頃は、「死者を冒とくする行為」等と言われていたが、使ってみると便利で、死体を手に持つことが無く、それによる感染症なども防止、腰などに負担もかからないと理由で今では普通に使われる装具である。
「それじゃあ~貰っていくわね~。ミノルちゃんと~無事に帰ってきてね~」
そう言いながら手を振ってヴォルシナへと飛び立っていく。
「了解じゃ。アディもソレを落とさぬようにな」
リューも返事をして遠くなっていくアディを見ながら、右側に生い茂る森から聞こえてくる剣劇と爆発音を聞きながらミノルがけがもなく無事に帰ってくることを祈るリュセフィーヌであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この!なんであたらねえんだ!」
勇者ケンジは2m程の分厚く大きな剣をまるで自分の手足のように軽々と振り続けていたが、ミノルには一切ヒットしていない事に苛立ちを覚えていた。
彼が振るう剣は武骨な剣ながらも木から落ちてくる葉を両断するくらいの鋭さを持っており、当たれば一溜りもなく恐怖を難じる筈が、ミノルはそんな事も意に介さず軽く刀身に手を当てて、そのまま剣筋を別の方向へと変えている。
後ろからは勇者ナオと勇者エリカからの聖弓の攻撃や、光魔法による攻撃も弾き、霧散させている。
「この!この!乙女のお尻にあんなもの突っ込んで!」
「魔法がキャンセルされてる!どうして?」
ナオは先程のセクハラ行為に怒り心頭であるが狙いは正確に、ケンジの邪魔にならないように射っているが、ケンジの剣と同じく躱され、弾かれている。
教会からの”女神の息吹”でブーストを掛けられ、エリカからも補助魔法のフルセットで重ね掛けされていると言うのに、ミノルに全く有効打を浴びせる事が出来ずにいるのである。
「おーい。これが限界かな?それともまだ切り札があるのかい?それなら早くした方が良いよ?そうじゃないとまたカンチョーお見舞いしちゃうよ?」
ミノルはリュセフィーヌの赤子の手を捻るような余裕ではないが、ある程度の余裕があり、さらに挑発を続ける。
「ケンジ、ナオ。私もうMPが切れそう」
あれから1時間は戦闘を続けているが、いくら膨大な魔力と力を持つ勇者といえど、補助魔法と攻撃魔法そしてミノルから放たれる各属性の魔”導”攻撃に勇者たちのMPは底を突きかけていた。
その証拠に先程から3人は魔力回復や体力回復のポーションを服用していた。
「エリカ!私ももうMPとポーションが無くなりそう!」
「エリカ!ナオ!ヒールポーションは俺に全部よこせ!俺はマジックポーションをやる。前衛攻撃に集中するからもうMPはいらねえ」
「じゃあお願い!頼むわね」
再び移動を始めたミノルの後を追いかけながら、アイテムの交換を始める。
「それを待っていたんだな。さて、パーティ潰しと行きますか」
移動先ではミノルは立ち止まって3人を見据えながら、一人呟いていた。
「このガキが!くらえ!”滅龍連撃”!」
「いっけえええ!〈エクスプロードアロー〉!」
「〈身体強化〉〈能力増大〉〈瞬速付与〉〈命中付与〉!」
ケンジのバスターソードが真中から2つに分かれて二刀流となり剣の輝きが増し、俺に斬りかかろうと懐に跳び込みを始める。
そしてナオは矢筒から銀色に輝く4本の矢を番えてミノルに向かって放つと赤く輝きながら矢とは思えない速さで飛んでいく。
エリカは2人に増幅と武具へ付与をかけて、反撃に備えて〈魔法障壁〉と〈エクストラヒール〉の準備をする。
「へえ、がんばるじゃん」
ミノルはそう言いながら頬をつり上げながらケンジの方向へと走り出すとケンジはその場で足を止め腰を沈めて構える。
「ナオの攻撃を俺にも与えようってか?無駄だ!俺にたどり着く前にナオの攻撃が当たる!」
「どうか……なっと!」
ケンジに向かって走り出していたミノルは走り幅跳びの様な跳び方をすると、矢がそのまま軌道を変えてミノルへと襲い掛かる。
「ジャンプしても無駄よ!その矢は狙った標的に当たるまでいつまでも追いかける魔法の矢なんだから!」
「それはありがたいな!」
ナオの言葉にミノルは答えると、空中で器用に体を捻って自身に命中する寸前で、矢を指の間に挟みながら着地をした。
「「なんだって!」」
ケンジとナオはミノルの曲芸に驚きの声をあげてしまう。
着地をしたミノルはそのままケンジへとダッシュをして懐に飛び込もうとするが、ケンジは待ってましたとばかりに、剣技を放つ。
「滅龍連撃”極み”!」
ケンジがそう言い放ちながら、射程圏内へ入ったミノルに目にもとまらぬ速さで60連撃を放つと、最後に二刀で心臓と眉間目掛けて突きを放った。
「甘かったな。クソガキ」
そう言ったミノルを見ると着用している衣服の数か所が破けているが、その下の素肌には傷一つなく、さらに二刀の剣を眉間は左手、心臓は右手で両手の人差し指と中指で挟みこみ止めていた。
そして二刀を挟んだままの状態でケンジの腹にダブルキックをお見舞いしてケンジを後ろへと蹴り飛ばした。
「「ケンジ!」」
ケンジが蹴り飛ばされるとナオとエリカがケンジの名を呼ぶが、次の瞬間ケンジが爆発に巻き込まれる。
何故健二が爆発に巻き込まれたかというと、ミノルは先程のケンジの剣技を躱しながら、左右の腕と足に《起動遅延》の魔導を施した掴んでいる弓を突き刺し、蹴り飛ばした後に《遅延解除》を展開して、それが爆発したのだった。
ケンジは両手両足の矢が爆発した箇所は肉がえぐれて骨が露出しており、深い傷を負ってはいるが死んではいないようである。
爆発の衝撃で気絶をしているらしく、それに気づいたナオはエリカに指示を出す。
「エリカ!私が援護するからケンジの治療をお願い!」
「わ、分かった!」
ナオが弓を構えミノルに矢を放とうとし、襟かはケンジを治療しようと〈エクストラヒール〉の展開を始める。
「遅いんだよ」
ミノルは既に後衛の2人の目の前にいて対応の遅さを指摘した。
「くっ!」
ナオの聖弓は近接戦闘用に握りと矢摺以外は武器にもなるためそのままミノルへと刃の部分で斬りかかるが、それを躱しエリカの懐へと跳び込む。
「この状況で回復役を放って置くバカはいないんだよね」
そう言ってミノルはエリカの眉間に人差し指で軽くつつくと、エリカはその場に崩れるように倒れてしまった。
「これで無力化成功。さて、次は?」
そう言いながらミノルはナオに近づいて行くが、ナオは再び弓で攻撃するが全く当たらず、延髄へと蹴りを食らってしまいその場に倒れてしまう。
「お前たちは、時間をかけてゆっくりと嬲り殺してやるから、楽しみにしていなさい。」
ナオを見下ろしながら話すミノルをナオは薄れゆく意識の中で聞いた後、意識を閉じるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いたします。
次回はかなり短いですが、22時を予定しております。
明日も最低1話は入れますのでよろしくお願いします。




