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何とか効く薬は無し

お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます。



拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。

「くそ!私の野望が!私のこの16年は何だったのだ!あの役立たず共より頑張っている私がどうしてこんな目に!」


 ヴォルシナへと派遣されてきた司祭はアドラ聖教の本部の連中への悪態をついていた。

 

 先程の教会内でミノルが乱入した上の乱闘騒ぎで典礼祭を台無しにした上に聖堂内の女神像や高価な装飾品、備品まで滅茶苦茶にされてしまったのだ。


 しかし司祭の不運はまだ続いたのである。ミノルが外へと飛んでいった後を追い外へと出ていき教会の真上の空で留まっているミノルが変身してが古龍になったのだ。しかもドナクレアの魔龍だと名乗りを挙げてさらに東エリアの空にも1匹現れたのだった。


「そんな…バカな…」


 司祭は驚くのも無理はなく、まさにドナクレアの魔龍がそこにいるのであった。


 司祭はドナクレアの魔龍が討ち取られたとの報を手紙で知るのだが、その中に魔道具で記録された魔龍の全身像が撮影されたものを見る事が出来ており、リュセフィーヌの龍化した姿を知っていたのだが、ここで勇者たちが失敗したことに気付く。


 魔龍を討ち果たし、解体作業へと入った時に心臓付近にある魔石が、龍魔石ではなく魔力石だったと報告に記載があり、てっきりフィーグルの大地へと還ったものと思われていた。


 近年、古龍などの研究が進み”命の雫”は魔族、人族などに憑依すると元の身体を取り戻す事が可能であると言う事が判明している。


 つまりは、死の間際に憑依する個体が存在したことになるが、それが今、司祭の頭上を飛んでいる古龍が憑依体であることが予想され、1匹を倒したはずが2匹に増やしてしまった事になる。


「討伐には失敗か、だがそれらしい憑依した個体はいなかったと、報告には記載があったが、なぜだ?」


 司祭は気付かないであろう、勇者が偶然異世界への境界を破ってしまってミノルへと憑依したことを――。


「「そして告げる。人族よ、天使族よ、それに与する愚か者共よ。明日より1週間の猶予を与える。まずはこのヴォルシナより立ち去れい!そしてそれから1ヶ月以内にフェリエの地からも立ち去るのだ!」」


 リュセフィーヌとミノルの通告が言い渡され、司祭は現実へと戻り衝撃を受ける。


 もはや西エリアの住民達はパニックへと陥っており、教会へと助けを求める声が出始めてきたが司祭は素早く教会の中へ避難しており、窓から覗けば境界に押し掛ける教徒や一般人までいるのが見えた。


「このままではまずい!私達も早く非難をしなくては!」


「司祭様、避難は無用です。我々がドナクレアの魔龍など討ち取って見せましょう!ですから司祭様は住民に落ち着くよう説明をお願いいたします」


 勇者ユウトが司祭の元に近づいてきて非難は不要と伝え自分達がドナクレアの魔龍を討ち果たすと約束するが司祭は考える。


 勇者ユウト、勇者ケンジ、勇者ナオは序列上位であり、その実力は1人で1つの旅団に匹敵すると言われている。まして上位に行けば行くほど実力の信頼度が高いと言われているが、司祭が気にしていたのは勇者エリカであった。


 彼女は6年前の魔大陸の遠征から帰って行方不明となっていたが、1年ほど前にヴォルシナの南隣にある小さな町の孤児院で孤児たちを養いながら冒険者をして暮らしている事が判明し、とらえられている。


 エリカはもう戦争は嫌だと言い、このままでは気が狂ってしまうと頑なに断り続けるが、しょせんは脱走兵でその意見は却下される。そして公国と教会は本来は死刑であるが、特例をもって不問とした。


 従来通り勇者としての責務に従事していれば教団から孤児院の運営資金が定期的に支払われる。もし責務を放棄した場合は即処刑、そしてエリカの運営する孤児院も処分対象となるが、このまま古龍の言う事を聞いてしまうと孤児院が解放されてしまい、エリカが反旗を翻しかねんと危惧していた。


「勇者ケンジ様、もし勇者エリカが裏切る素振りでも見せようものならよろしくお願いします」


 司祭の囁きに勇者ケンジは頷き、古龍討伐へと出て行き、教会内部では勇者の加護の増幅の為に祈祷を始めた。





 侍祭達が祈祷を始めると中央に置いた剣を掲げる女神像が輝き勇者達の力が増幅したことを確認すると、教会の内部にある西エリア全体へ放送するための魔道装置へ着くと住民を鎮めるため、放送を始めた。


「西地区の皆さん!御安心ください。たった今勇者4人がドナクレアの魔龍討伐に出発いたしました。そして今まさに女神の加護増幅の祈祷を始めた所です。私達の祈りが、勇者様に力を与えるのです。同化心を落ち着けて勇者様の勝利を祈りましょう!」

 

 司祭はエリア内の放送用魔道具で演説すると住民達から歓声が上がって「これで勝てる!」「勇者様がいれば無敵だ」など、声も上がる。


「くたばれー!この獣人風情が!お前らなぞ勇者様の敵ではないぞー!」


「ヴォルシナは人族の敵だー!」


 勇者が魔龍を討ち取ってくれると言う幻想とも云うべきモノに縋り、大人数での行動による錯覚もあり、東地区へと暴徒となり東エリアへと大勢が移動し始めた。


 西と東の境界である川を挟んで、西側から人族が押しかけて、今まさに西エリアの住人と東エリアを守るフェリエ共和国兵と一触即発状態へと高まっていく。


「あら~そんなに大騒ぎされては困るわ~静かにしてもらえるかしら~?」


 突然の空からの大音量の声に暴徒たちは静まっていき、みんなが空を見上げる。


「そうそう~そうやって~静かにするのが~マナーってものよ~?」


 何か間延びのする声が、東と西の境に響き渡る。


 そして次の瞬間、10個の光の球が空中に現れスポットライトのように上空にいるモノを照らし出す。


 それはまるで水のように青く、スポットライトに反射する光は水面から反射する日光の様に輝いている。身体にはトライバルと呼ばれるタトゥーの様な赤い模様が刻まれており、羽は青の大小4枚が羽ばたいており左目は金、右目は銀に輝いており、まるで汚れなないような真っ白で長い鬣が靡く龍がいた。


 アーデルハイドがこの騒ぎを治めるべく《身体構成》と《顕現》で龍化した姿であった。


「あらあらあら~?どうしたの~?そんなにお口を開けてると~顎が外れちゃいますよ~?」


 威厳があり、恐怖の対象である姿に似合わない間延びの喋り方をしているが、人族は蛇に睨まれたカエルのように身動き一つしなくなってしまっていた。


 すると緊急放送を伝える魔道具スピーカーからある音楽が流れだし、人族達の肩がビクリと跳ね上がる。○ヴァ○ゲリ○ンの”暴走モード”の音楽である。


「あんぎゃ~~~~~~~♡」


 アーデルハイドは手足を伸ばし、怪獣の叫び声をまねたようだが、かわいらしい声に威厳もないが、音楽と叫び声(?)そして恐ろしい龍の姿の3連コンボに人族は恐慌状態に陥った。


「また1匹龍が出たー!」


「助けてくれー!バケモノだー!」


 人族は一斉に川から、我先にと離れていく。


「バケモノって何よ~もう~!失礼しちゃうわね~」


 アーデルハイドは腰に手を当てて”怒ったぞ”のポーズをするが、姿は古龍でありかわいげもへったくれも無い事をフェリエ共和国の兵士は誰一人としてツッコまなかったのであった。





 司祭は驚愕し絶望していた。


 何故なら2匹で十分脅威であったのに、3匹目の龍が出現したからであり、銀の龍に続いて今までに見たこともない青い龍にもはや勇者などではどうにもならないと観念してしまった。


 この雪深い冬の中、多くの人族、天使族を引き連れてヴォルシナを去り、さらにフェリエも去らなければならないと言う過酷な旅路に絶望という言葉しか浮かんでこなかったのである。


 アドラ神聖公国まで徒歩で移動したとして3週間。しかし冬の道をひたすら歩いても1ヵ月はかかってしまうだろう。ドナクレアの魔龍がくれた時間は1ヶ月と1週間。ぎりぎりであり、それを過ぎると魔龍による殲滅が待っている。


 もはや勇者などには構っていられず、司祭も避難の準備へと取り掛かったのであった。



   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

リュセフィーヌのターン



 リューはユウトの打ち込む剣を何度も往なし、そのたびにユウトは体勢を崩して地面にキスをするが、直ぐに立ち上がっては何度も斬り込もうと挑み続けた。


「くそ!ずるいぞ!正面から立ち会うべきだ!」


「いやいやいや。おヌシよく見てものを言え。正々堂々真正面から戦っておるではないか。…もしかして躱すと言う言葉も知らぬのかえ?」


 ユウトは図星を突かれたらしく、顔を顰めながら「うるさい」と一言放つと再びリューの懐に飛び込みながら突きを放つ。


「ほれ、正面から受けてやったぞ?それからどうするのじゃ?」


 表情には出していなかったが、ユウトは驚きを隠せないでいた。剣の先を黑い棒の様な先で受けていたのだ。


「驚いたか?これはミノルの世界では”棍”というものらしくてな。それをヒントに魔鋼まこうと呼ばれる金属で作ったものじゃ」


 そう言いながら、棍を器用に使って剣の切っ先をそのまま引き寄せ、棍を回転させるとユウトの頭頂部へ叩きつけるとまるで、木魚を叩いたような音が鳴り響き再びユウトは地面へキスをした。


「随分と軽い音が鳴ったのう。詰まっておるのか?」


 そう言ってリューは左の人差し指で自分の側頭部に3回当てる。


「くっ!ばかにするなあ!」


 ユウトが叫んだ途端、剣は白銀に輝く剣で金色の光が剣を覆っていき、鎧自体から発する白く輝く光に少年は全身に纏わせていた。


「きた!これでお前も終わりだ魔龍め!」


「ほう、”女神の息吹”か。増幅の聖魔法じゃな?相手をしてやる。かかってくるが良い」


 そう言って手のひらを上に向け、一つの指でこっちに来いの仕草をする。


 ユウトは〈身体強化〉〈能力増大〉を展開して”接身”のスキルを使い5mの距離を一気に詰めての突きを放ち次に左上から右下への袈裟斬り、右下から左側面への切り上げから右上へのもう一回切り上げ、最後に、頭頂から下までの切り下げをして、その右手を地面につけて足元へ左からの回し蹴りをたった2秒程度の間に”剣術Lv7”と”体術Lv7”を駆使して攻撃を与える。


「これで終わりだ!」


 その場から”離身”のスキルを発動して離れてから〈極炎〉の上位魔法を展開して放つと、リューの足元から赤い火柱が10m程立ち上り、対象者を焼き尽くそうと燃え盛った。


「どうだ!女神からの能力増大に自分への〈身体強化〉〈能力増大〉の重ね掛け!さすがに魔龍もただでは済まないぞ!」


 ユウトはそう叫びながら再び剣を構える。10秒ほど経つと立ち上っていた炎は消え去り、中にいたリューの姿が露になる。


 リューは、その場で足を交差させており、棍は左肩に立て掛けており、右手を開きながら前に出して、マニキュアを塗った後を確認しているような仕草を取っていた。


「ん?もう終わりかの?」


 まるで何かあったのか?と言うような態度を取るリューの身体には、火傷や傷が一つもなく、黑い生地に所々に金の刺繍が何かの模様をしているチャイナ服を思わせる薄手のドレスも焼け焦げた跡や土埃も付いていない。


 ユウトは愕然としていた。女神からの能力増幅に、さらに付け加えた力で剣技と体術のすべてを叩きこんだ筈なのに、相手は平然としている事が、信じられなかったのだ。


「どう、して?な、なぜ、平然としている?手ごたえは確かにあったのに?」


「アホじゃのう。手応えを感じたように棍で防御したに決まっておろうが、ミノルからもらったこのドレス、傷を付ける訳にはいかんからの?」


 リューは平然と答え合わせをして、その答えにさらに驚くユウトが抗議し始める。


「嘘だ。嘘に決まってる!嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!嘘だ!嘘だー!」


「やかましいのう。それではこちらも反撃するの」


 そう言って肩に突っ掛けていた棍を軽く足で蹴り、空中で回転させると右手で器用に端を掴んでいた。


「この魔鋼はの?通常だと木炭位に軽く脆いものなんじゃが、魔力を纏わせる量によって硬さが増すのじゃ。その硬さは、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、どの金属よりも固くなるのじゃ。そしてこれをこう使うと」


 そう言って手がら青白いオーラのようなものが出て、棍に纏わり付くとリューは軽い足取りでユウトが、立つ手前2mの所で棍を素振りのように上から下へと振る。


「そうなるのじゃ」


 ユウトは何が起こったのか分からなかったが、気が付くと体が左へと重心が偏るので構え直したが、今度は剣が重いので、何事かとリューの動きに注意しながら視線を向ける。


「え?あ?あれ?ああ、ああ!あああああああああああああ!うでがああああ!」


 ユウトは叫ぶ。聖剣を握る手は両方なのだが、右手がおかしかったのである。確かに右手は聖剣をしっかり握っているのだが、右肩につながっておらずぶら下がっており、右肩からは血が噴き出していた。


 それを自覚したとたんに、右からに激痛が走りユウトはその場に膝をつき苦悶の表情を浮かべる。


「唯の叩きつける棒切れも、固く素早く振り回すと刃物と同じ状況になるのじゃ。まあ、斬りつけたと言うより叩いてちぎったと言う方が早いの」


 ユウトは立ち上がることなく、リューを見据えず、その場で蹲り右肩を押さえながら唸るばかりであった。


「立て勇者よ。貴様がフィーグルの民に与えた痛みはこんなものではないぞ」


棍の先でユウトの顎をしゃくり顔を上げさせると涙と鼻水と涎で顔はぐちゃぐちゃになっていた。


「ほれ、立って剣を持て。勇者たるもの命が尽きるまで勇敢に戦ってこその勇者なのじゃぞ?情けない顔をするでない」


 リューの戦士たる矜持を述べてもユウトは経つ気配がないので「仕方がないのう」と溜息をつきながら棍を器用に操って、転がる右腕をユウトの肩に近づけ〈治癒〉を展開するとユウトの右手は元に戻ってそれをユウトは泣き止み、右手の動きを確かめていた。


「どうじゃ?痛かろう、苦しかったろう。貴様はそれをいくつもの民草に与えたのじゃぞ?貴様の勝手な思い込みと勝手な決めつけで何人死んだ?その手をどれだけ染めたのじゃ?誇りある戦いではなく犯罪という外道の行いで。」


「うるさい。お前に言われる筋合いなどない」


「ふむ、傷が治った途端に減らず口を叩きよる。じゃがこの世界の法に照らし合わせれば貴様は犯罪人じゃ」


「やかましい!僕が正しいんだ!お前のような魔龍になぞ糾弾される筋合いはない!」


「‥‥反省の色なしじゃな」


 リューは呟くと、ユウトを睨み棍を振る。


 ユウトは「ぶぎ!」と短く悲鳴をあげるがリューの攻撃は止まず、往復ビンタのように左右の頬を殴り続けるが、段々とリューの動きが激しくなる。


 右に振る後に上から振り降ろしたり、横薙ぎに振る、下から振り上げる、そしていろいろな動きをして遂にはリューが棒術の舞を踊るように動きユウトはその場で段々と立ち上がっていき、宙に浮き始めると糸がもつれた操り人形の様な動きへと変わる。


 暫くするとリューが動きを止め、ユウトはその場に仰向けに倒れた。


「ふう、ここまで痛めつけてもまだ他人の痛みを理解できんのか?どうじゃ?」


 リューはユウトに近づき見下ろしながら問い質してみた。ユウトの顔や手足は内出血はしているが腫れてはおらず、リューは痛みのみのダメージを与える事に専念したらしく、ユウトはゆっくりと口を開き話し始める。


「卑怯者」


「は?」


 リューは予想だにしなかった答えに間抜けな返事をしてしまう。


「無抵抗の人間を痛めつけて楽しいか?このサディストめ」


「‥‥‥それが貴様の答えか?救われんな」


「卑怯者、卑怯者、卑怯者、卑怯者、卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者ひきょ「うるさい」」


 リューは一言言ってユウトの首目掛けて踏みつける。

 すると何かが砕けるような鈍い音を立てながらユウトの首はつぶれて絶命してしまう。


 リューは近くにある岩に腰かけ溜息をつきながら絶命したユウトを見ながら呟く。


「反省の色も見られず己を常に正当化するとはなんと愚かな奴じゃ。他人に自分の価値観を押し付けるでないぞ。他人に歩み寄り、意見をぶつけ合って初めて答えが出るのじゃぞ?」


 そう言いながらリューは拾った小石を投げつける。


「バカ者が。フェリエは貴様を殺しはせぬ。多分〈再生〉か”生命の水”を使うじゃろ。消滅まで死ぬことの無い生き地獄を味わせるためにな。」


 横たわるもの言わぬ死体にリューは言葉をかけたのだった。




最後までお読みいただきありがとうございます。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いたします。



明日は確実に1話入れますのでよろしくお願いします。

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