逃亡生活②
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潜伏して3ヶ月がすぎた。
毎日やる事もなく過ごしていると気が滅入って来てしまう。
Web小説もほとんど見尽くしてお気に入りの数作品の更新待ちだし
ネットゲームもハマるはど面白いものも無し。
ただ、羽だけは進展があって訓練の結果、片方だけで50㎝ある羽が「羽ばたいて飛べるかな?」とふと思い羽を動かそうとしたその時、羽が2mくらいまで大きくなることが分かった。
もちろん飛ぶことを意識しないと元の大きさまで小さくなった。
もしかして飛行が可能になるのではと毎夜河川敷に行っては練習をしてみたが、地面から30㎝位までで精々10秒程度しかどうやっても浮き上がらない。
初めの頃は「おお!」と喜びはしたがこれ以上は無理のようだ。
4ヶ月目
羽の練習と併せて尻尾の練習を始めた。
現在はピタンピタンと地面に打ち付ける程度からググッと持ち上げて頭の上にのせて「ちょんまげ」などと遊んでいたが、もう少し器用に動かせないものかと思っていた。
以前からそう思っていて少しづつ先っぽだけをピコピコと動かしたりしているが、一朝一夕にそう簡単に出来るようにはならないので羽と同じく毎日の鍛錬が必要と思われる。
次に、この間の「魔法」についてだが、試しに「カミナリよ!」と言いながら両手を前に差し出してやってみたが反応はなかった。
次に念じて「ん~!」と踏ん張ってみたが「プッ」とおならしか出なくてがっかりしたものだ。
しかし繰り返しているうちに1回だけ目の前で「パチッ」と音がしたので、自分があの時見たカミナリは俺が使った魔法で多分確定だろう。
そこで「魔法を使う事が出来る」と頭の中に絶対的な確信を持ちながら電気魔法を意識して繰り返す事2週間目に遂に「バチバチッ」と目に見えるスパークが発生した。
俺は気を良くして励んだがこれ以上の進展がないと少々ガックリとしたながら「何かhow-to本がないものか?」と思いひらめいたのが、Web小説でよく見た「魔力制御」を思い出し小説を読みながら実践してみた。
「丹田に~」の文面を参考に体の中に血液以外の何かが流れていることを実感した。
そうすると空気の中に今まで感じる事がなかった何かが漂っており頭の中で「あ、これが魔力」となぜか疑いもなく認識するようになってしまった。
Web小説侮り難しである。
そして現在、人差し指と親指の間にスタンガンの様に「バチバチバチッ」と電気を作れるまでになっていた。
小説みたいに大規模魔法とか使えないかなと危険な思想を少々思っていたりもした。
5ヶ月目
いよいよこの体になって1年になろうとしていた。
気にはなっていたが、罠か何かあるのでは?と遠ざけていた客先などに電話をかけてみる事にした。
ホームタウンが分からないように電車で別の区へ移動して公衆電話からかけて一応この声だと子供なので別人を装う事にした。
「(プルルルルル)(ガチャッ)はい○○株式会社です。」
電話に出た男性はいつもお世話になっている担当の人だった。
俺は嬉しくなって「久しぶり」などと声を掛けたかったが、ここはグッと我慢をしながら現状を確認するべく電話を続けた。
「はじめまして○○工事会社の勝良実の甥なんですが、叔父と連絡が付かなくてそちらにお邪魔してるかと思って電話を掛けたのですが。」
俺は、彼に嘘をついている事に心の中で謝罪しながら聞くと「え?」と少し驚いた声になりながら答えてくれた。
「勝良さんでしたら1年前ですかねえ?死亡したという報告が来て今はそこの従業員の方が後を継いでうちの仕事請負ってくれていますけど、知らなかったんですか?」
心構えはできていたが「もしかして」という気持ちがあったことに嘘はない。
俺は胡麻化し場がら丁寧に礼を述べて電話を切って、気分を切り替えて今度は元自宅アパートの不動産屋に電話をしたがやはり先程と同じく「死亡」の回答が返ってきた。
電話を切って溜息をつく。
改めて吉良どもに復讐を誓いながら、俺の会社を相棒が継いで切り盛りしてくれている事には感謝しつつ、まさかあいつもグルじゃないかな?とも疑ったのであった。
6ヶ月目
先日の電話事項から多少のショックを受けながらも、いつもの羽、尻尾、魔法の訓練を繰り返していた。
―いつかあの連中に復讐するために―
尻尾だが、もう少し器用に動かしたいと訓練した結果、缶コーヒーをくるりと巻き付けプルタブを開ける事が出来るまでになったし、手の代わりにタブレットの操作まで可能になった。
しかしどうやら尻尾の力が強く缶を開ける前にを巻きつぶしてしまい「俺の尻尾はアナコンダか!」と一人ツッコミをしていた。
そして馬鹿力があるとは知らなかった時に尻尾が初代のタブレットの画面を操作中に破壊してしまったので、壊してしまったショックを噛みしめつつ力加減の調整が今後の課題だと心に誓ったのだった。
羽の検証は進み浮くことはかなわなかったが、グライダーのように滑空する事が出来る事が分かり練習を繰り返していた。
滑空するときは尻尾でうまくバランスを取りながら飛ぶ事が出来たのでこれは大きい成果だった。
魔法についてだがかなりの進歩を見せていた。
カミナリは5メートルまでではあったが先まで飛ばす事が出来るようになったし、同じく火水土も同様に操れるようになった。
これは空気中を漂っている魔法の素、小説では魔素とかマナと呼んでいるらしいが、空気中だけでなく地面や水、あらゆるものに宿っていて、それを操って発現できるようになった。
もしかして日本の八百万の神はこれを指しているのでは?と思ってしまった。
もはやこの体はファンタジーそのものになっており「ドラゴン」という言葉に嫌悪感はなく、むしろ親近感すら湧くほどになっていた。
そう思っていてからというもの体力は数時間全力で走っても疲れる事はなく、筋力については頑張れば軽自動車までならひっくり返すことが出来る(実際にはやっていないが同レベルの重量の石でやった)ようになり、自分でもビックリした。
小説とかを鵜呑みにするならば、多分怪我もすぐ治るし鉄砲の弾位なら弾き返すのではないだろうかと思っている。しかし試すとなると小説通りでなかった場合は怪我では済みそうにないので怖くて試してはいないのは現状だ。
そうして人の目を避けながら訓練を重ねて7ヶ月目が過ぎ、8ヶ月目に差し掛かろうとしていた頃、ついに連中の動きがこのアパート周辺に見え隠れしてきたのだった。
――――――――――
連中がついにやって来た。
どうやら、この近所に聞き込みが頻繁に来ているらしい。
俺は、いつでも動けるように着替えなどをバックに入れておいて押入れの天井裏に隠しておいた。
この頃になると着替えと装備でバックが2つになっていたが持ち歩いてもさほど邪魔にならなかったので、2つ持ち歩くことにした。
こうして逃亡準備が完了して近所の動向に警戒をしながら日々を送っていた。
俺は周囲に人がいないことを確認はしていたが、次月の家賃を振り込んで「これで次月も安心」と、ふと意味もない理由で警戒を解いていた。
ATMから出てきたその時、3人の男に囲まれそのまま車に連れ込まれたのだった。
俺は両手足を縛られてながらも車の中で男共を見た。
あの助手連中かと思ったが、全員全く知らない人達だったので「誘拐か?」とも思ったがこの黒ずくめのスーツ連中にある疑問を投げてみた。
「まさかアンタらあの病院の関係者か?」
「・・・・・」
「じゃあ誘拐目的か?」
「・・・・・・・・・・黙れ。」
・・・にべもない。
とりあえず黙っている事にしよう。「いざとなれば訓練した力を駆使してコイツ等ぶちのめしてやるからな」と思いつつ俺は車の進む方向を確認していたが、どうもあの病院へ向かっていないらしく市ヶ谷方面へと向かっているようだった。
さて、覚悟はしていたが、うまくいくだろうか?という不安が大きく「大丈夫だ!」という気持ちは皆無と言っていいほど手足が震え心臓もドキドキして「怖い」が心の大半を占めている。俺もやはり一般市民の凡人なんだなと何処か頭の隅で冷静な自分が言っていた。
途中から猿轡をつけられて頭から袋をかぶせられて解らなくなってしまったが、見えない不安よりかえって落ち着いてきていた。
車はどこかに到着して車から俺を引きずり降ろし、多分肩だろうか担がれながら連れていかれた。
衣服は乱暴に脱がされて拘束の全てを外されて真っ暗な部屋に投げ込まれ重い音を立てながら扉が閉じられた。
「いってーな!少しは丁重に扱え!児童虐待で訴えるぞ!」
と閉まっている扉を睨みつけながら悪態をつく。
「児童虐待って、あなた45歳でしょう。」
スピーカー越しに女性の声が聞こえてきて部屋の照明がついた。
そこはどこかで見たような部屋の作りをしていたが、水槽のようなのぞき窓は前回よりも2m程上に設置されており俺はその向こうに見える「あの女」を睨みつけるのだった。
「久しぶりですね。吉良先生、元気そうで何よりです。ずいぶん気苦労が絶えなかったようですねお肌の曲がり角な年齢なんですから気を付けた方がいいですよ?」
俺は皮肉たっぷりに吉良に向かって言葉を吐きつけた。
「ええ、ええ。苦労しましたとも「木の葉を隠すには森の中」とはよくも言ったものです。てっきり人目のつかない田舎とか遠いところに逃げていたかと思いましたわ。まさかこんな近くに住んでいたなんて。」
「そうですね。あんた達に復讐するまでは遠くに隠れ住むわけにもいかないものでね。」
俺は会話をしながら、どうにかこの状態から逆転劇が出来ないものか探っていた。
そして、壁を叩いたり天井やあの女に届く事が出来ないか軽くジャンプをしたりしながら、俺は覚悟を決めて時間を稼ぐべく会話を続けた。
「車を走らせた方向は途中まで見せてもらった。ここは市ヶ谷なんだろ?もしそうだとしたら国ぐるみでの行動かい?それともその近くにある病院か?もしそうだとしても関りがありそうな気がするな。」
「へえ、ただの田舎の高卒の分際でそこまで頭が回るのね。」
「ああ、てめえらみたいな社会の何たるかもわかんねえ公務員しか知らねえ頭でっかちのあんぽんたん連中には考えもよらねえんだろうな。」
この野郎「高卒の分際だと?」と、カチンときたので人を馬鹿にした言葉に俺も乱暴な口調になってしまった。
「あのまま被検体としていればもう少し生きられたものをわざわざ自分の寿命を縮めるなんて馬鹿な人。」
そう言って吉良は薄笑いを浮かべ俺を見下ろしばがら言ったのだった。
次の瞬間天井のスプリンクラーと思っていた個所から「シュー」という音がしてきた。
俺は「?」と思いながら見上げていると突然呼吸がしづらくなり、こみあげる吐き気からせき込むと口から血が出てきていた。
多分毒ガスか何かだろう、足に力が入らなくそのまま倒れそうだったが足に力を入れて踏ん張り倒れ込むのを防いだ。
「あら、頑張るわね。さすが抗体生成能力を持つ生命体ね」
「生命体だと?俺は人間だろ!それくらいの事っゲホゲホゲフッ!」
「あなたの生成能力では追いつけないみたいね。さすが米国謹製の兵器ね。」
「米国だと?」と、言葉が出ずただ俺はあの女を睨みつける事しかできなかった。
「こんな貴重な検体を殺すなんて。残念だけど私の管轄は今回をもって外れる事になったわ。」
「管轄だと?俺をどうするつもりだ!てめえら何考えてやがる。」
そう言いながら遂に俺は膝をつき四つん這いになりながら悪態をついた。
「最期に教えてあげるわ。米国と手を組んだ部署は「対UMA」のチームよ。」
「・・・・・・」
俺は、四つん這いのまま無言で聞いていた。
「貴方も気付いていると思うけど、たぶん貴方ドラゴンでしょ?」
そういった吉良の言葉にビクンと俺は体が反応した。
「私もファンタジー好きよ?でも現実にいるとは思わなかったわ。その強力な生命力の根源を調べたかったけど、しょうがないわ。あとで貴方の解剖された臓器でも調査させてもらうから。」
そうスピーカー越しに残念そうに俺に向かって言っていた。
「ああ、そうかい。それじゃあ俺はその2国を相手に戦わなきゃならないんだな。」
俺はそう言いながら、スクっと立ち上がり吉良を再び睨みつけたのだった。
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次回更新は明日7時です。