意外な事実と悲しい現実
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読者様からの指摘で一部呼び方を変更します。
アドラ神聖公国の「公国」では王、皇子、王女の呼び方はないとの事でググって調べました。
王→公
皇子→公子
王女→公女
余裕を見ながら変更していきます。
拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
翌日、ミノル達は作戦実行の為に各区画を歩く。
フェリエ共和国の首都ヴォルシナは背後にルトータ山脈の一部パニオリ山からの扇状平野を利用して作られた守りに易し攻めに難しの自然を利用した都市である。
中央エリアの背後から落ちるフェンリル大滝が流れ首都の中央を川として流れている。住民たちはそれを水源として利用した水の豊かな都市である。
議会場などがある中央エリアで第1城壁、比較的裕福な住民が暮らす第2城壁、商会やギルド一般の人が暮らす第3城壁、工業を中心とした工房やその住民のクラス第4城壁の幾重にも重ねられた城壁に守られた、総住民2万4千人が暮らす都市である。
首都の中央を流れる川を境に東が獣人族、西に人族、天使族、ドワーフ族の一部が暮らし今まさに川を隔てて真っ二つに別れて対立してしまっている。少し前までは種族の隔たりなどなく皆平等に、助け合い、笑顔の絶えない活気のある都市であった。
一通りの区画を回ったミノルは、橋に設置されているバリゲードを見ながら溜息を漏らしていた。
「向こうにも行ってみたいんだが、橋と言う橋にこうもバリゲードされてると何もできないな。近づくと自警団が駆けつけてくるし、こりゃ西側は夜にでも忍び込むしかないな。」
「それなら《身体構成》で羽と尻尾を消してしまえば良いではないか?」
「ん~天使族って~隠蔽関係の察知が~高いからよほど気をつけないとダメかも~。」
「リュー様の案に賛成です。昼の行動が効果的です。」
「夜は人気がなくなる分察知されやすくなってしまいますが、昼の人が多い時は誤魔化しが効きます。」
ミノルの案よりもリュー達は昼間の行動に賛成の旗を挙げる。
「なるほど。俺はこっそり動く事ばかり考えていたから、そういう考え方もなるんだな。参考になるなサンキュ。」
ミノルは固定概念というものは時に失敗を生む可能性がある事に感心しつつ西エリアへの侵入をどうするか、考えを巡らせていた。
しかし隣でかわいらしい2つのお腹の音を鳴らすリューとアリスたんが顔を真っ赤にしながら。
「のう、お腹がすいたのじゃ。」
「お腹がすきました。」
とミノルに訴えるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リューとアリスの訴えにより俺達は、屋台が並ぶ広場に来ていた。
「ここは昼食など、軽くお腹を満たす場所でフェリエの観光場所としても有名なのですよ。」
アリスがこの広場の説明をしてくれた。
なるほど。屋台が何台も軒を並べており、広場中心では生演奏や、大道芸を披露していたりと賑やかな場所で、きちんとゴミ箱や軽食するためのテーブルなどが並べられていた。
「では、各自で好きな物を買ってきて食べるとしようかの?」
リューの提案に皆が頷き財布片手にそれぞれ散っていった。
俺も、どれが良いだろうとそれぞれの屋台を見て回ると
「おう!そこの坊ちゃん。ウチの屋台の飯を食って行かないか?」
と声を掛けられたので、その方向を見ると何やら人相の悪い小人族のおっさんが、鍋を掻きまわし、歯を見せながら笑って俺を誘っていた。
「ん?俺の事かい?何の料理かな?これ。」
「おう!ちょっとこれつまんでみろ。」
と、つまようじで刺した白玉みたいな物体を差し出してきた。
「ん?試食していいの?」
「おう、特別だ。食べてみろ。」
そう言われて、貰った白玉を恐る恐る食べてみると、芋もちのような生地の中にチーズが入っていてなかなか上手い。
「坊主。それにな、このとろみのあるスープをかけて食べるんだ。」
そう言ってかき混ぜていた鍋からお玉に掬ってみせる。小さく切った野菜が入ったシチューのようなものだが、汁が茶色い。デミグラスかそれに似たようなものだろうすごくいい匂いがする。
さっきのと一緒に食べるときっとうまいなと予想してしまい思わず生唾を飲み込んでしまった。
「おっちゃん。それ1つ、いや5つくれ!」
「おー!太っ腹だねえ!じゃあ4個入れる所を5個づつ入れてやる。」
「おおおおお!」
思わず涎が垂れてきてしまいそうになるが、それを押さえつつ購入していく。
「お椀とお盆は後で持って来てくれよー!」
「あいよー。」
とよろけながらm待ち合わせ場所に行くと既にみんな揃っていて、それぞれ買ってきており俺を待っていてくれたみたいだった。
「「「「「いただきまーす!」」」」」
皆が買ってきた串焼きや、クレープもどき、サンドイッチ、デザートなども食べていく。
どの料理もおいしくて料理についてあーでもない、こーでもないと楽しみながら食べていく。
「ミノルちゃ~ん。これお代わり欲しいの~。」
アディが俺が買ってきたスープを気に入ったらしくお代わりを要求してきた。
「「「私もお代わり」」」
リューもリアもアリスもお代わりを要求してきたので、空のお椀を持ちながらアディと一緒に買いに行く。
「おっちゃーん。お代わり4つ頂戴。」
「おーうれしいねえ。いや~今日は大繁盛だ。」
おっちゃんは嬉しそうにお代わりをくれて、またおまけしてくれた。
「ふー。食った食った。お腹いっぱいだ。」
皆でご馳走様をしてお茶を飲んでいた。
俺はおっちゃんにお盆とお椀、木製スプーンを返しに行くと、行列が出来ていた。
「おお!坊主たちがあそこでうまそうに食っているって、気になるってことでこんなに並んだぞ!ありがとうな!がはははは!」
こちらこそ美味かったよと言いながら屋台を後にし、皆の席に戻り腹を落ち着かせる。
「いや~あの小人族のおっちゃんの料理美味かったな~。」
俺があの料理を絶賛していると皆が何を言っているんだ?と言う表情で俺を見ていた。
「ミノルよ。あの御仁はゴブリン族だぞ?」
リューの答えた言葉に「へ?」と、俺は間抜けな返事をしてしまった。
「え?だってゴブリンて言えば女性の敵でオークも女を襲うモンスターだって・・・。」
「いや?彼らは顔は凶悪そうに見えるが、勤勉で心根の優しい種族じゃぞ?オークなぞ昨日見たではないか、セレスの秘書として働いている所を。」
俺はますますわからなくなっていた。
ゴブリンが?オークが?いい種族なのか?いや、でもリューが言っているのだから本当なんだろうなと思っていると、
「あ~ミノルちゃんが言ってるのは~”堕ちた”ゴブリンさんたちの事言ってるのね~?」
「会話から推察いたしますとそうかと思います。」
「ゴブリンや、オーク、コボルドなど大まかに言えばモンスター枠と言う種族で・・・」
アリスの説明が始まる
――――――――――
モンスター枠の種族と言うのは言葉の通りで怪物と言う事で、性格は温厚、争いは好まないフィーグル全土に生活圏をもっている種族である。
そしてこの種族の特徴は”瘴気堕ち”と呼ばれる症状で、負の性質を持った魔素を他の種族よりも体内に吸収しやすい体質で一定量蓄積すると破壊衝動や殺人衝動が起こって、魔獣の種類に変質してしまうと言う。
”堕ちた”ゴブリンたちは自ら森に生息するようになり魔獣として生息するようになる。
そして上のクラスの魔獣に食べられたり、冒険者に殺されることによって体内に蓄積された負の魔素が、昇華されて純粋な魔素に生まれ変わる。
そしてゴブリンたちの魂魄も穢れを浄化されて輪廻の話へと帰っていく。
また、魔獣は負の魔素から生まれて、同じく死ぬことによって魔素を昇華させることが出来る。
もちろん”堕ちる”事なく人間と同じ寿命のゴブリン達は何事も無く生涯を過ごす者が大半であるが、負の魔素をある程度は蓄積しているので死亡により昇華する。
極稀に”堕ちた”エルフ、魔族がいるし、人間も凶悪な人へと変貌する。
――――――――――
「そしてこの種族は世界において瘴気をその命をもって浄化してくれる種族なのです。今や人族では伝承が消えているらしいですが、彼ら、彼女らは殺すことで救われる種族なのです。
だから、それらを討伐する冒険者というものは救済する者として尊敬の対象となっていました。」
アリスの説明が終わり、なんとも言えない気持ちになってしまう。
「邪魔な存在ではなく、世の役に立つ存在で、殺されなければならない存在か。悲しいな。」
俺はそう呟きながら嬉しそうに客に料理を提供しているゴブリンのおっちゃんを見つめていた。
「最もここ数百年”堕ちる”数も増えてきておる。戦争という悲惨な負によってな。」
なるほどな。セレスティア代表が争わないようにしようと言うのもそれがあるのかもなと、思いながら俺達は広場を離れて、再び町並みや重要施設などの配置を地図に書き込んでいくのであった。
今日の丸1日を使って、東地区を回り1/5位を調査した。
「ふう、まだまだ調べる事が多いな。晩御飯は宿で食べるんだっけ?」
「はい、パディ様との会食は明日になっていますので今日は宿で食事になります。」
リアがこの後の予定を教えてくれながら俺は「分かった」と言いながら宿へと帰る途中で、苦しそうな声を出しながら蹲る人を見かけて、気になった俺はその人に近づいて声を掛けた。
「おい、大丈夫か?」
よく見るとあの屋台のゴブリンのおっちゃんだった。顔や体は汗でびっしょりと濡れており、目が充血して、口からの牙が、昼よりも伸びている気がする。ただでさえ強面だった顔が、さらに邪悪な顔となっていた。
「ミノル!そやつ”瘴気堕ち”しておるぞ!離れるのじゃ!」
リューが叫びながら近づいてきていた。俺はこれが”瘴気堕ち”なのかと思い絶句してしまう。
そして何とか助ける方法はないものかと考えていた。
「そうだ!〈浄化〉!」
そう思いおっちゃんに向けて〈浄化〉を展開していくと、おっちゃんは落ち着いていって昼間と同じ強面の人懐っこいおっちゃんに戻っていた。
「おっちゃん!平気か?もう大丈夫だぞ。」
「あ?お?わしは確か”瘴気堕ち”していたはずじゃ?これは?坊主がやってくれたのか?」
「そうだ」と、俺がおっちゃんに告げると、突然左頬をひっぱたかれた。叩いたのはアディだった。
「ミノルちゃん!貴方なんてことしたの!このゴブリンさんは運命だったのよ?輪廻を捻じ曲げちゃったのよ!」
俺はアディに怒鳴られながらも「助けて何が悪い」と言おうと喉まで出かかっていたが、敢えて言わずに黙っていた。
「ミノルよ。ヌシのやる事については悪いことではないのじゃ。だがの、妾達の力ではどうやっても負の魔素を昇華出来ぬのじゃ。モンスター枠、魔獣、魔王の死でしか出来ぬのじゃ。
ヌシの〈浄化〉は対象者を浄化するだけなのじゃ。そして抜け出た負の魔素は発症することの無いものに移る可能性があるのじゃ。」
「でもそれじゃあ、おっちゃんが!」
俺は我慢できずに今の気持ちを吐き出そうとした。
「坊主。助けてありがとうな。でももう2度とそれはやっちゃあいけねえぞ?
わしらはな?覚悟はできているんだ。結婚して子供が出来るとそれを覚悟しておかなきゃならねえんだ。
まあ、いきなり”堕ち”ちまってしまえば残した女房や子供が気になるのは仕方ねえ。
だが女房も子供も覚悟はしているんだ。だから笑いたい時には目一杯笑って、泣きたいときには誰彼憚らずに泣く、嬉しい時には体を使って目一杯喜んで、毎日を悔いなく精一杯生きているんだ。」
「でもおっちゃんは!」
「でももくそもねえ!俺達の種族はそれが誇りだ。それが生き様だ。先祖代々受け継いだこの世界に対する役割なんだ。今すぐ理解しろとは言わねえ。世界のために役に立つんだ!これほど嬉しいことはねえ。
なあ坊主よ。時間がかかってもいいから、おっちゃんが言ったことをよーっく考えておくんだぞ?」
ゴブリンのおっちゃんはそう言いながらゆっくりと立ち、俺のあたまを強く髪が乱れるくらい撫でて「ありがとな」と一言言って、リュー達に一礼をし、その場を去っていったのだった。
死ぬことが誇り?そんなばかな!と思いながら下を向いていると涙があふれて止まらなくなっていた。
子供の身体に精神が持っていかれてるな。
そんなこと思っているとリューとアディが俺の背中を優しくなで「帰ろう」と言って俺に宿へと歩かせるのだった。
俺は改めてこの戦争は止めなければと、そしてこの負の連鎖を起こしたあの国に復讐を誓うのだった。
今に見ていろアドラ。絶対に後悔させてやる!
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いたします。
次回更新は 翌7時ですよろしくお願いします。




