アドラ神聖公国の衝撃
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拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
余は第57代公王トロヘス・ラドリエである。
わが国アドラ神聖公国は最初は旧ペロイ王国の中にあるアドラ神教の本部であった。小さな新興宗教でわずか15名からの始まりだったと歴史には残っている。
そして15名の中の直系の子孫が我がラドリエ大公家である。
31代ペロイ王は深くアドラ神教に深く帰依し最後には国ごと我ら教団に譲り、そこからアドラ神聖公国が始まった。
最初は15の使徒である15の大公家で公王の持ち回りをしていたが、血筋が途絶えたり他の大公家に駆逐されるなどで現在の4家に落ち着くことになる。
4つの大公家において我がラドリエ家は最大勢力と兵力を持ち7代にもわたって公王を務めている。
他の3家は公王と同列の教皇を持ち回しているのだ。
そして公国は神の御業”ステータス”と”スキル”そして”祝福”をもって信者を増やしていき、他国を併呑、邪教を崇拝する国を打ち破り支配の繰り返しで今や海の向こう側にある魔王国をも凌ぐ国家となった。
神の力も強大となったが、まだだ、まだ足りないのだ。未だ土着の神を崇め天界に住まう神をも恐れぬ邪教と共を駆逐しアドラ神教をこのフィーグル全土に浸透させるのだ!
「陛下!陛下はおられますか!トロヘス陛下。」
なんじゃ?騒がしい。今は余の瞑想の時間だと言うのにうるさいのう。
「ああ、ここにおられましたか陛下。戦役の報が届きましたので知らせに参った次第です。」
「ほう、してどこの戦役の事だ?」
ふむ、これだけ戦役の数が多くては覚えられんな。まあ良い。我が国の領土さえ・・・
「ヘティスハーク王国の討伐でございます。」
ぬう、余の思慮の邪魔をするとはけしからん。あとで罰を与えねばな。
「ほほう。吉報か?」
「全滅にございます。」
「なに?」
「全滅にございます。」
「・・・・・・・・・・なんじゃと!」
余の突然の怒声に「ヒイッ」と短い悲鳴をあげて腰を抜かす。
2万の軍勢が全滅だと?何かの間違いではなかろうか?とにかく軍議に出席だな。
◆◇◆◇◆◇
アドラ神聖公国の謁見の間の隣にある軍議や重要な会議が行われる部屋では、既に会議は開かれていた。
しかし会議と言うには、程遠くアドラ神聖公国始まって以来の遠征軍全滅と言う件に関して責任の擦り付け合いが始まっていた。
「ええい!だから言っているではないか!あの時勇者を増やしておけばよかったんだ!」
「なら貴様は首都の守りを蔑ろにするつもりなのか?もしもがあれば責任はとれたんだろうな?」
その罵声も混じり始めた中で、突然扉が開きトロヘスが入室する。
すると今まで飛び交っていた怒声が止み、みんな口をつぐんで会議室内は静かになる。
トロヘスが不機嫌そうに自分専用の豪華な椅子に乱暴に腰を下ろしテーブルの上に頬杖をつきながら言葉を発した。
「・・・結果と状況を伝えよ。」
トロヘスの言葉に軍務官が勢い良く席を立つ。そして報告の羊皮紙を手に取り報告を始めた。
「こ、これより1ヵ月前にフォレ平原にてヘティスハーク王国軍と接触し、開戦しましたが2時間でわが軍は、か、壊滅。総大将ジレンドール・ポンセは敵により捕縛、勇者タケシも捕縛、勇者ノボルはぅ、討ち死にいたしました。」
「・・・・続けよ。」
益々不機嫌になっていくトロヘスに軍務官は手に持つ羊皮紙が震えだす。
「続けよ!」
軍務官は汗が吹き出し足が竦んでいたが、トロヘスの怒号に再び報告を続けた。
「ひゃい!なお、敵戦力は歩兵4000、魔法兵800、弓兵600、騎馬400、ワイバーン100、騎竜150、工兵など450合計6200・・・・そして龍が2匹。」
トロヘスは席を立ち両手でテーブルを叩きつけながらも再び腰を下ろし、無言で報告を受ける。
「ヒイッ。りゅ、龍が2匹に勇者を圧倒した戦士が一人。この戦士に勇者タケシは敗れた模様。なお被害のほとんどが龍が軍の上を飛び回るだけで、兵士が吹き飛ぶような嵐を発生させると言う不可思議な魔法でおよそ7割が撃たれたとの事です。」
「バカな、それほどの威力を持つとは。龍はどの種族だったのだ?上位の龍種か?それとも古龍なのか?」
「は、はい!1匹は銀の龍で羽が4枚で黒の文様をしていたとの事。そしてもう1匹が金龍がその・・・ドナクレアの魔龍と酷似した龍だそうで、予想では2匹ともドナクレアに関係した龍かと推察されるとの事です。」
「あの忌々しいドナクレアの一族がまだいたと言うのか?」
トロヘスは右拳をテーブルに激しくたたきつける。
「尚、捕縛されずに敗走した2000名の兵士ですが、ほどなく首都に到着の予定です。」
「よし、直ちに遠征を再開するための再編成をせよ。」
公王の指示で将軍たちが席を立ち編成の準備に入ろうとする。
「お、お待ちください陛下!今再編成されては収穫が出来なくなってしまいます!」
「ええい!このまま全滅させられた上におめおめと引き下がるつもりか貴様!」
今回の遠征による出費、そして税収見込みの農作物などの収穫が出来なくなっては、財政が破綻してしまうと危惧した宰相がトロヘスに進言し、なおも食い下がった。
「なりませぬ陛下!今動かれては他の国に遠征中の軍にも兵站などが不足して戦線が持ちません!」
「ならばかき集めればよい!災害用の備蓄をしている所もあろう!貴族等とて備蓄くらいはあろう!全てかき集めて準備をするのだ!」
出席していた貴族たちは真っ青になっていた。ただでさえ今回の出兵で災害用備蓄の2/3を持っていかれている。そこからさらにとなると備蓄は全くなくなってしまう。
毎年訪れる査察官は、戦争の事などお構いなしに危機管理が足りないとマイナス査定をしてくる。
マイナスが積もれば領民のクーデター勃発、領地召し上げ、御家取り潰し、路頭に迷う、のフルコースが待っている。
貴族達も何とか公王の怒りを沈ませようと頑張るが、公王は頑として引かない。
そうこうしているうちに本日の軍議は終了。明日に持ち込まれる。
そしてまた始まる公王の怒りを宥めようと頑張る貴族。
それが1週間続いたある日とうとう公王は奥の手である”王命”を出してきた。
これに逆らえば一発で御家取り潰しが待っている。
仕方がなく肩を落としながら貴族達は領地へ戻り王命に従うべく町や村では足りなく、自家からも首都への搬出を始めた。
だがここで政治における歴戦の貴族達も黙ってはいない。”牛歩戦術”であった。
食料や物資、派遣兵などを小出し小出しにして、何とか今年の遠征を中止しようと画策していた。
なかなか進まない遠征準備に公王は貧乏揺すりが止まらず、しびれを切らしていた。
しかし、宰相を始め軍務の文官もこれ以上の遠征は国庫が一気に赤字に陥ってしまう事が分かっているため、文句も言えず、黙認していた。
しかしこの後、公国を揺るがす大事件が起きる事は誰も知らずにいたのであった。
遠征準備がなかなか進まない中に公国にある親書が届けられた。差し出し人は何と”ドナクレアの魔龍”からであった。
これに驚き公王へ手紙をもって行き内容を確かめた。
――――――――――
”愚かなるアドラ神聖公国公王へ
久しいのう壮健であるか?妾じゃドナクレアの魔龍じゃ。どうじゃビックリしたであろ?
それにしてもどうじゃった?妾の肉は美味かったかの?美味くないはずがない何と言っても妾の肉じゃからな。
そうそう、話題を変えるがの。貴様の息子を討ち取ったぞ。地球とかいう異世界でな甲高い阿呆な声をあげて笑っておったわ。耳障りじゃから首を刈っておいたぞ。
それにの。勇者を使って異世界の文明を取り入れて自身の欲を満たそう等とふざけた真似はよせ。
今回は妾が直接潰しておいたから感謝するがよい。
あまりやりたくはなかったが慣例に従って貴様の息子と勇者共の遺体は貴様に送り届けよう。3日後の真昼時にアドラ神聖公国正門にて待つが良い送り届けてやろう。”
――――――――――
文官が読み上げた内容にトロヘスは呆気に取られていた。自分の息子が?と。
「手紙の中では3日後とありましたが、約束の時間ですと明日の真昼時となります。いかがいたしましょうか?」
「異世界だと?確かに我が息子アントニオはニホンと言う国と国交を結ぶために使者として送り出したが、殺されただと?まさか!殺されたと言うのか?」
ようやく状況がつかめてきたのだろう。
玉座のひじ掛けを指の関節が白くなっており、かなりの力で握っているのが分かる。
予定では今年の冬には帰ってくる予定だったが、安否を確かめようにも連絡方法がない。
かと言って今から連絡係を転移させたとしても、準備に時間が掛かりすぎてアントニオ殺害の真偽を確かめる事が出来ない。
仕方がなく翌日まで待つこととなったが、トロヘスにはアントニオの死が嘘であって欲しいと思うばかりで、その日の夜は眠れずにいるのであった。
翌日、トロヘスは宮殿のバルコニーで正門を見ていた。
受け入れ場所も門の影で見えなくなることを避けて少し先の場所に兵を揃えさせていた。
宮殿魔法師から〈望遠〉の魔法を展開させて正門の方向を注視していた。
時間にして正午になった頃に東の空から何かが、こちらに向けて飛んできているのをトロヘスは見つけた。
段々と近づいてきてそれは2匹の龍であることが確認できた。
龍は先日の報告で聞いた金と銀の龍であり近づくにつれて輪郭や体の模様まで見えるようになっていた。
トロヘスは驚いていた。確かにドナクレアの魔龍である。見間違えることはない。
勇者が3人でトロヘスに献上した魔龍そのものであった。
しかし一緒に飛んでいるドナクレアの魔龍より一回り小さい龍は見たことがない。
今では魔龍のすべての姿見の絵が揃っており、どの龍が何処の領域守護龍なのかもわかるようになっていたが、どの姿見にも似てはいなかったが、どことなく魔龍の妹龍に似ていると文官が伝えてきた。
首都は現れた2匹の龍を騒ぎ、恐れていたが、”神の庇護”によって都は守られている事も知っているためそれ以上のパニックにはならなかった。
やがて外壁外に整列していた兵の前に着地をすると2匹の龍は見下ろしながら話をしてきた。
「貴様らが交渉団という訳かの?」
「そうだ!我が名は・・・」「不要じゃ。」
名乗ろうとした兵にリューは被せるように話をした。
「約束の遺体4体を届けに来た確認するが良い。」
そう言って指に引っ掛けていた魔法袋が宙に浮きそのまま兵士の前へと飛んでいく。
そして兵士はそれを受け取り袋から4つの白いシーツに包まれた物体を取り出していた。
それは人を包んだような形をしていて兵士4人がそれに近づきそしてシーツをはがす。
兵士たちはそれがアントニオの死体と、勇者たちの死体だと確認して先程名乗りを挙げようとした兵士に頷いた。
「確かに届けたぞ。では失礼する。」
リューはそう言って、再び東の空に飛んでいった。
トロヘスは愕然としていた。望遠とはいえ息子アントニオの顔を確認できたのだ。
しかも近くで確認したのは、幼少の頃からアントニオの従者として仕えていた者だ。
「わ、私の息子が殺されただと?殺したはずのドナクレアの魔龍に殺されただと?」
トロヘスはバルコニーから中庭へと向かった。まるで夢遊病者のように右へ左へと揺れながら向かっていた。
先程の兵士たちが、トロヘスの待つ中庭に到着し先程バルコニーから見ていた4名の遺体が並べられた。
そして一番左のシーツを震える手で頭の部分を取り払う。
「お、お、お、おおおおおおおおおお!」
見間違いはない。間違いなく息子アントニオだと確認すると遺体に向かいながら嗚咽を漏らすのだった。
「ゆるさん。許さんぞおおお!ドナクレアの魔龍うう!貴様を地獄に叩き込んでやるぞおお!」
よく晴れた空にアドラ神聖公国公王トロヘスの怨嗟の声が木霊したのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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今後ともよろしくお願いたします。
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