治療開始・・・そして
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翌日、吉良女史から治療方法ついての説明を受けた。
まずは俺のような症例を色々調べたが、どの国のデータバンクにも類似する例はあったが完全に一致する病気はなかったそうだ。
ここまで出ないと治療方法がるかどうかわからない。もしヒットしても同様にただヒットしただけという結果になりそうだと彼女は残念そうに言ってきた。
俺は軽く眩暈を覚えながらも引き続き説明を聞いた。
「とにかく当方で全力を尽くしますので治る事に専念して完治すると希望を捨てずに頑張りましょう。」
次に治療費と入院費についてだが、なんと全額負担してくれるとの事。しかも必要なものがあれば経費である程度のものは購入してくれるし少しだが小遣い程度の金額が振り込まれるとの事だった。
これはありがたいと心から感謝。提示してきた契約書にサインをした。
「契約書の通り、症例及び治療法が確立されると製薬会社とかいろいろな方面へこちらにメリットが出来るからね。お互いにWINWINなのよ。」
と、吉良女史はウィンクをしてくる。
とにかく病気を治し俺は社会復帰するべく治療に専念するのだった。
まずはこの小さくなった体を調べるため身長、体重から始まり血液を調べ、トレーニングマシンを使い体力や運動神経、体中にセンサーみたいな物を貼り付けられて、ゴチャゴチャとした機器に囲まれて様々な検査が続いた。
こうして数日が過ぎ今度は緑色をした液体を注射された、原色バリバリの苦い薬などを飲まされた。
この時、判明した事だが背中の羽と尻尾が自分の意志で動かす事が出来た。
試しに動かしてみるが、よほど意識を集中して挑まないと動かず、動かせたとしても1~2分が限度でその後が軽く虚脱感に見舞われるため「どうせ完治すれば無くなる物だし」と気にすることがなくなった。
毎日が検査薬検査薬と続いていて「大丈夫なのか?」と不安もあったが、見慣れた助手の人たちや吉良女史と打ち解けるようになっていき、不安も多少だが和らいでいた。
しかしいつも俺と会う時は、まるで宇宙服のような防護服であろう装備に身を包む姿はどうにかならないものかと思っていると吉良女史は俺の考えている事に気付いたのか、
「ごめんなさいね。今のところ感染する菌は見られないけど、後発で発症する菌が存在する可能性もあるから我慢してね。その可能性も無くなれば生の私を見れるわよ?」
と言ってきたので「「生の」なんて言葉だけだとちょっと卑猥に感じます」と俺は言いながら2人で笑ったのでした。
2週間後、検査の結果が出たので吉良女史はカルテらしきファイルを見ながら
「身長、体重、体力などは9歳の平均ですね。血液なども異常はなし。感染病も今のところ無し。あとは引き続き投薬と検査が続くわね。」
「そうですか・・・。治るのかなあ・・・。」
「そう悲観しないで?最悪、羽と尻尾は外科手術で切除ってことになっちゃったら覚悟してもらうけど、それまでは頑張って治療していきましょう!」
そう言って吉良女史は俺を励まし「そうですね、やるしかないですもんね」と苦笑しながらまた治療の日々を過ごしていくのだった。
―やっぱりこの体、子供と変わんないのかよ。ホントに元の大人に戻れるんだろうな?尻尾と羽は切っちゃうから良いとして体元に戻んないと車の運転もままならないぞ?頼むぜ先生よー
そうこうしながらも1ヶ月が過ぎる頃、仕事の事が気になったので吉良女史に尋ねてみた。
「先生、治療もいいのですが俺の仕事ってどうなったか知りたいんですけど。」
「ああ、それなら大丈夫よ。この間弁護士の知り合いがいるって言ってたでしょ?それで頼んだら動いてくれたわよ?治療が済んだ暁には社会復帰して戻れるよう手配済みよ。」
「そうですか!ありがとうございます。」
これで復帰後は安泰だな。と俺は安心し再び検査と治療を始めるのでした。
――――――――――
入院して6ヶ月が過ぎようとしていた。
ようやく1週間前に感染症などは、発見されなかったため今では直に吉良女史や助手の人達と会話をしたり出来るようになっていた。
彼女たちは直接てで羽や尻尾を触診して「爬虫類みたいに冷たくない」と言っていた。
そして、この時を境に羽の一片を切除したり鱗を毟ったり「治療実験に掛けるサンプルを採取」と言って持っていくようになった。さすがにこれをやられたときは目から涙が出るくらい痛かった。
この頃には隔離病室から個室であるが普通の病室らしい部屋に移された。でも彼女たちが通る廊下の先は頑丈そうな扉で遮られていたが隔離から解放されたと心の中で少し余裕が出てきていた。
また検査なども少なくなり時間が空いてきたので、小説などを買ってもらい読むようにもなっていた。
若い頃は今で云う「ラノベ」と呼ばれる小説を好んで読んでおり、そのジャンルで揃えてもらって読んでいた。
彼女の助手たちの中にその手の小説に詳しく「お勧め」を購入してきてくれていた。
何でも専用Webサイトがあって人気がある作品が書籍となって売っていると言っていた。
「それじゃあインターネットで・・・」と言ったが、非常に稀な病気であるので電話やメール通信は「第3者」に知れての情報拡散はまずいのでと外部の接触は禁止されていた。
確かに・・・悪気がなくても何気ない一言が「ネットで炎上した」なんてよく聞いていたし、病気についての秘匿は契約書に記載されていたのでネットは断念した。
仕方がないので購入してもらっているうちに続巻や単発合わせて、もう50冊にはなろうかとしていた。
「ふ~ん。俺が知ってるのは○川とか○士見だったんだが、こんな出版社が出てるんだ。それにしても分厚いな!」
そして昨今の流行は「異世界転移や転生」「チート」が主流となっている。ファンタジーの世界も変わったねと思いながらも俺は結構面白ながらも読んでいた。
それから1ヶ月後遂に「一部ではあるが改善の可能性が出てきた」と報告を受けた。
「採取したサンプルで検証して一部だけど改善できることになったわ。」
「ああ!ありがとうございます。本っ当にありがとうございます。」
俺は、ようやく社会復帰の第1歩だと喜んだ。そしてその治療薬として投薬が始まり、点滴や飲み薬、何か苦い吸入などを処方され実施された。
「強い薬」と言われていたせいか投薬後は気分が悪くなったり、体がだるくなり寝込んだりもした。
しかし「治る」治療が実施されているとなれば我慢も出来たので続けられていた。
投薬も2週間が続いたある日、再び投薬による気だるさからベットに横になっていたが、急に腹に「カミナリ」が襲いトイレに駆け込んで一息ついていると誰かがトイレに入ってきて会話をしながら用を足していた。声からすると吉良女史の助手たちである。
「あのマウス2週間経つけどまだ大丈夫そうだな。」
「そうだな、通常であればもう死んでいてもおかしくないんだがな。」
「サンプル摂ってもすぐに再生するし、もしかして耐性が出来たのかもな?」
「かもな。ありゃバケモンだしな。」
そう会話をしながらトイレから去っていった。
マウス?バケモノ?何のことだ?と思いながら俺は用を足しトイレから去るのであった。
次の日から投薬の種類を変えると言われた。
俺が理由を聞くと薬に対して「抗体」が出来たらしいので強い薬を処方したとの事。
何かがおかしいと俺はそう感じ始めていた。
既に改善できるという薬を処方されていたのに?「抗体」が出来た?サンプルまで採取して調べていたはずなのに?
「そうですか」と頭の中に疑問がいくつも浮かんで来るが「まさかな」と疑問を否定し俺は投薬を承知することにして始まったが、さらに2週間するとまた薬が変更となり、それからまた2週間すると薬が変更。
不思議なことに最初の頃は吐き気などがあったが、3~4日もするとなんともなくなってしまう。
薬の変更が続いて「効いているのか?」と段々猜疑心が強くなって行き、ととりあえず、俺は助手に聞いてみる事にした。
「ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「はい、何ですか?先生は今日は出掛けていますが私が知ってる事なら何でも。」
「薬の変更が決まったっていつなのか知ってるかな?」
「ああ、1週間前から検討されていたらしいですよ。昨日までの薬が効かなかったらこの薬だって。」
その繰り返しも5回目の投薬変更で俺は吉良女史の診察がある時に、あることを聞いてみた。
「聞いていなかったけど俺の病名ってなんなのかな?」
「勝良さんの病名は『メタモルフォーゼ症候群』です。変身って意味で安直よね。」
「今回の薬って何を改善するんですか?」
「変質した羽や尻尾は一種の腫瘍みたいなものでって、悪性じゃないわよ?そしてその組織細胞自体を抑制させようって事ね。」
「・・・処方箋って教えてもらえます?」
今では薬局などで薬を処方してもらう時はどんな薬を使っているかとか、禁止事項なども教えてくれる。
確か聞けば告知しなければならないはずだ。
俺はそれを利用した。
「ん~ちょっとこの薬には守秘事項があるから、ごめんなさいね。」
「そうですか、すいませんでした。ちょっとナーバスになっていて、それを少しでも解消したくて。」
と、「しょうがない」という表情を作りながら、彼女の傍らにあるタブレット端末を引ったくりその場から離れ見てみると丁度、投薬の事項のウィンドウが開いていた。
俺はその内容に驚きを隠せなかった。
―――被験者「勝良実」
第1回「癌細胞」投与/抗体生成成功
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第8回「エイズウィルス」投与/抗体生成成功
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第11回「エボラウィルス」投与/○月○日:投与開始―――
ちょっと待て、抗体生成?投与?それにエボラってやばいやつじゃないか!しかもこの日付って今日!
俺はタブレットと彼女を交互に見ながら愕然としていた。
彼女は「まずい」という表情をしていたがすぐに隣にいた助手たちに声を掛けて俺を取り押さえるよう命令していた。
はっと気が付き俺は出口めがけて逃げようとしたが、うつぶせに倒され、助手1人は俺に馬乗りになり顔を床に押し付け、もう1人は足を押さえつけて身動きが全く取れなくなった。
俺は現状9歳の体を恨めしく思いながら彼女を問いただした。
「先生!その投与って何ですか!薬じゃなかったんですか!」
「あなたの事を騙していてごめんなさいね。あなたの治療薬ではなくて他の病気の人達への治療薬になるわね。
今まで治療法が見つからなかった物があなたに投与すると立ち所に特効薬が生成されるんだもの。
利用するしかないじゃない?そう思わない?」
そう言って彼女は俺を見下ろしながら笑みを浮かべ返答した。
「俺の病気を治そうって親身になってくれてたじゃないか!全部嘘なのか!」
俺は頭の中が真っ白になりそうになったが、彼女の手のひらを返したような態度に腹が立ってしまい、それどころじゃなくなっていた。
―もしかして耐性が出来たのかもな?―
―通常であればもう死んでいてもおかしくないんだがな―
―サンプル摂ってもすぐに再生―
ちょっとまて?
頭の中で欠けていたパズルのピースが当てはまったように答えが浮かんできた。
そう「マウス」。
「てめええ!俺を実験材料にしやがったな!」
「当り前じゃない。こんな体まで変質してしまった状態治せるわけないじゃない。そして調べて行くうちにねぇ、あなたは現代では治療不可能と言われる病気の抗体を生成できると解った時には小躍りしたものよ?感謝してるわ。そしてこれからもよろしくね?バケモノの勝良さん。」
「ぶっ殺してやる!おい!てめえらどけ!この売女ぶん殴らせろ!」
「あらあら、かわいい顔して汚い言葉ですよ?もっと御行儀よくしなきゃ。」
―だめだ、動けねぇ―頭に血が上りながらもなんとかしようとしたが、しょせん子供と大人2人じゃどうしようもできない。だがせめて1発ぶん殴らなくては気が済まねえ!
と、俺はジタバタしていると
「彼を隔離部屋へ移動してちょうだい。抵抗できないようにベットに固定も宜しくね。」
「くそったれがあああああああ!」
と、「憤死でもしそうだな」と、冷静になる自分がいるなと思っていたその時
-バチバチバチバチッ-
と部屋中全体に稲妻のようなものがあちこちに走り機器類を爆発させ漏電ブレーカーが落ちたらしく部屋の中は真っ暗になった。
多分驚いたのだろう俺の拘束は解かれていたので2人から離れた位置に移動した。
「なんなのよもう!あんたたち!彼を捕まえておきなさい!」
「すいません!驚いてしまって!」
「何やってるの!」
俺は「まずい」とばかりに隅に見えている機器の陰に隠れた。
「照明はどうした!懐中電灯を!」
「真っ暗で何も見えない!」
そう言いながら3人はゾンビのような両手を前に出しながらフラフラと歩いていた。
―え?真っ暗で見えない?―
そう思いながら俺は目をパチパチと瞬いてみたが、薄暗さがあるもののハッキリと彼女らの状況が見て取れた。
これはチャンスと思いそのまま忍び足で出口へと向かった。
通り過ぎる横で彼女は「なんなの!」と叫んでいたので、思いっきり足を引っかけて転ばして彼女の耳元でこういった。
「いつか必ず復讐に来てやるからな。首洗って待ってろ。」
彼女は「ヒイッ!」と短い悲鳴をあげていて俺も少しだけスッとしたのでその部屋をあとにした。
廊下に出たが真っ暗で奥で非常用の出口案内が光っていたのでそちらへ向かった。
隔離病棟は奥にあったらしく随分と走った。病院内で所々ちょっとしたパニックになっていたが、それに紛れながらようやく病院のロビーらしい所に出た。
俺はそのまま外に飛び出し自宅へと足を向けたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いたします。
次回更新は明日の朝7時です。