第1話 プロローグ
2018/10/08
拙すぎて書きなおし。
次回からは章ごとの加筆修正で行きますのでよろしくお願いします。
気合一閃
少年は剣を袈裟斬りに振り下ろす。
振り下ろされた剣を事も無げに紙一重で躱し、バックステップで剣の間合いから離脱する。
少年から離れた人物は離れた岩の上に着地をすると、その場に立ち腕を組み薄く笑みを浮かべ見るのであった。
相手に有効打を浴びせたと確信し「やったか!」と小さく呟き旗を立ててしまう。
視線の先に立つ対戦相手に傷一つない姿に見事「旗を回収してしまった」と少年は舌打ちをする。
相手に向けた剣の柄を握る手に再び力がこもり、体を少しばかり沈める。
先程までであれば、すぐさま相手に突撃し再び剣劇を繰り返す所だが、一刻程前から剣を交わしても、有効打と思った斬撃を躱され、相手の持つ棍に受け流されてばかりいることで段々と苛立ちから頭に血が上っていた。
それを自覚した少年は一つ深呼吸をして、再び斬り込まんが為に足に力が入る。
相手を睨みつける少年の目は、その容姿に似つかわしくなく獰猛で一般人であれば、その場でへたり込むほどの殺気を孕んでいた。
対峙する2人の間にはまるで電気が走るような緊張したピリピリと感じる程の空気が漂っており、一言も交わさぬ会話のせいか雪のちらつく中に静寂だけが広がる。
少年が鋭い視線を送る先に立つ人物は、浴びせられる殺気をまるで心地の良いそよ風を浴びているかの様にアルカイックスマイルを浮かべ、ゆっくりと両手を広げた。
少年はその動作により一層の緊張感を漂わせたが、それ以上向かってくる気配はないが「さあ!私の胸に飛び込んでおいで!」と言わんばかりの姿勢だが、不用意にその胸に飛び込めば、たちまち肉片と化す事この上ない。
しかしその姿勢に飛び込みたくなる欲求に駆られてしまいそうになるのは、相手の豊満な胸。
そう、少年の対戦相手は女性である。
少年の前に立つ女性は見た感じでは20~25歳位と予測される。
風に舞うようなサラサラなストレートのブロンドとシルバーブロンドがメッシュになった腰まである髪を後ろで一本の軽く三つ編みしてまとめてあり、髪の先には両端が拳大の房にした黒と金の糸で編み上げた組紐で括っている。
白磁のような肌に鼻筋が通り、少々の釣り目に右目の泣き黒子がチャームポイントの美しい顔立ちをしており、右が燃えるような深紅の瞳、左が魔法なのだろうか光る金の瞳をしている世に云うオッドアイである。
しかしその瞳は縦長でまるで爬虫類を思わせるような瞳孔をしている為、人類ではないのであろう。
純白のロングコートサイズのふわふわな毛皮を羽織るだけで前をはだけさせた中に見えているのは、肌に貼り付くような薄手の黑いドレスで所々に金の刺繍が何かの模様をしている。
その肢体はメリハリのはっきりした体つきではあるが、ある部分で視線が止まる。
一部の特徴を持つ世の女性が歯軋りをするような、張り出した凶器だが、その豊かな双丘を携えているにもかかわらず重力に負けないという事はそれだけの肉体を持つという事なのであろう。
防具の類は装備しておらず、右手には棍を持ち左手からは青白いオーラのようなものを纏わせていた。
対する少年は16~18歳位、まだ青年になりきれていない黒髪黒目の東洋系で、可もなく不可もない、いわゆる普通の顔立ちであるちなみにエラはない。
身長は170cm後半という所であろう、中肉中背で両手で構える剣は銀の刀身に中央に彫金の装飾が施された両刃の剣で、刀身全体が金色の光を帯びている。
身に着ける白銀の鎧も所々に趣を凝らした装飾が施され、鎧から発する白く淡い光に少年の全身が包まれていた。
ひりつく空気が漂う中、女性は先程の表情から、憐れむような表情と変化させると溜息をつきながら話し始める。
「いい加減にしつこいのう。妾も暇ではないのじゃが?」
やれやれとばかりに両手を広げ首を左右に振る。
「だまれ!人族に数々の被害を与え、苦しめる魔龍は滅びるべきだ!」
少年はどこかで聞いたような台詞を吐き、ギリリと奥歯を強く噛み、再び握る剣に力が入る。
「それは妾ではない。貴様、瘴気落ちした邪龍と龍族の区別もつかんのか?目が腐っておるのではないかえ?しかも小童如きでは妾の相手にならんし、したくもないわ。とっとと武器を捨てて投降せい」
「五月蠅い黙れ!お前たち龍族は悪だ!そして僕は正義だ!正義は悪の前に滅ぶんだ!もうすぐお前の仲間の魔龍も僕の仲間達にすぐに討伐されるさ!正義は絶対に勝つ!」
「それこそ無理な話じゃな、ヌシら如きでは妾の番には到底かなわぬ。それこそ束になっても不可能じゃ」
少年は雄叫びを上げながら地を蹴り、勢いをつけながら横薙ぎに胴払いを打ち込んでいく。
対する女性は、だらりと腕を下げノーガードで立ったまま目を瞑り、向かってくる剣を左手で払う。
剣を払われた少年はバランスを崩しかけるが踏みとどまり、再びフェイントを織り交ぜながら、数合にわたって斬りつけるが、それを棍で払われ、躱され続ける。
こうして互いの攻防がいつまでも続くのだった。
――――――――――
僅かな光も通さんばかりに鬱蒼とした森の中。
しかし所々にある木々の切れ間から僅かにのぞく夜空には月や星が見えていた。
明かりがなければ足元さえ見えない状況の中、よく見ると光の弧を描く斬撃と、赤く燃え上がる炎の閃光が場所を移動しつつ見えていた。
シルバブロンドに細く入った漆黒のゼブラ模様を彷彿とさせる髪を乱しながら走る少年は、斬撃と飛び交う火球の中を器用に右へ左へ跳ね回り、追いかけてくる3人を振り返るその姿は少年というには幼く、まるで幼稚園児ではないかと思うような容姿であった。
足元の見えない森の中をものすごいスピードで木々に躓きもぶつかりもせず走り、時にはまるでピンボール球が張りにあたって反射したかのような奇妙な動きで々を蹴り飛び跳ねまわっていた。
「あははははは!ほらほらもっと弾幕張らないと倒すものも倒せないよ~!」
「こおおおおおのクソガキがあ!」
「俺を倒すことに執着しないでさっさと魔獣討伐でもしていれば良かったのにね~。ホント君たち勇者って馬鹿なの?死ぬの?」
「やかましいわあああ!大人しく死んで素材になれやあああ!」
逃げる幼稚園児にようやく追いつくと180cmの厳つい少年が剣を振り落とす。
2mの剣身と分厚い幅を厚みを持ったバスターソードをいとも軽々と木々が並び立つ狭い空間で器用に操っている。
傍から見れば、幼稚園児に鉄の塊のような剣を振り下ろす光景は児童相談所へ訴えられてもおかしくはない光景ではある。
しかし、幼稚園児は逃げから一転して、剣を振る少年へと向き直り、振り下ろされてくる剣に向かって、助走や予備動作もなくオーバーヘッドキックで器用に剣の腹に蹴撃を入れて剣を弾いた。
勇者と呼ばれた少年は剣を弾かれた勢いだけならば、踏みとどまる事が出来たが、幼稚園児と言わんばかりの体躯からの蹴りは異常に重く、威力もあり、生身であれば勇者はただの肉塊と化していたであろう。
その威力を殺しきれなかった少年はそのまま横に飛ばされてしてしまう。
「むふ~幼児虐待は死刑なのだ!」
樹齢数百年と呼ばれてもおかしくない樹へ叩きつけられた少年は、そのまま苦悶の表情と声を上げ、剣を杖にしてその場で膝をついてしまう。
幼稚園児はぽてぽてと歩み寄っているが、その顔は幼児に似つかわしくない三日月のような弧を描く笑みを浮かべており「にゅふふふふふふふふふ」と少年へと近づく。
「「ケンジ!避けて!」」
「ナオ!エリカ!すまねえ頼む!」
弾き飛ばされた勇者と少年の間に大きな間合いができると、2人を追いかけてきていたナオとエリカと呼ばれる少女が弓と杖を構えて、呪文の詠唱を始める。
ケンジと呼ばれた少年は背中の痛みをこらえながら、その場からヘッドスライディングの様に飛び退着ながら魔力障壁を張る。
「猛き勇気の宿る弓よ、わが力をもって敵を討たん!〈ブレイブアロー〉!」
弓を構えていた少女は暗闇に立つ少年が見えているらしく、射倒さんと狙いを定めながら矢のついていない弓を引き絞ると光り輝く弓がそこには存在していた。
詠唱も終え、弓から放たれた矢は1本が30本以上の矢へと増殖して幼稚園児に襲い掛かっていく。
「わが聖なる力よ!聖なる槍を以て敵を討ち滅ぼせ!〈ホーリーランス〉!」
同じく横に並んでいた少女が右手に持つ杖を頭上に掲げると、少年の真上に黄金に輝く槍が20本発生しそのまま腕を振りおろすと、幼稚園児に向かって全方向から一斉に降り注がれる。
「ん?げっ!やば!油断し――た――――」
魔法の矢と聖なる槍は、まるで生き物のように木々の間を縫うように走り、同時に少年へと着弾すると、爆発。
2人の攻撃に気が付き、体勢を立て直して障壁を張り、防御の構えを取ろうとしたが時既に遅く、光の矢と槍は眼前にあり、そのまま光の奔流へと飲み込まれたのであった。
爆風が石礫を飛ばし、光の熱が地面をマグマのように赤く融解させる。衝撃により周囲の木々も薙ぎ倒して、そこにいた少年を中心に衝撃と熱が周辺を蹂躙し続ける。
やがて、爆発も収束し周囲に静けさが戻る。
「どうだ!」
「よし!」
「ふ~」
―勇者―
外見が16~18歳、先程の少年と同じ黒髪黒目の3人。
勇者は全員で21名。
魔王討伐と公国に仇名す敵を屠る目的のため「異世界」より公国第2王女によって召喚された人達。
全員が白銀に輝く聖なる武器を持ち、聖銀で作られた防具を纏い今まさに公国の村や町を蹂躙せし魔龍を討ち果たすべく戦っているのであった。
その力は一騎当千と呼ぶにふさわしき能力を持ち、女神からの特別な祝福を有し、亜人、魔人、ドラゴンよりも肉体的にも魔力的にも寿命でも劣る人類にとっての救世主であった。
地上において人類の住める場所は少なく、未開拓(人類にとって)地の拡大は急務であり、そこに住まう悪しき者たちの駆除も勇者の仕事であった。
手ごたえを感じた勇者達は拳を握りガッツポーズをとる。
少年がいたであろう場所を見るが、少年の姿はなく爆発によるクレーターだけがあった。
「やったのか?」
再びの旗が立ち上がる。
「いや、仮にも上位の魔龍だからそんなことはないはずよ?」
「それじゃあ、吹き飛ばされてどこかに倒れてるかも?」
いまだ勇者の力で燻っているクレータ内部に視界を向けるが、中心には何もなく、魔龍と呼ばれた幼稚園児の炭化した姿もなかった。
それではと3人は辺りを見回すけれど、少年の着ていた服の残骸はおろか、肉片、姿も見当たらなかった。
とりあえずと、2人の少女は剣を持つ少年へと近づいていく。
「うわ…鎧がひしゃげてるよ」
「くっそあのガキ!とんでもねえ力持ってやがった。腐っても龍というところか」
「鎧は修復に出さないと治りませんが、今ヒールをかけます」
ナオが座り込んでいたケンジを抱き起し、エリカがダメージを負った体にヒールをかけていく。
それでは魔龍少年の遺体の探索と、もう一人の勇者への援護に行こうと行動を移そうとしたその時だった。
「ダブルカンチョ―!」
「きゃああああああああ!」
「あきゃああああああああ!」
2人は尻に何かが刺された感覚に驚き、両手で尻を抑えながら何事かと、後ろを振り向いた。
両手に木の枝を持ち、腕を広げた姿勢をとる幼稚園児がいた。
3人の勇者は気配もなく後ろをとられた事に驚くばかりである。
手ごたえがあったはずなのに、生身で勇者の必殺級の力をその身に食らったはずなのに…少年には傷一つなく着ている毛皮が少し焦げた形跡があるのみで、5体満足にいることが驚愕するところであった。
「むう…ズッポリと刺し込むつもりが浅かったか」
少年は両手に持つ棒切れの先を見ながら、残念そうな表情をして呟いていた。
「「「なっ!」」」
尻に悪戯をされた怒りと羞恥心で、顔を真っ赤にしながら青筋を浮かべていた。
「いやいや、ここは尻と言わずに別の…と言うことは木の棒ではなく張型でも…いや、俺のこのサイズなら拳でも?」
そういいながら木の枝をポイと捨て両手人差し指で、ある形を空中になぞり、ニッコリと屈託のない笑顔を2人に向けるのだった。
普通であれば、幼稚園児如きが年上のお姉ちゃんにちょっとしたいたずらで「やだも~」と言いながら拳骨を喰らわして終わる所ではあるが、今は殺し合いの最中。
旗を回収したうえに、思わぬ反撃を喰らい、あまつさえR18と言わんばかりのセリフを吐かれてナオとエリカは怒りに身を震わせる。
「おねえちゃんたち、いぢめる?」
と、こてんとかわいらしく首を傾げるが、そんな効果はなかった。
「「このおおおおお!エロガキがああ!」」
とナオとエリカと呼ばれる少女達は、弓と杖を構え攻撃してきた。
「あっはは~鬼さんこちら~おし~りぺちぺち」
幼稚園児は攻撃をかわしながら器用にズボンを降ろし、尻見せのぺちぺちとする余裕を見せながら再び逃走を始めるのであった。
呆気に取られていたケンジも慌ててナオとエリカを追いかける。
2匹の番の龍と勇者たちの戦いの一幕であった。
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