(5)
ドラゴンを追う事にした冒険者とトラゴロウは、いったん街へと戻ります。
でもトラゴロウは手配書が出回っているので街には入れません。
「アタシはここで待ってるわ」
トラゴロウは自分の体に雪を付けながら転がります。
そのまま虎のユキダルマに変装しました!
「………あ、あぁ……まあ、お前がいいなら……」
冒険者は街へと入ります。虎のユキダルマに喜ぶ子供達の声が聞こえてきました。
やっぱり大人気ですよね。
そのまま例の酒場へと戻る冒険者。時刻は夕方過ぎです。
酒場にはチラホラと客が居ました。
「おっちゃーん、もどったどー」
「お、どうだった……」
周りにライバルがいるかもしれません。二人はヒソヒソ声で話します。
「どうやら春の女王は、ここから東の湖の神様とやらに解呪しに行ったらしい。どんな所か知ってるか?」
とたんに酒場の店主は真っ青になりました。
「ちょ……東の湖って……もしかしてアーヴァンクか……?!」
店主は思わず声を上げてしまいます。周りの客が一瞬店主を見ました。
でも皆お酒に夢中です。
「なんだ、知ってんのか。足が欲しいんだけど……何か……」
「止めとけ……! あれは神様なんかじゃねえ、おっかねえ魔人だ……なんでよりにもよって……」
魔人とは魔物の上位にあたる者です。昔は人間よりも数が多く、国を作ってたりしました。
冒険者は魔人と聞いて渋い顔をします。
しかし、そんな魔人の元に春の女王が向かっているのです。放っておくわけには行きません……よね?
「あぁ……いや、大丈夫だ。こっちにはコイツが味方に付いた。冒険者と賞金首って昔から紙一重だからな」
冒険者はローブからトラゴロウの手配書を出しながら言いました。
それでも酒場の主人は苦い顔をしています。
「そいつが居たって……危険過ぎるぞ……」
冒険者はニタァと笑います。
危険という言葉は冒険者にとって、シチューに入れるチーズのような物です。
「たとえが分かりにくい……まあ、私は大丈夫だ。今まで危険なトコばっかり入りこんで来たからな。頼む、馬でもなんでもいい、足になるの貸してくれ」
主人は折れ、冒険者の言葉に頷きました。
「わかった……絶対戻って来いよ。俺の馬、仕入れに使うんだからな……」
「約束する。あぁ、これ担保な」
冒険者は酒場の主人に手の平ほどの宝石を渡しました。
かすかに黒く光っています。
「私の宝物だ。絶対取りに帰るから。ぁ、間違っても売るなよ」
大丈夫です。貴方じゃないんですから。
酒場の主人に見送られながら冒険者は馬を借り、街の外へと駆けます。
「トラゴロウ、行くぞ」
子供達に乗られたり更に雪を上乗せされているトラゴロウはモッソリと動き始めます。
「待ちくたびれたわ」
突然動き始めた雪トラゴロウに驚く子供達。でも逃げません。
手を叩きながら喜んでいます。
「とらー! とらー! 乗せて! 乗せて!」
「空とんで!」
「屏風の中から出てきて!」
最後の子供はどこ出身なんですかね。
トラゴロウは子供達の顔をシッポで優しく叩きながらリップサービスします。
「もふもふー!」
「もっかい! もっかい!」
「一万円札でビンタされるより良い!」
だから何処出身なんですかね?!
冒険者は馬で駆け、トラゴロウはその後を追います。
今考えたら、トラゴロウの上に乗れば良かったんじゃ……ぁ、無理ですね、重いから。
「そんなに重くないわ!」
「まあ鞍もないしね。痔になるわよ」
二人は真っ白な雪原を走り抜けます。
目指すは太陽の方向、東……なんですけど……
「沈むわね」
太陽は東から西に沈みますからね。今思いっきり西に向かってましたね。
「………早まった……どうしよう、カッコつけて出てきたから……今さら酒場に戻りにくい……」
そうですね。担保だ、とか言って家宝まで渡しましたからね。
「仕方ない……馬も可哀想だし……」
冒険者は馬降りて魔法で鎌倉を作りました!
「ちょっと、表現適当過ぎない? 魔法って書けば何でも解決すると思ったら間違いよ」
ごめんなさい。
大きめの鎌倉の中で鍋をする二人と馬。
具は冒険者が持っていた具材、トラゴロウが採って来たキノコなどが入っています。
「アンタ、この赤い肉なんの肉よ」
「これか? モシャガヒルモアの肉だ」
馬はエサをくれと冒険者の髪の毛を鼻でツンツンします。
冒険者は生野菜を馬の口に運びました。美味しそうに野菜を頬張る馬。
「モシャガヒルモアって……あの鶏だかトカゲだか分からないのでしょ? そんなエグいもの良く食べれるわね」
「いけるんだって……ほら、食ってみろ」
冒険者はモシャガヒルモアの肉をトラゴロウの口に運びました。
「アラ、ほんとね、イケるわ」
気分が良くなった冒険者はカバンからお酒を取り出します。
そのまま鎌倉の中で酒盛りしだす虎と冒険者、あと馬。
二人と一匹は一通り飲んだくれた後、眠りに付きました。
目的……わすれてませんか?!




