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赤い髪の冒険者と季節の女王様  作者: Lika
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(1)

 これは、とある国のお話です。


一年中冬が続く国がありました。


もちろん季節は巡るものです。でもこの国の季節は、それぞれの女王様が交代で塔に住む事で巡らせていました。


ところが、冬の女王様が塔から出てこなくなってしまったのです。


春の女王様も姿を見せません。


困り果てた王様は国民にお触れを出しました。




  冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう


ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。


季節を廻らせることを妨げてはならない。




このお触れを、とある冒険者が目にしました。


「好きな褒美……」


冒険者は赤い髪に白いローブを羽織った女の子です。


「何にしようかな……んー……家とかでもいいのかな……どうせなら……お城みたいな……」


すでに褒美を貰う気でいます。欲の塊です。


「交代させれば良いのかぁ……冬の女王と春の女王拉致って……」


お触れをちゃんと読みましょう


「ん……? 塔ってあれかな……」


王宮の隣りに女王の住まう塔があります。


今は、冬の女王様にお話しを聞く為に行列が出来ています。


「うへぇ……あれ全部ライバル? ないわ……諦めよ……」


ダメです、お話終わっちゃいます。


「酒場でも行こう……」


諦めるのは早いですよ! ちゃんと交代させてください!


そのまま冒険者は酒場へと向かいやがります。



酒場へとやって来た冒険者。


でも酒場の中は人があまり居ません。


「なんか寂しい……」


「うるせえ、嫌なら出てけ」


冒険者の漏らした言葉に、酒場の主人はイラっとしました。


「冗談です。というわけで一杯ください」


冒険者はカウンターに座り、銀貨を数枚出します。


銀貨を見ると、酒場の主人は態度を変えて接待し始めました。商売人です。


エールを受け取った冒険者は、ついでにツマミも注文します。


「はー……ねえ、オジサン。あのお触れ見た?」


「あ? あぁ、もう冬ばっかだからな……そろそろなんとかしてほしいんだが……」


主人はチラチラと冒険者を見ます。


銀貨をサラっと出すほどの冒険者です、かなりの手練れだと思ったのでしょう。


「あー、無理だわ。だってライバル大すぎ……その内誰かなんとかするんじゃないの?」


完全に二人とも他力本願です。


「なんとかねぇ……あのお触れいつから出てるか知ってるか?」


「ん? え、そんな前から出てんの?」


お触れは半年前から既に出ています。にも関わらず噂を聞きつけた冒険者や冬を終わらせたい国民が塔に行列を作っているのです。


「えー、なのに冬終わらないんだ……なんで交代しないんだろ」


「さあな、それが分かったら苦労しねえよ」


まったくです。


「お前さん、もし塔に行くなら夜になってからにしな。多少は行列も少なくなってるだろうし」


「ふむぅ……」


いまいちやる気の無い冒険者を他所に、時間はあっという間に夜になりました。


「マジか……なんか手抜きっていうか……」


貴方に言われたくありません。


「まあいいか……お、確かに行列無いな。よし、行こう」


奇跡的に行列は無くなっていました。非常に都合が良いです。


塔へ入るためには、まず持ち物検査、武器の類いは預けなければなりません。


冒険者は魔法使いだった為、手持ちのステッキを門番に渡します。


「よし、通れ。くれぐれも粗相のないようにな」


「へいへい」


冒険者は、ぶっきらぼうな態度で塔を上りはじめました。


長い螺旋階段を上り、最上階へと付く頃には冒険者の足はパンパンでした。明日には筋肉痛確定です。


「はぁ……はぁ……酒飲んだすぐに……コレはキツい……」


真っ青な顔で、冒険者は目の前の扉をノックします。


「どうぞ……」


中から綺麗な、どこか透き通るとうな声が聞こえてきました。


思わず冒険者はドキっとします。声だけで好きになりそうでした。女のくせに。


「うるせえ……失礼しまーす」


中に入ると冬の女王様はそこに居ました。


真っ白なドレス。金髪の長く綺麗な髪。透き通るような青い瞳。


肌は白く、まさに雪のようでした。どっかの冒険者とはまるで肌の質感が違います。


「おい……」


冒険者は部屋の中に入るなり暖かい暖炉の前へと進みました。


そのまま机の上にあるココアに手を伸ばします。礼儀とか遠慮とか知ってますか?


「あの……何か?」


当然女王様も呆れかえっています。


「あー、えっと、なんで交代しないの?」


いきなり本題です。


当然女王様は答えません、無言で窓の外を眺めていました。


「ごちそうさま……じゃ、帰るわ」


ちょっと待てコラ!


ちゃんと交代させてください!


「チ……あー、えっと……皆寒がってるから……そろそろ交代して貰わないと……」


冒険者は言葉を選びながら女王様に交代を求めました。


このまま冬が続けば、食べ物が尽きて大変な事になります。


「わかって……います……」


女王様は塔から見える街の一部を見ながら呟きました。


冒険者も違う窓を覗いて街の様子を見ます。


「ん? あれ……なんだ、ここ……全然見えねえ……」


塔から見える街は、ほんの一部のみ。


どれだけ高い塔でも隣りの王宮が邪魔で全く景色が見えませんでした。


王宮とは反対側の壁には窓すらありません。


「つまらん景色だな……こんな所に良く一年も……って……」


冒険者は呟きながら女王様を見て驚きました。


冬の女王様は大粒の涙を流しながら泣いていたのです。


「え?! いや、あの……な、なんで泣いてんの……?」


冒険者は焦ります。


女王様を泣かせてしまったのです。処刑です。


「ま、まじ……?」


冗談です。


「…………」



女王様は涙を指で拭いながら、冒険者を見つめました。


「貴方は……今までどんな冒険をしてきたのですか?」


冒険者は首を傾げました。


自分の冒険譚など全く大した事の無い物だったからです。精々魔物を討伐したお金で酒を飲んだくれるだけの生活です。


「違うわ! ちゃんと冒険してるわ!」


冒険者の言葉に、女王様は目を輝かせました。


「あの、もし宜しかったら……聞かせて頂けませんか? 貴方が体験してきたことを……」


「え、ま、まぁ構わないけど……ぁ、なんか食べ物ある?」


図々しいにも程があります。


女王様は優しく微笑みながら、召使を呼んで食べ物を持ってこさせました。


しかし召使は渋い顔です。当然です。ただでさえ食料が不足しているのですから。


他ならぬ冬の女王様のせいで。


「おい……そういう言い方……」


ごめんなさい。



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