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これが本当の勇者VS魔王

「ふふ、はは、はははっ!」


 しばらく呆然としていたリステルガーだったが、アレンの熱気のこもった怒声を聞くやいなや、こちらも盛大な嘲笑を発した。


「また貴様ごときがわしに挑むつもりか! 素直に逃げていればよかったものを!」


 奴の御託を聞く気は毛頭なかった。アレンは地を蹴り、そのまま空を突き進む。勢いよくふりかぶった剣を、敵の首めがけて切り払おうとする。だが、正体不明の見えない壁にさえぎられ、アレンは後方に吹っ飛ばされた。


 その隙を、リステルガーが見逃すはずもなかった。右手を高く掲げ、人差し指を天に向かって突き出す。突如、奴の指先から巨大な闇の球体が立て続けに出現する。リステルガーをまるまる飲み込むほどの巨体を持つそれらは、すさまじい速度でアレンに襲い掛かってきた。


 だが、黙って見ているほどいまのアレンは臆病ではない。大またで屋上を疾走し、球体をかわしていく。すさまじい轟音が反響すると同時、床には球体の形そのままの穴が開く。


「ぬおおおおおっ!」

 技後の硬直を狙い、アレンはリステルガーに切りかかった。力強く踏み込み、奴の身体に一撃を与えようとした直後――

 リステルガーがふいにこちらを向き、不気味な笑みを浮かべた。


 その化け物じみた表情に、アレンは一瞬ながら恐怖を覚えた。途端、激痛を感じ、悲鳴をあげて地面に直撃した。さきほどの球体を、至近距離で放たれたらしい。なおも迫ってくる球体に、アレンはなすすべもなくすべて直撃する。 


 自分の周囲を黒煙が舞う。勝負を見守っていた王妃が短い悲鳴をあげる。アレンは悶え、口から血液を吐いた。


「ふはは……なんじゃ、その程度か、え?」

 力なく横たわるアレンに、リステルガーは誇らしげに歩み寄る。そのままアレンの首を掴みあげて持ち上げると、狂った笑いをあげた。


「はは、さすが最弱勇者よ! でかい口を叩いておきながら結局はこれか!」

 リステルガーにまとわりつく大蛇が、獰猛な牙を立てて噛み付いてくる。リステルガーの球体がアレンめがけて大爆発を起こす。繰り出される猛攻に、アレンは首を垂らしながらすべて受けつづける。リステルガーが愉快そうに嘲け笑う。


「はん。そっちこそ、その程度か」


 アレンは口元を歪ませると、自分を締めるリステルガーの手を握り締めた。さっきまで甲高く笑いつづけていたリステルガーは、アレンの変わりように凍りついたように静止する。


「ずっと考えてきた……クズ勇者の僕が……おまえに一矢報いる方法を……」


 握り締める拳にさらに力をこめる。


「僕はクズ勇者だ。誰もが僕と戦うときに油断する。どうせこいつは弱いからと、最初から本気でかからない」


 アレンはもう一方の手を、腰の剣帯に移す。

「そんな、僕みたいなクズ野郎にもひとつだけチャンスがある」

 リステルガーの腕を、全力をもって振りほどき――

「――こうやってクズ野郎に油断するクズをぶっ飛ばすことだ!」


 子どもじみた怒声とともに、アレンは高く跳躍した。完全に棒立ちになったリステルガーに、頭上から刀身を滑り込ませる。たしかな手応えがあった。リステルガーがうめきながら仰け反る。緑の鮮血があたりに舞う。だが、アレンもこの機を逃す気は毛頭なかった。


 よろめくリステルガーに、アレンは次々と剣戟を浴びせた。完璧なフォームでもないし、攻撃力も馬鹿みたいに小さいだろう。それでも、その一撃一撃が組み合わさればいくら魔王とてただでは済まないはずだ。不器用ながらも立て続けに攻撃を浴びせるうち、リステルガーの傷もみるみるうちに増え、ついに魔王が膝立ちになったとき――


「調子に、乗るなァ!」


 リステルガーの突き出した片腕から、衝撃波が放たれた。強烈な痛みとともに、アレンは吹っ飛ばされた。


 それでもなんとか空中で姿勢を立て直し、片腕と片膝をついて着地する。顔をあげると、ちょうどリステルガーも立ち上がったところだった。

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