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花が好きでなにが悪い

 勇者アレンは、地面で儚げに咲いている花――プレミラを見つけた。


 現在の危機的状況をぽかんと忘れ、アレンは地面に座り込む。その黄色い花に顔を近づけると、甘くほんのりとした香りが鼻腔をくすぐった。思わず感嘆の息をつくアレン。


 綺麗な花を見かけると、どんな状況であっても、つい地面に座り込み、まじまじと見入ってしまう――それがアレンの癖だった。もちろん、可愛そうなので摘み取ることは絶対にしない。地面に咲いてこそ、花はしかるべき輝きを放つのだ。そう思いながら、美しい香りに昇天しかけていると――


 ふいにかけられた鋭い声に、アレンは一瞬にして現実に引き戻された。


「アレン! そっちいったぞ!」

「へっ……」


 驚いて、声のした方向に目を向ける。


 巨大虫モンスター『カマキリン』が、ヨダレを振りまきながら襲ってきていた。全身緑の細い体躯で、刃物のように尖った両手。面長の顔に、赤く小さな目。はっきりいって、恐るるに足らないザコモンスターだが――


「ひえええっ!」


 アレンは情けなく悲鳴をあげ、その場に尻餅をついた。

 慌てて腰の鞘に手を滑らせ、剣を抜こうとする。が、こんな姿勢では抜刀すらままならない。


「ひゃ、ひゃあああああっ!」


 死を覚悟して目をぎゅっと閉じる。


 瞬間、甲高い金属音がアレンの耳をつんざいた。

 薄く目を開ける。黒の鎧に身を包んだ、大柄な男が、アレンとカマキリンの中間に立っていた。見上げるほどの巨大な槍をカマキリンの腹に突き刺し、こちらに怒りの目を向けている。


「アレン……おまえの趣味趣向をとやかく言うつもりはないが、たまには状況を見てくれないか。さすがにフォローしきれんぞ」


 言うなり、男は突き刺したままの槍を勢いよく引っ張った。直後、ぎえっという悲鳴をあげ、カマキリンから大量の血が噴出する。そのまま絶叫を響かせながら、カマキリンは無数の光の粒子へと姿を変え、消滅した。

 

以前連載していた作品ですが、なにかの拍子に削除してしまいましたので、再投稿させていただきます。

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