刺激
いつもの道を歩きながらいつものことを考える。
「どうしてこの世界は生きずらくて、つまらないのだろう」
僕のような人は無能と言われ、成績のいいやつばかりが持ち上げられる。
僕のような人のために何か特別にすることもない。
テレビはつまらない。
世界を変えるほどの力が欲しい。
「その願い、叶えましょう」
僕の目の前に謎の人が現れた。
黒いローブで体を覆ったいかにも怪しい男だ。
「君に”目のあったものを殺す能力”を与えよう」
いきなりこんなことを言うのでさらに怪しく感じた。
「信じてないようだね。では実践しよう」
男は今足元を走っていったネズミを捕まえ、そのネズミを見つめた。すると、ネズミはたちまち破裂し、粉々になった破片が地面に落ちた。
「どうだい?さらにこの能力は、直接目を合わせなくても、テレビや写真ごしに目を合わせても殺すことができるのだ。まさにチート能力だ。さぁ、これで世界を変えよう」
目の前ですごい能力を見せられ唖然としていた。もしこの能力を持っていたら…凶悪犯を殺して、政治家を殺して、僕を追い詰める奴が出てきて……
いろいろ考えて僕は答えた。
「いや…やっぱいいです」
「は?何故だ!世界を変える能力を手に入れられるんだぞ!新しい世界の王になれるんだぞ!なのに何故!」
「いや…何かそういうの面倒くさそうだし…自分の命とか狙われたら嫌だし…」
「さっきは世界を変える力が欲しいと言ったのにか?」
「うん…面倒なのは嫌いだし」
「…」
予想もしなかった返答に男は呆れていた。
「…そうか、お前はいつもそうやって何もしないんだな。分かった」
男は煙と共に消えていった。僕が何故つまらない生活を送っているのか分かった気がする。