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Lady-Mの悲劇  作者: 祭人
プロローグ
2/12

第二話:ポニーテールの若妻日記

 翔一郎の実家は、元々妻側である猿渡家の隣に存在していた。


 実は数年前。翔一郎の両親が経営するパン屋が店舗経営に困窮。多額の負債を背負った壬生家は、持ち家の権利を抵当に渡すことで、自己破産と店舗閉鎖の危機を免れた。


 その為に両親と翔一郎夫婦は、現在2DKコーポで別々の生活をしているのである。


 旧壬生家は老朽化した家屋を建ち壊され、現在は更地となって売却中だ。


 妻の真琴は、売りに出された旧壬生家の土地を買い戻し、そこに新築のマイホームを建てるべく日々の節約に紛争しているのである。


 家庭を守る主婦としての業務は元より、幾つものパートを掛け持ちしている。まさに八面六臂はちめんろっぴの大活躍だ。


「しばらく俺が真琴の実家のお世話になってもいいんだけどな」


 そんな翔一郎の提案を、毎度のこと妻はポニーテールをぶんとなびかせながら「できませーん」と却下した。おそらく新米亭主の翔一郎に、余計な気を使わせたくないとの彼女なりの配慮だろう。


「まったく頑固なやつだ。じゃじゃ馬姫とはまさにこの事。まあ、おまえのそういうとこ、俺も嫌いじゃないけどな」


【まあ、翔兄ぃのそういうとこボク嫌いじゃないけど】


 妻の艶やかな毛並みのポニーテールと、先日の「ももいろバトル」でのやりとりを思い出しながら、翔一郎はひとり静かに苦笑した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 食事を終えた翔一郎は。先ほど自分で入れた溜息まじりのコーヒー片手に、ポケットからiPhoneを取り出した。


 食後のお楽しみ、ネットサーフィンの時間である。それが小遣いの少ない新米亭主に与えられた、ささやかな娯楽なのだ。


 会社のPCは管理者アドミニストレーター権限により、休憩時間など業務時間外の使用は制限されている。役職の付かない翔一郎のような平職員は、利用者クライアント権限しか持たされていないのである。


「さてと、例の怪しげなサイトでもチェックするか」


 親指がiPhoneの指紋認証ボタンに触れる。職場の仲間や夫婦といえど、プライバシーは重要だ。液晶パネルが指し示しているのは午後十二時三十分。


 インターネットブラウザのアイコンをタップし、お気に入りをスクロール。そこから「あるサイト」を選び出し、再びタップする。


 翔一郎の指先は「例の怪しげなサイト」にたどり着いた。


 サイト上部には、彼のイタい弁当箱と同じ白地にブルーの文字で『みんカラ ~みんなのカーライフ。日本最大級のクルマSNSサイト。クルマに関するレビューや口コミ情報が満載!』と記し刻まれている。


 更にスクロール。そこには「整備手帳」と称された、個人のブログが表示されている。それが前述の翔一郎曰くの「例の怪しげなサイト」である。


 各個人で設定できる背景ラベル。この手のサイトではよくある仕様だ。


 ラベルのデザインは、桃色のレーシングツナギを身にまとったアニメチックな女の子。よくよく見ると、妻の真琴にそっくりだ。ご丁寧に「MIDNIGHT WOLVES」と本格的なロゴマークまで施されている。


挿絵(By みてみん)


 ラベル左端には、ももいろの大きなフォントで、個人のブログ名が表記されている。


 例の怪しげなサイト、その正体は。


『ダーリン翔兄ぃとインプWRXのももいろ整備日記』


 真琴のブログだ。


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