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Lady-Mの悲劇  作者: 祭人
プロローグ
1/12

第一話:新米亭主の悲劇

挿絵(By みてみん)


ももいろエンジンスターターの続編です。


※原作と微妙に設定が異なります。ご了承くださいませ。

 市役所住民課のデスク前。愛妻弁当を白米の一粒まで綺麗に食べ終えた壬生みぶ翔一郎しょういちろうは、速やかに箸を弁当箱の中に終い込んだ。


 富山県産のコシヒカリ。妻こだわりの一等米だ。新米亭主としては残す訳にはいかない。


 薄暗い室内が、アラフォー手前のげっそりした頬に影を落とす。何故だか最近やつれ気味。ひと回りも年の離れた元気な若妻の、徹底した栄養管理で満たされている筈なのに。


 新婚家庭である壬生家の毎朝恒例儀式「悶絶!! 朝のももいろチュウちゅうバトル」で、盛の付いた若妻に栄養をたっぷりと奪い取られているのだろうか。


 昨今。各地自治体の市役所では、税金の無駄使いとエコ対策として、就業時間外は室内の照明を消灯されてある。その為かランチタイムは、職場の同僚たちは皆、一様に出払っている。


 そんな中で翔一郎だけが、いつもぽつねんと取り残されていた。しかしながら、別に職場の人間関係が悪いわけではない。


 それもこれも、すべてはこの弁当箱のせいだ。


 スバルカラーを彷彿とさせるブルー&ホワイトのツートーンカラーの弁当箱。表面には防水ラミネート加工を施した、妻お手製のイラストシールが貼られてある。


挿絵(By みてみん)


 シールのデザインは桃色のレーシングツナギを身にまとったアニメチックな女の子。よくよく見ると、妻の真琴にそっくりだ。ご丁寧に「MIDNIGHT WOLVES」と本格的なロゴマークまで施されている。


 そのイタいパッケージに負けず劣らず、これまた中身がイタい。


 桃色に合成着色された、巨大なたくあんのハートマーク。はたまた海苔で作った「翔兄ぃLOVE」などなど。連日、痛いイタいのオンパレード。まさに痛車ならぬ痛弁だ。


 恥ずかしすぎて、上司や同僚たちの前では絶対に広げられない代物である。


 その痛弁シール。やたらと本格的な出来栄えである。素人仕事とは思えない。もしかしたら、どこぞのプロの絵描きにでも発注したのだろうか。


 真琴は全国のクルマ好きが集まるインターネットコミュニティサイト「みんカラ」の常連だ。もしかしたら、独自の広い人脈があるのかもしれない。亭主である翔一郎の知らぬところで。


夏炉冬扇かろとうせん。まさに夏の火鉢と冬の団扇だ。まったく、真琴も無駄な浪費をしてくれて。マイホーム実現へ向けて節約するんじゃなかったのかよ」


 イラストシールの真琴とおぼしき女の子が、満面の笑みを浮かべて翔一郎に微笑む。


「まあ、実際よくやってくれているけどな。自戒自粛じかいじしゅく。ガソリン喰いのモンスターカーに乗った甲斐性なしの道楽亭主がそんなこと言ったら、天罰が下っちまうかもな」


 自嘲気味に頭を掻く翔一郎。


「すべては壬生家の再興の為にがんばってくれているのに――」


 イラストシールの少女を、神妙な面持ちでじっと見つめる。


「なあ。おまえもそう思うだろ、崇」


 自責の念に駆られた彼は、おもわず亡き親友の名前を口にした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翔一郎の実家は、元々妻側である猿渡家の隣に存在していた。


「ミッドナイトウルブス」の原作者の石田 昌行さんから素敵なイラストを提供して頂きました。快いご承諾を本当にありがとうございました。http://ncode.syosetu.com/n5321cr/59/ 

https://twitter.com/ishiyanwrx


イラストデザインは漫画家「中垣慶」先生の作品です。

https://twitter.com/keingaki

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