閑話:会話
閑話なので短めに...
上も下も右も左も───全てが白く染まった空間で、唯一色を持つであろう存在が二人。互いに向き合って座っている。
周りと同じ色のイス、テーブル、ティーカップ、受け皿。
全てが溶け込み同化していた。
「ねぇ、まだ見つからないの?」
ゆるく波打つ白銀色の髪を片手で弄びながら、ねっとりとした甘い声で言う。形のいい眉を顰めているところから見ると、大分、御不満のようだ。
「まぁーだ。なんせ、世界は広いからね。それに、介入にも制限があるし、そう簡単には見つからないよ。」
対するは、ティーカップを優雅に傾け、いたずらっ子のような顔で肩をすくめる。
それを見て、更に女性は整った顔を顰めた。
「んもう、焦れったいわね。私が介入できないから、頼んでいるのに!!本当に探してるの?」
「心外だなぁ、俺がそんな不真面目だとでも?安心してよ、ちゃんと探してるって。」
「・・・遊んでばっかりな奴のことを不真面目って言うのよ。それに私、貴方が働いている所見たことないわ。」
「あ、ばれた?」
「隠す気なんてないでしょう?知ってるわよ。」
カチャリ、とティーカップが音を立てる。
「何度も言うようだけど、大事な事なんだから早く見つけて頂戴。他の奴らの手に渡ってしまったらと思うと、気が気でないのよ。・・・いつも玩具はそっちに送ってるでしょう?その分は働きなさい。」
「はいはい、働けばいいんでしょー働けば。全く、人使いが荒いんだから。」
そう言って、カップの中の液体───これまた周りと溶け込むような真っ白なミルク───をぐいっ、と一気に飲む。
「いい?絶対あるから!よく探してよ・・・見つかったら報告、もちろん一緒にね。」
「はいはーい、ごちそーさま。」
「本当にわかってるの、それが無かったら私も貴方も・・・。」
しつこい女性に煩わしそうな表情を浮かべる青年。ガシャン、と乱暴にティーカップを置いた。
「うるさいなぁ・・・俺はただ強い奴に会いたいだけなの。何なら、君から殺ってもいいんだよ?」
「それは勘弁して、流石に貴方には勝てる気がしないわ。・・・とにかく、頼んだわよ。」
「しつこいなぁ、わかってるよ。」
気だるそうにため息をつく女性。
「私だって、好きで貴方に頼んでいる訳では無いのよ。他にいないから仕方なくよ、仕方なく。ほら、貴方は力だけはあるから。」
「力だけって、失礼だなぁ。まるで俺が脳筋みたいな言い方だね?」
「あら?違うの?」
そう言って微笑む女性。今度は青年が顔を顰めた。
「・・・君とは一生気が合うことはなさそうだよ。」
「あら、初めて意見が合ったわね。私も同意見よ。」
青年は無言で肩をすくめると、目の前の空間に手をかざした。
「じゃあ、遊んでくるから。またね・・・巨乳ババア。」
「なっ・・・!!」
女性が怒鳴ろうとした時にはもう遅く、ただただ見知った白い空間があるばかり。
わなわなと握りしめた拳が震える。
「あんの糞ガキ。ほんと、相変わらず生意気ね・・・!!」
女性はしばらく怒りの表情を浮かべていたが、ふとダラリと腕を下げた。
青年がいなくなったことにより、静寂となった空間にただ一人ぽつんと佇む。
悲しげに目を伏せる。
「・・・やっぱり、ひとりは寂しいわね。」
女性はそう呟くと、ティーカップの中に角砂糖をひとつ落とした。
白いだけの世界で再びひとりになる。
※修正