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AM4:00

作者: 罰歌




 ジリジリジリ……。


 騒がしく鳴る目覚ましのベルを、カタツムリの様なスピードでとめる。

 そして、手を少し右に伸ばし眼鏡をとる。目をこすり、深緑色の使いなれたメガネをかける。ぼやけていた視界が、少しだけ、はっきりとした。


 会社に行く準備のため起きる、いつも通りの時間帯。

 わたしは、この時間帯が一番好きだ。街の中、まだほとんどの人がやさしい寝息に包まれている、とても静かな時間。時たま入ってくる音は、鳥の鳴き声か、新聞配達の音。昼間の騒がしさは、ない。とても穏やかだ。

 黄緑色のやかんでお湯を沸かし、八枚切りの食パンを緑オーブントースターに入れて焼く。朝ごはんの用意。今日は、紅茶とマーマレードジャムとトースト。お気に入りのメニュー。


 お湯が沸いてトーストが焼けるまでに、顔を洗った。

 昨日の泣き痕は残っていなかった。


 お湯が沸いたので、ティーカップを温め、そこにティーバッグをひとつ入れ、そそぐ。紅茶の綺麗な赤色が出るのを楽しみに、蒸すためのふたをする。

 トーストは良い感じの焼き加減で、取り出し、マーガリンとジャムを塗る。この食べ方も、彼に倣ったんだっけ。

 懐かしいな、なんて思いながらテーブルに朝食たちを置く。

 蒸らしていたふたをとれば、紅茶の香りが部屋を染める。カップの仲は綺麗な紅色をしていた。


 「いただきます」


 まだ静かな街の、静かな空気の中。

 トーストを口にした。瞬間、サクッと音がなった。マーガリンの風味と、柑橘類の、さわやかな甘さが広がった。

 何でもない、彼だけがいなくなった、いつも通りの朝を迎える。


 洗いものに、お洗濯。お化粧を済ませて、ドアノブを掴んだ。

 ひねって、少し重いドアを開けた瞬間。ふと、彼の声が聞こえた気がした。

 振り返れば、誰もいない廊下。


 「いってきます」


 少しずつ、日の昇って来た街へと、わたしは一歩踏み出した。


 空気はまだ、澄んだまま。







こんにちは。

初めましての方は、はじめまして。


今回は、「淡々とした、ありふれた風景」をテーマに、そのようなお話を作りました。

私のイメージは、作中に「緑」を何回か言葉に出しましたが、澄んでいる水色が作品のカラーなのです。


主人公は、女性で年齢は多分、二十代半ば……ですかね(笑)

一応描いてはいませんが、背景として、彼氏さんがいた設定です。


彼氏さんは、ただ別れただけなのか、それとも、もっと重い何かがあったのか。

そこは、皆様のご想像にお任せします。



最後に。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

また投稿させて頂きましたら、そちらも見て頂けると幸いです。




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