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EP.2「初戦闘の行末」

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ミリタリーエアプ

 日本の首都東京。

 日本自衛軍本部の一室には張り詰めた空気で充満していた。 先日の北海道急襲。ロシア軍のHA16機に日本軍の精鋭連隊が半壊させられた事を受け、軍全体がてんやわんやとなっていた。

「...北海道に駐屯している115連隊は辛うじて奇襲してきたロシア軍大隊規模を撃退、ゲッコウ小隊による奮戦で被害は抑えられたものの、連隊の10機中破、4機小破。ゲッコウ小隊は全機撃墜し、ゲッコウ4のみが生存か...」

 日本自衛軍の陸軍副司令、加賀(かが)紀敏(のりとし)がそう呟く。その言葉を聞いた司令官は頭を抱え深いため息をつく。

 今の日本は世界で最も強力な部隊を保有していると言っても過言ではない。

 ロシア極東部の電撃進軍。中国戦線の全戦線優勢。たった一国の軍隊で大国と渡り合えていることは、戦術的な優位性と兵器の相性、そして軍内部の共通規格化による兵站への負荷が他国と比べて軽いことなど、さまざまな要因が絡んでいる。

「日本が参戦してから対HA戦のキルレートは1対13.7。しかし今回の戦闘では1.6だ。戦略的に見れば勝利と言えるかもしれんが、ロシアの物量を考えれば、これは致命的な損耗率だ。このことが(おおやけ)に発表されれば、日本軍全体の士気に関わる。もっといえば他国に攻勢の機会を与えることにもなりかねん。どう思っているのだ?赤羽根(あかばね)明宏(あきひろ)陸上幕僚長殿?」

「...そうはいうが、一昨年のレートは1対7.1。ロシアの新型が確認された去年でも6.5だ。依然我々の優勢ではあるが、差は縮まってきている。いきなり驚くことでもあるまい。そもそもの話、後方への奇襲というのは精鋭中の精鋭が行うものだ。これぐらいできなれければ精鋭の意味がない」

 赤羽根は重い口を開く。淡々と事実を述べるこの口調は、加賀副司令に言い返すというよりまるで自身に言い聞かせるようだ。

「そういう意味では、我々の部隊は優秀だよ。訓練生の教育が主目的の部隊でも、他国の精鋭部隊と肩を並べるかそれ以上の能力があるのだ。それに、前線を張っている者はともかく、快進撃を続け天狗になっている首脳部にはいい薬になるだろう。不謹慎な話だが...」

 事実として、日本は物量に押され始めている。

 防衛戦となれば、その経験が乏しい日本は一気に劣勢となるだろう。それをよく理解しているからこそ、日本は新たな戦略と電撃戦を繰り返して、防衛線が張られる前に、漸減(ぜんげん)と用撃を繰り返している。

「陛下や他の総司令官が聞いたら、お前は今すぐに降格だろうな」

「司令官の席。それが望みか?加賀」

「とんでもないよ。司令官様。それより、我々が呼び出したのにずっと我々の愚痴を聞かされているゲッコウ4のことを構ってあげた方がいいんじゃないか?」

「ひゃい!?」

 紀敏は対面の椅子に座って顔を青くしている久宮に視線を向ける。

 久宮は抜けた返事をあげ、今にも死にそうな顔をしている。

「すまない。久宮陸准尉(じゅんい)。こちらも切羽詰まっていてね」

「い、いえ...お構いなく...」

「はは!面白いやつじゃないか。赤羽根。我々にお構いなくだとよ。」

「あんまり茶化してやるな。加賀。彼の顔を見ろ。今にも吐きそうな顔をしているぞ」

「お前も大概だとおもうがな」

「まぁあまり話を脱線させても彼の迷惑だろう。初陣で撃破5、アシスト11なんて、エースと言っても過言じゃない。君がいなかったら連隊は文字通り全滅だった。陸軍を代表して礼を言う」

「は、はぁ...」

 久宮がこの場に呼び出されたのは、先の戦闘で最初に接敵し、最も損害を与えた人物であると言うのがもっともの理由だ。

 連隊全員からの報告は上がっているが、現場を経験した者から生で話を聞きたいという正・副司令官両名の強い意向によって招集されていた。

「いきなり本題だが、先の戦闘についてどう思っているか、聞かせてほしい」

「そう言われましても...無我夢中でした。やらなきゃやられると思ったんです。正直にいえば...ほとんど覚えていません...」

「まぁそんなもんだろうよ。戦闘データは回収できたが、これがなかなか興味深いものだ。見るか?」

「加賀。やめとけ。...久宮陸准尉。君には私から辞令がある。初陣でロシアの精鋭部隊壊滅に貢献し、貴重な戦闘データを入手できた。私達としては君のような優秀な若者を後方で遊ばせておく余裕はない。」

「と、言うと...?」

「君は今日から精鋭として、ロシア極東戦線に配属される。喜べ。昇進だ」

「せ、精鋭!?あの...お言葉ですが、俺...あ、いや...私はそのようなことができるような能力は...」

 久宮が驚くのも無理はない。前線後衛の支援部隊や砲撃部隊に配属されるならともかく、精鋭部隊ともなれば少数機の遊撃部隊や敵戦力の大半を正面に受け持つ主力部隊など、一度だけとはいえ実戦を経験し生還した若者というのは編成を考える存在から見れば喉から手が出るほど欲しい存在だった。

「申し訳ないが、これはお願いではない。命令だ。繰り返しになるが、我々には後方でお遊びをしている余裕はないのだ」

「そんなこと言ったって...戦線は、こっちの優勢だっていうのは嘘だったってことですか?さっきの会話を聞いてるとそう聞こえます...」

 久宮が怯えながらそういうと、加賀と赤羽根は険しい顔を違いに見合わせる。しばらくの間を置いて、加賀が口を開く。

「全戦線がそう。というわけではない。だが、ロシア中国のHA開発技術は目を見張る速度で上がってきている。もともと戦闘機や戦車を自前で製造できるのだから無理はないが、特にロシアでは顕著に進撃スピードが落ちている。」

 ロシアはHAの開発で日本に次ぐ機体を持っていると言っても過言ではない。

 ロシアのHA戦力の強みは圧倒的な物量と防御力。

 他国と比べ、重厚な装甲と簡素な武装を大量に搭載することで性能の不足を補っていた。

 本質的な部分は今も変わっていないが、性能が上がってきた分、こちらとの性能と物量の戦力差が無くなってきているのは日本自衛軍の共通の認識だった。

「加賀の言うとおりだ。...これから言うことは君の任務内容であり、機密情報だ。オフレコで頼むよ」

「...やりたくないって言ってもダメなんでしょう?」

「そうだ。これに関しては軍隊とはこういうものと割り切って欲しい。...君の任務は日本の新機体のデータ収集だ。それも、ハイエンドな高性能機。アニメで言うところ、ワンオフ機や主人公機と呼ばれるものの開発だ」

 日本には資源が取れる土地がない。これは今も昔も変わっていない。西側諸国として参戦してはいるが、欧州やアメリカは自身のHA開発や空路・海路の安全性確保を理由に消極的に対応している。

 西側諸国には、日本が裏切るのではないか?という西側らしい考えがある。というのは、日本にいるものであれば空気で感じとっているものだ。

「詳しい説明は部隊に配属する時に連絡を入れよう。指揮系統としては、私達参謀役の直属と言うことになっている。」

「...わかりました...やります。やるしかないんでしょう?なんだかモヤモヤすることは色々あるっすけど...」

「そう言ってくれて嬉しい。駐屯地へ到着した後は、現場の指揮官の指示に従ってくれ」

「わかりました。精一杯頑張ります」

「よろしい。これで話は終わりだ。特に質問がなければ退出して構わない」

「それでは、これで失礼します」

 久宮は敬礼し、部屋を退出した。部屋に残った二人は安堵のため息を吐いていた。

「赤羽根。本当にあいつでいいのか?」

「戦闘データを見ただろ?射撃、特に狙撃技術は特筆すべき技量だ。あれを即成教育で育ったひよっこが成したとは信じられん。前線の古参の狙撃部隊でも、あそこまでの技量を持ち合わせているのは少数だろう。」

 日本のアシストの基準は、中破以上の損害を与えることが基準となっている。

 久宮の場合、アシストのほとんどは武装や頭部の破壊といった戦闘能力を喪失する損害。つまりは大破によるアシストだった。

 レコーダーに記録されていた照準記録や音声記録には、偶然ではなく、自分自身で照準を合わせていたことがわかっている。

 それを北海道の森林地帯で、乱戦中に行っていたものというのは、加賀や赤羽根だけはなく、実際に撃破した隊員が目の前にして体験していた事実であった。

「彼は大物になる。将来的には、『ランカー』として軍を離れるかもしれない」

「本気で言ってるのか?あんな俺たちを見てビビり散らかしてるひよっこが?」

「冗談に聞こえるなら、加賀は今すぐ軍をやめるべきだろうな」

「...お前の言うことなら、間違いはないだろうさ」

「今日はもうお開きだ。この後も会議が山積みだ...」

「司令部の戦場は机ってか?」





同時刻。ロシア首脳部。

「精鋭の第308連隊が全滅!?冗談ではないぞ!」

「ホッカイドウに配備されているのは訓練部隊ではなかったのか!?」

 怒号をあげ机を叩いている司令官にしてみれば、先の奇襲作戦は成功が確実とされていた。

 本来の作戦であれば、潜水艦から連隊規模の訓練部隊を同数の精鋭で殲滅。その後、橋頭堡(きょうとうほ)を確保し潜水艦で待機していた歩兵部隊が北海道を占領する手筈だった。

 しかし、その精鋭部隊が全滅したことで作戦は失敗。

 第308連隊は敗走を続けていた極東部において、ただ一つ都市を陥落から守り抜いていた精鋭中の精鋭。そんな部隊が全滅など、いくら技量が優っている日本といえども、たかが訓練部隊にやられるはずはない。

 となれば、北海道に配備されているのは同じく精鋭。どこかで奇襲作戦が漏れていたという結論に至っても不思議はない。

 それほど、この作戦は勝率の高いものだと言うのがロシア首脳部内の見解だった。

「...幸いヨーロッパ戦線は局所で優勢が出始めた。我が軍の質の底上げは進んでいる。アメリカやヨーロッパに対しては技術で優っていると言える」

「今真に恐るべきなのはニッポンだ。技術部の見解によれば、ニッポンはすでに第ニ世代の歩行戦闘機を開発し、実戦に投入していると報告をあげている」

「ううむ...しかし、この結果は軍全体の士気を下げることになりかねん...情報操作で誤魔化し切れるか?」

「308はいい意味でも悪い意味でも有名だ。我々といえど、全てを誤魔化せることはできまい...」

「いやそもそもこの奇襲作戦自体が...」

「それを言うなら貴様だって...」

 ロシアの会議質は、しばらくの間紛糾していた。

次回戦闘編と言ったな?あれは嘘だ()

赤羽根明宏・・・階級は陸上幕僚長。日本自衛軍陸軍司令官

加賀明宏 ・・・階級は陸上幕僚長。日本自衛軍陸軍副司令官

階級について知らなすぎる...

次回、配属先からの熱い歓迎

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