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『魔女がこの世をせしめるか?』 〜追放された魔女!なぜかイケメン使い魔を召喚してしまう!なんとなく逆ハーレム暮らし!なんとなく成り上がり!〜  作者: しょうりショウゲン
━━━━━━━━━━━ 第六話 ━━━━━━━━━━━

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第六話② 「魔女と、臨時!結界見回りの旅路」


「へ〜、そうだったんだ。それで、しばらく異世界でのんびり過ごすことにしたんだね、ゴウトくん」

「まあな」


「こっちの待遇もそう悪くないもんね。うちのご主人様、あの魔女さんもさぁ。あれでも甘くて優しいほうらしいからね。けっこうな美人さんだしねぇ。俺たちラッキーだったよね」

「ふ、ふーん、そうなのか」

「血も涙もない、非道な召喚士も多いんだってさ。中には、強制労働させられてる不遇の異世界人もいると聞いたよ」

「なんだそれ、胸糞悪い話だな」


「奴隷のように使役されてたり、虐待されたりしてる、って」 

「誰に聞いたんだ?」

「んっとね、異端審問官のおにいさん」

「いたん、しんもんかん?どこで知り合ったんだよ、そんなヤツ」

「それはこないだ〜。その異端審問官はさ、魔女さんと色々あって……」

「なんだよ、色々って」

「……あ、こういうの、俺の口から話しちゃだめだよなぁ。まぁ、魔女さんから直接聞いたほうがいいんじゃない?」

「あ、ああ」



 嘉紋とゴウト、二人の会話を耳に入れながらも。

 マルチタスクで私は、目の前に広がる激流の河川をなんとかしようと、思案に暮れてもいた。


 水害を未然に防ぐ、治水について、である。


 河川が氾濫するたびに結界の臨時見回りに駆り出されていたのでは、魔女の気の休まる暇がない、ってものなのよね。

 これじゃあ、おちおち、華麗なるインドア引きこもり生活も送れないわよ。

 ここは、予防に励んでおくべし。

 先回りをしてことにあたるべきよね。


 ん〜、とはいっても。

 具体的には、何をどうすればいいのかしら。見当もつかないわ。


 河川を前にして、ぶつぶつ唸って、思案に暮れる私。

 と、そこへ。


「魔女様〜!」

 私を呼ぶ声がした。


「えへへ、来ちゃいました〜!」

「まぁ、ルイくん!」

「魔女様に、お弁当食べて欲しくって」

 

 ルイくんの声だった。

 ルイくんが、手作りのお弁当を作って持ってきてくれたのだ。

 たしかに彼は、見送りをしてくれた際に、地図を確認していた。あれは、私たちの動向を細かく把握するためだったのか。


 ああ。

 サプライズで食事を届けに来てくれるだなんて。

 なんてルイくんらしい、素敵な演出なのかしら。


 きっと彼も、あれだけ拗ね続けてしまった手前、元通りになるタイミングがなかなかつかめなかったのだろう。ずっと意地を張っていただけで、素直になるきっかけが欲しかったのかもしれない。


「魔女様、どうぞ。お好きな胚芽パンのサンドイッチを仕込んでおきましたからね」

「ありがとうルイくん、よく来てくれたわね」


 久しぶりに見た、ルイくんの笑顔。

 ようやく、もとの私たちの関係に戻れた気がする。

 私はすっかり感動し、瞳をうるうるとさせてしまう。

 

 そんな私の背後から、ゴウトが姿を現して、ルイくんの前に歩み寄っていた。


「よぉ、ルイ先輩」

「おうゴウト。なんだおまえ、けっこう真面目にやってんだな」


 犬猿の仲だったルイくんとゴウトは、意外にもしっかりと挨拶を交わし始めた。


「これ、白っぽい茸。ほらよ、採ってきてやったぜ。西にある崖下に生えてたやつだ」

「へぇ、すごいな、あんな危険な所まで行ってくれたのか。怖かったろうに、ありがとうな」

「あのくらい、たいしたことねぇよ」


 まあ。

 ゴウトったら、いつのまに。

 道中、私が休憩してる隙に、一瞬姿を消してはすぐに戻ってくると思っていたら。合間合間に食材の採取をしていただなんて。


「こないだの茸ソテー、また作ってやるよゴウト。おまえ好物なんだろ、あれ」

「あんたの料理は美味いからな。まったく、しょうがねぇな」


 私の知らないところで。いつのまにか、こんなにもきちんとした信頼関係を築き上げていた、この二人。

 ついこの間まで、犬猿の仲だとばかり思っていたのに。


 バスケットに詰められた卵サンドイッチを見て、歓喜する。夢中で一心不乱にかぶりつくゴウト。

 ゴウトはどうやら、美味しい食べ物と料理人相手には、めっぽう弱いらしい。

 ルイくんに、ガッチリ胃袋を掴まれていた。


 こ、これは、またしても。

 恐るべし、ルイくんの人心掌握術、なのかしら。


 こんな獰猛なコワモテ大男が、すっかり牙を抜かれていると言っても過言ではない。ルイくんの掌の上で転がされ、たやすく手なづけられていたのであった。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 お食事を済ませて、食後のお茶などをいただきながら、河川敷で寛ぐ私たち。

 ルイくんはバチャバチャと足先を川の水に浸して、水遊びを楽しんでいた。


「ねぇ魔女様、この川のことなんですけど」


 そして、川上や川下の先のほうを遠くに臨みながら、主張し始める。


「こうしょっちゅう家を空けられちゃ、ボクだって困るんですよ。魔女様と一緒に過ごせる時間が減っちゃうじゃないですか」

「え、ええ。う、うん、そうね」

「このままでは、また同じことの繰り返しなんじゃないですか?大雨が降って水害が起こるたびに魔女様が出向く羽目になりません?」

「ああ、そうなのよ、ルイくん」

「では、この暴れ川をなんとかしましょう」


 うんうん、それよねー。私もさっき、そのことを考えていてねー。

 これじゃあ、おちおち、華麗なるインドア引きこもり生活も送れないものねー。


 インドア派はねぇ、無駄に外出したくないのよ。

 一度の外出に、いくつもの用事を詰め込みがちなのよ。

 一旦外に出たら出たで。ここまで来たら、と。ついでに色んな用事をこなしてしまいたいものなのよ。その場でできる用事は、外に出たついでに、そこで済ましておきたいのよ。未来に、なるべく外出しなくてよい状況を作っておきたいのよ。

 ここは、予防に励んでおくべし。

 先回りをしてことにあたるべきよね。

 

「魔女様、さっそく水害対策を講じましょう」

「そうね、ルイくん」


 ルイくんはすでに、手製のマイマップを作成していた。出発の際に私が手渡した地図を暗記し、ほぼ完璧にトレースしていたのだった。

 それを手に、あたりをキョロキョロと見渡す。

 無邪気に水遊びを楽しんでいたのかと思いきや。自身で水質や水流を確かめたりするために、実地調査の一環として水に入っていたらしい。


「あのあたり、中洲部分にでこぼこができるように大岩を盛れませんかね。魔女様の土魔法なら、付近一帯を一時的に少し粘土状の地盤に変質させられますよね」

「わかったわ、ルイくん。できると思う」

「川のうねり、蛇行してる箇所にも土魔法を使ってもらうことになりますので、魔力の配分はくれぐれも慎重に均等に考えておいてくださいね。あちらの箇所にも土塊を作って補強すれば、流れをいくらか制御できるでしょうから」

「あ、じゃあ、えっと、対岸にも回らないとね」


 そうしてルイくんの指示のもと。私が土魔法を創意工夫してバンバン使用して、杖を振るっていると。

 遠くから、見物人の姿が近寄ってくるのに気がついた。

 それは、決壊した後の川を心配して見にやって来た近隣住民たちだった。


 あ、やばい。

 魔法を使ってるとこ見られたくない。

 魔女だってバレたくない。



「ちょ、ちょっとおまえたち、土木工事やってるふりをしてくれない?そのへんの岩や砂利を運んでるかんじで」


 私は、嘉紋とゴウト、二人に声をかけた。


 さきほど異形との戦闘を終えたばかりで、回復に努めている休憩時間に悪いのだけど。リラックスしておしゃべりに興じてるところに召集をかけてしまって、申し訳ないとは思うのだけど。


「いいよ、魔女さん。俺、何すればいい?」

「あ、詳しいことは、ルイくんが」

「さっき来る途中の横道に、岩場があったんだ。嘉紋とゴウトはそこから大岩をいくつか運んでくれるか?中洲に固定できれば、激流も勢いが弱まると思う」

「いいぜ、ルイ先輩。岩を運ぶくらい。腹ごなしにちょうどいい」


 よし、これで、人々の目をごまかすことができたわ。


 突然の土塊や岩石の出現も、魔法ではなく人力での仕業なんですよ、と印象付けられる。

 魔女バレを回避することができて、私はほっと胸を撫で下ろす。

 

 嘉紋とゴウトの二人。

 外面のいい嘉紋はともかく、ゴウトまでが、意外にも素直に応じてくれた。

 もちろん、私の言いつけにではなく、ルイくんのほうに従ってのことなのだろうけれど。それでも、善意の社会貢献には慣れたふうだった。


 見た目はアレでも、中身はわりと真面目な若者なのかもしれない。

 泥臭い肉体労働にもめげずにせっせと励む、精勤な働き者、といったところである。


 その姿には心を打つものがあったのか。寄って来た近隣住民たちは、自然と手を貸してくれるようになっていく。

 人が人を呼び、いつのまにか気がつけば、一大河川工事と化していた。

 ルイくんの采配による水害対策の氾濫予防措置、治水事業は大成功を収めたのだった。


 作業をひととおり終えた時には、わーっと拍手喝采が起こり、まるで勝鬨のように場が沸いた。

 隣り合う者たちが互いにねぎらい合い、みんなで讃えあう集団が出来上がっていた。

 

「やりましたね、魔女様」

「ええ。ルイくんがいてくれて本当に助かったわ、ありがとう」


 私の真隣にいたルイくんは、私の側に、さらに近寄った。


「魔女様、ボク、あなたのお役に立ててとても嬉しいです」


 ルイくんはそのまま私に抱きついた。

 ふんわり、柔らかく。


 いたって自然な流れで、至極、爽やかに。

 ハグといった風の、圧迫感のないさっぱりとした抱擁。


 生々しさや男女の性差、肉感的なものは一切感じさせない。圧倒的な安心感がそこにはあった。

 親愛の情を感じて、私はすんなり受け入れる。

 そして、ルイくんの頭をふわふわと撫でた。


「では魔女様、二箇所目の結界、頑張ってくださいね。ボクは先に帰って留守番しておきますから」

「ええ、頑張るわ。ルイくんも気をつけて帰ってね」



 ルイくんとは、ここでお別れ。

 彼には先に帰ってもらい、私たち三人は残りの結界へと赴く。


 ようやくルイくんの機嫌が直ってくれたことにほっとして。私は安心して、次なる目的地へと歩みを進めることができたのだった。




━━━━━━━━━━つづく!!

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