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『魔女がこの世をせしめるか?』 〜追放された魔女!なぜかイケメン使い魔を召喚してしまう!なんとなく逆ハーレム暮らし!なんとなく成り上がり!〜  作者: しょうりショウゲン
━━━━━━━━━━━ 第六話 ━━━━━━━━━━━

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第六話① 「魔女と、臨時!結界見回りの旅路」


 水辺の一角には、近隣住民がけっして立ち寄ろうとはしない区画があった。

 畏怖の念がこもる、鎖や縄で厳重に境界線を示す、警告域。

 それが、この地の結界である。


 太古の崩れた廃神殿とは、地下にある洞窟内で通じているのだという。

 封印石は、大きな岩場に隠されるように配置されていたはずだが、今や激流に流された挙句、すっかり歪んでしまっていた。

 岩窟群に覆われたその先。やはり岩場の奥からは、未知なる扉、ゲートの隙間が生じているようだった。


 水面には、有象無象の奇怪な幻妖生物が浮遊していた。

 毒気が舞い、毒汁が飛び散り、瘴気が覆い、障壁が遮り、襲い来る。

 ドロドロで、ぐちゃぐちゃの。

 禍々しい腐臭を纏う、忌み深い異形たち。



「ふーん、たしかに化け物だらけだ。あいつらを蹴散らせばいいんだな、嘉紋」

「わーい、斬りがいあるなぁ〜!行こ行こ、ゴウトくん!」

「では頼んだわよ、二人とも」


 嘉紋とゴウト。

 結界での異形討伐バトルに、二人を連れて来た私である。

 さすがに使い魔が二人もいれば、私の魔法などはもはや必要ないくらいに、戦力が充実しているといえる。


 ふぅ。

 この際だわ、私はサボらせてもらおう。

 あら、ラク。こういう時、使い魔っていいわね。

 こうして分業化を図ったり、作業を丸投げしたりして、うまく利用するっていうのも悪くないかもしれないわ。


 私はちょうどいいサイズの低くて平たい岩を見つけると、ブランケットを敷いて腰掛ける。

 そして横になったりして、ゴロゴロと寛ぐ。


 はぁ〜ぁ、戦闘は二人に任せて、っと。

 あら、いい身分だわね、私ったら。監督官ポジションじゃないの。二人の労働を遠くから監視するだけの、簡単なお仕事だわ。

 自分はこうしてラクしてふんぞりかえって。たまに頑張って〜、とか声掛けて、応援したり労ったりするだけ。あらあら、やだ〜、心地いい風〜、爽やかないいお天気ねぇ。



 私はのんびりと寛ぎながら、二人の戦闘を観戦した。


 結界での異形討伐。

 もはやすっかり慣れている嘉紋はもちろん、初陣となるゴウトのほうも、見事な立ち回りを見せていた。


 二人には一応、立ち寄った街でいくつかの武器と防具を買い与えて、それなりの装備を整えてやろうとしたのだが。

 嘉紋は自前のもので十分だと言い張るし、ゴウトにいたっては、ほぼ丸腰。

 機動性を重視したいとの意向から、簡単な皮の胸当てと脛当てがひとつふたつくらいという、驚きの軽装備スタイル。


 なんと、ゴウトは、素手だった。

 一切の武器を持たない。

 徒手空拳。攻撃手段は、拳と蹴り。打撃だけで、異形との近接戦をこなす。


 弾丸のように素早く鋭い、拳。

 機械のように正確に精密な拳闘で、的確に異形の急所を捉える。

 フットワークを駆使して、敵の攻撃を避けて一切のダメージを寄せ付けない。

 防戦も完璧で、ほぼノーダメージ、ほぼ無傷のままで、戦闘を終了させていたのだった。


 まあすごい。

 ゴウトってば、見た目以上に強いのだわ。

 あの戦闘スタイルは、不思議ね。あれはなんなのかしら。ボクシングのようにも見えるのだけど。



「魔女さ〜ん、終わったよー」

 嘉紋が手を振って、討伐終了の報告をしてくる。


「魔女さん見てた?ゴウトくん、すげぇ強かったよね」

「ふん、たいしたことねぇよ、あれくらい。嘉紋こそ、ヤバい動きしてたぜ」

 

 戦闘を無事に終え、ワイワイと労い合いながらこちらに近寄ってくる、嘉紋とゴウトの二人。

 だが。


「ちょ、ちょっと、待って、二人とも」


 彼らは、ドロッドロの、べっちゃべちゃ状態。

 異形たちの返り血というか。なんか気持ち悪い蛍光色のネバネバ粘液とか体液とかが全身に飛び散ってるのよ。

 ウワァ〜、イヤァァ。

 水属性の異形と近接で戦うと、こうなりがちよねぇ。


 ご、ごめん。

 近寄らないで。


「ちょっと二人とも、じっとしてて」

「なんだよ、魔女」

「殺菌してあげるから」


 水魔法を使って、杖から、ミストサウナみたいな霧を発生させてやった。

 抗菌作用のある成分を配合した小瓶を携帯しててよかった。シャカシャカと上下に振って、杖先に寄せて振りまいて。

 さぁ、これでいいわ。

 しばらくすると二人は、湿度高くしっとりじっとりと濡れそぼっていった。

 よしよし。


「何してんだよ、いらねぇよ。余計なことすんな、魔女」

「おまえがよくても私は嫌なのよ。一緒にいるなら、清潔でいてちょうだい。お願いだから」


「魔女さん、やたら俺にシャワー浴びさせようとするよね。そんなに俺のハダカ見たいの?」

 ニヤニヤとしながら、嘉紋がそんな質問を投げかけてくる。


「もしかして魔女さん、男の裸好き?痴女さんなんじゃないの?」

「ふーん、そうなのか魔女。まあ女ってたいていそうだよな。すました顔しといて。色々と興味があるんだろ、結局」


 私はキッパリと否定をするように、背を向けた。

 杖を持った右腕だけを伸ばして、彼らのほうに向けたまま。


「見ないわよ。おまえたちの体など、まったく関心ないから。さあ、安心して汚れを落としなさい」

「見てくれてもいいのに〜」

「オレもかまわねぇけどな。女どもに視姦されるのは慣れてるし」


 なんだかチラッと、えげつない二文字のワードが聴こえたような気もするけど。無視してやり過ごすことにした。


 ミストサウナの後は、すぐに風魔法に切り替えて、杖を強風モードにして。彼らを突風にあてて乾燥させる。


 よしよし。

 完成ー。これで綺麗になったわ。

 は〜、一件落着〜。

 とはいえ、なんか無駄に魔力使ってるわね、私。

 こんなことなら最初から、私がふつうに遠くから魔法で異形やっつけてたら汚れなくてよかったのでは。

 痴女とか罵られるし。

 ああもう。こんな生意気な使い魔たちなんか、やっぱり不要な存在だったかしら。

 まったくもう。腹立つわね。




 すっかりピカピカになった使い魔二人は、戦闘後の休憩タイムに入った。

 河原に敷物を敷いて、焚き火を囲んで、足を伸ばす。

 水分補給や装備品の手入れをしながら、二人はリラックスをして会話を交わしていた。


「ゴウトくんって、すげぇ長身だよなぁ。200近くあったりする?」

「そんなにはねぇよ」


 体育会系男子同士の、よくある会話パターン。

 話題は、運動メニュー、日課、筋トレ内容などなど。体型維持や食事管理のトークがメインだった。


「俺は、180ちょうどくらい。もう少し欲しいんだがなぁ。もう無理かなぁ」

「オレは二十歳過ぎてからでもけっこう伸びたぜ、まだいけるだろ。まずは、運動、栄養、睡眠だよな。あとはストレッチを重視して、亜鉛とアルギニン摂取して」


「あ、何かスポーツとかやってたんだ?」

「まぁな」

「え、なになに?」

「総合格闘技だ。何年か前までは、プロの競技者だったんだよ」


 え。

 まあ、すごいじゃない。

 意外だわ。

 アスリートさんだったなんて。


 好戦的でケンカっぱやそうな腕自慢の大男だから、てっきり反社会勢な鉄砲玉とか、イリーガル寄りなアウトローだとばかり決めつけていたわ。ごめんなさい。

 思っていたよりも、ずっとまともだったのね。

 定められた規律の中で、衝動やエネルギー発散を表現しようと試みる業界に所属していた競技者だなんて。


「すごいね、格闘家なんて」

「それが色々あって。ジムやら事務所やらと揉めて、さっさと引退しちまった」

 

 あ、あらら……。


 他者を顧みない、不器用で荒くれた言動が仇となって……。周囲の人間関係に軋轢を起こして……。

 それがきっかけで、色々と、人生うまくいっていない、ということだった。


「今の事務所に移籍してからは、モデルの仕事ばっかだぜ。やってらんねぇよな。しまいにはドラマの端役だのの役者業までやらされるようになってきて、いいかげんウンザリしてたんだよ」


 モ、モデル……。

 ああ、高身長を活かして、格闘家から転身、ってことね。

 それにしても、役者業、って、俳優さん……。


 そうなのね。

 下積み中、売り出し中の、ちょっとしたプチ芸能人、だったのね。

 たしかに筋肉美でスタイルは抜群。荒削りながらも、顔立ちは端正である。

 総合格闘技の選手だった頃も、それなりに女性人気があったようだ。


 そういった異性からの需要ゆえんの仕事内容には、本人は納得していないようである。一部には非常識で過激なファン層もいるらしい。

 不快な想いを繰り返したのだろうか。女性全般に対して、不信、嫌悪、蔑視気味の傾向がすっかり出来上がっている。


 オレ様気質で、王者の風格。

 華のある容姿。

 それプラス、攻撃的で身体能力が高いとこを見ると、火属性星座……、うん、獅子座ね、こいつ。

 火星アスペクトも効いてるんじゃないかしら。




━━━━━━━━━━━━━━━━つづく!!

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