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『魔女がこの世をせしめるか?』 〜追放された魔女!なぜかイケメン使い魔を召喚してしまう!なんとなく逆ハーレム暮らし!なんとなく成り上がり!〜  作者: しょうりショウゲン
━━━━━━━━━━━ 第四話 ━━━━━━━━━━━

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第四話③ 「魔女と、異端審問官のおにいさん」


 と、そこへ。

 バタンと扉が開いて、一人の男が走り込んできた。


 頭からズタボロの麻袋を被った、怪しい風貌の男。どう見ても野盗か何かで、不審者そのものであるのだが。


「無事か?」

 知性と品格を感じさせる、規律正しい発声法。

 重厚感と威厳があり、落ち着きと渋みのある低い声質が耳に心地よい。中低音域の、美声の極み。見事なバリトンヴォイス。


「遅くなってすまない、怪我はないか?」

「フォルクヴェルト様ぁぁ!」

 

 ズタ袋を被った男。その実態は、野盗に変装をしたフォルクヴェルト様だったのだ。

 

 異端審問官という正体を隠すためとはいえ。

 厳格で崇高な彼がこのような不審者スタイルに身をやつしてまで、私を救いに来てくれたこと。その行いには、さしものクールな私も激情の念が溢れ出し、もはや感涙も禁じ得ない。

 その登場に、私は心からの感謝と感動と歓喜をした。

 

 ううっ、ありがとうありがとう、フォルクヴェルト様。

 あなただけはまともでいてくれて。

 あなただけは私の味方ですよね。

 暴徒と化した村人たちから……、もとい!特殊性癖ドヘンタイ狂戦士の魔の手から、救ってくれてありがとう。


 フォルクヴェルト様は私のもとにすぐに駆けつけ、縄をほどいてくれた。

 ほどきながら、傍らに佇む嘉紋の姿を見咎める。


「……嘉紋くん、何してる」

「何もしてないよー。俺、魔女さんには指一本触れてない」

「……なぜ、すぐに助けなかったんだ」

「ん〜、ちょっとオカズにしてたんで〜」



 ━━━━━━……さ、い、あ、く……!!━━━━━━

 ━━━━━━……さ、い、て、い……!!━━━━━━



 縄をほどかれて自由になった私は、すぐさま嘉紋を折檻。

 激しく叱責をした。

 杖でバシバシバシバシ、嘉紋の背中や肩を叩きつける。


「よさないか」

 フォルクヴェルト様は、そんな私を取り押さえ、なんと仲裁までするのだった。


「どうして止めるんですか、フォルクヴェルト様!」

「落ち着きなさい、彼に悪意はない。ただの生理現象だ。異性の性的姿態を前にすれば誰だってこうなる」


「で、でも、フォルクヴェルト様は毅然とできてるじゃないですか!まともな精神性ならば紳士のままでいれるはずでしょう!」

「私は例外と考えてくれていい。聖職者は訓練されているからね。それに、年齢的にも理性で制御が効きやすいというだけの話だ」

 え、えええぇー……。


「彼を責めてはいけない」

 フォルクヴェルト様ってば……、まさか、この狂戦士の味方⁈

 嘉紋のことを庇ってるっていうの⁈


 甘い!

 甘すぎ!!フォルクヴェルト様、頼りにならない!!

 ひどい!嘉紋の味方をするなんて!

 ガッカリよー!!幻滅したわ!!



「嘉紋くん、頼みがある」

「ん〜?」

「これからも彼女のそばにいてほしい。彼女のことを護ってほしいんだ。私の分まで」

 なんとフォルクヴェルト様は、嘉紋に向き直り、頭を下げ始めた。


「私の就く職務は、彼女とは敵対関係にあたる。社会的な立場がある限り、私には望んでも叶わないことだらけでね」


 フォルクヴェルト様……。


「頼んだよ。君なら、きっと彼女の支えになれるはずだ」


 頭を深々と下げるフォルクヴェルト様。

 そんな彼とまともに対峙しようとせずに、ふらりとかわしてヘラヘラやり過ごそうとする嘉紋。


 二人は対照的だった。


 


 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 

「ねぇ、魔女さん、ねぇってば」

「………………」

「まだ怒ってるの?ねぇ」

「………………」

「無視しないでよ」

「………………」


 深夜の時間帯もとうに過ぎて、もはや朝日が昇ろうかという頃になっていた。

 朝焼けは濃い朱赤で彩られ、目にも鮮やかで眩しい。

 早朝の森林を歩き、帰路へと着く私たち。

 森には、私と嘉紋の、二人きり。


 あれから。

 私たちはなんとか無事に、自警団のアジトを脱出することができた。

 フォルクヴェルト様とは、そこで別れた。

 だが別れ際には、彼は、今後は定期的に連絡をよこすから、と言い残してくれたのだった。密かに力になるから、と約束してくださったのだ。


 彼にはたくさん励まされたし、今回もずいぶんと様々なことで助けてもらってしまった。



「あ、言っとくけどー、結界の見回りはもう終えてるからね。あの異端審問官も手伝ってくれたけどさ。速攻で討伐仕事済ませて、えらくない?俺、今回けっこう頑張ったんじゃない?褒めてくれないの?ねぇ、お礼は?」

「………………はぁ」

「ご褒美くれない?感謝の証に、ほっぺたにチューくらいしてくんない?ハグとかでもいいけど。俺、なんでもいいからあなたに触れたいんだけど」

「………………おまえ、ご褒美が、私に触れることなんかでいいの?」

「同意なく触ったら、バチバチ魔法攻撃されるんだろう?だったら、あなたのほうから何かしてくれるのを期待して待つしかないんだよなぁ」


 真横に並んで歩きたがる嘉紋は、私の表情を覗き込む。

 私はプイと顔を背けて、あさっての方向を向いた。そのまま返答の無視をして、歩き続けた。

 

「俺、どうしたらあなたに認めてもらえるの?何をしてあげたら、あなたに喜んでもらえるの?」

 嘉紋は、そこで、ぴたりと立ち止まった。


「もう少し、俺のこと、信用してくれてもいいんじゃない?」

 彼には珍しく、真剣そうな物言いで訴えていた。


「俺、魔女さんの力になりたいと思ってるんだよ。あなたのことがもっと知りたいし、聞かせてほしい。身の上に起こった辛い過去の話だって、もっと早くに話してほしかったよ」

「……嘉紋」


 立ち止まったまま。

 その場から一歩も動こうとしない嘉紋。

 私も歩みを止めて、彼を待つしかない。


「魔女さん強いんだから、村人に復讐だってできるよね。やり返せばいいのに」

「人に危害を加えてはいけないの」

「そういうルールがあるの?」

「掟がなかったとしても、私は、人間を相手に魔力を振るいたくないの」


 ……こないだ、つい咄嗟に、嘉紋を相手に攻撃魔法を使ってしまったけど。嘉紋は異世界人だし使い魔だし狂戦士だし、あれは例外、ノーカウントとするわ。



「魔女さんができないっていうんなら、俺が、あいつらを虐殺してあげるよ」


「……⁈」


 ぎゃ、ぎゃく、さつ。

 って。


 えげつない語句の響きにギョッとなって、つい嘉紋の表情に注目してしまう私。

 そこで、ようやく彼と目が合った。

 目を、合わせてしまった。


「あなたの代わりに、俺が、手を汚してあげる。復讐代行業、復讐屋さんになってあげるよ」


 な、何を言ってるの?


「魔女さんは、どうして俺を召喚したの?無意識に無自覚に、求めていたんじゃないの?深層心理として。自分の代わりに残酷なことをしてくれる、都合のいい存在を」

「……そんな」

「非人道で残虐な行いができる下僕が、欲しかったんじゃないの?」

「……そんなこと、求めてないわ」

「さっきはあの異端審問官がうるさく言うから、コロシは無しになっちゃったけど。今から戻ったっていいんだよ。峰打ちなんて生ぬるいよね、あの場にいたあいつら全員、大虐殺しちゃいたいんじゃないの?」


 ……私、そんなこと望んでない。


「私はただ……、これ以上迫害されないように、威嚇のできる従者が欲しかっただけよ。威嚇するだけでいいのよ。実際に手出しすることなんか、望んでないわ」


 威嚇とは……、実際の攻撃ではなく、それに似た姿や様子を見せることで対象を脅かすことである。自らの身を守るために、自らの力を誇示する行為。

 相手を殺傷しない示威行為によって、相手の攻撃行動を控えさせるのが目的なのである。



「ふふふ、綺麗事ばかり。善人ぶりたがる哀れな魔女さん。素直になりなよ。あなたの代わりに、俺が汚れ役になってあげるから」

 嘉紋は、不敵に微笑んだ。

 

「村人どもを、成敗してあげる」

 物騒な内容を、微笑みながら提案する。


 私は当然のことながら、つい、ゾッとなって、怯えてしまっていた。

 だが、私にも意地と見栄とプライドがある。動揺した表情を悟られまいと、キリッと凛々しく睨みつけた。


 負けてたまるものか。呑まれてたまるか。

 威厳を見せつけてやらねば。


「私はそんなことは望んでないわ。嘉紋、おまえを汚れ役になんてさせない。そんな役目には、絶対させないから」

「ふーん、そう?」


 も、もういいわ。

 こんなこと、これ以上話していても埒が明かない。



「ほら、もう行くわよ」

 その場で立ち止まったまま、動こうとしない嘉紋。

 私は、彼のアウターの袖先をつまんで引っ張った。


 館のある方角へと誘う。


「帰りましょう、嘉紋。私たちのおうちへ」


「魔女さん」

「ルイくんが待ってる。きっとシチューを煮込んで私たちの帰りを待ってくれてるわよ」


「ふふ、そっちは逆方向だよ」

「う、わ、わかってるわよ」

「こっちが東だよ。しょうがないな、俺についてきて。ああ、そこ、切り株あるから足元、気をつけてね」

「わ、わかってるってば!」

 

 こうして。

 私は嘉紋を伴って、帰路へと着いたのだった。


 朝焼けは濃い朱赤で彩られ、目にも鮮やかで眩しい。ちょうど日の出の頃になっていた。

 朝日に向かって、まっすぐに二人で歩く私たち。

 逆光でまともに眼を開けていられず、瞼を微かにぱちぱちとさせるしかない。視界はすこぶる悪かった。


 それでも。

 私は嘉紋とともに、家路についた。




━━━━━━━━━━━つづく!!

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