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気づいたらみんなが叫びながら逃げており、僕はナイフを握っていた。
自分でも頭がおかしいと思う。
こんなのおかしい、夢を見ているのではないか。
どう足掻いてもこれが現実ということはすぐに理解できた。
今は家だから誰にも危害を加えられることはないはずだ。
誰かと家で遊んだこともないし、家の前まで一緒に帰ったこともない。
…いや、先生や学校の人が家に来るかもしれない。
家を特定されてる可能性もある。
逃げなければ。
逃げてから考えよう。
何を持っていけばいいのだろう。
服?本?スマホ?充電器?鍵?保険証?薬?
……一回落ち着こう、焦っては駄目だ。深呼吸しよう。
お母さんが帰ってくるのは夜、お父さんは…まぁ多分今週も帰ってこないだろう。
今は十三時か。
とりあえず十四時までには準備を終わらせよう。
「家出に必要な物は」と検索したい所だが、検索履歴が残ってしまいそうなのでやめよう。
たしか昔読んだ本でそんな内容があったような…。
いや、あの本はやめよう。
嫌な思い出がある。
微かに覚えている内容をもとに荷物をまとめていこう。
大丈夫、落ちついて。
遅くても迷っても誰も殴らないよ。
まず服は二、三枚をローテーションしつつコインランドリーに行けばいいだろう。
長袖か半袖か…
長袖の方が都合がいいか。
長袖のシャツを数枚、同じ枚数ズボンも、羽織れるもの…パーカーを一枚持っていこう。
下着と靴下も同じ枚数持っていけばいいか。
服はこれぐらいでいいだろう。
あとは時計、ハンカチ、ティッシュはいつも学校に持っているものを持っていけばいい。
スマホ…は持っていくと位置情報でバレるか。
お父さんが使わなくなった壊れたガラケーでも持っていくか。
たしかあれ電話しかできないらしいし。
本は読みかけのものと好きな文庫本を一冊ずつ。
薬は常備薬と頓服薬だけもっていこう。
念の為ナイフとカッターを持っていって…暇になった時のためのメモ帳と筆記用具も一緒に。
…こんだけリュックの中に入れてもそれほど重くなくて安心した。
後はお金か。
幸い親にバレてない貯金やこっそりバイトで貯めてきたお金、ばあちゃんからのお小遣いがある。
これだけで数年生きていけるわけではない量だが、おそらく節約しながら一人で生きるとなると数ヶ月は持つだろう。
多分、死ぬまでは。
現在時刻は十四時ちょっと前。
準備も完璧、後悔はない。
僕の逃避行はここから始まる。
ふと思いついたものです。
ご覧いただきありがとうございました。