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【後編】これからも永遠に


 ベッドから体を起こしたアイビーは、ベッドの縁に腰をかけた。

 

「いつでもどうぞ」


 アイビーが瞳を閉じる。

 

 腰に携えている聖剣――レバティンを引き抜いたハルト。

 右手に持ったレバテインの切っ先を、アイビーへと向ける。

 

「少し痛いかもしれないけど一瞬だ。我慢するんだぞ」


 微笑んだアイビーがコクリと頷く。

 

 ハルトの背筋を冷たい汗が流れる。

 

 剣の切っ先が震える。

 これからやろうとしていることを考えたら、恐ろしくてたまらない。

 

(だが俺は、やると決めた! アイビーのために!)

 

 首を横に振り、揺らぎそうになっていた決意を固める。

 

 スーッと深呼吸。

 重苦しい部屋の空気を、肺いっぱいに吸い込む。

 

 一瞬の間を置いて、ハルトは動く。

 

 右手に持ったレバテインを突き刺す――のではなく、膝立ち。

 左腕で、アイビーの体を抱き寄せる。

 

 二人は密着状態になった。

 

「……え」

 

 アイビーの口から驚きの声が漏れる。

 

「待ってください! 何をするおつもりですか!」

 

 制止の声が響く。

 だが、ハルトは止まらない。

 

 右手に持ったレバテインを、アイビーの背中に突き刺した。

 

 レバテインは、アイビーの胸部を容易く貫いた。

 しかし貫いたのは、それだけではない。

 

 彼女と密着していたハルトの体までをも、完全に貫いていた。

 

「嘘……どうして」


 大きく見開かれたアイビーの瞳から、ポロポロと涙がこぼれていく。

 

「お前はしっかりものに見えて、結構おっちょこちょいなところがあるからな。天国でやっていけるか心配なんだ。だから俺も、一緒についていくことにした」

「あなたは馬鹿です……! 大馬鹿です!!」


 堰を切ったかのように、アイビーの涙の勢いが強くなった。

 泣きじゃくる彼女は、ハルトの胸をポカポカと叩く。

 

「バカバカバカ! ハルト様まで死ぬ必要なんてないのに!!」

「そんなにバカバカ言わないでくれよ」


 微笑んだハルトは、左手でアイビーの頭を撫でる。

 

「俺はずっとお前といたいんだ。これからも永遠に」

「…………そんな言い方、ズルいですよ!」


 ツー……。

 ハルトの口の端から血が零れる。

 残された時間は、もうわずかみたいだ。

 

「最後にもう一度だけ言わせてくれ。アイビー、愛してる。」


 アイビーと唇を重ねる。

 彼女の温もりが、全身に広がっていく。

 

 口づけを交わす二人は、そのままゆっくりと瞳を閉じた。

 

******


 それから数百年後。

 二代目魔王を名乗る魔族が世に現れ、世界を支配しようと企んだ。

 

 しかし、その企みが叶うことはなかった。

 勇者と大聖女が、二代目魔王を討ち滅ぼしたのだ。

 

 その二人の外見は、かつての人物とそっくりだった。

 数百年前に初代魔王を倒したあとに死を遂げた、勇者と大聖女だ。

 

『二代目魔王を討ったのは、生まれ変わった勇者と大聖女だ』

 嘘かホントか分からない、ちょっと素敵な話。

 民の間では、そんな話が広まっていた。

これにて完結です!


もしよければ、↓にある☆☆☆☆☆から評価や、ブックマーク登録をしていただけると、とても嬉しいです!


それではまた、次回作でお会いしましょう!

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