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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢でもし会えたら?

作者: 澤西雄二郎

最近変な夢を見る。

俺の体をベタベタ触ってくる変な夢

それも知ってる人、知らない人バラバラ

意識ははっきりとあって、体は動かない。

触られている感覚は時々

ここ数日はそれにずっと悩まされている。

「萩原?大丈夫か?」

名前を呼ばれた俺はハッとして前を見る。

「ぼーっとしてたぞ?なんかあったのか?」

「ちょっとね……」

バイト先の先輩、峯さん

俺より年上でこのコンビニができた時からここでバイトをしている、いわばベテランだ。

「ちょっと最近変な夢ばっか見てて……」

「それに悩まされてんのか」

心配してくれている先輩に、率直に悩みを告げる。

「ストレスとかか?寝つきが悪いと変な夢見るって言うし」

「そうなんですかね……」

とは言うものの、ここ最近では大きなストレスやトラブルは無いし、七八時間は睡眠をとっている。

なにか他に原因があるのかもしれない

今日バイトを終わらせ、自宅に帰った。



その夜

また夢を見ている

薄暗い場所で、また体を触られている。

今日は一段と激しく、腕の方からはべっとりした感覚が襲い、足からは息がかかるような感覚だった。

その中に、今日見た顔があった。





「また夢を見たんだって?」

先輩にそのことを話した。

だが今日はあまり先輩の顔は見れない。

無意識だろうが、夢の中でもされたことははっきり体が覚えているのだ。

「どうした?体調悪いのか?」

先輩がグイッと顔を近づける。

思わず後ろに二三歩下がってしまった。

「す、すみません、びっくりしたもんで……」

ぎこちない俺の言い訳にも先輩は「今日こそはゆっくり休めよ」と優しくしてくれた。



その夜

今日はいつものように複数人ではなく、たった一人だけだった。

昨日も見た、今日も見たあの顔

身動きが取れない俺の太もも裏や、おしりを触り、二の腕や肩から鎖骨にかけてを舐めまわしていく。

その上、夢がとても長く、リアルに感じた。

そこで俺はバイトを三日ほど休みを取り、夢の問題にしっかり向き合うことにした。

本音を言うと、もう先輩と顔を合わせるのが難しくなってきたからだ。



一日目

また夢を見た

今日は触る、なめるだけでなく、俺の耳にそっと息をふきかけた。

また先輩の顔だった。



二日目

食生活を改善させようと、母親や近所のスーパーを頼りながら、栄養バランスのいい食事をとった。

さらに丸一日休みだったので料理だけでなく、ウォーキングや筋トレと汗を流した。

そして布団に入る時間を一時間早めて、量も質も申し分ないようにした。


だが夢を見た。

今日や全身を舐め回されるような感覚だ。

顔は近くてよく認識できなかったが、おそらく先輩だと思う。




三日目

もう何も解決策が思い浮かばない

昼夜逆転生活を試みたが、明日から学校があるというのに、そんなことは出来ない。

どうしようもなくなり、悩みの種かもしれない先輩に電話をかけた。

『どうだった?』

「ダメです……一向に良くなりません……」

藁にもすがる思いだった。

だが「先輩ならなにかしてくれるんじゃないか」そう思っていた。

『うーん色々試してそれだったんならもう手の打ちようがない…よな……』

「え?」

『ちょっと〜これってさー』

「は?」

『おぉ咲希、ちょっと待ってくれよな、すまんまたあとからかけ直すよ』

「…………」

途中から、明らかに先輩の声、ましてや男性では無い声がした。

その時俺は遊ばれていたんだと気づいた。

俺の夢にまで入り込んで、俺をめちゃくちゃにした挙句、彼女といちゃついている。

初めてはっきりと裏切られた気がした。

強い殺意が湧いたが、人を殺す気力、ましてや歩くことすらもままならない。

それほど俺の心が傷を負っているのだ。

まだ午前の十一時だが俺はありったけの気力を使って、ベッドに倒れ込み深い深い眠りに落ちた。



体を触られている感覚で、目は開いた。

いつものように金縛りかなんかの類で動けない。

いや、動けたとしても抵抗はしないだろう。

今日は三人、男が二人、女が一人、見慣れない顔だ。

「はぁ」

思わず出たため息に両手で口を塞ぐ。

なぜ先輩が居ないのに残念に思うのか、それが俺には分からなかった。

それに驚いたが、今日は動ける。

こいつらを蹴飛ばして……

「どうなるんだ……」

蹴飛ばしたからって、ゲームのように「クリア!」と言って夢が急に終わったりはしないだろう

蹴飛ばして、どこかへ走るか?

こんな深海よりも深い黒の中俺一人で?

ならいっそのことこいつらに体を預けた方がいいのでは?

そうやって俺の脳みそは働き続ける。

寝ているはずなのに


コツコツ


後ろから誰かが来ている。

靴の音だけでなく、俺の意識がはっきり感じ取った。

誰かが近づくにつれ、俺を触っていた奴らは、黒の中に消えていった。

向かってくる誰か、いやもう分かっているか

抵抗しようとした心はどこへやら

今は体を預けることこそが至福とまで思ってしまう始末

男は俺の耳筋を舐める、背中に手が触れ、ゾワゾワした背中の振動を感じ取っているかのようだった

あぁこれでいい

そう思ったのもつかの間、昼の出来事を思い出した。

こんなことを俺にしているにも関わらず、彼女といちゃついている男に怒りが再燃した。

だが、動かそうとした腕は動かない。

足も指も首も頭も腰も、何一つ動いてくれない。

「体は正直なんだね」

舐められていた耳でそう囁かれる。

喜びと怒りが入り交じり、喚き散らそうにも声が出ない。

俺は必死に動かそうとした。

腕を足を、無情にも動いてくれない。

何度も動けと命令した。

脳だけでなく、心でも

原動力は何なのかと聞かれても、俺にはそんなもの分からない

ただなにか、俺を突き動かす何かがあるんだろう

「うぁぁあああ!」

背後の男をしっかり掴んだ。

そして手で首を思いっきり掴んだ。

殺すんだ

この一心だったまでに、周りが黒色から、色のある、それも最も見慣れた色だと気づくのには、五分はかかった。

悪夢は終わったのだ。

うつ伏せになる男に向け言おうとした。

だがなにかがおかしい。

今日は平日の……

「十四時……」

まだ先輩はこの時間バイトのはず

じゃあこの男は……

その時ばかりは好奇心が勝ったかもしれない。

顔を見る。

見覚えがある。

同じバイト先の人だ。

あのバイトは先輩にしか知り合いが居ないので、すぐには分からなかったが、先輩と話しているこいつの姿を思い出して、気がついた。

「あ、あぁ……」

気が動転しているのか、俺は再び辺りを見渡した。

純粋な、光も通さない黒は、俺の視界には映らなかった。

紛れもない、これは現実なのだ

「寝よう」

涙は出なかった。

ショックはあったが、以外にも冷静だった。

冷静にしてはおかしい行動だが、俺にはそれが必要だった。

気づくのが遅かった。

現実じゃダメだ

やっぱり動くんじゃなかった。

体は正直だったんだ。

できることなら二度と戻りたくない。

そうして俺は先輩の元へ行く



備考


夢というのは人の欲望を映す鏡である。

その人が1番したいこと、ほしいもの、されたいこと

全て夢にうつるのだ。

誰かに好かれたい。

夢を見ている本人が思っていなくても、心の潜在意識では好かれたいと強く思っているものである。

その潜在意識が夢を見せ、意識を強くさせる。

夢に見た事に対して反発すると、それは良くないことを引き起こすトリガーだ。

潜在意識は強く、何度も反発したって戻ってくる。

夢に見たものに従い続けるのも一興だが、おすすめはしない。

自分というものをしっかり保ち続けることが、人生を豊かにするのではないのでしょうか。

夢というものは欲望を映す鏡、なので自分を見つめる参考程度に思っていればいいのでは無いのでしょうか。




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