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23 ギルド長。

 僕が出来る事、ダンジョンの維持の方法を広める。

 僕がしたい事、サラタンを知り、サラタンに知って貰う。


 それらは並行して出来る、する、だから先ずはダンジョンの維持から。


『維持の方法を伝授、ですか』

《周辺諸国に恩を売るんです、そのついでに同盟を結ぶ、魔王を倒すなら連携が必要ですから》


『ですが、コチラの情報を漏らすのは』

《その分、向こうの監視も出来ますよ、僕が行くんですから》


『だとしてもです、こう、勇者様を信用していないワケでは無いのですが』

《どの道、僕は魔王を倒す為の力を付ける為、他のダンジョンに行く必要が有るんですけど。魔王は倒さなくても良いんですか?》


『いやー、出来れば倒して頂きたいのですが』

《どうすれば信用してくれるんですかね》


『その、出来れば、ウチの姫と婚姻を』

《一緒に探索してくれるんですか?》


『いやー』

《噂で聞いたんですけど、勇者鈴木さんって浮気されちゃったんですよね、だからこそ僕は同じ失敗はしたくないんです。姫ってどの位強いんですか?》


『姫が、我が国は信用なりませんか』

《そっちはどうなんですかね?》


『いやー、信用はしておりますが』

《本当にですか?僕は国の事を考えて、国の代表として、ダンジョン維持を周辺諸国に教えるつもりだったんですけど。別にダンジョン攻略だけでも良いですよ、面倒は嫌いなんで》


『それは、後程、検討の上で』

《期限を決めて下さい、もしかすると強い敵が溢れるダンジョンが出るかも知れないんで、そうなると僕でも自信は無いんですよね。まだまだ、ココに来たばかりですから》


『でしたら、そうですね、3日を目途に、はい』

《分かりました、それまで準備して待っていますね、じゃ、失礼します》


 そして3日後、国は承諾した。

 ダンジョン探索用奴隷の数が減っているからだ、このままだと流石に不味いと思ったんだろう。


 でも、それも僕と鈴木さんの仲間の策略なんだけど。


 うん、絶対にバレ無い様にしないとね。




「はぁ」


 某国で奴隷制度が復活し、嘗て俺を嵌めた種族が奴隷化させられているとは。

 大方、誰かが敢えて口止めしていたのだろう。


 コチラの状況を整えず大量に受け入れては、確かにパンクするだろう。

 だが。


『あのね鈴木さん、魔王の力に頼らない世界が目指すべき世界だと思ってる、そして人は便利を知ると平気で横着する。経験と積み重ねの為、コレは魔王には絶対に頼まない事、だから言わなかった』


「田中君、すまん」

『他にも有るけど気にしないで、些末な事だから』


「些末、とすべき、か」

『全知全能、万能の神じゃないんだから。仮にそうだとしても、あんまり神に頼るべきじゃないと思う、鈴木さんは1人なんだし人なんだから』


「すまん」


『ただね、布が少し足りないから、そこはお願いしようと思ってる』

「綿で良いか」


『うん、肌触りの良い、ある程度丈夫な綿。服もそうだし、ベッドにも使うから』

「何処に置けば良い」


『城下町の倉庫、一緒に行こう』

「そうだな、偶には外も散歩するか」


『うん』


 この国には、まだまだ何も無い日は少ない。


 先日はエキドナとサラタンが、遊び半分で互いの案内人や神官を誘惑し合い、人選を再考せざるを得なくなるだとか。

 松本さんが竜人にキスされて大騒ぎになるだとか、とうとう遠藤君が妊娠したり、ウチの子がハイハイする様になったり。


 前の世界が如何に平和だったか、如何に平穏に過ごせていたか。


《鈴木様》


「あぁ、吉田さんか。久し振りだな」

《お久し振りです、田中さんも》

『ビックリした、最初、全然分かんなかったよ。元気?最近どう?』


《いえ、少しご相談が有るので、後日ウチヘ来て頂けますか?》

「あぁ、構わないが」


《でしたら森さんもお願い致します、話し合いの場に少し必要なので》

「分かった、追って連絡する」


《はい、では、お邪魔しました》

「あぁ、また」


 あんなに小さかった子が、あんなに美人に育つとはな。


『もしかして、ハーレムに入れてくれ、とか』

「無理だな、妹と言えば妹の様な存在、あの小さい頃の記憶が吹き飛びでもしない限りは有り得ないな」


『となると、吹き飛んだら入れるんだ、ハーレム』

「その時は全力で止めてくれ、身内も同然なんだ」


『そこ、詳しく知らないんだけど』


「あぁ、そうか、君が来る前の事だからな」

『あぁ、じゃああの若さで古参なんだ』


「寧ろ、最初の生産系と言うか、非戦闘系スキル持ちと言って良いだろうな」

『それでギルドの長』


「長くなるが」

『うん、宜しく』




 この街には様々な店が有る。

 食堂は勿論、銭湯に洗濯屋、診療所に至っては年中無休。


 日の出と共に各所が騒がしくなり始める。


 そしてギルドも。


《おはようございます、鈴木さん》

「おはよう、吉田さん」


 私は鈴木さんを良く知る古参のウチの1人、吉田。

 このギルドの管理者、そして商業管理組合の代表。


 ココに来た頃、私はまだ子供だった。


《また、あの小さかった子が、こんなに大きくなって。とか思ってそうですね》

「あぁ、思ってる」


《一応、15才だったんですけどね》

「もう20代か」


《はい》


「それで、相談とは何なんだろうか」

《私も大罪側になりたいんです》


《それで私も呼ばれたんだ、てか何で?》

《私の来歴はご存知ですか?》


《ううん》

《ご説明させて頂いても》


《うん、お願い》


《私の両親は、私を置いて亡くなりました》


 修学旅行から帰るも、気配も返事も無く、家の中は少し異臭がしていました。


 取り敢えずはと荷物を置き、家の中を探してみると、洗面所の方から臭いが漂っている事に気が付きました。

 そうして洗面所の戸を開けると、お風呂場に誰か居る様に見えて、開けようとするも上手く開かず。


 声を掛けながら強引に開けようとしても、開かないまま。

 そうしていると臭いの発生源がお風呂場なのだと気付き、両親がお風呂場で倒れたのだと思った私は、急いで消防に連絡しました。


 そして私は家の中に入れなくなり、救急隊員が来たかと思うと、今度は警官が来て事情を聞かれ。

 お風呂場で両親が亡くなっている事を知らされました。


 どうして心中したのかは、後に分かりました。

 私を産む為に不妊治療にお金を使ったのは知っていましたが、負い目からか母親はマルチ商法で更に借金を背負い、父はマンションの管理費が持ち逃げされた事と給料が下がった事で追い詰められて。


 私に遺産を残す為に、母を殺し自殺。


 ですが母が既に保険を解約しており、寧ろマイナスに。

 私は遺産放棄の手続きをし、施設へ。


 けれど親戚から接触が有り、その人にまで母はお金を借りていたらしく、内々に昼の水商売へ出される事に。

 幸いにも体を売る前に踏み止まりましたが、稼ぎが少ないと言って暴力を振るわれ、施設の知る所に。


 警察の介入も有り、その事は何とかなったんですが、警官と職員の会話を聞いてしまったんです。

 私に聞こえるかどうかを考えていたのかは分かりませんが、明らかに私の事だと分かる会話をしていた。


 今時はスマホだって有るんだし、少し考えれば分かるだろうに、と。


 私は恥ずかしくて悔しくて、絶叫しました。

 子供なんだからしょうがないじゃないか、スマホだって持たせて貰えなかった、誰も何も教えてくれなかったじゃないかって。


 泣き叫びながら道路に飛び出してやったんですけど、気が付いたらココに。

 今となっては雑誌社や何処かにでも売ってやれば良かったと思うんですけど、まだ子供でしたから。


《そしてココで、どうしたいか神様に聞かれて、守銭奴の称号を得て数字や商売に強いスキルを得たんですが》

「子供だったからな」


《ですね、良い様に利用されていたのを鈴木さんに助けて頂いたんです》

「家の財産管理をさせる名目で買ったんだが、幼女趣味だと誤解されたな」


《少女、です》

「いやアレはどう見ても」

《そんな幼かったのに、美人になってる》


《ありがとうございます、化粧です化粧、しないと凄い童顔なので》

《へー》


「で、何故大罪側、なんだ」

《大罪って良く知らないので、ソッチ側になりたいって事です》

《あぁ、成程。じゃあ先ず、大罪の事を説明するよ》


《はい、宜しくお願いします》




 色欲、怠惰、憤怒、虚栄。

 悲嘆、強欲、そして私の美食。


《時代だとかで呼び方とかは変わるし、コレは私の考える7つの大罪、なんだけど》


《もう、強欲になろうかと》

《そこ、もうちょい良い?》


《フラれたんです、君にはもっと良い人が現れるだろう、って》


「で、どうして」

《分かる、寧ろ思い切って舵を切った方がモテる場合って有るもんね》

《そう言う事です、それに》


《それに?》


《私、運が無いのか相当舐められるのか、碌な男が寄って来なくて》

《あー、上役だもんね、しかも古参だから尻込みされる》


《それに加えこの経歴ですから》

《あぁ、ある程度の仲になってから、去られちゃうのか》


《しかも称号は守銭奴》

《別に性格を表してるワケじゃないのにね》


《本当に、その通りなんですけど、はぁ》


《ねぇ、魔王様》

「大罪について、もう少し良く知り、熟考を重ねた後だ。先ずは森さんと、それに他の者とも良く相談してからだ、良いな」

《はい、ありがとうございます》


《よし、女子会しよう女子会、五ノ竜ちゃんも居るし。エキドナとサラタンも呼ぼうか》


《あの、私、そうした事はした事が》

《じゃあ先ずは小規模にしとこう、大罪の考査もしなきゃだしね》


《はい》


 で、女子会してみたけど、本当に普通の子だった。

 それなりに礼儀正しく真面目に生きてた子、なのに、本当にもうムカつく。


《その警官達もココに来れば良いのに、クソ大変な思いさせたい》

《探してるんですけど、意外と来ないんですよね》

『そうね、確かに、元夫が来たら嫌だわ』

《き、来ても、そのまま溶岩に落ちると良いですね》


『そうね、ふふふ』


《あ!》

『あら、何を思い付いたのかしら?』


《カードでも何でも、山札から取って捨てるじゃん?で、こう、捨てる場所も実は有るんじゃないかなと思って》


《そ、それ、もしかして世界ちゃんの事、ですか?》

《そうそう、それこそ悪人には地獄みたいな場所、悪魔や魔物の住む世界。とか》


『でも、もう私達が行かされても、そう地獄とは思えなさそうね』

《それも!間違って捨てるとかの対策にもなる、秩序の有る魔物と悪魔の世界、差別主義者の地獄》

《あぁ、確かに良いかも知れませんね、少なくとも胸がすく》

《そ、そう思うだけでも、田山さんも安心出来ますか》


『そうね、本当に改心すれば救われる地獄なら、恨む事も許される気がするわね』

《ふふふ、良い案でしょ》

《絵本作家にお願いして、広めましょう》

《え、絵本、欲しい》


『そうね、ココにも置きましょうね』


 私、むっちゃ良い案出したと思う。

 どうかな、世界ちゃん、コレで安心て手札が切れるんじゃないかな。

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