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19 水辺のダンジョン、神殿編。

 水辺のダンジョンが出現したのは、山本君と神殿ダンジョンを攻略した直後、らしい。


 しかも断崖絶壁の上には、神殿。

 四大魔獣が住み着いた直後、各ダンジョンに神殿が増設されたとは聞いていたが。


「カッコイイですよね」

「あぁ、カッコイイな、行くか山本君」


「はい」


 ココへ辿り着くには、最低でも森林ダンジョンの抜け道を探さなくてはならない。


 そして抜け道と合流した川を辿ると、湖に行き着く。

 目の前には小さな祠が有り、ダンジョンコアを捧げると。


 祠の後ろに水中回廊が現れ、断崖絶壁の方向へと降りる事になる。


「絶景だな」

「水族館と違って繋ぎ目が無いですからね、最高の透明度と鮮やかな魚と、最高ですね」


「連れて来たいだろう」

「はい、絶対に連れて来ます」


 本気で観賞用なのか、罠も敵の出現も無し。

 それこそ階段の途中には休憩スペースとベンチが用意されている、だが、気掛かりが1つ。


 水辺のダンジョン出現の連絡以降、エキドナからの連絡が途絶えている。

 ココには居る筈なんだが、現れる気配も無い。


「山本君、暗殺者スキルは使えているか」

「コレで1つの階層なのか、探索には何も引っ掛かりません」


 山本君は田中君のスキルを一時的に借り受け、魔道具に付与、それが山本君の着けている鎖帷子。

 防御と再生魔法も掛けられてはいるが、コレが破損すれば暗殺者の称号も消える事になる。


 絶対に必要だとは思わないが、無いよりは、な。


「問題は、辿り着いた先、か。気を引き締めて行こう」

「はい」


 そしてなだらかなカーブが連続する水中回廊は、地底へと繋がっており。

 とうとう、ヒカリゴケだけの灯りとなった頃、扉が。


「着いたが、良いか」

「はい」


 扉を開けると、水辺の洞窟とも言える場所へと辿り着いた。

 所々に大きな水溜りが有り、その水辺だけが青白く灯りを燈している。


「幻想的だな」

「出来たらココにも連れて来たいですね」


「あぁ、間違い無いな」


 そして水溜りは更に何処かに繋がっているのか、時折巨大な魚影を映した。


「釣れますかね」

「安全地帯だと確認出来れば試したいんだが」


「階層が分かれてる感じじゃないですよね」

「あぁ、コレで1階層分らしいが、先ずは真っ直ぐに進んでみるか」


 ココでも敵や罠の出現が無いまま、今度は水晶で出来た螺旋階段を上る事に。


「綺麗過ぎなんですが」

「あぁ、流石にコレは誤解しても仕方無いな、ゲームの中だと」


「ですね」


 自ら発光していた石が、いつしか最上階から齎される光に輝き、色を変えていく。


 幻想的で、美しい。


 何処の長い階段もコレなら、きっと苦にはならないだろう。


「また、休憩スペースが、ココは観光地か」

「あぁ、だったら最高なんですけどね」


「あぁ、確かに、未だに観光地化までは至れていないからな」

「でも、コレなら、敵も罠も無いなら最高なんですけどね」


「あぁ、だな」


 そうして階段を登り終えると、再び扉が。


 枠や装飾は金縁だが、それ以外は七色に輝く水晶。

 光は通すが、背景は透過させない不思議な石。


「着き、ましたね」

「あぁ」


 今度こそ、と。

 気を引き締め開けた先には。


「絶景が」


 青い空、青い海、何処までも続く水平線。

 そして後ろを振り向くと、足元には湖、その先には何処までも続く緑。


「観光地としては最高だが」

「敵も、ですけどエキドナさんが居ませんね」


 そこだ、問題は。


「あぁ、そうか、まだ続いているのか」


 如何にも撮影スポット的な場所には、やたら光り輝く鐘が。

 結婚写真にありがちな、何だ、アレは何て言うのか。


 まぁ良い、兎に角あからさまに妖しく光る鐘を鳴らすと。


『おっめでとうございまーす』




 僕が呆気にとられると同時に、鈴木さんが膝から崩れ落ちた。


「観光地化かっ!」

『うん、はい』


「はいじゃないが、どうしてこうなる、いや良いんだが、何処に居たんだ」

『コレの先』


 アーチ状の洋式鳥居の様な場所に鐘が吊り下がっており、鳴らすと枠内の景色だけが、いや次元が違うらしい。

 エキドナは出入りし、さも入れますよ、と促す様に。


「その先、間違うと断崖絶壁なんですが」

『あー、やっぱり警戒しちゃう感じ?』


「はい、それに柵が無いと危ないですし」

『景色最優先にしたんだけど、まぁ、しょうがないか』


 エキドナが少し手を翳すと、瞬く間に柵と足場が。


「エキドナ、何なんだココは」

『だからさぁ、観光地だって言ってるじゃん?』

「いや聞いてませんけど」


《あ》


「はぁ、俺の緊張を返してくれ」

『そんな、攻撃するワケ無いじゃん、てかそんな事したら絶対にココ壊してでも殺しに来るだろうからしないしない。つか緊張したんだ、マジで受けるんですけど』


「ちょっと殴りたいんだが」

「はい、俺もです」

『つか別に良いじゃーん、偶には、ごめんね?』


「まぁ、連絡ミスなら仕方が無いが」

『もうさぁ、楽しくて楽しくて、あ入って入って、コッチも凄いんだから』


 物凄く渋い顔をした鈴木さんをエキドナが押しながら、枠の向こうへ。


「あの、アレ何て言うんですかね」

《あー、アレ、カリヨン、カリヨンベルとか、カリヨンベルモニュメント、かな》


「成程」


 モニュメントの中は再び水中らしく、大きなドーム状の空間からは海中が一望出来る。

 良い、綺麗だと思う。


 家具は全て貝殻を巨大化させた様な、綺麗で可愛らしい仕上がり。


「まるで絵本の中だな」

『でしょー、人間の絵本で見たんだー、竜宮城』

「あぁ、確かに、洋式竜宮城ですね」


「しかも外から見ても綺麗だろうな、スノードームの様に」

『何それ見たい欲しい作って頂戴』


「んー、こう、か」


 鈴木さんの無骨な手から出て来たのは、本当にココに似た綺麗で可愛いスノードームで。


「良いお土産品が出来ましたね」

「あぁ、だがココに人を招く気は無いんだろう」

『そりゃねー、私のプライベート空間だし』


「もう1つ奥、違う場所に作るワケには」

『やっぱココ、良い?』


「はい、良いです、凄く良いです」

『でも何か領地が極まってるっぽくてさぁ、アレ、人魚みたいなのがココまでにしてくれって』

「報・連・相を理解してくれ」


 また、崩れ落ちた。


『野菜?』

「報告・連絡・相談、ですね」


『あー、うーん、ごめーん』

「あ、あまり連絡したりとかって、習慣に無いんですかね?」


『無いなぁー、用事が有ったら住処で待つだけだし』


 長命種の気長さ、凄い。


「そこは悪かった、ただ少し人の生活にも慣れて欲しい」

「神官か何かを雇わせますから、その者に連絡させたりしても構いませんか?」

『じゃあイケメンが良いなぁ』


「成程、それは伴侶としても欲しいですか?」

『あー、んー、浮気は嫌だし、べっこが良いかも。あんま他に見せたくないから、両方欲しいなぁ』

「すまんが、君の生態を把握しきれて無いんだが、一連の流れを聞かせて貰っても良いだろうか」


「あぁ、番とどう過ごすか、とかですね」

『しょうがないなぁ』


 そして詳しく聞けば聞く程、意外にも人間臭い部分と魔獣的部分が有り、僕らは更に苦悩する事に。




《成程ねぇ、結構蛇の割合が多い感じだけど》

『ですね、渡辺さんが言う通り、精子を貯めて産むのは同じですが。様々な種を欲するのは、エキドナとしての性質かと』


「で、ケルベロスやヒュドラが生まれるのは、流石にお互いの為にも今は避けたいんだが」

『だからこそ人種を選んでるのかと、獣人も候補には上がっても、今は人種が良いそうですし』

《良いんじゃない、蛇は多産、子宝の象徴でも有るし。アホなイケメンの記憶を消して、捧げ物としてあげちゃったら?》

「良いですね、複数人必要ですし、外見の問題も根本的に解決しますし」


「山本君、俺より魔王に向いているんじゃないか」

「嫌だなぁ鈴木さん、僕は補佐とか宰相ですよ。細かい事は僕ら、鈴木さんは大きい舵取りで丁度良いんですよ」

《まぁ、そうね、単なる代表者と言えば代表者だし》

『山本君、僕のスキルを受け取りませんか?』


「え、嫌です、コレ以上はチート過ぎです無双とか無理です嫌です他の人にして下さい」

《凄い拒絶反応ね》


「いやそうした存在は鈴木さんだけで良いんですよ、周囲の脅威にもなりますし、それこそ狙われたく無いんで」

「なら付与を誰かに渡すのは、難しいか」


「ですね、やっぱり最初に持ってた自分の能力ですから、だから無理しなくても良いんですよ遠藤さん」

『任せて良いと思ってるんですけどね』


「だとしても絶対に嫌です」

《頑なねぇ、もう少し説得材料が必要そうね》

『ですね』


「あ、そう言えばスノードームですよ」

「あ、あぁ、コレか」

《わぁ、欲しい》

『綺麗ですねコレ』


「で、お土産にと思ったんですよ、それこそ観光地化です」

『あぁ、良いですね』

《まぁ見に行きたいわ行きたいわよね》

「確かに安全は安全だが、途中までは付き添いが有った方が」


「そこも、案内人と神官の選定をしませんか?」

《そうね》

『でしたら、改めてお話を聞かせて頂けると助かるんですが、来てくれますかね』


「俺が転移魔法陣を作ってくる」

『はい、宜しくお願いします』


 良いんだろうか、世界平和がなされる前に観光地化などと。


 いや、息抜きは確かに必要だ。

 それにあの景色を誰にも見せないのは、勿体無い。

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