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17 四大魔獣。

『で、急に立ち去った、と』

「話も終わったんでな」


『もう少し補助をしてあげた方が良かったんじゃない?』

「田中君、山本君は偶に凄い殺気を出す、あまり余計な事はマズいかと」


『まぁ、確かにそうだけど。四大魔獣はどうするの?』


「何も考えず生き返らせ、呼んでしまった、すまない」


 僕らが気にしない事を、未だに鈴木さんは悩んでいる。

 魔王になる前から、彼はこんな風に。


『大変だったね、メリッサさん』

《いえ、勇者ともなればこの程度、寧ろ周りが補佐して当然かと》

「すまん」


『取り敢えず、魔獣も人化も出来る様になったんだし。あぁ、ダンジョンに配置しちゃう?』

「流石天才だ、と言いたいんだが、どの様な弊害が起きるか、やはり遠藤君か」


『その遠藤君だけどさ、いつか引退させたいんだよね』


「あぁ、彼も生真面目だからな、このままでは称号と仕事に縛られ続ける事になりかねないか」

『けど、無職も周りの目が有るから、物書きか何かになって貰おうかなと思って』


「他所からは見えない不労所得、か」

『そうそう、僕らが下請けであり卸業者として、遠藤君が書いたってモノを定期的に発行する。って言うか実際に出力はしてるからね、遠藤君は』


「日本神話やギリシャ神話の清書となれば、少なからず他国からの購入も見込める、か」

『仮に売れなくても、職業が有る。結局は無職で生きられるのは極僅か、しかも奇異な天才ならまだしも、真面目で普通そうな遠藤君に、その役は難しいから』


「改めて、会議か」

『だね』


 鈴木さんは相変わらず細かい事は教えてくれないんだけど、五ノ竜と山本君は何とかなりそう。

 後は遠藤君と、四大魔獣。


『僕の引退、ですか』

『勿論、後任を育ててからだよ。子育ても有るし、2人の時間を作る為にも、どうかなと思ってね』


『何か僕の』

「いや、この先も遠藤君を頼らせて欲しい、ただ遠藤君の幸せや家庭を阻害したくは無いんだ。この先、どちらももっと手間が掛かる筈、そうした事と仕事の板挟みには誰もなって欲しく無い、不和を招きたくは無いんだ」


『やっぱり、手放すのって少し躊躇いますね、大きい能力程、手放し難い』

『無理にとは言わないよ、それこそ意外と手が掛からない子達ばかりで、両立が可能かも知れない』

「だが、そうならなかった場合、どうしても相談するには躊躇いが出てしまう」


『そして急ぎの問題なら、対処が遅れてしまう。分かります、未だに不安定な情勢は変わりませんから、でも、以降の称号は何になるんでしょうか』

『僕が短期間に考えた限りでは、先ずは物書き、無職には未だに厳しいから不労所得者になって貰うのが1つ。次は家政婦、どちらもこのまま城に住み続けても、城下に降りても構わない仕様にするつもりだよ』


『少し、考えさせて下さい』

「年単位で考えてくれて構わない、出来るなら遠藤君に続けて欲しい、支援も出来るだけする」


『はい、ありがとうございます』


「それで、次に四大魔獣の事なんだが、構わないだろうか」

『ダンジョンに住んで貰おうかって、ある意味でお互いに不可侵条約を結べるし、守って貰えるしね』


『その、一応、お会いしてみたいんですが』

「あぁ、呼ぶ」


 鈴木さんが指を指すと、そこには。




《いや、ワイかてこんな喋り方やと思いませんがな》

《人語となると、少し変わるな》

『何かちょっと違うよね、マジ分かる』

『まぁ、出る言葉が思ったよりは少し違いますけど、考えは同じですから』


 関西訛りは、獅子王バロン。

 その次には白い八咫烏、白鳳ルフ。

 水陸両用、半身半蛇のエキドナ。

 蟹の爪と亀の容姿を持つ、サラタン。


 正直、竜達よりもかなり人間味が有る。


『こう、狂暴だったとは思えないんですが』


《ほら、アレですわ、ガルガル期、でっしゃろかね》

《それに発情期も》

『そこにお酒とアレ、ヤバい薬と、後は痒み?みたいなイライラ?』

『常軌を逸していたのは間違い無いですね、内因は勿論、外因からの影響により。多分、ですが、人も同程度は力を引き出せるかと、所謂火事場の馬鹿力ですね』


『僕、引退を受け入れますね。多分、この流れは僕には処理が難しい』

《処理落ちしてまんがな》

《無理も無い、突然人に魔獣の言葉を喋られれば、俺らでも驚くだろう》

『しかも容姿コレだしね、マジ魔人、つか魔人で良いのかな?』

『特に拘りも有りませんので、どうぞお好きにお呼び下さい』


「魔人で、良いと思うが、どうだろうか」


『そう、ですね、暫くは四大魔獣の人型を魔人、としましょう』

《左様で、後はほな、住処やろか》

《ダンジョンで構わないんだが》

『ウチの住処だよね、せめて水辺じゃないとマジ無理』

『ですね、私は洞窟、ルフは塔をと、そして森林はバロンが住みたいと申しておりますから』


「そうか、規則性を敢えて持たせるのも良いのかも知れないな」

『ですね、それに荒魂を収めるには社、住処が重要でしょうし。一先ずはダンジョンコアをお持ち頂いて、住んでみて下さい』

《せやったら貢ぎ物が有ると最高やと思いますけど、それは追々でっしゃろな》

《先ずは成果、だろうな》

『うらやま、マジで遊びに行かせてね?』

『ええ、どうぞ』


 そして俺は、林檎さんの事を言わないまま、神殿ダンジョンの攻略に赴く事となった。

 一先ずは山本君の恋の邪魔になるだろうから、との気配りで山本君を誘うつもりは無かったんだが。


「俺もレベル上げしたいんで、良いですかね」

「あぁ、構わない」


 そうして後日、山本君と2人、神殿ダンジョンへ。




「どうしたら物語の様に上手くいくのか、全く分からないんですけど」


「正直、俺には経験値が殆ど無いんで、大した助言は出来ないんだが。物語の様に、とは、具体的にはどの様な状態なんだろうか」

「まさに鈴木さんがそうじゃないですか、実は慕われていたメイドと生き返った後に結ばれるとか、物語っぽいじゃないですか」


「だが、不満では無いんだが、田中君と言うレギュラーも存在しているが」

「そこは違うジャンルの物語が混ざってるだけで、本質的には主人公じゃないですか、BLですよボーイズラブ」


「読書家なんだな、山本君は」

「家が落ち着かなくて漫画喫茶に行ったり、嫌な事を忘れたくて読み漁ってましたから」


「そこでボーイズラブを」

「偶にBLだと分からないで読んで、まぁ、面白かったらそのまま読んだり。意外と男女で考えても成立する物も有るんですよ」


「あぁ、成程な」

「あ、またアンデット、多いですね本当」


「この辺りは墓地直下だからな」

「価値観が変わるってコレこそですよね、ダイヤモンドがザクザク出るんですから」


「多少の理屈は分かるんだが、どうして資源が尽きないんだろうか」

「超大きい目で見ると、分解されるって事は元素に戻るんですよ、地球外に放出しない限りは地球には常に資源の元が漂っている。そして歳月が物を形作り、再び手元に戻って来る、どんな形であれ燃やされたり地中に埋められたりして還元される。と思ってます、プラスチックを分解する生物だって出始めてたんですから、ある程度の補助さえすれば地球って勝手に処理すると思うんですけど。ね」


「あぁ、リサイクルも金になるからな」

「ですね、それこそ二次請け等と言った中間会社が存在してる以上、利益が出る様に仕組んでる筈ですから」


「最近のは頭が良いな、本当に」

「いやだな、情報量の違いですよ。一冊の紙媒体、それこそ各種専門書だけか、世界中の本が直ぐに見れるか。それだけでもかなり違いますから、情報へアクセスする時間や計算って細かく裁断されてますけど、膨大ですから」


 しかも定期的に情報が更新される。

 種類が増えて正確さが増す。


 けど、多様性に流される。

 本当に、どうしたら林檎さんに気持ちが伝わるのか。


「すまん、少し逸れたが」

「あぁ、物語の様な恋愛がしたいワケじゃないんですよ。そう難なく気持ちが伝わるには、どうしたら良いのかな、と」


「どう、伝えたんだろうか」

「まだ伝えて無いんです、自分はいつか蛙に戻ってしまうかも知れない、転生前の姿に戻ってしまうかも知れないからガッカリさせたく無いって。先に、先手を打たれたんです、あ魔獣ですね」


「ほぼ仔山羊で可愛いんだがな、すまん」

「やっぱり宗教の影響ですかね、牛に羊に山羊に鳩の魔獣って」


「それにドロップ品がワイン、酒は本当に困る、未成年をダンジョンに入れられない」

「薬物と同じで常習すれば脳が委縮し肝臓を病むのに、規制が殆ど無い」


「大人として最低な助言なら思い付いたんだが」

「あぁ、お酒でどうにかしちゃうのはちょっと、凄い落ち込まれても却ってショックですし」


「あぁ、確かにな」

「けど嗜む程度なら良いかも知れませんね、未だに物凄い緊張されてますし」


「それは、良い傾向だと思うがな、友人にしか思えないとは言われそうには思えないんだが」

「何かもう、それでも良いかなとも思うんですよね。寿命が圧倒的に足りませんし、絶対に俺が居ないとダメな状況でも無いですし」


「こう、定期的に」

「はい、先ずは習慣付いて貰って、暫く会わなくなって寂しくなってくれると良いんですけど。それって単に心理的な作用で、俺を好きって言うのとは別じゃないですか、何か違うと思うんですよね」


「下手に冷静で頭が良いのも考えものだな」

「あ、どうやって口説かれたんですか?メリッサさんとか田中さんに」


「最初が、田中君なんだ」


「同性愛の」

「無い、が、両性具有の魅力と興味に抗えなかった」


「凄い、夢の様な、本当に物語じゃないですか。良いなぁ、俺も愛されたい」


「山本君なら」

「俺より低知能だったり優れてる点が何も無い相手は無理ですね、同等か補えるか。自分以下を手元に置くって、絶対に自信の無さとか自尊心の低さを満たす為だけじゃないですか」


「それは、俺には分からないが、篇圏が過ぎないだろうか」

「じゃあ聞きますけど、前の婚約者の何が良かったんですか?」


「ありきたりだが、優しかった、俺がいつどんな状態でも優しく迎え入れ、世話をしてくれた」

「でも親の手助けアリで浮気、洗濯や掃除は勿論、食事もメリッサさんが作ってたのを自分が作ったと言ってた。でも見抜くのは、忙しかったから難しいですよね、食って寝て仕事、人を鑑定するスキルも無かった」


「だが、スキルを得るべきだった、見抜くべきだったと思う」

「でも信頼を得る為にもスクロールや物品を提供し続けてたんですから、難しいと思いますよ、スクロールの中身を確認するとバレるし。鑑定スキルを取得されたく無かったでしょうから、何かしらの妨害工作は有った筈ですし」


 本当に、クソ。

 いや、今でも未だにクソみたいな場所が殆どですけどね、他国って特に。


 何かしら難癖を付けてダンジョン産の物品を買い取ろうとするし、売り値はバカみたいに高い、なのに生活費は高いまま。

 本当に、貧困の連鎖を続けてるバカな国が多い、いつしか反旗を翻されて他国に人材が流出し続けるだけなのに。


「すまんな、毎度脱線して」

「いえ、俺も言い過ぎました、すみません」


「いや、事実だ、仕方無い。まさか俺を騙そうとはしないだろうとの驕りから、見抜こうとすらしなかったんだ。佐藤君も、そうだったんだろう」

「あの人、本当に巨人族の血が入って無いんですよね、凄いですよね」


「そうなのか、全く、無いのか」

「はい、アニスさんに直接鑑定させて貰ったんですけど、人とダークエルフの血筋だけでした」


「と言うか血統も見れるのか、凄いな」

「開示してくれたからですよ、開示する意志が無いと見たくても見れませんから」


「あぁ、そうした安全装置の作動の仕方なんだな」


 そう言えば、見えない。

 鈴木さんは魔王だからと思っていたけれど、見送りの森さんやミーミルの顔にも、文字は無かった。


 スキルに不具合が。


 いや、レベルは上がってるけど。

 そうか、だから、何かレベルが上がる要因が有って。


 あぁ、やっぱり良く出来てる、この世界は。


「鈴木さん、スクロール出して貰えませんか、気持ちが見えるスクロール」

「あぁ、ダンジョンが終わったら、直ぐに出す」


 そして鈴木さんが出すまでも無く、神殿ダンジョンから俺が望む様なスクロールと魔道具が出た。


 だからこそ、俺は主人公だ。


 だなんて欠片も思わない、寧ろダンジョンの精霊が俺達を応援しているのか。

 それか、世界ちゃんが本当に存在しているのか。


 コレで例え思った通りにならなくても、思いが通じ合わなくても。

 コレだけでも、ダンジョンの精霊と世界ちゃんを少しは信じる理由にはなった。

キャラ紹介。 


 名前 田中 名字ランキング4位

  称号 ???

  性別 男→両性具有

  学歴 経済学部経済学科中退

 『お疲れ様です、鈴木さん』


  名前 鈴木 名字ランキング2位

  称号 勇者→魔王

  性別 男

  相手 メリッサ、田中

 「恋愛には疎いんでな」


  名前 メリッサ

  称号 ???

  性別 女

  相手 鈴木

 《では、失礼致します》


  名前 遠藤 名字ランキング38位

  称号 大賢者

  性別 男

  相手 男

 『賢者って、そう言う意味も有るんですよね』


 四大魔獣。


 名前 獅子王バロン。

 住処 森林ダンジョン。

 性別 雄。

《いや、ワイかてこんな喋り方やと思いませんがな》


 名前 白鳳ルフ。

 姿  白い八咫烏。

 住処 塔ダンジョン。

 性別 雄。

《人語となると、少し変わるな》


 名前 エキドナ。

 姿  半身半蛇。

 住処 未定。

 性別 雌。

『何かちょっと違うよね、マジ分かる』


 名前 サラタン。

 姿  蟹の爪と亀の容姿を持つ。

 住処 洞窟ダンジョン。

 性別 雌。

『まぁ、出る言葉が思ったよりは少し違いますけど、考えは同じですから』

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