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10 ダンジョン。

 非常に、厄介な事になった。

 ギリギリで味方を救いつつ、何度も後退と前進を繰り返し、何とかダンジョンを攻略した直後。


 新たなダンジョンが現れた。

 しかも今度は、塔。


《あー、命名するなら、バベルの塔、ですかねぇ》

『森さん、それは流石に不吉じゃない?』


《だからですよ、危ない場所って示さないと、バカと何とかは高い所と光り物が好きじゃないですか》

「確かにな、壊すか」

『あぁ、確かにそれが良いかも』


 壊せるが、翌日には元に戻ってしまう。

 遠藤君曰く修復能力が働いての事らしく、しかも昨今の不作はこのダンジョンが地中で生成された事が原因かも知れない、と。


『教会地区では作物も魔素も枯れ、ダンジョンに湧く魔物や、ダンジョンに生息する植物しか採れない状態だそうです』


「あぁ、遠藤君、その情報は木村さんか」

『はい、実情を知り、冷静になって頂けたので助かりました』


 小林君のハーレムを案内したものの、木村さんは拒否。

 どうやら主人公補正スキルは、聖女候補のスキルには敵わなかったらしく、木村さんは再び教会地区へとスパイとして戻る事となった。


《けどまさか、似た乙女ゲーがマジで有るとはね》

『向こうも時代が進んでるんだもんね、さもありなん、だけど』

「ダンジョンゲームは古くから有る、しかもダンジョンの種類となると多種多様」

『攻略を切っ掛けにダンジョンが増えるのなら、資源に困ってはいませんし、やはり放置が妥当だとは思うんですが。サンプル数が少ない状態ですから、定期的な見回りが妥当かと』


「それもコレも、全ては魔王のせい」

《いや鈴木さんも魔王様も何もしてないんですけどねぇ》

『そこは他人は知れないからね、何をしてたか』


「真面目にダンジョンを制覇していただけなんだが」

『取り敢えずは法整備と結界かな』

『ですね』


 そうして法整備をし、厳重な結界と警備を配置。

 今度は魔王として、俺が単独で塔の探索に出る事に。


 だが、ココは割愛でも構わないだろう。

 何処で誰がやろうとも、やる事は同じなのだから。


《あ、お帰りなさい魔王様、なんか、早いですけど》

「洞窟よりは歯応えは有ったが、勇者の称号でも余裕だろうな」


《でも浮かない顔ですね?》

「ダンジョンコアなる物を、手に入れてしまった」


《おぉ、魔王っぽい》


 物としては、単なる記念品でしか無いが。

 事象は変化する、ココでは特に。


 もしかすれば、本来通り、コアはダンジョンを操作する為の物となるかも知れない。

 だが。


「いっそ、勇者の時になら喜べたかも知れないが」

《自死なんかするからですよ、もしかしたら世界ちゃんが作ってくれてたのかもですよ?鈴木さんの活躍の場》


「あぁ、なら確かに優しいな、世界ちゃんは。もし本当に俺の為なら、コアを獲得した時点で遠藤君に相談し、他者との繋がりが持てていたかも知れない。すまない、世界ちゃん」


 魔王になってもう直ぐ1年。

 未だに後悔している、自死した事について。


 もう少し他人を頼れていれば、信頼していれば、もう少し賢ければ。


 いや、だが自死しなかった事で、寧ろ不幸になっていた可能性も考えられる。

 あの時の俺の心は、そこまで強くなかった。


 だからこそ、あのまま生きても屈辱に耐え切れず、誰かに手を出していたかも知れない。

 それこそ、メリッサを手に掛けていたか、手を出していたか。


《大丈夫ですって、全部知ってて優しいなら、分かってくれますって》


「だと、良いんだがな」


 魔王になった事には、未だに後悔は無い。

 ただ、不便で便利だとは思う、今でも。




《えー、やっぱり寄生体なんですか、ダンジョンって》

『今の時点での僕らの答えは、だね』

『でもダンジョンって概念だから、食えないからね?』


《いや流石に鉱物系は食べませんよー》

『そう?この前はルビー食べてたじゃん』

『えっ?』


《あ、アレは魔石ですよ、飴みたいに舐めてたら味が出ないかなと思って。でも流石に土は食べませんよ本当に、やっぱ菌とかウイルスの温床だってイメージですし、いっそ水銀味わう方がまだ興味が有りますし》

『水銀食べる美食かぁ、有りそう』

『でも森さん、本来なら水銀で不老不死は得られませんからね?』


《嫌ですよ不老不死なんて、皆を看取るとか流石に心が折れる、順番的に真ん中位で死にたい》

『あー確かに最後は嫌だね、子供すら看取るとか無理だ』

『確かにそうですね』


《あ、ごめんね妊婦さんの前で不謹慎な事言って》

『いえ、ダンジョンとも関わりますから』

「ほう」


『ダンジョンも理屈上は不老不死なんですよ、魔素と侵入者と言う名の養分を得ている限りは、消えない筈なんです』

『ダンジョン産の魔物の数、一定数倒すとチャージタイムが有ってリスポーンするらしいじゃん?それ、ダンジョン生成した時に取り込んだ魔獣の数っぽいんだよね』

《あー、だから教会地区はアンデットめっちゃ多いのか、墓地周辺がダンジョン化したんだもんね》


『そして幸いにも僕らの国では、人里離れた場所がダンジョン化したんだよね』

「だが、ダンジョン化する規則性や何かは」

『僕としては、日頃の行い、それこそ世界ちゃんの采配だと思います』

《まぁ、確かに教会地区は転移転生者の使い捨て、私利私欲に走りまくってるし。中村君の居る地区に至っては領主の城、人の生活居住区域と被ってるけど。そうなると、世界ちゃんは民にも怒ってるって事だよね?》


『少なからず、憤りは感じているとは思う。でもダンジョンへ迂闊に近寄らないか、魔物が湧いて来ない限りは、ただこのままなだけ、かも知れない』

『遠藤君、濁すじゃん?』


『魔素が溢れたら、ダンジョンから魔物が溢れ出て来る可能性も有るんです。魔素がダンジョンに一極集中しているからこそ、周辺の魔素は枯渇している。もしダンジョンの容量以上に供給されたら』

『その地区を破棄して移動するか、ダンジョンと共存するか』


『攻略せずとも今の人口は賄えるらしいんです、けれど人口を増やすとなると更にダンジョン探索へ人員を割く必要が出てしまう』

『あぁ、人里に近い場所程、難易度が生かさず殺さずって感じみたいだからね』


『古く賢い寄生体は、宿主を殺しませんから』

《だから寄生体なんだ、成程》


『けれど懸念としては、溢れる事と増える事。そもそもダンジョンにどれだけの容量が有るかは未だに分からないですし、その容量が変動するかどうかも不明。そしてダンジョンを攻略する事でダンジョンが増える理由が、もし寄生虫と同じだとすると』

『共存を選んだ事になり、ダンジョンは増え続ける、難易度が上がる』


《あー、嫌な予感しかしないなぁ、だってダンジョン産の方が魔獣って美味しいし》

『しかも貴重な品も手に入るからね』


《ダイヤモンド、アレ遺体から生成されてると思うんだよねぇ、骨や髪を加工するとダイヤモンドになるのは有名だし》

『あぁ、要は炭素だもんね、成程』


《あ、私ね、鑑定師だったんだ、親も前の職業も》

「あぁ、だからか」

『森ちゃん、もしかしてダンジョン産のダイヤモンド舐めた?』


《舐めないよぉ、だって遺骨や遺髪がダイヤモンドになるって知ってるんだもん、無理無理》

「そこは口にしないのか、全く分からんな」


《あ、でも、もしかしたら好きな人のは舐めちゃうかも?》

「分からんな、全く。だが、そう繋がりを欲する事も有るのかも知れないな」


《鈴木さんがダイヤモンドになっちゃったら、飾るよ》

「食っても良いぞ、どうせ死んだ後だしな」


《そう言われると舐めちゃうかも?》


 遺骨を噛む風習が有るのは知ってるけど。

 まぁ、魔王様のなら、アリかも。


『鈴木さんの飴はダイヤモンド味』

《うわぁ、口の中がズタズタに、何か魔王っぽいからアリかも》

『ムーンストーンって美味しそうですよね』


《あぁ、分かる、確かに》

『美食なら、舐めてるだけで何か能力吸収しそうだけど』


《でも味無いもん、無味無臭。その能力は他に任せる、見るのは好きだから》

『成程ね』


「暫くは、ダンジョン探索は禁止にさせたいんだが」

『他国のダンジョンが広がって、ウチの領地を侵犯したら困るしね』

『そこで力技が提案されているんだけれど、聞いて貰えるかな』


「取り敢えずは、聞くだけなら」


『今、国境って凄く曖昧なんだけれど、そうした境界を明確に分ける案なんです』

「ほう、結界や何かだろうか」


『いえ、土地を切り裂いて川を作り、国境にする。ルーマニアらしき地区の地図なんですけど、ほら、川で分断されているのが分かりますかね』

《あー、確かに凄い囲まれてる》

『ここら辺って確か、凄い豊かな土壌なんだよね。我こそはブラドだ、とか言って統治してる人が居るらしいけど、実際にも治安が良いって聞くし』


「妥当だと思う境界線を、提案してくれるだろうか」

『はい、既に大まかに線引きしたのが、コレです』

《おぉ、スエズ運河が太くなってる》

『あ、そこは僕の提案、あそこって通るのに通行料を支払うんだけど、順番を飛び越すのに莫大なお金が掛かるんだよね。だからさ、発展する前に地中海とペルシャ湾、地中海と紅海に太い境界線を引く、それで一方通行にしたら循環して事故も減りそうじゃない?』


「先ずは、そこからにしよう」


 そうしてやっと、鈴木さんが魔王様として本格的に活動する事になった。

 でも直ぐに全部ってワケじゃない、やっぱり優しいし真面目だから、多少は周辺で聞き取り調査をする事に。


 けどまぁ、民度が民度だからね、聞かないで分断しちゃうってのも結構有った。

 それが向こうで言うスエズ運河とパナマ運河、転移魔法は有るけど、もしかしたら魔素が枯渇して大航海時代になるかもって。


 だからグアテマラとパナマにも、太い運河を通した。


 で、後は大きな大陸の分断なんだけど、そこは追々でって。

 産気づいたからね、遠藤さんと田中さんが。


 結構仲良しだよね、2人。




「遠藤さん、呼んでくるが」

『うん、間隔が狭まって来たんで、お願いします』


「分かった」


 大賢者エルヒムこと遠藤さんの夫は、ダンジョンの警備中。

 もう警備小屋に戻って来ても良い筈なんだが、急ぎな事もあり、俺が迎えに行くと。


《あ、やべ》


 どうして、安定と安全が保証されているのに、人同士で争うんだろうか。


「ダンジョンは侵入禁止の筈だが」

《いや、違うんですって、俺じゃなくて、そう、溢れ出した魔物が》


 嘘を見抜く魔法や魔道具は、やはり必要だ。

 特に、こうした問題が起きた時は。


 けれど結局は力だ。

 抑止力はどうしても必要になる。


「急ぎなんでな、後で聞かせて貰う」


 初めて、意図的に人を傷付けたんじゃないだろうか。

 そして初めて、蘇生魔法も使った。


 確かに万能感を感じられるかも知れないが、結局は自分よりも下だからだ。

 いつか現れるかも知れない上位者の事を考えると、どうしても、無惨にも殺す事は出来無い。




『あ、鈴木さん』

「すまないが佐藤君、今は引き渡しだけにさせて貰う、調書は追々で頼んだ、出産間近なんでな」


『あ、はい』


《ぅう、ぁあ》

『取り敢えずは治しますけど、逃げずに正直に話して下さいね、じゃないと元に戻しますよ』


《っぅ、たす、けて》

『鈴木さんの処置が良いですから死にませんよ、ただじっとしてて下さいね、最悪は動かせなくなるかも知れませんから』


《はやく、たす、けて》

『じゃあ、始めますね』


 人を助けたかった。

 感謝もされたかったし、利益も欲しかった。


 そしてココでは全てを得られた。

 魔法の力で。


 けれど、あやふやなままの魔法だったからこそ、どんな病気すらも治せた。


 事象が固定されるまでは、専門家が来るまでは、僕は万能な治療魔法師だった。

 そして僕は、落ちぶれた。


 そしてその時になって初めて分かった、鈴木さんの苦痛が。

 天と地をココの者に味合わされる苦痛、屈辱、憤り。


 当然だ、誰も信用したくなくなるのは当然なのに、僕は手を差し伸べなかった。

 あまつさえ野蛮だと疑い、メリッサさんを得たい気持ちを利用された。


 強者の余裕から、優位者であるとの錯覚から、完全に見誤っていた。

 先を考えなかった、その至る先を、何も。


《はぁ、死ぬかと思った》

『コレは温情での事なんです、だから全て自供して下さい』


《いやアイツにいきなり襲われたんだよ》

『嘘は3回までは見逃します。それで、何故、こんな事になったんですか』


《いやマジでいきなり、あのおっさんに》

『では、その前に何をしていましたか』


《ダンジョンの警備、ですけど》


『だけ、ですか、違反行為は何もしていませんか』


《ちょっとした事故で、けど助けを呼ぼうと思ってて》

『治せるって事は、その逆も出来るんですよ』


《ぅうっ、がっ》

『僕は人体の理屈を知らないまま、治療魔法師として名を馳せ落ちぶれたんですけど。捨てる神有れば拾う神有り、一緒に学んでくれた方が居たんです、人体の構造について』


《たす、けて》

『何故、嘘つきを助けなきゃいけないんですか?あの鈴木さんが殺す手前まで処分した者を、どうして救う必要が?あの人は滅多に怒ったりしないんですよ、だからこそ手も上げないし反論もしない、なのにアナタは四肢を欠損させられココへ運ばれた。教えて下さい、不誠実な罪人を生かす意味って何ですか?』


《俺は、いつか、必ず役に》

『僕や鈴木さんより役に立てます?もし役に立たなかったら、どう責任を取るんですか?』


《言う、言うから、取り敢えず、治して》

『治しても碌な案が出なかったら、また元に戻しますからね』


《分かった、言う、正直に言うから》

『期待していますよ、正直さと能力に』


 けれど、称号は暗殺者。

 渡辺さんも関与している筈、だからこそ、こうした者を警備に置く筈がない。


 となると答えは1つ。


 一生涯に1つだけ何もかもを変えられる能力を持つ加藤さんは、こんな愚か者に物騒な称号を与えるワケが無い。

 そして渡辺さん以外にも称号だけなら確認が出来る者が何人か居る、つまりはダブルチェックを通って警備となった、なら。


 暗殺者の称号は、ダンジョンで新たに得たモノ。


《アンタが殺して欲しい相手を》

『アナタです、死んで下さい』


《いや、マジでバレない様に》

『アナタ意外に殺したい相手なんて居ませんよ、だって、もう全てとっくに亡くなって。成程、転移者ですか、ダメですよココを中世だと思って甘く見てると、殆どの法整備は完了しているんですから』


《じゃあ、こんな拷問だのリンチは、人権侵がっ》

『人権って中世には無いんですよ。さ、問題です、子供の人権が全世界的に認められたのは中世以降ですが、近世、近代、現代のどれでしょうか。正解が言えたら無傷の無罪で返してあげますよ』


《そん、あ、じゃあ、近世》

『残念、現代でも未だに認められて無いんですよ。だってほら、親に決められた結婚に従わされている子供はアジア圏に居ますし』


《そんなの引っ掛けじゃ》

『ちゃんと知っていれば、考えていれば、分かる筈ですよ。大人は子供の人権が守られるべきだと言いつつも、今でも子供を餌に利益を貪っているって。あの現代でもその状態なのに、ココで叶うなんて思いますか?』


《力さえ》

『たった1人で世を動かせる、だなんて幼稚過ぎですよ、世界の歯車が1つなワケ無いじゃないですか。寧ろ逆に、乱数なんて気にする必要が無い単純な構造なら、逆にココはとっくの昔に壊滅状態の筈なんです、複合的な要素が無いって事は簡単なウイルスで壊滅してしまう。多様性って知ってますか、アレが無いと生物って進化せず絶滅するんですよ、容易くね』


《分かった、分かったから、だから》

『あ、それと愚かな人や有益で無い方もココでは絶滅しちゃうんですよ、より良い世界になる為に』


《そ、まっ》


 僕は、どちらかと言えば性善説派だったと思う。

 貧しいから愚かなんだ、豊かになり学びさえすれば、自然と民度は上がる筈だと。


 でも、富むと学ばなくなるんですよね、常に魚を与えられ続けたら捕ろうとはしなくなる。

 特に、この世界の今の状態では、ただ家畜に餌をやるのと同じ。


『ごめんねアニス、お待たせ』

「いえいえ、一応は分からせてあげようとはしてたんですよね、偉い」


『でも無理だったんだ、ごめんね、無駄な時間だったよ』

「無駄と確認出来たんですし良いじゃないですか、はい、切り替えて報告に行きましょう」


『そうだね、ありがとうアニス』

「いえいえ、はいはい、よしよし」


 どんなに学ばせても、結局は素養。

 愚か者の周りに居ても賢い者は居る、貧しくても真面目で誠実な者も居る。


 ダークエルフと人の間に生まれたアニス。

 優しくて賢くて明るい、そして真面目で誠実で、器も何もかもが大きい。


『少しだけ後になって君と出会えたのは、本当に幸運だと思う』

「はいはい、あまりイチャ付くとワタナヴェ様に嫌味を言われますよ?」


『愛情の裏返しだからね、偶には聞きたいんだ』

「不器用で器用な愛情のやり取りですね、不思議」


『君も不思議だよ、どうして僕に構ったのか』

「庇護欲ですよ、弱そうで可哀想だから構ってあげただけ、そしたらエッチが上手かった」


『負の遺産の筈なんだけどね』

「価値なんて人其々ですから、どうどう、よしよし」


《おい佐藤、またイチャ付いてんのか》

『あぁ、渡辺さん、報告しに来ました』

「スズキ様が連れて来た者についてです」


《おう、ありがとうアニス》

「いえいえ、では、召喚しますね」


 アニスの能力は死霊使い。

 未だに治療魔法師を続けている僕との相性は最高。


《で、お前は何をしてたんだ》

「正直に言えば、楽になれますよ」

《俺は、転移者だ、でも称号が農家で、どうしても力が欲しかった》

《あぁ、それでダンジョンに侵入したんだな》


《けど、本当に、本当に殺すつもりは無かったんだ》

「嘘はダメですよ、最悪は殺そうと思ってたって、分かるんですよ、私の能力」


《最初は、本当に最初は、殺すつもりは無かったんだ》

「でも、能力を得られた後、見付かった瞬間、殺そうと思った」


《すみません、すみません》


《そうか、次は池田さんの所だな》

「はーい」


 生き返らせるかどうか、その最終的な判断が行われるのは本人が持つ情報と、如何に善人であるか。

 少なくとも彼は、善人の性質は薄いらしい。


 多分、このまま殺処分決定だろう。

 仮にも人を、遠藤君の夫を殺したのだから。

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