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おそろい

「……ぇ……まり!」


「ぉ……て」


 遠くで私の名前が呼ばれてる。


「ねぇ! 妃葵!」


「ふにゃっ! あ、おはよ!」


 夢月に揺さぶられてはじめて瞼をゆっくり持ち上げる。

 びっくりしすぎて、自分でも恥ずかしいぐらい変な声を出してしまったことに後悔した。

 もう朝だと思うと憂鬱だが、これからのことを考えると元気になってくる。


「ねぇ、私も早起きしてたのに、妃葵」


「ごめーん。許してよ!」


 夢月はもう髪を梳かしていた。

 肩より少し長いぐらいの髪の毛をすっかりまとめ上げてしまっている。

 外出用のサラにもらった服にも着替えていて、準備ばっちりって感じ。

 私も急かされているような気がして、ベッドから飛び降り乱暴にヘアブラシを机からかっさらう。

 そして、洗面所に駆け込み着替え、髪を整える。

 夢月ほど髪も長くないから、おめかしといったような髪型は思いつかない。

 とりあえず、ハーフアップにしてみることにした。

 シュシュとかヘアピンとかあったらもっといいんだけどな……。


「ハーフアップって珍しいじゃん!」


 洗面所から出てくると、夢月こちらを向いてそういった。


「夢月のほうも珍しいくせに。ポニーテール以外はじめて見たよ」


「えぇ? そうだっけ。前、遊びに行ったときもじゃなかった?」


「言われてみればそんな気がするような…… ていうか、あのときのプリ写真かスマホ見たら確実にわかるんだけどなぁ〜」


 全然思い出せなかったが、もう朝食の時間になっていることに気づいた。

 昨日行った道順を覚えている。食堂まですぐなはず。

 部屋をでて鍵を閉める。

 ポケットがなかったので仕方なく手で持った。

 階段を駆け降りる。最後の三段はジャンプで時間短縮。

 早歩きで食堂まで行くと、まだ扉が開いていた。

 中に入ると、半分くらいの席に人がいた。

 だが、貴公子たちはいなかった。


「失礼します」


 と二人は言い、椅子に腰掛ける。

 しばらくすると、部屋に料理が運ばれてきた。

 昨日とは少し違うけど、やっぱり味は最高!

 夢月も美味しそうに食べている。


「おいしいね! 昨日より今日のほうが好きかも」


「えー? 昨日のスープのほうがおいしくなかった?」


 ゆっくり食べていたはずなのに、あっという間に皿は空っぽになっている。先日と同じように朝食は終わった。


「部屋もどろっか」


「うん!」


 食堂を後にする。

 食堂でエプロン姿のアイシャとリローゼに目が留まった。ぎりぎりまで仕事をしていてえらいと思ってしまう。

 部屋に戻って、もう一度鏡を覗き込む。

 前髪がうねってしまっている。濡らして、乾かしながらしたら整髪料がないとしてもうまくいくはず。


「夢月~? ドライヤーってあるかな」


「今までお風呂入った後、自然乾燥だったから分かんないな」


 二人だざっと探してみたが、見当たらなかった。

 もしかして、この世界にドライヤーない?


 ――早くドライヤーを誰か開発してください!!


「前髪気になる?」


「そうだね。アイシャちゃんとかリローゼちゃん、サラさんはちゃんと前髪きれいじゃん?」


「そうだけど、どうしよっか」


 結局、前髪事件は未解決のままになってしまった。アイシャに聞いてみてもいいかもしれない。


「いますか?」


 リローゼの澄み渡った声が扉の向こうから聞こえてくる。


「いこっか。今行きまーす!」


 待ちに待った時がやってきた。楽しみで仕方がない。期待のし過ぎもよくないと思うが、期待してしまう。

 ガチャリとドアノブを回すと音がなって戸が開く。


「うわー! やば! かわいい!」


「そんなことないですよ」


 部屋を出た途端声を上げたのは、夢月だ。アイシャとリローゼの服を見て驚いているようだ。

 アイシャはガーリーだけど爽やかきれいな感じの洋服。襟が大きいブラウスがかわいすぎる。あと、ふりふりでひざ丈のスカートもかわいい。

 リローゼはどちらかというとかっこいい感じ。無地のタンクトップに裾が長いだぼっとした上着を羽織っている。黒いミニスカートがコーデ全体の良さを引き出している。

 それに対すると、この服は味気がなさすぎる気もしてきてしまう。


「行きましょうか。最初は、アクセサリーショップでも行きませんか?」


「うんうん、いいと思う!」


「じゃあ行くわよ」


 リローゼとアイシャの二人を先頭にどんどん歩いていく。

 お屋敷を出ると、昨日の朝と同じ道まで出た。

 アクセサリーショップに行く途中もいろいろ話をした。

 今日は日が欠けるまでに仕事に帰られたらアイシャ達はいいそうだ。

 お金は、サラからもらっているとのことだった。


「もう着きますよ」


「そうね。お揃いとかどう?」


 おそろいというとなんだか特別感がある。知り合いではなく親友という感じがするのだ。


「いいと思うよ。どんなのがあるかな?」


「あ、ここがアクセサリーショップです。まぁ、中に入ってみましょう」


 ステンドグラス風の窓がついているドアをゆっくり開ける。

 中は、レトロな雰囲気だ。こじんまりしているが品揃えは良さそうに見える。例えば、ネックレス、バレッタなど。


「リローゼは何がいい?」


「ヒマリとユヅキが欲しいのでいいと思うよ。アイシャは何かあるの?」


「べつに」


 おそろいをどれにするか選んでいいと言われてしまった。これは責任重大かも。全員が身につけられるものが良い。ヘアゴムとかだとリローゼは使うことができないように思える。


「どうする?」


「それぞれ今つけてるアクセからは? っていうか、私はなんもつけてないけど」


 アイシャは、髪を結ぶ用のリボンと前髪をとめるためのヘアピン。リローゼは、黒いカチューシャ。


「夢月は何が良い?」


「うーん。ヘアピンかバレッタってとこかな」


「そうだね。個人的にはヘアピンが良いかも」


 悩んだ結果、柄も良いし使えそうなブローチになった。

 髪の長さが関係なく、アイシャとリローゼも仕事中につけられるという点が良かった。

 ブローチをとって開くと鏡になっている。銀色でかわいらしい花の模様が施されている。

 手に取ってみると、光り輝いて見える。

 アイシャ達からの承認も得て、これにすることとなった。

 会計をするためにカウンターへ行き、声をかける。


「すいません。これ四つください」


「これも、おねがい」


 アイシャは横からカウンターに置いた。ネックレスや、シュシュなどで五つぐらい。店員の若いお姉さんはひとつひとつ値段を見て計算していった。


「ほかに欲しいものはありませんか? このイニシャルが入ったネックレスなどどうですか?」


「とりあえず、これで大丈夫です」


 私から見ると、そのネックレスはとても魅力的に思えた。


「アイシャ! 妃葵と私はそのネックレス欲しいな」


 横から夢月が反射的に言葉を発する。


 ――もしかして、心通じてた!?


夢月の言った言葉に私は驚いてしまった。


「アイシャ、せっかくだし。いいんじゃない?」


「そう。分かったわ。これください」


 アイシャは仕方なくという感じだったが、買ってくれた。


「お名前は?」


「アイシャ、リローゼ、ヒマリ、ユヅキです」


「じゃあこの四種類ね」


 それぞれ色がちがっていてかわいい。


「三千です」


「はい」


 アイシャは素早く会計を済ませえた。お釣りをもらい、包装してくれるのを待った。

 それから外に出た。


「次はどこにいこうかしら?」

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