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はじめての体験っ!

「ごめんね。こんな場所まで呼んじゃって」


 にっこりとサラは言いながらこっちを振り向く。朝日にさらりとした紅い髪が輝く。


「ちょっとそこ、動かないでね。(わたくし)の能力が厄介だから」


 サラはゆっくりと目を開く。

 瞼の奥には、透き通った世界の全てが集まったような蒼があった。

 綺麗すぎる。でも、何とも言えない恐怖のような感情が湧き出てくる。

 見られていることへの恐怖。彼女の圧倒的な迫力。美。うつくしさ。少しばかりの恐怖。

 サラはその眼で日葵と夢月を交互に見る。


「うん。やっぱり!」


 眼を閉じて、こちらに近づく。


「あなた達にはきっとすっごい力があるって信じてたの。私よりも大きい魔力を持ってるみたいだから細かいとこまでは分かんないんだけど……」


 私はその言葉の意味を理解ができずにぽかんとする。

 先に我に帰ったのは夢月だった。


「それって私たちに何かいいことがあるんですか?あと、サラさんは目を使って何を見ていたんですか?」


 夢月は、今までの問いをすべてサラに投げつける。サラは「ん〜」と少し考えてから答えを引きづりだすと口をぱっと開いて話し始めた。


「さっきのは(わたくし)の能力なの。見た対象の魔力や持っている力なんかが分かる能力。もちろん、無機物にも魔力ってこもっているからいつも目を開けてると、普通に疲れちゃう。だからいつも、目を開けてないの」


 説明によると、魔力?の流れが分かるらしい。

 私は、そもそも魔力とかがあんまり分からないから凄いことなんだなぁという感想しか湧かない。


「最初のうちはまだ魔法が何かとか、魔力の流れ、とかがよく分からないと思うの。だからとりあえず魔法の練習をしましょうか。」


「見るよりやってみた方がいいでしょう?」とサラは言った。


「うーん、最初だし簡単でだれでもできそうな魔法...」


 一息おいて、思いついたように口を開く。


「そうだわ! 水を作り出す魔法なんかどう?」


 すっと手をサラは自分の前に出して意識を集中させる。

 すると、みるみるうちに水が手に湧き出てきた。

 片方の手の人差し指で、くるりと形を型をつくるとハートの形に水が変化した。まるで手品のように。


「うゎ、きれー」


 思わず、漏れる言葉。これが、簡単!? そんなはずはない。ないって信じたいっ!

 簡単って言ってるんだからできるはずだけど、失敗しちゃったらどうしよう……。


「さ、やってみましょうか! 手に意識を集中させるの、そのあとはぶゎーって感じイメージが大事! 体を動かすのとおんなじ感覚だからね」


 イメージ。感覚を研ぎ澄ませるようにするんだ。それもまた、イメージ。できる! そう信じる。水を吹き出せ。私の手だけを意識して、水をつくる。目をそっといつの間にかとじている。

 ――おねがい!

 気が付くと、目の前に広がる景色には水が滴っていた。


「うーん。最初からほめるってのは(わたくし)の趣味にそぐわないのだけど...」


「すごいです。ヒマリ様、ユヅキ様」


「今はまだまだですけれど、経験を積んだら私より強くなる、と思います」


 サラの言葉の後にアイシャは私のことを素直に褒めた。でも、顔が心の底から言ってる感じがしないんだけど!


「でも、あなた達息ぴったり! そこは褒めるわ」


 サラの話によると、二人は同じタイミングで水を噴射したという。

 魔力っていうもののコントロールがなっていないていう話だった。

 私のほうは目の前に大量の水を降らせ、夢月のほうは銃のような勢いをつけていたという。


「アイシャ、リローゼ。あなた達は模擬戦をやってください。(わたくし)が魔法をかけておきます。今の自分を知るのもいいことよ」


 小さなメイドはぺこりと頭を下げると少し離れたところに行き、戦い始めた。

 模擬戦と言っても私たちは魔法を使いこなせていないので水を打ったりするだけだ。


 それにしても二人とも動きが速い。くるりとからだをひねって技を交わしたり、死角を狙って攻撃をしたり。


「この戦いが終わったら自由時間にしますね。魔力を大量に消費するのは体に良くないので」


 サラは一言いうとこちらに向きなおった。


「あなたたちに足りないものは、アイシャも言ってたように経験と技術。それが足りたらいいんだけど... まぁ、それが足りていたら誰も困らないわよね」


 ふふと笑い、木の棒を手渡す。


「これはね、いわゆる杖ってやつ。それにこれ、効果を増幅させる特殊なものなの。使ってみて」


 ヒマリから、と言われて一歩前に歩み出る。サラがわたしのせなかのほうに来てそっと手をつかむ。


「自分のタイミングで撃って」


 優しく私の耳元で囁く。

 私は一回深呼吸をすると、杖の先に意識を集中させその場に止まらせられる様に今回は意識する。

 ――水をだす!

 パッと目を開くと、杖の先のほうを水がぐるぐると回っている。


「うん。よくできました!」


 同じように夢月も成功させた。

 サラが今日はここまでと言う。

 アイシャとリローゼに終わりを告げにサラは言いに行く。

 そして、彼女たちは少し疲れている様子を見せたが、私たちを見ると急にぴしっとした。


「このあとにはちゃーんとお勉強してもらいますからね。ご飯はその後ですよ」


 そうサラに言われるが、正直私は勉強があまり好きではない。

 夢月はそれなりには好きだと思うけど。

 ――この世界に来ても勉強なんてっ!


「ささ。はやく来てちょうだい」


 そんなことを考えていたら、サラに急かされてしまった。


 私より前を歩いていた、リローゼは口を開く。


「私たちはこれにて失礼します。ご指導ありがとうございます。また、お願いいたします」


 二人のメイドと別れた後、サラについていくと一つの部屋の前に出た。ドアがゆっくりと開く。

 部屋をぐるりと見まわすと、壁側には本棚が並んでていて、部屋の真ん中には木でできた椅子と机があった。

 窓から指す光がよりこの部屋の雰囲気を良くしているように感じさせる。


「じゃあ、ちょっと座って待っていて。ペンと何か書けるものを持ってくるから。あ、次は文字の勉強よ」


 私と夢月は椅子に座り、サラが来るのを待つ。

 ――本の背表紙の文字ぜんぜん分かんないんだけど!?

 少し不安もあるが、文字にも興味を持っているのだった。

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