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腹ごしらえ

 買い出しに行ってきて買った素材を、テキパキと調理するサラとメイド達。

 そんなことを思わせる匂いが食堂に伝わってくる。

 客人として扱われている私たちは料理をしなくてもいいらしい。

 それは料理だけではなく布団も自分で用意をしなくて良い。

 昨夜の料理もおいしく今日もそのような料理食べられると思うとうれしい。

 他にも、数人客人が見受けられる。

 他の人たちは私たちと違って、服がとても良い品質のものに見える。

 私にとったら生きている次元が違う感じだった。

 サラを先頭にワゴンに料理をのせたメイド達が食堂へと入ってきた。

 日本食というより洋食風の食べ物だった。お皿は三つで、一番大きいお皿はプレートのようになっていていろいろな種類の料理がのっている。

 コップのような皿には、スープ。

 最後の小さめの皿には、きれいな色のフルーツがのっていた。 


「うわぁ!今日もおいしそう」


 私が思わず声を漏らすとサラが口を開く。


「今日の料理はコックのティンゼルが作ったものです。ご賞味ください。良い一日になることを心からお祈りいたします。それでは、失礼します」


 メイド達が客人の席の横にグラスを持って行き飲み物を注いだ後、グラスを机に置く。  

 そうすると、貴公子が席から立ち言う。


「今日こうしてお集まりいただいたこと心から感謝いたします。そして、今日が平和でなによりです。

今日生きていて、あなた方と食卓を囲めたこと、この縁を大切に」


 貴公子が周りを見渡して再び口を開く。


 「この場に安らぎを」


 彼は座りグラスを掲げる。客人もそれに合わせてグラスを持つ。私たちもそれに習う。


 「乾杯」


 その合図に合わせて皆が乾杯し、食事を始める。


「みんな、楽にしてくれて構わない。この場を楽しんでほしい」


 貴公子がそう言うと小さく語り合う者がでてきた。


「今日もおいしそうだね、夢月」


「うん私、異世界で妃葵と食べれるだけで幸せなのにこんなにおいしい料理食べれたらもっと嬉しい。生きていて良かった」


 楽しく会話をしながら、朝ご飯を食べる。あっという間に食べ終わってしまう。どれも味に深みがあって美味しかった。

 すべての人が料理を食べ終わった頃、貴公子が言葉を発する。


「今日の料理はどうだっただろうか? みんなにとってこの時間が良いものだと思ってくれていたら嬉しい。それでは、これにて解散です」


 ギィと木がこすれる音がして戸が開かれる。


 「ん?」


 夢月がふと振り返る。そんな彼女に私はふと声をかける。


「どしたの?」


「サラさんが呼んでる、んだけど」


 夢月の視線の先にはサラが笑顔でこちらを見て手を左右に振っている。


「ユヅキちゃんと、ヒマリちゃんにいろんなこと教えますね。中庭に来てくださる?

アイシャに案内してもらって」


 優しく微笑みかけながら語りかけられる。


「はい」


 二人とも返事をして食堂を後にする。


 私たちの部屋のまえで、アイシャとリローゼがお行儀よく立っていた。

 リローゼは静かに口を開いて、


「お待ちしておりました。服をお着替えくださいませ。着替えられましたらお呼びください。こちらでお待ちしております」


 アイシャが戸をゆっくりと開けてくれる。ペコっとお辞儀をして彼女は戸を閉める。

――そういえば敬語、外して貰えなかったな


 私たち仲良くなれるのかなぁ。同じ年だし仲良くできたら嬉しいんだけど。

 渡された服は高そうで着るのは簡単にできた。

 着心地も最高で、動きやすくなっている。

 センスもなかなかのものだ。

 フリフリのレースがついた襟のシャツと、おとなしい色のキュロットだ。

 ――何円するんだろう……。

 考えただけでゾッとする。


「着替え終わりましたー!」


 部屋の外に聞こえる声でアイシャを呼ぶ。ガチャリとドアが開く。


「案内させていただきますね。こちらへどうぞ。わたくしたちもご一緒させていただきます。お願いいたします」


 いつも冷淡な構えていて、感情が見当たらない感じなのがこの二人の特徴だ。静かすぎる。

 ふんわりと彼女たちはスカートのすそを揺らさせながら歩を進める。メイドの二人を先頭に、館をいろんな方向に行く。

 ふと、止まる。


「わたくしたちの武器をとってきますね。少々お待ちくださいませ」


「は、はい」


 少し時間がたつと中から、小柄な武器を持って出てきた。杖というよなものだ。


「すぐそこでございますよ。中庭は」


 人差し指で廊下のさきを指す。無言で歩き始めた。広く、長い廊下にはコツコツと靴の音が響く。


「つきました。ここでございます」


 そう言ってドアをそっと開く。


 目の前には洋風の整備が行き届いた庭が広がっていた。その庭の中心には、サラが立っていた。


「ごめんね。こんな場所まで呼んじゃって」

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