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プロローグ
深緑と静寂が包む森の中
私はひとり歩いていた
目指すべき場所もなく
かえるべき場所もない
何ももたない私
それでも足を進める
それしか出来ることがなかった
ふと目に留まるものがあった
開けた空間にぽつりとある大樹
その根元
血を流している女がいた
私は近づき様子を伺う
しかし女は既に息絶えていた
私はそこで女の腕に守られるように抱かれた赤子に気づく
私はその赤子を抱き上げる
穏やかな寝息をたてる赤子
暖かな体温が伝わってくる
この惨劇に気づいていないのだろう
ふと閉ざされていた赤子の瞳が開く
それは鮮やかな黄金色
私は赤子に《ルカ》と名付けた