図書館の土竜 【月夜譚No.134】
〝図書館の土竜〟――それが彼女の二つ名だ。
常に図書館の中におり、毎日テーブルの上に本を積み上げては順にそれを読んでいく。声をかけても言葉少なで最小限の会話しかなく、その内面は謎に包まれたままだ。
陽に当たらない肌は透明感のある白色、長い髪は白金で、全体的に色素が薄い。それ故に、まるで幻のようにも見える。
だが、彼女は実際にそこにいて、ただひたすらに本を読み漁る。
何の為に本を読むのか、何故図書館にいるのか――噂ではあれこれと言われてはいるが、きっとそのどれも違うのだろう。真相を知るのは、彼女だけだ。
彼女が本を読んでいる最中は、何人もそれを邪魔してはならないような雰囲気を纏い、足音さえも憚られる。
静かな館内にページを捲る音だけが響く。青い瞳が文字を追う。
ただそれだけの時間が、過ぎていく。