ねえ、このパン美味しくない? 後編
「おら、大人しくしやがれっ!」
一番手は悪漢B。
悪漢Bは両手を広げながら駆け寄ってきた。
殴る蹴ると言った姿勢ではなく、捕まえようとしているらしい。
売り払おうとか言っていたから、まあそんなもんか……私って、見た目はただのロリだし。
「よっと」
「へ?」
私は悪漢Bの腕を掴むと、反対側へと投げ飛ばす。
もちろん、あまり強く投げすぎるとお星さまになってしまうので、あくまで受け流すように。
悪漢Bはどしんと鈍い音を立てて、地面へと背中から落ちていった。頭さえ打たなければ、死にはしないだろう。
「めんどくさいから、二人一気にきなよ」
「この餓鬼ッ………!」
悪漢AとZは、懐からナイフを取り出して、私に向かってきた。
幼女相手になにを考えているんだ。これはお仕置きが必要だろう。
「服に穴開いちゃうから、それはダメだぜー?」
私は男達のナイフを躱しながら、その間をすり抜ける。
ついでに、すれ違いざまにナイフをつまんで少しだけ力を加えて、ぺきんと折ってやった。
「こ、こいつ…………!」
男達はその手に持った折れたナイフと私を交互に見やる。
「まだやるかい?」
「ぐっ…………」
悪漢達は苦虫をつぶしたような顔を浮かべて、
「「「お、憶えてやがれー!」」」
「はっはっは。定番の三下セリフをありがとよー」
悪漢Bを拾い上げると、そのまま肩を担いで逃げ去っていった。
「うぇ、手が汚れた…………『クリーン』」
私は男たちに触れた手に浄化魔法をかけながら、きょろきょろとあたりを見渡した。
あまり遠くに逃げられていると困ったもので、探すのも大変だ。
人探しの魔法なんて、私は知らないし。
「おりょ。お姉さん、そんなところに座ってたら、服が汚れちゃうぜ?」
幸いにもお姉さんは逃げていなかったらしく、少し離れたところでぺたりと座っていた。腰でも抜かしたのだろうか。
「え、あ…………」
「あらま、困ったなぁ」
お姉さんはぽかんとした表情を浮かべて、私を指さしたまま動かない。
どうやら怖がらせてしまったようだ。
「わたし は 悪いようじょ じゃないよ」
「っ……………」
一先ず警戒心を解くべく、コミュニケーションを取ろうと試みるけど、やっぱり動く様子はない。
まあ、人間のお姉さんからしてみれば、10歳くらいのロリが大の大人三人を撃退したのだ。
驚くのも無理はないのかもしれない。
私はお姉さんを立ち上がらせようと近づいて、手を差し伸べた。
「ひとまず怪我はない? よかったら家まで―――――」
「か、かわいい…………」
「――――送るよ………って、え?」
「かわいいーーーー!!!!!」
私は差し出した手を引っ張られて、お姉さんの胸へとダイブ。
かなり良いモノをお持ちだったようで、ぽふんっと音を鳴らしながら、私はその胸に顔をうずめる形となった。
「むぐーっ! むぐーっ!」
「ああ、もう、なんてかわいいのかしら~! ね、ね、怪我はない? どこからきたの~!?」
い、息が……息ができないっ。
無理やり引きはがそうものなら、お姉さんを壊してしまいかねない。
どうにもできないまま、私は空気を求めてもがき続ける。
「むっ…………ぐっ…………」
そして、何もできないまま。
私は人間のお姉さんに絞め落とされたのだった。
にんげんの 大きい胸は 狂気です(字余り)。
この章はあと二話ほど続くんぢゃ。
モチベあがるのでブクマ評価暮れると嬉しいです。