ねえ、おいしい物食べたい
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さて、困った。
魔王城に備蓄されていた食料は底をつき、絶体絶命だ。
備蓄管理はすべてリムルに任せていたから、どこから仕入れているのかなど分からない。
そもそも、仕入れること自体がめんどくさい。
自分で採りに行くのもめんどくさい。
「というか、飽きた…………」
どうやら私の舌はリムルの魔の手によって肥えさせられてしまったようで、この一か月、リムルの手料理が食べられないことが苦痛でしかなかった。
もうこんな食生活は勘弁願いたい。
ただ焼いただけの肉はこりごりだ。
まともなご飯が食べたい。
確かに私は怠惰の魔王だが、睡眠欲しかないわけではない。
睡眠欲が100とするなら、食欲は60くらいはある。それ以外はしらん。
「というわけで、どうしたらいいかな、暴食」
「帰れ」
私は暴食の魔王の居城へとやって来ていた。
暴食の魔王ゲルゲルは元来スライムだけれど、今は緑髪の少女の姿を取って、王座に座りながら私を見下ろしている。
偉そうにして、何が楽しいんだろう。
まあ、きっと私が魔王として特殊なのだろうと、勝手に納得しておく。
「この私がわざわざ出向いてあげたんだから、質問くらい答えてくれてもいいじゃん」
「質問しにきただけなら、俺様の部下をボコる必要なかっただろ!?」
周りにはリザードマンの兵士達がぼろ雑巾のように倒れていた。
やったのは私だけど。
床はいくつものクレーターで破壊されているし―――やったのは私だけど―――、ゲルゲルの後ろの壁は非常に通気性がよくなっている―――やったのは私だけど―――。
うん。
久々に暴れて手加減を間違えた。
誰も殺してはないから許してほしい。
そもそも、
「そっちが勝手に襲ってきたんだよ。私は悪くなーい」
風船のような脆い結界を破った程度で攻撃してくるこいつらが悪い。私は悪くない。正当防衛だ。
「クソ……この腫物魔王が」
「何その言い草、ひどくない?」
「うるせえ! 大体、大魔王様から授かった権能は同列のはずなのに、なんでおめえが大魔王様並みの魔力を持ってんだよ!! 不公平じゃねえか!!!!!」
「そんなこといわれてもなー」
ただ寝ていただけで、修行とかクソ面倒なことはやったことがないのだから、分からない。生まれつきとしか言えない。
むしろ他の魔王が弱すぎるだけだろう。
「で、何かいいアイデアはないかな」
「知るか。つーか、そもそもおめえのとこの従者はどうしたんだよ。あいつは料理ができたはずだろ」
「家出しちゃった」
「んじゃ、もう知らん」
「…………ボコるよ?」
「っ…………」
私が軽ーく魔力を放出すると、ゲルゲルはびくりと肩を震わせた。
スライムであるゲルゲルを殴ったところで、細胞一つから無限に再生できるのだから、そんなに怖がることもないだろうに。
「…………なら、人間の街にいけよ」
苦虫を噛んだように顔を歪ませて、ゲルゲルが言った。
「人間の街?」
「魔族がまともな料理を作れるわけねえだろ」
魔族は基本的に生肉だったり、人間の血だったり、精気だったりを主食とする種族が多い。
そのせいか、食文化レベルは人間に比べて異常なまでに低いのだ。
リムルという貴重な従者を失ってしまった今、まともなご飯を食べたいなら、確かに人間の街に行かざるを得ないかもしれない。
それに、人間の食事は美味いとリムルに聞いたこともある。
彼女が言うのであれば、それは確かなことだろう。期待するに十分な要素だ。
「じゃあ、行ってみようかなぁ」
モチベになるのでブクマ評価してくれると嬉しいです。