6月8日(土) 文化祭二日目・午前
二日目。一般公開につき保護者、地元の方々、OB、別の学校の生徒から、果ては受験を希望している中学生までが挙ってやって来ている。
そんな盛況でいつも以上に人がごった返してる中、私はそらと二人で校舎を練り歩いていた。
お化け屋敷や脱出ゲーム、よく分からない展示物にミニゲーム屋さんなど、メジャーなものからユニークな出し物までそれぞれのクラスの個性を出しつつ、お客さんも運営する生徒も楽しんでいるようだ。
一通り見て回り、興味深そうな内容がある度に私が手を引いて体験していればすぐに時間は過ぎ去っていく。
スマホの時計は正午を示そうとしていた。
「そろそろ何か食べない? 出店もいっぱいあるしさ」
「そうだな。さーて、今年はどんな出店があるのか……」
校舎の外、いつもなら先生たちの駐車スペースとなっている場所へと赴けば、現三年生の全クラス分――十五店舗ものお店が立ち並んでいた。
ご飯ものであるロコモコ屋から、甘いもの系のチュロス、王道の焼き鳥屋に、変わり種であるアイストッピングの飲み物屋など多種多様。
被りのない出店はまさに選り取りみどりで、何にしようか悩んでしまう。
「んー…………そらは決まった?」
「チュロスとワッフル……冷やしぜんざいも美味そうだな」
「相変わらず、甘いものが好きだね」
ガッツリとしたものが何もない。
育ち盛りの高校生がそれでどうなんだ、と思わなくもないけど、私が言う話でもないので黙っておく。
「安心しろ、ちゃんと焼き鳥も食べる」
何を安心しろと言うのだろうか。
むしろ、おかずやデザート系ばかりで主食がないという点で心配しかない。
「ていうか、お米好きなのに食べなくていいの?」
毎日一食以上ご飯を食べなきゃ気が済まない奴がそれでいいのか、と指摘してあげると然も何も分かっていないといった感じで肩を竦められる。
……………………なんかムカつく。
「俺が好きなのはあくまでも白米だ。丼だと、こう……なんか萎える」
「じゃあもう、お米だけ買えば? ロコモコ丼で三百円なんだし、百円も払えばくれるんじゃない?」
面倒くさくなりそう投げやりに提案すれば、何故か思案顔の幼馴染。
「……………………いけるかな?」
「ごめん……冗談だから止めて」
どれだけご飯食べたいのさ……。
はぁ……私がロコモコ丼食べてこよ。
別行動を決め、しばらく並んだ末に購入した商品。
その紙皿と割り箸を持ってキョロキョロと見渡し、右手にチュロス・左手にワッフルを抱えた明らかに見た目とギャップのある少年の元へと駆け寄る。
「お待たせ」
「おー……いや、別にだけどな」
よくよく見れば、腕には串の持ち手がはみ出たビニール袋も下げられており、言ってた焼き鳥も一緒に買ったのだろう。
「じゃあ、はい。これあげる」
ロコモコ丼の具材、そしてソースのかかったお米だけを食べてあげ、残った純白米を私は渡してあげた。
「ん…………? おー、さんきゅう」
逆にそらが買った品物をそれぞれ一口ずつ貰えば、お腹の程は良い感じに膨れだす。
時間を見ても集合の頃合いで丁度良い。
「そろそろ戻ろっか」
声を掛けた、そんな折だ。
「だな。最後に冷やしぜんざいでもすすりながら帰……ろう……――」
人間万事塞翁が馬。禍福は糾える縄の如し。
得てしてこういう時に、間の悪さ・不幸というのはやってくる。
唐突に言葉をなくし、固まるそら。何事か、とその視線を追ってみれば理由はすぐに分かった。
私たちの捨てた過去。関わりたくもない汚点。
その象徴とも呼ぶべき、中学の同級生である。
しかも、最悪なことに目は既に合っていた。
まさに蛇に睨まれた蛙。
「おい、かなた。お前の方が出番早いだろ? 先に行って準備してろ」
「でも…………っ!」
「大丈夫だって、俺も自分の登場シーンまでには追いつく。主役がいなきゃ、始まんないぞ?」
そう語るそらの表情は今まで見たこともないもので――。
「……………………分かった」
私は踵を返し、一人講堂へと走った。
♦ ♦ ♦
「――あっ、かなちゃん。もう、ギリギリだよー」
「はぁ、はぁ…………ごめん」
走った距離はせいぜいが数百メートル。
だというのに、運動不足が祟り息がかなり乱れていた。
「あれ…………倉敷さん、そらは一緒じゃないのか?」
畔上くんも集まり、そして一人メンバーが欠けていることを指摘してくる。
「うん、実は――」
そこで私は言葉を切る。
何て説明するのが良いのだろうか?
私たちにとって不都合な過去を暴くことにもなるため、全部をありのままに話すわけにはいかない。
「――他校の生徒に絡まれちゃって、出番の早い私だけを先に行かせてくれたの」
「えっ……!」
「マジかよ…………」
間違いではない。
見てはいないけれど、アイツらがそらに会えばほぼ間違いなくそういう事態になることは、過去の経験から知ってる。
「そう、だから手の空いてる人で……」
「だな、探すべきだ。そらと最後に別れた場所は?」
「出店のところ」
テキパキと状況判断をし、今後の動きを決めていく畔上くん。
「菊池さんは、一緒に倉敷さんの準備を。俺は裏で手の空いてる奴らと……あと先生にも事情を話して探しに行ってくる」
「わ、分かった……!」
私は詩音に引っ張られ、奥に連れていかれるけれどその前に言っておきたいことがあった。
「畔上くん、そらをお願い」
「任せろ、親友のピンチなんだからな」
こんな大事な、楽しいはずの日にも拘わらず事態はあらぬ方向へと収束しようとしている。
それをただ、私は祈るばかりで何もできない。
どうか願わくば、これ以上は何も起きないで欲しいと――舞台裏で密かに思った。
タイトル通り、二話構成です。
ただし、投稿時間が未定であり今日中に必ず投稿するとしか……。
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