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彼と彼女の365日  作者: 如月ゆう
April
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4月18日(木) リサーチ・フォー・リサーチ

 今日は平日。

 けれど、先々週の土曜日に行われた入学式の代休とかで全学年が振り替え休日を得ていた。


 なので、私は詩音と買い物をすべくこうしてその到着を待っている。


 場所は博多駅に併設された大型施設。

 有名なお店から映画館、フードコートと選り取りみどりで揃っており、買い物にはうってつけの場所だ。


「かなちゃん、お待たせー」


 その二階――バスターミナルとを繋ぐ通路の一角で待ちぼうけていた私に声が掛かる。

 目を向ければ、そこには件の待ち合わせ相手がトテトテと小走りで駆けてくる姿が。


「詩音、おはよー」


 その返事に答えるように、私もまた軽く手を振った。

 今日の彼女の装いは無地のシャツにドット柄のフリルスカート。ワンポイントでブレスレットが付けられ、肩から掛けている小さめのショルダーバッグのおかげで大人っぽさが出ている。

 また、腰にはベルトが巻かれており、しっかりと今年のトレンドを取り入れていた。


 Tシャツにデニムのショートパンツ、その下に黒タイツを履いて上着を引っ掛けただけの私とは違うな……。


「じゃあ、行こっか!」


「……ん」


 そんなことを考えていると、早速とばかりに詩音は促してくる。

 その言葉に頷き、私たちは施設の中へと入っていった。



 ♦ ♦ ♦



「でも、珍しいね。かなちゃんが買い物に誘ってくるだなんて」


「……ん、そう? たまにはいいかなって思って」


「うん、私も嬉しいよ! ――あっ、このスカート可愛い! ちょっと見ていい?」


 良いアイテムを見つけたようで店先に駆けていく親友。

 そんな姿を見ている私の内心はバクバクで仕方がなかった。


 言われた通り、私が買い物に誘うことなど滅多にない。

 嫌いという訳ではないのだが、どうにも『面倒』という言葉が先に生まれてしまう。


 それに、私の家はこの博多駅に近く自転車で通える距離なのだが、詩音はそうではない。

 高校生的にはその電車賃もバカにならず、安易に誘えないというのが現状であった。


 そんな私がなぜ今回、こんな催しを企画したのか。

 それは、とある目的のため。


「――ねぇねぇ、これなんてどうかな?」


 そんな問いに意識が戻る。

 見てみれば、その手には花柄のスカートが握られていた。


「うん、可愛いと思う。柄物もトレンドだし、詩音の雰囲気と合いそう」


「そう……かな? えへへー……翔真くんも好きだといいな……」


「それは……ちょっと分かんないなぁ…………」


 そらとこれまでに過ごして気付いたことの一つではあるけど、男女での価値観や評価はこれでもかと言うほどに違う。

 もちろん、各々の好みというのも多分にあるんだろうけど、基本的には男性が思う可愛いを私たちは共感できない。


 だから、実際に畔上くんに響くかは正直言って予想もつかない。

 …………そらだったら、分かるんだけどね。


「――こっちのロングカーディガンも可愛いなー。色も合わせやすいし、年中着回せるよね」


「あっ、うん……それはいいかも……」


 素で返事をしてしまうくらいには本当に可愛かった。

 スカートよりもパンツを好んで履く私だが、そんなスタイルでも合うであろうアイテムだ。


 お値段は……うむむ、買えは――する。

 ……………………保留で。


「あー……でも、私はワンピースとか多いからロングは厳しいな。…………そういえば、かなちゃんがスカート履いてるのって制服以外で見たことないよね」


 持っていた商品を元の場所に戻すと、話題は私へと向いた。


「私、肌を見せるのって嫌いだから」


「えー、でもロングスカートとか」


「履けなくはない……んだけどね。私には似合わないよ」


「そんなことないって。今度私のを貸してあげるから、ね?」


 まぁ、家で履くだけなら別にいいけど……。

 そう了承すると、詩音は嬉しそうに思案をし始めた。


 えっと……一着だけ、だよね?


「ねぇ、詩音。こっちのアクセサリーなんかはどう?」


 早めに話は切り上げておこう。

 そろそろ、目的も果たしたいところだし。


「あっ、可愛いー! ヘアアクセサリーかぁ」


 私が示した場所は小物エリア。

 大小様々な商品が並べられており、お店のセンスの良さを感じた。


「うん、詩音は髪長いし一つ持っててもいいんじゃないかなって……。私的には――」


「あっ、待って! せっかくなら、二人で同時に自分が可愛いと思うものを選んでみよう?」


「了解」


 二人で顔を見合わせると、掛け声をかける。


『いっせーのーが、せっ!』


 同時に指差したものは、全くおなじ一つの髪留め。

 青色を基調としたゴムタイプで、ブレスレットとして普段使いもできるかなり凝った仕様だった。


 どちら使いでも変に見えないデザインのバランスも素晴らしい。

 私たちの意見が合うのも頷けるというものだろう。


「値段は……にせんッ――! …………とてもじゃないけど、ヘアアクセにこれは出せないよぉ」


 私も値札を見てビックリ。

 なんと英世さんが二人も旅立つような金額だった。


 確かに、日常的に学生が買えるような代物ではない。


「残念だけど、見送りだね」


「だねー」


 時計を見れば割といい時間。

 とりあえず、このままどこかでお昼でも食べよう。


 こうして目的を達成した私は、午後の散策をのんびりと行うことができたのであった。

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