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彼と彼女の365日  作者: 如月ゆう
September
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9月12日(木) 三枝先生の日常

「ん…………ん〜……!」


 秋も深まり、日の入りが少し早くなってきたと感じる時分。

 座りっぱなしの仕事で凝り固まった身体をほぐすためにグッと背伸びをした私は、そんな声を上げる。


 少しはしたないとは思いながらも、私以外には誰もいない職員室という珍しい機会に、ついつい気持ちが緩んでしまったのかもしれない。


 とはいえ、現在時刻は午後の七時。

 まだまだ教師が帰る時間としては早く、部活動の顧問だったり、他教室で会議をしたりとが偶然に重なっておきた産物なのだけど。


 むしろ、どこの部活もそろそろ終わる頃合いなので、これから明日の用意――という先生も多いはず。


 ……かくいう私も、そうですし。


 というわけで仕事、仕事。

 手元へと視線を戻せば、まだ教師コメントの書き終えられていない今日の学級日誌が開かれた状態で置かれていました。


 毎日、クラスの生徒の持ち回りで記録されるこの日誌。今日は学級委員でもある菊池さんの担当のようです。


 生真面目な彼女らしく、綺麗な字で要点だけを分かりやすくまとめたソレは、お手本とも呼ぶべき出来栄え。


「……順番的に明日はかなたさんですか。あの子にもこれくらいの文量は期待したいのですけど……」


 難しいでしょうね、と私は苦笑い。

 そらくんたち以外に口数の少ない彼女ですが、それは文章であっても変わりません。


「さて、あと残っているのは――」


 コメントをつけ終え、また一つ仕事を片付けたら、右隣の完了済みスペースへ日誌を退避させる。

 そうして、やるべき仕事内容をまとめた付箋にチェックを入れ、他の残ったものを確認した。


「――七時半から会議で、授業の準備……あとは、テスト作成ですか」


 再来週に控えた学期末テスト。

 その準備をそろそろ始めておかなければ、仕事量的に後々辛くなるでしょう。また、先に作っておけば授業進行の目安にもなります。


 なので、手を付けようとは思うのですが――。


「…………これは、帰るのが遅くなりそうですね」


 ソっと私はため息を吐きました。

 ゆうくんに連絡しなくてないけません。


 と、そんな折、ポケットのスマホが震えます。


 自動で映る画面、その通知欄にはメッセージアプリのマークがありました。

 しかも、タイミングのいいことに送り主は件の彼。


『ゆうちゃん、今日は何時に帰ってくる?』


「ふふ……さすがゆうくん。内容まで完璧」


 まるでテレパシーで繋がっているかのような間の良さに、少し嬉しく思いながら文字を入力していきます。


「『ごめん、いつもより遅くなる』――っと」


 送信ボタンをタップすれば、文字はアプリ上へと流れ、すぐに既読の文字が。


『そっか……頑張ってね』


 そんな文字とともに、熊さんがグッと拳を握るスタンプが送られ、励まされました。


 けれど、それだけで私のやる気は十二分。

 今日は三分の一まで作れたら御の字だと考えていましたが、これなら全部作り終えられるかもしれません。


「…………頑張りましょうか」


 まずは、もうすぐ始まる会議から。

 それまで、頭の中で問題の構造を練りつながら、私は時間と人を待つ。

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