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彼と彼女の365日  作者: 如月ゆう
August
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8月20日(火) 新生・バドミントン部

 補習授業が午前中で終われば、お昼を食べて午後からは部活動。

 そんな日々が舞い戻る中で、しかし、変わったことももちろんある。


 まだまだ暑く、熱気のこもる体育館へとドリンクやタオルを運んできた私は、部員の僅かな人数変化を感じて、そう思った。


 とはいっても、別に誰かが辞めたわけじゃない。

 夏の最後の大会――それを終えた三年生の方々が引退し、受験のために来なくなったからである。


 そして、それは私たちマネージャーに対しても言えることであり、リーダーの湊先輩、データ係の香織先輩、お仕事の指導をしてくれていた結菜先輩もまた部から去ってしまった。


 そのため、二年生である私と美優、一年生の楓ちゃんと栞菜ちゃんの合わせて四人で仕事を回す必要があり、大忙しだ。


「……よし、それじゃあ休憩!」


『うぃーっす!』


 新しく部長となった翔真くんが掛け声をかけると、部員の皆は返事をする。


 だけど、そのタイミングに合わせて私が差し入れをしに動くことはできなかった。

 今や私も、マネージャーのリーダーを任されている立場。以前までなら自分の仕事を終わらせて駆けつけられたけど、そうではなく、他の子に指示を出さなければならない。


 遠くでは、今日も部活に訪れていたかなちゃんが、甲斐甲斐しく蔵敷くんの世話を焼いている。

 かと思えば、ドリンクとタオルを渡しただけで終わり、翔真くんと談笑している蔵敷くんの膝に頭を乗せて、勝手にお休みムード――。


 ――って、えぇ!?

 か、かなちゃん……! 寝転んだまま膝を曲げたら、パンツが見えちゃ…………あっ、良かった……。


 先に気付いた蔵敷くんが、彼女の膝を叩いて何かを言っていた。

 多分「女の子なんだから気を付けろ」とか、そんな感じかな……?


「って、そうだよ。ボーッとしてる暇はないんだった」


 やるべきことを思い出し、すぐさま踵を返す。


 前までなら私もいた、あの輪。

 そこに、私だけが混ざれていないことを少し気にしながら……。



 ♦ ♦ ♦



 一・二年生で構成された、私たち新生バドミントン部。

 その初日の練習が終了し、細々としたマネージャーの仕事をも片付けた私は帰宅をする。


 ともすれば、部室棟からの帰り道――校門を通り過ぎようとした時に、声を掛けられた。


「詩音さん、お疲れ様。居残って、大変だったんじゃない?」


 その正体は翔真くん。

 いつの間にか恒例となっていた一緒の下校だけど、遅くなってしまった今日も律儀に待ってくれていたみたい。


「う、うぅん……全然平気。その……待っててくれて、ありがとう」


「それこそ、気にしなくていいよ。用事もあったしね」


 その優しさがまた素敵で、私の心は有頂天だった。

 二人きり、一緒に歩いて会話する――それだけで、今日の苦労は吹っ飛んじゃう。


「……というか、マネージャーは大丈夫なの? さっきも言った通り、居残ってたみたいだけど……かなり忙しいんじゃない?」


 そう心配そうに翔真くんは語りかけてくれる。


「うん、確かに忙しいけど……でも、翔真くんが思ってるほどの問題はないよ」


 確かに今まで七人だったことを四人でやるのは大変だけど、順番と分担の工夫をすれば手が回らないということはなかった。

 だから、彼が考えているようなマネージャーの増員は今のところ必要ないと思う。


「あっ……それより、ドリンク類を配れなくてごめんね。指示出しとか他の仕事があったから、当分は勝手に部員の皆に取ってもらうことになっちゃうと思う……」


「いや、別に謝らなくてもいいよ。むしろ、今までは少しマネージャーの皆に頼りすぎてた部分もあったと思うしね。自分たちでできることは、自分たちでやらないと」


 …………優しい。

 明日、このことを美優や楓ちゃんに話したら、きっとやる気を出してくれると思う。もちろん、私もだけど。


「…………ていうか、それだけで三人分の働きができる詩音さんが凄いよ……」


「……………………? 翔真くん、何か言った?」


「いや、何でもないよ」


 考えに夢中になってて、あまり聞いていなかった。

 ちゃんと、翔真くんの話は聞かなきゃ。部活で話せなかった分を取り戻すためにも。


「それはそうと、先輩たちの引退試合とお疲れ会についてなんだけど――」


「あっ、うん……それはね――」


 夕日は沈み、周りに在する建物の隙間から西日が直接差し込んでくる。

 カラカラと鳴る翔真くんの自転車の音と、時折通る車の走行音を背景音楽に、二人並んで歩きながら。


 いつもの分かれ道まで、ずっと、飽きることなく、私たちは話をしていた。

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