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彼と彼女の365日  作者: 如月ゆう
April
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4月13日(土) 土曜講座①

 割と楽しかった学校行事を終え、今日は土曜日。

 自称進学校であり、その中でも難関国公立大学を目指す進学・特待クラスな我らは、土曜日だろうが高い頻度でこうして通わなければならない。


 しかし、平時の学校とは違いSHR(ショートホームルーム)はないため、授業が始まる九時までに着席しておけば何の問題もなかった。


「ほら、頑張れ。段差に躓くなよ?」


「んー? ぅあ……!」


 寝ぼけまなこを擦るかなたの手を引っ張り、駅のエスカレーターへとエスコートする。

 その際、段差が生じるため声を掛けたのだが聞いちゃいない。危うく転びそうになったので、抱きとめるようにしてその体を支えた。


「あ――ぶねぇ……。言わんこっちゃない、早よ起きろ」


 昨日の疲れが残っているのだろう。

 コイツ自身、中学の頃から運動らしい運動はしていないから体力がないしな。


 けれど、センスだけはあるようで、断じて運動ができないわけではない。

 一年生の時、体育の授業でその凄まじい運動神経を披露し、一時期勧誘が殺到したほどだし……。


 そして、そんなかなたは現在、赤子の如く俺の腕の中に収まり「あったかー……」などとほざいているため、一発叩いといてやる。


「…………いたっ……」


 涙目で、見上げるように抗議の視線を向けられた。

 だが、残念だな。そんなに強く叩いたつもりはない。大方、あくびで目が潤んでいるだけだろう。


「起きたか? 起きたな。別に引っ付いていてもいいが、少しくらいは周りに気を付けろよ」


「ういー……」


 ぼんやりとし、それでいて何気にそそっかしい幼馴染を連れて、今日も俺は通学する。



 ♦ ♦ ♦



 そして、教室へと到着。

 駅からここまで所要時間はものの数分であるが、それでも歩くというのはいい運動になったのだろう。


 先程までのだらけきった姿は鳴りをひそめ、普段通りの通常営業へと移行していた。

 ……もしくは、学校という外の場に意識を切りかえただけかもしれないけど。


「おはよーっす」


「はよー」


 ドアを開け中へと入った俺たちは、自席に鞄を置き、近場の友人たちに挨拶をする。


「よっす、そらに倉敷さん」


「おはよう」


 授業開始まで十五分。

 余裕を持って登校してきたはずなのだが……やっぱり自転車・徒歩組は早いな。


 敢えて早く来ない限り、この二人には勝てそうにない。

 …………いや、別に勝負ってわけでもないんだけどな。


「にしても、面倒だよなー。土曜まで学校があるなんて」


 朝から早々に愚痴をこぼせば、翔真は苦笑を浮かべてこう返す。


「それ、毎回言ってるよな。どうせ午後から部活なんだし、どっちにしてもだろ」


「いいや、違うね。俺は授業も部活もそんなに嫌いじゃない。ただ、学校に来たくないだけだ」


「いや、両方とも学校に来なきゃできないぞ。というか、学校からその二つを取ったら、何も残らないよ」


 そんな俺の言葉を冗談と受け取ったのか、笑われてしまった。


 割と本気なんだけどなぁ……。通信教育とか楽でいいと思う。

 まぁ、そんなことをすれば、絶対に勉強しなくなるだろうけど……。


 結局、人間は多少束縛された方が働くのである。


「…………一限って何だっけ?」


 生じた会話の隙間を埋めるために、適当な話題を振ってみた。


「古文。でその次が、数II・Bと英語」


「いきなりダルいなぁ……」


 古文は予習必須。

 予め次の授業でやる内容は知らさせれており、その文章を模写、日本語訳までしてこなければならない。


 まぁ、それはいいんだけど……問題は、その日本語訳を毎回適当に当てられるという事だ。

 人前で発表など、断じてしたくない。訳を間違えたら、いちゃもんつけられるし……。


「ま、三限で終わりなんだ。頑張ろうぜ」


 そう翔真が締めくくると、丁度よくチャイムが鳴り響く。


 教科書よし。予習済みのノートよし。筆箱よし。電子辞書よし。

 机上の準備が万端なのを確認し、今日も俺は勉学に臨む。

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